平成15年度各会計決算特別委員会 総括質疑

大西 由紀子(ネット)
■決算説明のあり方
 
 ▼大西委員
 個別の事案に入る前に、決算説明のあり方について申し上げたいと思います。
 施策の見直しには、決算の詳細な分析と、それを通じて事務事業の的確な評価が不可欠です。従来の行政の分野においては、国、地方を問わず、予算が重視される一方で、決算は軽んじられるという傾向があります。今後はこれを改め、決算分析の結果を次の予算に生かしていくという一貫した取り組み姿勢を構築していく必要があるのではないでしょうか。
 現在、出納長室及び各局から提出されている決算説明資料には、本来必要な情報が不足しているケースが多々あります。特に予算説明資料との整合が十分でないので、事業ごとに予算と決算とを対比させ、その動きを追おうとしても、なかなかうまくいきません。個別には分科会で議論しましたので、本日は全体に係る問題点を出納長にお伺いします。
 まず、事業の財源についてですが、事業執行の妥当性を評価する場合、その事業がどういう財源で行われたのか、税金なのか、借金なのか、あるいは国庫負担金があるのかないのかは重要な判断要素となります。予算説明書には、局別、財源別の一覧表が付され、財源内訳が示されています。これに対して、現在の決算説明資料では、歳入と歳出が別々に整理され、ある歳出にどういう財源が充当されたかという点の説明が全くありません。
 次に、不用額についてですが、不用額が発生した理由はいろいろ考えられますが、例えば事業執行は一〇〇%達成しつつ、落札差金や経費の節減などで残額を生じた場合と、事業自体の執行率が低かった場合とでは、評価や分析の視点が全く異なります。こういうことこそ私たちが本当に知りたい点なのですが、現在の資料には説明がなされていません。せめて特異的な事業については十分な説明が必要と考えるんですが、いかがでしょうか。
 
 ▼出納長
 現行の決算についてですけれども、制度としまして、歳入歳出予算について行うこととなっております。そのため、いわゆる法定決算の形式に従いまして、歳入と歳出、それぞれの予算科目に従って決算を調製する、そういうものでございます。そこで、決算説明資料におきましても、予算科目別に執行の状況を説明することを主眼としております。
 お話の歳出の不用額等につきましても、これまで、各局別に作成する決算説明書におきまして、予算科目に従って、契約の落札差金あるいは国庫補助金の増減などのように、差が生じた理由を区分して表示し、また、参考としまして事業執行の概要についても支出内訳を記載するなどして、工夫をさまざま凝らしてきております。
 今後とも、都議会や都民に対してより一層わかりやすい決算説明が行えるよう努力してまいります。
 
 ▼大西委員
 このほか、組織が統合あるいは新設された場合の説明など特に感じるのですが、両局の決算書を突き合わせても明快になりませんでした。私たちは現在の決算説明書には改善すべき余地がいろいろあると思っております。今後、公会計改革も実施される中で、決算についての改善に向けどのように取り組まれるのか、再度出納長にお伺いします。
 
 ▼出納長
 平成十八年度から全国に先駆けて実施する公会計制度改革は、官庁会計に複式簿記・発生主義を導入し、都における会計処理を根本から改めるものであり、決算資料につきましても、都議会や都民に対してよりわかりやすいものになるよう改善をしていく方針であります。これによりまして、ご指摘の事業の充当財源や不用額の説明につきましても、これまで以上にわかりやすくする方策を検討するとともに、財務諸表から得られる情報を、各局の主体的な事務事業の見直しや行政評価、予算編成等にも活用していくことで、マネジメントの強化を図っていく考えでございます。
 出納長としましては、公会計制度改革を通じまして、都政の構造改革と、これを担う都職員の経営感覚やコスト意識の醸成などにも重点的に取り組みまして、都の財務状況、財政運営に関する都民への説明責任を全うすることに全力を挙げて取り組んでまいります。
 
 ▼大西委員
 公会計改革は平成十八年度からとされていますけれども、十六年からの決算審議についても最善の努力を要望しておきたいと思います。
 
■住民監査請求の監査経過の情報公開
 
 ▼大西委員
 地方自治法第二百四十二条により、都民が監査委員に対し、都の財務に関する行為について監査を求め、必要な措置を講じるよう求める制度ですが、制度の目的は、都民の請求と、これに基づく監査により、東京都の財政面の適正な運営確保と都民全体の利益を守ることとなっています。
 平成十五年度における住民監査請求に基づく監査の実施状況は、請求の受け付け件数が四十九件ありました。監査を実施したものの結果の決定は、請求のあった日から六十日以内に行うことになっています。決定は監査委員全員で協議し、意見を一致させる合議の形をとっていますが、その過程には委員のさまざまな意見があると思います。理由がないとして棄却したものには監査委員の意見等、議事録等を公開していません。局側の説明では文書不存在ということです。しかし、税を使って委員を選任し、議論をしているのです。情報公開は必然と考えます。都民の請求に対してどのようなプロセスで決定されたのか、情報を公開すべきだと考えますが、見解を伺います。
 
 ▼監査事務局長
 住民監査請求にかかわる決定は委員の合議により行っております。具体的には、請求人からの監査請求書に加えて、事務局でまとめた参考資料をもとに監査委員が合議を行い、その上で委員全員が合意した結論と、それに至る理由をまとめております。これら監査の請求書、参考資料、委員の合意の結論とその理由はすべて情報開示の対象としております。また、陳述を行った場合には、その記録も開示の対象としております。
 なお、審議中の委員の発言は、合意に向けた意思形成の途上のものであり、制約のない自由な発言を保障するためにも、各委員の個別の発言を公開することは適切でないと考えております。
 
 ▼大西委員
 他県では情報公開の対象としているところもあります。開かれた都政運営のためにも、今後の検討を要望しておきたいと思います。
 
■防災対策
 
 ▼大西委員
 新潟県中越地震に際し、いまだ余震が続き、寒さも増している中、避難生活は大変厳しい状況です。被災された方々にはまずもって心からお見舞い申し上げたいと思います。
 また、東京都からも多くの職員が支援に出向いていますが、被災地でのご努力に敬意を表します。
 さて、来年は阪神・淡路大震災から十年ということで、各地でイベントが準備されています。しかし、イベントよりも、東京がもう一度十分に地震の備えをすべきときだと考えております。東京都は地域防災計画をつくり、震災対策事業計画を作成し、ハザードマップ、震災復興マニュアルもつくってきました。市区町村とも連携しながらこの計画は進められるというわけですが、計画というだけで、せっぱ詰まったところがいま一歩足りないのではないかと、東京に暮らす私としては実感しています。
 平成十四年に策定された東京都震災対策事業計画は、従来の予防対策重視の東京都震災予防計画にかえて、東京都震災対策条例に基づき発表されたものです。この計画の目的は、都が実施すべき震災対策の全体像を明らかにし、各施策について具体的な目標と方向づけを行うことを目的としています。
 そこで伺いますが、まず第一に、東京都震災対策事業計画は、地震に強い都市づくりや住民による防災活動の仕組みづくり、危機に強い体制、そして首都圏の防災ネットワークづくりや震災復興体制づくりなど、事業数百七十一事業あります。この平成十五年度までの、十四年、十五年の二カ年ですが、執行額についてまず伺います。
 
 ▼総務局長
 平成十五年度までの二カ年におきます執行額でございますけれども、まず、地震に強い都市づくりといたしまして、これは全体約でございますが、九千五百十五億三千百万円。次に、住民による防災活動の仕組みづくりでございますが、十八億千五百万円。危機に強い体制づくり六百三億四千八百万円、首都圏の防災ネットワークづくり九百万円、震災復興体制づくり七百万円で、二カ年の合計で約一兆百三十七億一千万円となっております。
 
 ▼大西委員
 二カ年で一兆ということで、額は大きいんですが、東京都震災対策事業計画を取りまとめるのは総務局の総合防災部となっています。東京都震災対策事業計画の総合的な事業計画の進捗状況をチェックすることにより、地域防災計画にそのことが反映され、都民の安全確保の向上につながるわけですが、いろいろなヒアリングの中で、それぞれの各局が独自に進めているということで、いま一つ総務局が全体的なものを統括している役割という機能が見えなかったわけですが、その辺の見解を。
 
 ▼総務局長
 東京都震災対策事業計画の所管局でございます私ども総務局は、計画の策定に当たりまして、東京都地域防災計画や新たな防災課題等を踏まえまして、各局等に策定方針を示しまして調整を行っております。また、計画事業の進捗状況は予防対策や応急対策などに影響することから、毎年度各局等に報告を求めまして、その推進に努めております。さらに、状況に応じまして、東京都地域防災計画の見直しにも反映しております。今後とも、各局防災機関と連携を図りながら、都民の生命、財産の安全確保に努めてまいります。
 なお、私ども新潟県の地震におきましても、各局と調整を図りながら仕事を進めております。姿は見えないのは残念でございますけれども、私どもは各局と十分連携を図りながら仕事をしておりますので、ご理解をお願いしたいと思います。
 
 ▼大西委員
 総務局は地震が、被害が発生してから、その動きというものは非常に評価しているんですが、私が求めるのは、その前にいかに未然に防止、被害を少なくするかというところですが、その辺の取りまとめをもう少しリーダーシップを持ってやってもらいたいなという思いがあります。そういう意味では、本当に総合的な統括をすべき総務局の役割、ここが問われているんだと思います。
 さて、都有施設の耐震化、道路、橋梁、都営住宅等に関しての安全対策については、各局が順次優先順位をつけながら対策を行っているということがヒアリングによってわかりました。震災時には、身近な小中学校、教育現場として本来子どもたちが集まる小中学校の使用、そしてそのほかにも、こういう被害が起こりますと一時避難所となることが想定され、やはりここでは耐震化が重要となります。しかし、小中学校の全棟数のうち、耐震化診断率は八割程度、昭和五十六年以前の建築棟数が六千十三棟ある中で、耐震性があるかもしくは補強済み棟数は三千七十五棟ということで、小中学校の耐震化率が六割にすぎません。そういう意味では、こういう事態になったときに小中学校の大切さ等を考えた場合に、ぜひこの小中学校の六割というものをもっともっと進めるべきだと思うんですが、その辺はいかがでしょう。
 
 ▼教育長
 都立学校につきましては、耐震診断調査の結果、補強が必要な学校につきまして、平成十五年度に耐震補強計画を策定しまして、改築や大規模改修とあわせて実施する場合を除き、盲・ろう・養護学校については平成十六年度までに、高等学校については平成十八年度までに完了するよう、計画を着実に実施しているところでございます。
 また、公立の小中学校におきましては、設置者でございます区市町村が国の助成制度を活用して対応しているところでございますが、学校の震災対策がより一層促進されますよう、国に対して助成制度の拡充を強く都としても働きかけてまいります。
 
 ▼大西委員
 ぜひお願いしたいです。耐震診断については平成十七年度までに行うという国の指導があるわけなんですが、肝心の実際の補強工事、これについてはいつまでに完了しろというような義務づけもない点があり、非常に不安に思っております。今後、国への働きかけをよろしくお願いしたいと思います。
 そして、都内には昭和五十六年以前に建築された建物も多くあります。建築物の確認申請はチェックされますが、特に不特定多数の人が利用する病院やデパートなどを初めとする民間建築物の耐震化について、民間任せではなく、やはり状況を都として把握する必要があると考えるんですが、その辺はいかがでしょう。
 
 ▼都市整備局長
 お話しの病院、百貨店など、不特定多数の人が利用いたします建築物につきましては、耐震改修促進法に基づき耐震診断を行い、必要に応じて改修に努めることとされております。こうした施設につきましては、平成七年十二月の法施行後、増築や防災査察など、さまざまな機会を通して、建築主に耐震化への取り組みを強く働きかけております。現在までに都内で四百十一棟が法に基づく認定を受け、改修を進めております。
 また、本年九月には、これらの施設管理者に耐震改修を促すため、東京都耐震改修促進連絡会を設置したところでございます。今後、メンバーである医師会、百貨店協会の代表の方々などを通しまして、各施設の耐震診断、改修の状況を把握するとともに、建築物の所有者や管理者に対して改修を一層促進するよう積極的に働きかけてまいります。
 
 ▼大西委員
 新潟中越地震では新幹線の脱線が大きな問題となりました。鉄道事業については国が所管していますが、鉄道施設の耐震対策の実施状況と、今後の都の取り組みについて伺います。
 
 ▼都市整備局長
 鉄道施設の耐震対策は、阪神・淡路大震災での被害状況を踏まえ、既存の高架橋や開削トンネルなどについては、平成七年八月の旧運輸省通達に基づき、震度七程度の地震に対応できるよう、鉄道事業者が計画的に補強工事を実施しております。このうち、都営及び東京メトロの地下鉄につきましては、補強工事を完了しております。また、平成十年十二月には、鉄道構造物等設計基準が定められ、その後新設された鉄道施設につきましては、この基準に基づきまして、震度七程度の地震に対応できるよう設計しているところでございます。
 今後とも、都としては、国や鉄道事業者など関係機関との連携を図り、鉄道施設の安全性確保に努めてまいります。
 
 ▼大西委員
 国は補強工事を鉄道事業者に計画的に実施するよう通達を出しているんですが、進捗状況はよいとはいえない状況です。東京では住宅密集地域を鉄道が走りますし、脱線後の衝突等を考えれば、本当に震災等に対しての安全対策を都としてしっかり把握し、そしてそれを民間にちゃんと指導をやっていくということも必要ですので、ぜひお願いしたいと思います。
 それから、時間がなくなりましたので、避難場所の指定についても、いろいろ聞きました。百七十カ所の避難場所があります。そして、でも帰宅不可能の人も含めるならば、まだまだ一人当たり一平方メートル未満の箇所も含まれたり、それから三キロメートル以上の遠距離避難が必要だったりということで、非常に十分とはいえません。ぜひこの辺も、都有地の活用や民間地の活用で適宜な避難場所をお願いしていきたいと思っております。
 そして、これまでの被害想定は平成三年と九年につくられました。その後、この数年で大規模な開発による都市構造の変化があります。そこに対応できるかどうか検証する必要があるんですが、その辺はいかがでしょう。
 
 ▼総務局長
 平成九年に公表いたしました、東京における直下地震の被害想定に関する調査は、中央防災会議におきます南関東地域における直下地震の切迫性の指摘及び阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて作成いたしたものでございます。前回の検討からほぼ十年が経過いたしましたが、現在、国は中央防災会議のもとに、首都直下地震対策専門調査会を設置いたしまして、直下地震に関する被害想定を検討しておりまして、年内には結果を公表する予定となっております。都といたしましては、この被害想定や、これまでの震災対策の成果を踏まえますとともに、今回の新潟県中越地震によります被害状況をも調査し、今後新たな被害想定の必要性について検討してまいります。
 
 ▼大西委員
 新潟地震クラスが東京を襲えば、被害は死者七千百五十九人、全半壊の建物十四万二千五百二十八棟といわれています。東京のまちづくりは、耐震化が進んだとはいえ、巨大ビルが次々に建設され、非常に不安を覚えるのは私一人ではないはずです。関東大震災のときは火災で、阪神・淡路大震災では家屋倒壊で、そして今回の新潟中越地震では土砂災害やエコノミークラス症候群で人命が失われました。地震災害によってどういう形で被害が起きるかは過去の経験からだけでは予想がつかず、さまざまな可能性を視野に入れて、安全・安心対策を進めることが重要だと思います。
 その点で気になるのが、近年増加している超高層のマンションやオフィスビルです。アメリカで先年発生したテロ事件では、国際貿易センタービルが火災による鉄筋の強度低下によって倒壊したような事例を踏まえると、地震時の不安は本当に尽きません。周知のように東京でも人口や就業者の伸びは鈍ったり減少しており、土地の高層利用の必要性は薄れているという時代認識を持って、安全・安心を中心に据えたまちづくりを進めるべきだと考えます。まさに都市再生は都市の高層化によってなされるのではなく、都民が安心感を持って暮らせるまちづくりをすることによるのではないでしょうか。都においても行き過ぎた高層化にゴーサインを与えてきたことを猛反省し、都市政策を転換することを求めて、質問を終わります。

戻る