平成15年度各会計決算特別委員会 総括質疑

田中 良(民主党)
■人口構造の変化
 
 ▼田中委員
 ある学者の人口推計によりますと、昭和二十五年、一九五〇年の人口は、我が国、八千二百八十万人、それに対して平成十二年、二〇〇〇年の人口は一億二千五百五十万人ということだそうであります。そして二〇三〇年の人口は一億七百九十万人、二〇五〇年の人口ということになりますと、八千四百八十万人、こういう推計をある学者がしているということです。
 すなわち、二十世紀の後半の五十年で四千万人がふえて、二十一世紀の前半の五十年で逆に四千万人人口が減少する、こういうことになっている。しかも、ただ単に人口が減るということだけではなくて、団塊の世代というものが、大体これから三年、四年後、退職年齢に達します。そして、それからまた五年ぐらいたちますと、高齢世代になる。さらにその三十年後には、第二次ベビーブーム世代が高齢世代になるということで、年齢構成の高齢化が急速に進んでいき、十五歳から六十四歳の生産年齢人口が急激に減少していく、こういうことになるそうでありますが、これらの点を踏まえて、東京について検証していきたいというふうに思います。
 総務局では、人口統計だけではなくて、就業者数や男女年齢別人口の将来予測を行っていますけれども、東京における生産年齢人口、高齢者の人口、それからさらには就業者数がどう変化すると予想しているかということでありますが、聞いているとちょっと時間がないんで、総務局の予測によりますと、生産年齢人口というのは、二〇〇五年、平成十七年、八百七十七万人、これが、平成三十二年、二〇二〇年ですが、八百十九万人、六・六%減少する。生産年齢人口の比率は、二〇〇〇年を基軸にしますと、これは七二%、それが二十年後、六五・二%というふうに生産年齢人口の比率は低下をする。
 六十五歳以上の人口というのは、二〇〇〇年が百九十一万人、これが二十年後にはおよそ一・六倍、三百二万人、さらには、七十五歳以上の人口は、二〇〇〇年で七十五万人、これが、二〇二〇年、二十年後にはおよそ二倍、百五十七万人、こういうふうに推移していくと。
 就業者数は、二〇〇〇年が八百五十一万人で、これが十年後は八百四十八万人、三万人の減少だということで伺っておりますが、こういう生産年齢人口あるいは就業者の減少というものが東京経済にどういうふうに影響を及ぼしていくかということをお尋ねしたいと思います。
 
 ▼産業労働局長
 人口の減少と高齢化に伴います生産年齢人口、就業者数の減少が経済成長に及ぼす影響についてでございますが、平成十五年版経済財政白書におきましては、他の条件が一定である限り、潜在的に達成し得る経済成長率は低下するとしております。東京の経済にとっても重大な影響がある課題と認識しているところでございます。
 しかしながら一方で、女性や高齢者を中心とする労働力率の向上や、新技術の開発による生産性の向上等により、経済成長へのマイナスの影響を相殺することも可能であるともしているところでございます。
 こうしたことから、都といたしましては、人口減少下においても東京の経済活力が低下しないよう、意欲ある労働者が働くことができる環境の整備や技術開発の支援などに引き続き取り組んでいく必要があると認識しております。
 
 ▼田中委員
 今ご答弁をいただいたんですけれども、経済財政白書では、成長率は低下して、東京の経済にも大きな影響が出てくるだろう、こういうご答弁でした。
 一方で、女性、高齢者を中心とする労働力率の向上とか、新技術の開発での生産性の向上とか、そういうことで経済成長のマイナスの影響というものを何とか相殺できるのではないかという説もあるというご答弁だったんですけれども、実際に本当にそうなのかどうかということでありますが、例えば諸外国に比べて、現在、女性の就業率というのがどうなのか、あるいは高齢者はどうなんだということを見てみますと、また、それを見て、その後、今後の将来ということを考えていくと、必ずしも、ここで今ご答弁があった経済財政白書をベースにした認識で、マイナスのトレンドというものが相殺されるというような甘い見通しは、私はちょっと、いかなるものかというふうに思っております。
 そういう意味では、将来的な傾向としては、人口のこれからの推移というものは、我が国、東京の経済の成長に極めて大きなマイナス要因になってくるということだと思いますが、こういう状況が都財政にどういう影響を及ぼすかということについてお尋ねしたいと思います。
 
 ▼財務局長
 今後、我が国は、ただいま副委員長のお話のとおり、生産年齢人口が減少する中で高齢者が増加すると予測されておりまして、このことが、財政分野に対しまして不確実な面もございますが、総じてマイナスの影響を与えることが懸念されるところでございます。
 こうした事態を、今後の都財政において見ますと、まず、歳出面では、高齢者福祉の対象となる世代の増加に伴いまして、福祉関係の財政需要が膨らむことなどから大幅な増加要因になることが見込まれるわけでございます。
 それからまた一方で、歳入面では、生産年齢人口の減少は、当然ながら行政サービスの財源を負担する世代の減少につながるわけでございまして、直接的には所得税や住民税といった税収に影響を与えると考えられるところでございます。また、今後の人口減少が経済全体の活力低下につながる場合には、法人関係も含め、税収全体にも大きく影響を与えることになりかねないと思われます。
 こうした少子高齢化社会を迎える中で、今後の都財政の運営に当たりましては、歳出増と歳入減の両面から、二重の意味で厳しい対応を迫られる時代が遠からず訪れることが現実のものとして予測されるわけでございまして、今後とも、限られた財源をより効率的に活用するための工夫を凝らしつつ、新しい時代の変化に合わせた施策の見直しを思い切って行うなど、これまで以上に財政構造改革に取り組んでいくことが必要である、このように考えております。
 
■新銀行東京
 
 ▼田中委員
 これまで述べてきたような人口の年齢構成の変化それから生産年齢人口、就業者数の減少からGDPの低下へとつながっていく傾向は、企業の資金需要の低下を招くだけでなく、毎年の利払い額が確定している銀行借り入れから成功報酬を基本とする株式による資金調達へと資金調達自身がシフトしていく、つまり間接金融から直接金融、こういうことになっていくだろうというふうに私は思います。
 この高齢化の進展というものは、これから高齢者の貯蓄の取り崩し、それから年金も不安定でありますし、そういうこともあるでしょう。それから、現役世代の負担増によって貯蓄もまた縮小していくということもまたあるだろうと思います。すなわち、需給の両面から銀行業のパイというものが小さくなっていくというふうにいえるのではないか。
 そういった点で、これからの金融機関のあり方については、人口のこれからの推移というものがどのように関連していくのか、その見解を伺います。
 
 ▼新銀行設立本部長
 内閣府の経済財政諮問会議が発表いたしました、今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針によりますと、経済のグローバル化が進む中で、日本経済を支える成長の源泉は、労働力人口だけではなく、技術革新や、市場や競争を通じた効率性の高い部門や社会的ニーズの高い成長部門への資本等の移動により生み出されるものであるとされております。
 すなわち、今後の日本経済の成長のためには、こういった労働人口が減少する時代であればこそ成長部門などへの円滑な資本移動が必要でございまして、実体経済におきましては、適切な金融仲介機能を支える銀行の存在が不可欠であると考えております。
 
 ▼田中委員
 今、私は中長期的には銀行業のパイというものが小さくなっていくだろうというふうに見ていると申し上げましたけれども、そういう中で、来年からこの新銀行東京、これが立ち上がっていくということです。
 この間数年間、客観的な情勢というものが相当変わってきたというふうに私は認識をしております。既存の金融機関もさまざまな金融の商品というものを開発していったり、いろんな銀行の統合というものが進んでいったり、また、一番大きな要素としては、景気が回復の基調へ入ってきたというような状況があります。
 こういった客観情勢の変化というものが、新しい銀行をつくるといっていた当時のこの新しい銀行の主体的条件というものに、どういうふうに影響があると見ているかということについてお尋ねします。
 
 ▼新銀行設立本部長
 景気は、好調な米国経済や内需が拡大する中国向け輸出等に支えられる形で一部回復している面はございますが、大手製造業が中心でございまして、中小企業については依然厳しい状況が続いていると認識しております。
 資金供給を見ますと、日銀統計による直近の銀行全体の貸出残高は、平成十六年六月末の大企業向け融資は、前期比〇・八%の減少と下げとどまっておりますが、中小企業向け融資は前月比三・五%の減少となるなど、中小企業に必ずしも十分な資金供給が行われている状況とはいいがたいと見ております。中長期的に見ても、全企業の九九%を占める中小企業の優秀な技術力や、経済環境の変化への適応力に支えられている我が国の産業構造のもとで経済のグローバル化が進む中、構造変化や厳しい競争への対応など、中小企業の資金需要は今後も増大すると考えております。
 これらのことから、中小企業に対し、十分な資金供給を行い、地域経済の活性化を目的とする新銀行の必要性は変わらないと考えておるところでございます。
 
 ▼田中委員
 十七年の四月以降に開業するというふうにご説明をいただいているわけですが、いまだに開業の日時というものは明確に示されていないと思いますが、その明確に示されていない理由は何ですか。
 
 ▼新銀行設立本部長
 銀行設立に関しましては、ちょうど四月一日に予定しておりますペイオフの実施、こういったものも含めまして、資金需要それから資金移動、こういったものを全体的に動向を見まして、実施していくという考え方によるものでございます。
 
 ▼田中委員
 ペイオフの実施以降の状況を見てからというお話ですが、なぜそのペイオフの状況を見なければこの新銀行の開業日時が決まらないのか、その辺をかみ砕いてご説明いただけますか。
 
 ▼新銀行設立本部長
 現在の資金の状況を概観いたしますと、比較的、ペイオフに向かって、都銀それから地銀、信金も含めまして、さまざまな対策を講じております。既に数年前から時期は明示しておりますので、それぞれの対策については各機関ごとにいろんな形で行っているというふうに認識しております。
 ただ、まだまだ未確定な部分がございますので、そういった部分をもう少しにらみまして、年明け過ぎにはある程度の方向性を見出していきたいというふうに考えております。
 
 ▼田中委員
 ペイオフ解禁になって、預金が、新しい東京の銀行を開設していたら、そっちの方に集まってきちゃうんじゃないか、つまり、既存の銀行にかなりマイナスの負荷をかけるんじゃないかということが見守る最大の理由というふうにいわれているんですが、いかがですか。
 
 ▼新銀行設立本部長
 新銀行の大きな業務の柱は、これまで地域の中小企業を支えてきた地域金融機関、信用金庫を代表する地域金融機関と密接な連携を持って地域経済を支えていくというスタンスでございますので、そういった部分が非常に重要になるかと思っております。
 
 ▼田中委員
 ということですね。つまり、銀行をつくるということは、確かに利益を追求するだけにならないようにつくろうということをスローガンとしては掲げているけれども、これは明らかに民業なんですよね。民業に東京都がかなり直接的な形で参入をしていくということは、今のやりとりの中でもこれは明らかなわけであります。
 さて、繰り返しになりますけれども、中長期的に銀行業のパイが小さくなっていかざるを得ないというふうに私はいっていますけれども、そうした中で、税金から資本を調達した新銀行が営業エリアを伸ばしていくということは、結果として、他銀行を、極端にいえば廃業ということに追い込んでいくということも懸念されているわけであります。
 当初の新銀行の設立目的は、それはそれとして理解はしておりますけれども、今後、銀行業の改革というものが業界全体で進んでいき、新銀行の設立の目的というものがある程度、一定果たされた段階では、これからつくろうというときになんですけれども、この銀行というものを例えば将来売却をするとか、あるいは東京都が撤退をするとか、そういうことも考慮しなけりゃならない段階に至ることも私はあり得ると思いますけれども、いかがですか。
 
 ▼新銀行設立本部長
 新銀行は、地域に根差した新たなトランザクション・バンクとして、地域経済活性化と地域金融の円滑化を図ることを目的として創設されたものでございます。したがいまして、地域の実情に詳しい信用金庫などの地域金融機関と密接な連携を図ることで、中小企業融資に対する相互補完の体制を構築し、中小企業への総合的な支援を行っていくこととしておりまして、本年五月に東京都信用金庫協会との間で包括提携契約を締結し、現在、個別信用金庫との協調融資それから保証について具体的な協議に入っているものでございまして、まず民業圧迫には当たらないというふうに考えております。
 また、新銀行は、中小企業に対する支援を中心とする銀行として、地域金融機関との連携によりこの役割を果たすということが将来的にも期待されておりまして、これまで都議会で何度もご説明したとおり、撤退することは考えておりません。
 
 ▼田中委員
 新銀行東京の取締役とか執行役についてですけれども、平成十六年六月の定時株主総会での議決を経て、取締役や執行役などの新役員人事を決定したと。現在、取締役は社外取締役を含め七名、執行役は代表執行役を含め七名の体制だと。代表執行役は取締役を兼任している、こういうふうに説明を聞いておりますが、この具体的な、こういう方々を選任するに当たっての理念、考え方というものをお聞かせください。
 
 ▼新銀行設立本部長
 取締役につきましては、株主の意見を反映させるため、都の関係者を選任したほか、経営全般に高い識見を有する人材を、経済界、弁護士、公認会計士、学識経験者など、幅広い分野からバランスを考えた上で選任いたしました。
 執行役につきましては、経営者としての経験や実績、金融に対する専門的能力等を有していることはもちろん、何よりも新銀行の理念の実現に意欲を持つ人を選任したものでございます。
 
 ▼田中委員
 この体制の中では、社外取締役というのもいらっしゃるわけですね。その社外取締役のある方の出身母体は多摩都市モノレール株式会社、これは東京都の外郭団体でありますけれども、この経営状態というのはどうなっていますか。
 
 ▼都市整備局長
 鉄道・軌道事業は、初期投資額が大きいという特性から、多額の減価償却費を計上せざるを得ないことなど、構造的に開業後一定期間は赤字となります。
 平成十五年度決算は、償却前の経常損益では単年度黒字となっておりますが、累積では約二百十億円の損失となり、約四億円の債務超過となりました。
 なお、経営の安定化に向け、十六年八月に運賃改定を行い、収支の改善を図っております。
 
 ▼田中委員
 いろんな事情がおありとは思いますけれども、いずれにしてもこの会社は債務超過の企業だというお話ですが、債務超過の企業の社長を、これは一生懸命本業で何とか立て直してもらうことに専念してもらわなきゃならないと私は思いますけれども、債務超過企業の社長が新しくこれからお金を貸す銀行の社外役員になるというのは、ちょっとどういう理由かというふうに思うのですが、これはどういう理念でこうされたのか、お尋ねします。
 
 ▼新銀行設立本部長
 都の関係者の人選に当たりましては、マスタープランに反映された都の政策目的に基づき、経営の大枠を監視するという観点から、都の政策全般に対する理解、あるいは都民感覚にすぐれた人材ということで選任させていただいたものでございます。
 
 ▼田中委員
 今、都民感覚にすぐれた人材を選任というふうにおっしゃいましたけれども、都民感覚からしますと、ちょっと語弊があるかもしれないけれども、ダイエーの社長がUFJ銀行の役員になるみたいな、そういう印象をやっぱりぬぐえないと思うんですね。どうも私は、都民感覚ではちょっとよくわからないなというふうに思いますが、次に進みたいと思います。
 
■重点事業と重要施策
 
 ▼田中委員
 次に、平成十五年度の重点事業について、その進捗状況について伺いたいと思いますが、東京都は、都政の構造改革を推進するための戦術として実施すべき事業を重点事業として選定して、改革の事業に取り組まれてきました。しかし、この重点事業の取りまとめ以降、国の三位一体改革の具体化などがあって、事業は大きな影響を今受けているということであります。
 十五年から十七年を実施期間とする障害者地域生活支援緊急三カ年プランは、地域居住の場と日中活動の場の拡充、施設を必要とする人のための入所施設の整備を行い、緊急に入所待機者を解消することを目指しているということですが、この事業は、重点事業の中でも、特に、国の補助基準が十六年の一月に突然変更されたということによって大きな影響が出ていると聞いておりますので、何点か伺いたいと思います。
 この障害者地域生活支援緊急三カ年プランの十五年度における進捗状況はどのようになっているのか。
 
 ▼福祉保健局長
 障害者地域生活支援緊急三カ年プランの初年度であります平成十五年度の実績は、地域居住の場であるグループホームにつきましては、二百六十二人分増の計画に対し二百九十一人分、ショートステイについては、四十人分増の計画に対し六十三人分を整備いたしました。また、通所授産施設やデイサービスセンターなど、日中活動の場については、計画数五百五十五人分に対し四百四十五人分、地域生活支援型の入所施設については、計画数二百三十八人分のところ百二十人分の整備を行いました。
 
 ▼田中委員
 国庫補助基準が計画当初と変わったということによって、このプラン全体でどのような影響を受けるかと見ているのか、それから、重点事業として位置づけられているこの三カ年プランの計画を達成するために、国庫補助の影響を受けた事業について、福祉保健局として今後どのように取り組んでいくつもりなのか、お尋ねします。
 
 ▼福祉保健局長
 平成十六年度の国庫補助協議に当たりまして、国は、入所施設については、新設など定員増を伴う整備を原則として対象としないこと、また、通所施設については、授産施設やデイサービスセンターなどを中心に採択を行うことといたしました。そのため、都が協議した十八施設、六百六十五人分の整備のうち、採択は七施設、二百四十三人分にとどまり、三カ年プランの進捗にも影響が出ており、極めて問題があると認識しております。
 現在、国においては、いわゆる三位一体の改革に伴う補助金の見直しの検討を進めているところであり、現時点で今後の影響を申し上げることは困難であります。
 続いて、来年度以降の国庫補助事業の取り扱いでございますが、現時点では不透明でありますが、福祉保健局としては、障害者地域生活支援緊急三カ年プランを着実に推進するため、国に対して施設整備費の補助協議を申請した計画がすべて採択されるよう、粘り強く要求してまいります。
 特に、入所施設については、定員増を伴う整備は原則として認められておりませんが、地域偏在等、都の実情を踏まえた地域生活支援型の施設整備の必要性を訴えてまいります。
 
 ▼田中委員
 今ご答弁がありましたけれども、粘り強く要望していくという決意も伺いましたが、しかし、現実にはかなり厳しい状況にあるということ、これはもう否定できないわけであります。
 これは、緊急三カ年プランということでうたって始めた重点事業でありますから、緊急三カ年が、三カ年を終わってみたら、達成度がこれは半分だ、あるいは半分ちょっとだという話では、これは重みが問われるというふうに思いますが、こういう重点事業を所管する知事本局、事業をピックアップして選定するということだけでなくて、実際に選定した以降の実施状況についてもきちっと目配りを行っていただいて、事業目的が達成されるように最大限の努力をやはりしていただきたいなというふうに思うわけですが、いかがでしょう。
 
 ▼知事本局長
 障害を持つ方々が地域で自立して生活できるようにしていく、そのために生活と活動の場を整備することは不可欠でありまして、今ご指摘の障害者地域生活支援緊急三カ年プランを重点事業として位置づけたのも、そういう理由でございます。
 しかるに、国の事情によりまして、一方的に補助金が削減される事態が生じていることはまことに遺憾であると考えております。この状況をこのまま放置しておくことはできないわけでありますが、現在、いわゆる自治制度の変革がなかなか進まない中で、国の補助金の削減を現時点ですべて都が肩がわりすることも、これはまた困難でございます。
 私どもとしては、事業所管局と連携をしながら、今、先ほど答弁がありました国への働きかけを強めることも含めまして、プランの目標の達成に向け、最大限努力してまいりたい、こう考えております。
 
 ▼田中委員
 平成十二年、今から四年前ですが、障害者手当それから医療費助成の見直しということが行われましたけれども、そのときに私たちも、現金給付を中心とした施策を転換して、基盤整備を進めていって、障害者の生活の質を高めるべきだということも主張しましたし、この見直しにもそういった意味で協力をしてきた立場であります。こうしたその当時の流れがこの緊急三カ年という計画でありますが、現に待機者、待っている人が千人ほどいらっしゃるということであるようであります。
 この十五年度決算で、障害福祉費の不用額がおよそ六十億円、施設整備費の不用額は百十億円、執行率七三%、緊急ということで施策の必要性を認めてこの予算を議決してきたわけですが、これだけ積み残すということは、私どもの立場からしても非常に納得がいかないというふうに思うわけであります。十六年度は、さらに国の補助金カット、この影響が加わっていって、このままでは間違いなく三カ年での目標達成は不可能だろうというふうにいわざるを得ないというふうに思います。
 重点事業ということに位置づけた、その必要性、緊急性、これを考えますと、あと一年間実施期間は残ってはおりますけれども、国が悪い悪いといって、この状態を見過ごしていくというわけにはいかないだろうというふうに思いますが、そういった意味で、ぜひ、必要な事業について国が補助金をつけないような場合でも、これを何とかやる方向で知恵を出していただいて、取り組んでいただきたいということを意見として申し上げておきたいというふうに思います。
 次の質問に移ります。
 平成十五年度重点事業に、多様な危機に対応する危機管理体制の構築ということで一億円が計上されておりましたけれども、この執行状況はどうなっておりますか。
 
 ▼総務局長
 平成十五年度の重点事業といたしまして、危機管理監や総合防災部の設置などによりまして組織体制を強化いたしますとともに、被害予測システムの整備、さらにNBC災害などの危機に対応した図上訓練の実施や、NBC災害マニュアルを作成いたしました。
 予算化されました一億円につきましては、委託する予定でございました図上訓練やマニュアルの作成のほぼすべてを職員みずからが創意工夫したことによりまして、七千六百万円の決算となっております。
 
 ▼田中委員
 このたびの新潟県の中越地震では、東京消防庁のハイパーレスキュー隊の活躍が全国的にも注目をされたわけでありますけれども、このハイパーレスキュー隊の結成経緯と、日常どんな訓練を行っているのか、また、どのような事態に対応できるのか、これを伺います。
 もう一つ続けて、さらに、この地震では全国各地からレスキュー隊が救援に駆けつけましたけれども、こういった東京消防庁のハイパーレスキュー隊のような部隊というものは、ほかの自治体にあるのかどうなのか。
 それからもう一つ、東京において将来、万一震災が発生した場合、その被害を考えますと、東京消防庁のハイパーレスキュー隊だけでは、恐らくいろんな場所であちこち被害があると思いますが、これだけでは対応し切れないんじゃないかというふうに危惧するわけであります。全国のレスキュー隊にこういったノウハウを伝えて、全国のレスキュー機能を高い水準で強化していくという必要があると思いますが、どのようにお考えか、消防庁の見解を求めます。
 
 ▼消防総監
 三点のご質問にお答えいたします。
 東京消防庁の消防救助機動部隊、通称ハイパーレスキュー隊は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえまして、ビルの座屈や倒壊などの大規模救助事象に対処するため、平成八年に二部隊百二十六名、さらに、平成十四年には、地下鉄サリン事件及び東海村ウラン加工施設における臨界事故を契機といたしまして、NBC災害に対応する一部隊四十六名を編成し、現在、三つの部隊に百七十二名の隊員を配置しております。
 大規模救助事象に対処するハイパーレスキュー隊には、先進的な人命探査装置や救助用資機材を配備するとともに、倒壊建物からの救助を行うブルドーザー及びクレーン車などの特殊車両を配置しております。
 これらの部隊は、平常時には直近火災等に対応するとともに、瓦れきからの救出訓練、ヘリコプターによる部隊投入訓練などを実施し、東京直下型地震を初めとする大規模災害に備えております。
 二問目の各自治体におけるハイパーレスキュー隊の有無についてでございますけれども、人命探査装置やクレーン車、ブルドーザーなどを整備している自治体はありますが、東京消防庁のハイパーレスキュー隊と同様の部隊は、他の自治体にはありません。
 三つ目のものでございますけれども、東京に震災など、大規模災害が発生した場合には、都知事の要請に基づきまして、緊急消防援助隊として他府県のレスキュー隊が東京に集結することになっております。現在、総務省消防庁の要請によりまして、全国のレスキュー隊員の指導者を対象に実施されている消防大学校の救助研修や、緊急消防援助講習会における救助技術指導を初め、各消防本部の依頼に基づき、研修生を受け入れて部隊の有するノウハウを提供しているところであります。
 さらには、毎年行われる緊急消防援助隊合同訓練への参加などを通じまして、今後とも引き続き全国消防のレスキュー機能を強化するよう、東京消防庁の救助のノウハウを伝えてまいります。
 
■東京の林業の再生と活性化
 
 ▼田中委員
 先般公表されたシカ被害実態調査によりますと、シカの食害による森林被害が急速に広がり、奥多摩町逆川上流で山腹崩壊が発生するなど、シカ被害対策への緊急の取り組みが求められております。
 一方、多摩の森林荒廃のもう一つの大きな原因として、東京の林業の低迷が挙げられます。林業は、保育、伐採、活用、植林という循環によって、これまで森林を適切に管理する役割を果たしてきた、しかしながら、安価な輸入材との競争により国産材の価格は下落し、林業が低迷する中で、多摩産材の素材生産量は、昭和四十三年度の十四万五千立方メートルをピークに、平成三年度には二万九千、現在では一万五千まで落ち込んでおり、木材の持続的生産による森林の育成が困難になっております。
 森林に手が入らなくなったということが、シカ害を増大させることにもつながっている。木材生産量が激減した林業を再生することは極めて困難な課題ではありますが、森を守り育てていくためには、長期的視野に立った林業の再生とともに、森の守り手を確保するための知恵とさまざまな仕組みづくりが求められていると思いますが、ご所見をお尋ねをします。
 それから続いて、森を守るためには、林業の再生と同時に、森の多様な資源を活用した新たな産業を振興することが重要であるということですが--答えを先にいったらなんですが、十五年度にはどういう取り組みをしたのか、それから、十五年度には、多摩産材の利用拡大に努めるとともに森づくり推進プランを検討してきたということですが、この多摩産材の利用拡大について伺いたい。
 林業の低迷が、輸入材、代替資材による国産材の圧迫に起因する以上、大局的な観点からの国産材の利用推進が不可欠であります。重要課題であり、多摩産材の利用促進に対する取り組みの現状と今後の方向はどうか。多摩産材の利用拡大は、東京の林業再生の第一歩であります。民間住宅への普及等、多摩産材の民間需要拡大への取り組みが大変重要であり、より一層都民への普及に力を入れる必要があります。
 また、森の資源を生かした新たな産業については、森に関与する担い手を幅広く確保する意味でも重要であります。プランに基づく現在の取り組み状況、これらについて伺います。
 お答えを聞いてからと思いましたが、時間の関係で先に私の意見を述べさせてもらいますが、多摩の森林は都民生活にとって大変重要な役割を果たしております。従来からの林業は、その営みを通じて極めて自然に木の循環を守り、都民生活と自然環境に大きな貢献をしてまいりました。長期的には林業を再生し、人間の英知による木の循環を取り戻すことが重要であります。
 一方、今日的な状況の中では、森を守り育てることを森林関係者にのみ依存することはできません。多くの都民の理解のもとに、都民とともに森を守る仕組みが不可欠であり、都民への理解を求める努力や将来に向けての山の守り手を確保する努力を求め、期待をしたいと思いますが、ご答弁、全部まとめてお願いいたします。
 
 ▼産業労働局長
 おおむね四点ほどのご質問にお答えさせていただきたいと思います。
 林業の意義並びに林業をめぐる現状につきましては、副委員長がただいまご指摘になったとおりでございます。
 こうした困難な状況の中で森林を守るためには、ご指摘のように、多摩産材の積極的な活用による林業再生に向けての長期的な取り組みが必要でございますが、それとともに、森林の持ついやしや健康増進機能、四季折々の豊かな景観、キノコ、山菜等の林産物など、多様な資源を生かした新たな産業の振興と、それに伴う人材の確保が重要であると考えておるところでございます。
 そうしたことで、十五年度におきましては、林業振興等の取り組みといたしまして、造林、間伐の補助などの森づくりの推進や、林道等、林業生産基盤などの整備に係る事業のほか、担い手対策や木材の需要拡大に向けた普及、PR活動などの事業を実施したところでございます。
 また、農林漁業振興対策審議会の答申を受けまして、ご指摘のございました、森づくり推進プランの検討を進めてまいりました。それで、森の健全な育成及び木材の安定供給の面からの豊かな森づくりや、森が持つさまざまな機能を生かした森林産業の創出の視点に立ちまして、十六年四月にこの推進プランを策定したところでございます。
 次に、多摩産材の利用拡大を図るということでございますが、まず、都の事業につきましては、平成十年度から、関係部局で構成する木材利用推進連絡会により各部門での利用を推進し、加えて、昨年度策定されました、東京都建設リサイクル推進計画により、多摩産材の優先的利用を推進しております。
 また、区市町村に対しましても、小中学校などの木質化の働きかけを進めているところでございます。
 また、民間需要に関しましては、大工、工務店、木材生産者などで構成する東京の木・いえづくり協議会などとの協力のもと、民間住宅建築への需要拡大を図っているところでございます。
 次に、森づくり推進プランにおきましては、新たな林業の展望を開くため、木材の安定供給や木の新用途の開拓などの取り組みを進めるとともに、森を守る多様な人材の参加を得て、森林資源を生かした新しい産業を発展させていくこととしております。
 このため、まず、多摩の森林地域にあるさまざまな資源などの調査を進めるとともに、地元関係者や企業などの交流によるネットワークづくりを進め、多摩の森林資源を生かした新たな産業を生み出す取り組みを始めております。また、広く森と木に関する、都民の森林を守るため、多摩の森林地域の市町村等と協力して、ITを活用した総合的な情報提供の仕組みを構築しているところでございまして、こうしたことを進めまして、林業の再生と活性化に積極的に努めてまいります。

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