平成16年第3回定例会 一般質問

子どもの食育の推進を図るべき
放課後の子どもの居場所充実を

野上 じゅん子(公明党)
■教育
 
質問1
 日本育英会高校奨学金の都道府県移管について伺います。
 国の特殊法人改革の一環として、日本育英会が日本学生機構に改組され、従来、育英会が行ってきた高校生に対する奨学金貸与事業が、平成十七年四月から都に移管されることになります。これまで東京都は、独自に育英資金貸付事業を実施してきており、育英会の高校奨学金が移管されると、来年以降、都は、同時に二つの奨学金事業を実施することになります。
 これまで都が進めてきた東京都育英資金貸付事業は、平成十四年の条例改正によって、奨学金交付の際の成績要件を撤廃し、所得制限はあるものの、学習意欲のある生徒には、だれでも貸与できる制度に改善されております。
 しかし、都に移管される予定の育英会の高校奨学金には、成績要件があります。このようなダブルスタンダードを放置すべきではありません。都に移管された後は、貸与条件から成績要件を撤廃し、事業内容は都の制度に一本化すべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁1
 ▼生活文化局長
 高校奨学金制度の今後のあり方についてお答えいたします。
 今回の地方移管に当たっての国の考え方は、基本的には従来の日本育英会の貸与水準が維持され、利便性を損なわないことを前提としております。
 現在、国において、その移管財源に係る概算要求が出された段階でございまして、ご指摘の趣旨については、その財源措置の動向、また都財政への影響等を十分勘案しながら、現行の都制度との整合のあり方を含め、慎重に検討してまいります。
 

 
質問2
 食育について伺います。
 食育は、知育、体育、徳育と並んで、人間形成上、大事な要素であります。知育、体育、徳育については、学習指導要領にも明確に指導内容が提示してありますが、食育に関しては資料も少なく、系統的な指導がなされていないのが実態です。
 食育先進国の欧米では、二、三十年前から、生活教育の中に食育が組み込まれ、知識の詰め込みではなく、賢い買い物の仕方、食品の組み合わせ方、料理法、食べ方、かむことの大切さなどについて、体験を通して学習するシステムが確立されております。
 米国がん協会は、一九九〇年、がんや生活習慣病にならないためには、生活習慣を改善し、正しく健全な食生活を通して、病に打ちかつ力を身につけることが重要であると主張しています。この指摘は重要です。
 また、食生活健康ジャーナリストの砂田登志子さんは、ひとりぼっちで食事をする、いわゆる個食を否定的に考えるのではなく、子ども一人でもきちんと食べ物を選択できる力、フードチョイス、本人の責任と判断力で食べ物を上手に選び、生活習慣病とならないように食べて闘う力、フードファイトを提唱しています。
 食をめぐっては、さまざまな問題があります。朝食抜きなどの欠食、かまないため、あるいは、かめないためのそしゃく力の低下、歯が弱く、あごが細い小中学生の増加、さらに味覚障害、肥満、糖尿病の増加など、枚挙にいとまがありません。
 食育とは、食を通して生きる力をはぐくむことです。また、食育は、それぞれの国や地域の貴重な食の文化を守ることにもつながります。
 そこで、未来を担う子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身につけていくため、今こそ都として、食育の推進が重要と考えますが、知事のお考えをお伺いいたします。
 
答弁2
 ▼知事
 食育の推進についてでありますが、ご質問を受けまして初めて私は、その食育なる言葉の意味といいましょうか、そういう教育というんでしょうか、しつけがあるということを知りました。
 食育とは、一人一人が望ましい食習慣を身につけ、食生活における自己管理能力を育成することだそうでありまして、食の問題は、未来を担う子どもたちにとっての重要課題でありまして、日本の将来がかかる大きなテーマとも考えております。食べ物ということに限っても、非常に、すべて物事が潤沢になりまして、何を選択していいかわからない時代にもなりまして、子どもたちが望ましい食生活を身につけ、食生活における自己管理能力を高めることは、生きる力をはぐくむ上で極めて重要であると思います。
 先般、「ニューズウイーク」でしたか、向こうの雑誌を見ましたら、アメリカで、もう際限なく太る親子の何組かの写真が出ていましたが、ポテトチップに象徴されるような高カロリーの食べやすいものを一回食べ出すと、親子ともやめるいとまがなく、とにかく手を休めると不安で食べ続けるというような記事が出ていましたが。いずれにしろこれは、いろんな原因があるのでしょうけれども、どう考えても、あの対応をみても、体へ負担がかかって非常に危険なものだと思います。
 ただ、資料をちょっと調べましたら、朝食を毎日食べる児童生徒の割合というのが、小学校では八二%ですけど、高校生になるとこれが六六%。それから孤食、ひとりでご飯を食べる、そういう子どもが小学生の四年生でも四・四%。それから高校生になると一四%。つまりこれは、朝食に限っていいますとお母さんが起きてこない、朝飯つくってくれない。それから高学年になりますと、孤食に限っていうと、やっぱり母親も働いていて親が家にいなくて、自分で何かをつくって食べるということのようですが、これがまた外部的な問題でありまして、家庭の構造といいましょうか。親もまたどういうニーズがあってか、とにかく共働きして両親とも家にいない。こういう条件というのが──、家庭によっていろいろ違うのでしょうけど、意味合いが。
 いずれにしろ、食事というものが子どもに健全に提供されるということが、私はやはり子どもが真っすぐ育っていく必要条件だと思います。都としても、この問題を重要にとらえて、ソフト、ハードの面でも何かできることがあればと、研究させていただきます。
 

 
質問3
 最近、子どもたちの食べ方にも大きな変化があり、ご飯ばかり食べる、ばかり食べ、また好きなものだけを食べる偏食などが広がり、学校給食でも残菜の多さが目立ちます。したがって、今後は学校給食における食育指導のあり方、位置づけを明確にして、食育に積極的に取り組んでいくべきです。教育長の所見を伺います。
 
答弁3
 ▼教育長
 給食指導の中での食育の充実についてですが、学校給食を生きた教材として食の指導を行っていきますことは、児童生徒が望ましい食習慣を身につけていく上で極めて重要なことと考えております。
 各学校では、給食の時間を初めとしまして、家庭科等の教科の時間や総合的な学習の時間等に食に関する指導に取り組んでおります。
 都教育委員会としましては、現在、食に関する指導を充実するため、授業等で活用しやすい内容の食に関する指導資料集を作成中でございますが、今後、この指導資料集をもとに、区市町村教育委員会と連携しまして、各学校において児童生徒の実態に即した指導計画を作成をしまして、給食時間等で食の指導の徹底を図って、児童生徒の健康づくりを推進してまいります。
 

 
質問4
 乳幼児の段階から、健康的な食習慣の確立が重要です。母親学級などで、乳幼児期から食育の推進を図っていくべきであります。福祉保健局の所見を伺います。
 
答弁4
 ▼福祉保健局長
 食育の推進についてでありますが、乳幼児期において健全な食習慣を身につけていくことは、生涯にわたる健康づくりを進める上で極めて重要であると認識しております。
 都は、区市町村と連携し、このような食育に関する視点を取り入れて、今後、母親学級や乳幼児健診等における指導内容の一層の充実を図ってまいります。
 また、乳幼児期から、伝統的な食文化や地域の特性を生かした食生活と触れ合うことにより、豊かな人間性がはぐくまれるように、家庭だけではなく、保育所や子ども家庭支援センター等の地域のさまざまな機関における食育の推進を支援してまいります。
 

 
質問5
 次に、放課後の子どもの居場所づくりについて伺います。
 平成十六年度から、江戸川区のすくすくスクール、葛飾区のわくわくチャレンジなど、学校の校庭や教室等を子どもの居場所として開放する地域子ども教室推進事業がスタートしました。放課後や週末などの一定時間、子どもたちがスポーツや文化活動などを学校施設を利用して行い、また地域の大人たちが、ボランティアとして協力する仕組みになっております。
 従来の学童クラブは、小学校三年生までが対象であるため、行き場のない四年生以上の子どもは、家に閉じこもったり、テレビゲームに明け暮れるケースが多かったといいます。
 先日、江戸川区立葛西小学校を視察しましたが、日常の学校とは異なり、異学年の子どもたちが遊びを通して自由に交わり、豊かな表情を見せていたのが印象的でした。こうした地域と学校の連携による子どもたちの居場所づくり、遊び場づくりをさらに拡充する必要があります。都がコーディネーター役を果たして情報収集、情報提供などを行い、区市町村を支援すべきです。子どもたちの個性をはぐくみ、生き生きと育てる居場所づくりについて、所見を伺います。
 
答弁5
 ▼教育長
 子どもの居場所づくりについてでございますが、お話しの事業は、安全・安心な子どもの居場所を整備するために、国から委託を受けて実施している事業でございますが、都教育委員会としましては、区市町村教育委員会に対しまして、本年四月より三回にわたり事業の募集を行いまして、現在、江戸川区や葛飾区を初め二十七の区市町におきまして、二百二十九カ所で、延ベ百九万人の児童生徒の参加が見込まれているところでございます。
 今後とも、この事業の充実に向けまして、区市町村教育委員会と一層の連携協力を図りながら、事業の成果を発表する機会を設けますとともに、ホームページなどを活用しました情報提供を行うなど、子どもたちの居場所づくり事業の推進に努めてまいります。
 
■低髄液圧症候群
 
 低髄液圧症候群とは、交通事故、スポーツ、出産、手術などが原因で髄液が漏れることにより、さまざまな障害を引き起こす病と考えられています。症状は、頭痛、腰痛、目まい、耳鳴り、動悸、倦怠感、睡眠障害、うつ症状など幅広く、日常生活もままならない患者が、全国で二十万人から三十万人に上るといわれております。
 治療法は、脊髄硬膜からの髄液の漏れをとめることであり、最近では、本人の静脈血を、髄液が漏れ出している部分に注入して、その圧力で漏出を防ぐブラッドパッチという治療法が有効であるといわれています。実際に、ブラッドパッチ治療を施した結果、治療を受けた人の九五%が、完全治癒か症状が改善されたといいます。
 しかし、現在、低髄液圧症候群の診断、治療を行うことができる病院は、まだ限られております。このような病気の存在が一般的に知られていないために、患者の皆さんは、身体的症状による苦しみに加え、周囲の理解が得られず、精神的にも苦しんでいる人が数多く存在します。
 

 
質問1
 そこで、第一に、ブラッドパッチ療法など有効な治療法については、積極的に普及啓発を図るべきであります。また、こうした有効な治療については、早急に医療保険が適用されるよう、国に要望すべきであります。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 低髄液圧症候群についででありますが、交通事故等が原因となって脳脊髄液が漏れ、慢性的な頭痛、めまいなどのさまざまな症状を引き起こす、お話しの低髄液圧症候群は、近年、新しく提唱され始めた概念でありまして、その診断方法や治療方法は、いまだ未確立の領域であり、今後の評価を待つものであると認識しております。
 ブラッドパッチ療法等の普及啓発や保険適用に関する国への要望につきましては、今後、学術的な研究が進み、その成果を十分に踏まえて対応していく必要があると考えております。都としても、当面、この研究の進展状況や国の動向等について注視し、情報収集に努めてまいります。
 

 
質問2
 第二に、近い将来、保険適用が実現されればもちろん、それ以前でも、低髄液圧症候群の治療に、都立病院などは積極的に取り組むべきです。見解を伺います。
 
答弁2
 ▼病院経営本部長
 都立病院におきます低髄液圧症候群に対する取り組みについてお答えを申し上げます。
 現在、脳脊髄液の減少によりまして慢性的な頭痛やめまいなどの症状を呈します低髄液圧症候群に対しましては、脳神経外科などで治療を行っております。
 今後、ブラッドパッチ療法に健康保険制度が適用されます場合には、都立病院におきましても患者の症状に応じて適切に対応してまいります。
 
■都営地下鉄の駅空間の有効活用
 
質問1
 私は、女性専用車両を都営地下鉄に導入すべきであると、一年前の本会議で提案をしました。大変残念なことですが、電車の中の痴漢発生状況は、警視庁によりますと、平成十五年度千七百九十三件、平成十六年度の上半期でも千十二件であり、依然として減少しておりません。女性専用車両は全国的に要望が強く、埼京線や阪急、西鉄、さらに京阪、JR神戸線、大阪環状線でも広がりを見せております。
 交通局では、相互乗り入れをしている鉄道会社と話し合いを行った経緯もあり、都営地下鉄への女性専用車両の導入を改めて前向きに検討すべきであります。
 二点目は、地下鉄経営の健全化についてであります。
 大江戸線の全線開通から三年が経過し、沿線の開発やネットワーク効果により、都営地下鉄全体の乗客数は増加していますが、多額の資本費の負担を要するため、平成十五年度で百三十五億円に上る地下鉄事業の経常損失が計上されております。その赤字を一日も早く解消して、経営健全化を図り、都民が安心して利用できるようにしなければなりません。
 そこで、多くの人々が行き交う地下鉄駅の広い空間を、例えば小物販売、クイックマッサージ、ミニコンビニなど、多様な事業者に貸し出し、利用者へのサービス向上を図りつつ、局として一層の収益を上げるべきです。駅空間の有効活用にこれまで以上に知恵を絞り、店舗や広告事業を積極的に展開する必要があると思います。交通局長の収益向上に対する所見を伺います。
 
答弁1
 ▼交通局長
 都営地下鉄の駅空間の有効活用につきましてお答え申し上げます。
 交通局は、本年三月に策定いたしました経営計画に基づき、魅力ある駅空間の創出と増収に積極的に取り組んでおります。具体的には、多様なお客様のニーズ、駅の立地特性、収益性等を考慮し、今後三年間に三十店舗の新規開店を図る予定でございます。
 また、金融機関のATMやITを活用した通信設備の設置など、利便性の高いサービスを提供してまいります。
 今後とも、広告事業も含め、駅空間の持つ可能性をさらに生かすよう努めてまいります。
 なお、都営地下鉄の女性専用列車の導入についてでございますが、改めてご要望があったと受けとめさせていただきたいと思います。
 
■葛飾の都市整備
 
 最後に、地元葛飾区の問題について伺います。
 葛飾では、介護予防の観点から、高齢者や運動になじみのない人も含めて、いつでもだれでも気軽に利用できる健康運動公園、仮称フィットネス・パークを計画しております。水元体育館と温水プールの改築を、水元中央公園の整備とあわせて実施する予定です。
 そこで、都においては、都立水元高校が廃校となった場合には、その跡地を区に譲渡し、地元還元施設として有効に活用できる配慮を求めたいと思います。
 

 
質問1
 京成高砂駅付近のあかずの踏切対策について伺います。
 この問題では何度も質疑をしてまいりました。このたび都市整備局は、二十カ所の鉄道立体化の検討対象区間を発表し、この踏切も対象区間に加えられました。これを歓迎いたします。
 この踏切は今後、成田新高速鉄道が運用開始されると、さらに遮断時間がふえ、問題があると指摘されております。現在、地元では、高砂駅付近の鉄道立体化事業に合わせて駅周辺の再開発委員会を発足させ、検討会を重ねているところですが、今後は立体化を含めた踏切対策を早急に検討すべきです。所見をお伺いします。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 京成高砂駅付近の踏切対策についてでございますが、同駅付近には二カ所の踏切があり、いずれもピーク時間帯、一時間の遮断時間が四十分以上の、いわゆるボトルネック踏切となっております。
 都といたしましても、平成十三年に地元区が設置した勉強会に参画し、踏切対策について検討を進めております。本年九月に地元区が公表した中間のまとめでは、地域のまちづくりや、鉄道を立体化した場合の高砂車庫の取り扱い、さらには事業費などの課題があるとしております。
 今後は、本勉強会においてこれらの検討を深めるとともに、早期に実施可能な対策についても並行して検討を行う予定でございます。
 

 
質問2
 高砂駅近くの高砂団地は、今から四十年前に建設され、現在、千二百世帯の人々が居住する都営住宅です。しかし、エレべーターが一基もなく、高齢者の方々は階段の昇降に日々大変に苦労し、建てかえをひたすら待ち望んでおります。
 そこで、高砂団地の建てかえ計画の進捗状況をお聞きし、質問を終わります。
 
答弁2
 ▼都市整備局長
 都営高砂団地の建てかえについてでございますが、当団地は、昭和三十年代を中心に建設された住宅であり、一団地の住宅施設の都市計画が定められております。
 都営住宅の建てかえは、住宅を更新するだけではなく、地域の活性化や防災性の向上、住環境の整備に資することが重要でございます。この団地につきましては、地域の特性に合わせて都市計画を変更する必要があることなどから、昨年度、測量を行い、現在、地元区と調整しながら検討を行っております。
 

戻る