相続税の軽減・地方税化を図れ 東大田無農場跡地に防災公園を |
坂口 こうじ(民主党) |
■地方財政の自立改革 |
質問1
周知のとおり、地方分権一括法成立、施行を大きな分水嶺として、地方自治は今、歴史的な転換点に立っています。
そこで初めに、地方財政の自立改革に関連し、小泉内閣の三位一体改革の内容評価と、その手法について所見を伺います。
今月十四日、首相官邸で、国と地方の税財政を見直すいわゆる三位一体改革について、関係閣僚と地方六団体の代表が話し合う協議会の初会合が開かれました。新聞各紙報道によれば、みずからまとめた総額三・二兆円の補助金削減案の実行を求める地方側と、これに抵抗する省庁側が早くも激突したと伝えられております。
そこで、この国民にとって何ともわかりにくい、閣僚と代表のやりとりの本質は何なのか、国の施策及び予算に対する東京都の提案要求とも大きな乖離がある三位一体改革の中身の真の評価と、このような政治プロセスについてどのような所見をお持ちか、知事にお伺いいたします。
答弁1
▼知事
いわゆる国の三位一体改革案についてでありますが、質問の中にも、みずからまとめた三兆円云々という言葉がありましたけれども、実はいってみれば、これは総務省が持って回って、義務教育の国庫負担というものを剥奪しようという案がほとんどでありまして、いってみると、地方自治体が合議してでき上がった案とはとてもいいがたい、一種のあてがいぶちであります。
いずれにしろ、今まで何度か会合がありましたが、肝心の交付税制をどうするか、あるいは税財源の移譲をどこまでするかというふうな問題は、ほとんどノータッチでありまして、国は、国庫補助負担金を何の分野で減らすか、ひとつ地方で考えろということで、全国知事会が延々続いたわけでありますけれども、しかし、それなりにプラスアルファを添えて、六つの地方団体の代表の案をまとめてのこの間の合議でも、幾つか提案がありますと、それに対して関係の各省が全部反対をするということで、全く混乱のための混乱であって、そもそも、ああいうていたらくになることは自明のことでありましたが、ならば一体、最初に何のために地方に案を求めたかとしかいいようのない、ていたらくでありました。
もっとも、全国知事会などの地方団体も、国の丸投げをある意味では大歓迎しまして、全国知事会の議論の中にも、千載一遇、千載一遇という言葉が余りにも数多く出てくるので辟易いたしましたが、ともかく、とれるものはこの場はとろうという基本姿勢が露骨でありまして、特に義務教育をどうするかという国家の基本事業というものを本気で考えるという討論は一向にありませんでした。
国も地方も、何のための改革かという本質的な命題を置き去りにしたまま、国庫補助負担金の議論に終始しようとしている、ていたらくだと思います。
肝心の税源移譲の実現や交付税は、もう既に百二十兆の赤字を来している、この破綻した税制の改革については、いまだに本格的な検討に一向に入っていないのが実情でありまして、このままでは、我が国の将来はとても立ち行かないのではないかという懸念が強くいたします。
予想どおり、三位一体改革なるものは、どうも空中分解の危機に瀕しているといわざるを得ないという認識が、今のところ、その認識を抱いております。
質問2
税源移譲と国庫補助金削減などの抜本的見直しについて所見を伺います。
東京都は、ことし五月、緊急提案として、地方分権改革に関する東京都の基本的見解を明らかにしています。私は、この考えを強く支持するものでありますが、この中では、基礎的サービス以外の国庫補助負担金の全廃、基幹税である所得税、消費税による税源移譲、新たな財政調整制度の導入など、地方分権のあるべき方向について、東京都として極めて骨太の方向を提案したと高く評価しています。
この内容は、わかりやすくいうならば、税源の半分は納税する地域住民に、他の半分は全国民に還元するという公平な一つの基準を示したものであり、地方財政の自立改革の理念にかなったものであると考えます。
したがって、これらがさらなる東京と地方の格差の増幅を招くなどという批判は全く当たらないと考えますが、所見を伺います。
あわせて、この際、税源移譲の骨太シミュレーションの最新内容と効果について伺います。
周知のとおり、租税収入の配分において、国と地方との比率はおおむね三対二であるのに対し、最終支出では国と地方の比率が二対三と逆転しており、その間に大きな乖離が存在しているのが実情であります。
地方自治体の自主、自立を進めるための避けて通れない最優先の課題として、基幹税である所得税、消費税の税源移譲を行うべきであり、このことは、都議会や東京都も再三政府に提案要求し、世論の大きな流れはできてきた感はあります。
そこで、再度確認いたしますが、東京都が政府の骨太の方針二〇〇四に向けた緊急提言で示した東京都版骨太税源移譲のシミュレーションの最新の結果、六・七兆円の根拠と、それが東京都、区市町村等にもたらす租税還元効果について財務局長の見解を伺います。
答弁2
▼財務局長
本年五月に発表しました地方分権改革に関する東京都の基本的見解においてお示ししました緊急提言では、税源移譲について、本来、抜本的な税源配分の見直しが必要であるが、まず国と地方の税源と歳出の逆転現象を解消するため、当面、国と地方の税源配分の比率を一対一とすることとし、所要額を六・七兆円としております。
また、この税源移譲に当たっては、基幹税で行い、偏在性が少なく、税収の安定した税目で行うべきことから、所得税の一部を一〇%比例税率化により住民税へ移譲するとともに、消費税の一部を地方消費税へ移譲することが適当であるとしております。
この方法により実施すれば、大都市に税源を集中させず、税収の全国的なバランスにも配慮したものとすることが可能となり、また、東京都及び都内区市町村に対する税源移譲額を単純に試算いたしますと、全体でおおむね〇・八兆円程度と見込まれるところでございます。
こうした税源移譲とともに、この提言の中に触れております国庫補助負担金や地方交付税の改革を行うことが、地方の財政基盤の確立につながっていくものと考えております。
質問3
国税である相続税の減税と地方税化についての論議の成果について伺います。
東京を含む首都圏で、二十一世紀の都市再生や緑の再生戦略を考える際に避けて通れないもう一つの課題に相続税の問題があります。
地方分権の時代、それぞれの地域が成熟させた土地など、地域の財産を国が没収する相続税ほど時代錯誤な税はありません。
ちなみに、平成十四年度東京国税局管内における納税額は五千八百九億円、そのうち千五百七十四億円、およそ二七・一%が物納金額となっています。このような相続税は軽減するとともに、金納の場合は、そのすべてか二分の一を自治体に移譲すべきであります。また、物納の財産は、無償で自治体に活用を任せるべきであります。
このことにより、私たちの都市を、緑の保全に歯どめがかからない現下のデススパイラルから、緑の創造が可能なクリエーティブスパイラルに切りかえることができ、公園や福祉施設、例えば特養やグループホームの整備など、私たちが抱えている課題を一気に解決し、健全な都市再生の軌道を再構築する可能性が開けると考えますが、主税局長の所見を伺います。
答弁3
▼主税局長
相続税についてでございますが、地価の高い東京におきまして、相続税の負担が、中小企業の事業承継や地域のまちづくり、緑地の保全の妨げとなっており、都は国に対し、その軽減を強く求めております。
また、地方税化につきましては、東京都税制調査会は、道路、下水道など、地域の行政サービスが地価の形成に大きく寄与していることから、中長期的には、土地等に対する相続税を自治体の税源とすることも検討すべきとしてございます。
相続税は、税収の偏在が大きく、地方税化する場合には、地方団体間の配分方法、新たな課税の仕組みづくりなど課題も多くございますが、都としても、地方主権の視点に立ち、相続税のあり方についてさらに検討を深めてまいります。
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■東大農場の緑の保全と創造 |
質問1
まず初めに、東大農場約二十二・五ヘクタールの処分の経緯と今後のスケジュールについて伺います。
昨年第二回定例会で提出した文書質問、東大農場の移転と都立仮称東大メモリアル公園の設置についてに対する回答を踏まえながら質問いたします。
最初に、ことし四月から国立大学法人法により独立行政法人となった東京大学の田無農場処分の経緯と、今後のキャンパス整備計画、その後の千葉県検見川運動場への移転計画、タイムスケジュールについて、文部科学省及び東京大学の最新動向や情報をどのように把握しているか、お伺いします。
答弁1
▼総務局長
最近の動向についてでございますが、東京大学は、昨年三月の評議会におきまして、西東京市にございます東大農場を千葉県の検見川キャンパスに移転し、現在の土地を処分することを決定いたしました。
しかしながら、具体的な移転時期、跡地の処分方法等につきましては、本年四月に策定されました平成二十一年度までの東京大学中期目標及び中期計画の中に記述がございませんで、二十二年度以降につきましても、東京大学本部からは、現段階において未定であると聞いております。
質問2
地元西東京市の対応の現状と、東京都の今後の取り組みについて伺います。
地元では、ことし四月十一日に、西東京市市民会館において、東大農学部前センター長の武内和彦教授の記念講演とともに、宮崎啓子さんを代表とする東大農場のみどりを残す市民の会の設立総会が開催され、東大農場の移転後も、現状の貴重な緑の農地を残し、生かしていくため、あらゆる市民、団体と手を携えていくことが確認されました。
また、このような市民運動を受けて、市議会でも活発な議論が展開されていると聞いているところであります。
そこで伺いますが、地元西東京市や広域行政圏協議会における基本的な方針の検討状況と、東京都としての今後の主体的な取り組みについて、総務局長の所見を伺います。
答弁2
▼総務局長
地元市や都の対応についてでございますが、西東京市では、基本計画の中で、農場の移転問題への対応を主要施策に位置づけますとともに、現在、庁内におきまして、移転跡地の取得の可能性や利活用の方法について検討を進めていると聞いております。
また、地元五市で構成いたします多摩北部都市広域行政圏協議会での検討は、現在のところ行われていないとのことでございます。
都といたしましては、今後とも、必要な情報収集に努め、関係機関の動向を十分見定めていきたいと考えております。
質問3
東大農場の用途地域指定の見直し、いわゆるダウンゾーニングについて伺います。
平成三年四月に、旧田無市において、当時の東京大学先端科学技術センター教授、伊藤滋先生を委員長に策定された二〇二〇年田無都市ビジョン構想によると、東大農場周辺地区は、土地利用の現況を考慮すると、土地区画整理の導入による整備を推進していくことが望ましく、地区の北部はスポーツを主体とした総合公園としての整備を図っていくことが重要であるとしています。ちなみに、この北部ゾーン約十二ヘクタールの用途地域は、建ぺい率三〇、容積率六〇の第一種低層住居専用地域とされています。
他方、同構想は、南部においては、研究施設の整備を図るとともに、周辺施設とあわせた良好な住宅の整備を図っていくことが重要であるとしています。ちなみに、この南部ゾーン約十・五ヘクタールの用途地域は、準工業地域並みの、建ぺい率六〇、容積率二〇〇の第一種中高層住居専用地域とされています。これは、当時、東大の理工学部などを誘致したいという田無市の強い思いがあったからにほかなりません。しかし、現状は農場のままであります。
そこで伺いますが、過去を振り返り、現在を見詰め、未来に向けて緑の保全や新たな創造を考えるとき、当面、南部ゾーンの用途地域を、北部ゾーンの用途地域と同じ三〇、六〇の第一種低層住居専用地域とすべきと考えますがどうか。
加えて、地元市の意向や東大の意向が調整されるならば、このようないわゆるダウンゾーニングができると考えますが、都市整備局長の所見を伺います。
答弁3
▼都市整備局長
東大農場の用途地域の見直しについてでございますが、ご指摘の南部ゾーンには大学施設が立地しており、第一種中高層住居専用地域が指定されております。
跡地の利用計画につきましては、地元市や東大において検討を行うこととなりますが、今後、都といたしましても、都市づくりの観点から土地利用のあり方を検討しつつ、これら関係者の動向を十分見定めてまいります。
お話の用途地域の見直しにつきましては、これらの検討状況などを踏まえ、適切に対応してまいります。
質問4
防災公園街区整備事業による緑の保全と創造について伺います。
九年前に発生した阪神・淡路大震災の教訓を受け、都市再生機構、前都市公団は、平成十一年度から、地方公共団体の要請を受けて、国土交通省の支援のもとに防災公園街区整備事業を開始しており、今日までの事業取得実績は十三カ所、全部で百四十ヘクタール、うち防災公園八十三・一ヘクタール、市街地五十六・九ヘクタールに上っています。
身近なところでは、杉並区桃井三丁目の日産自動車工場跡地の九・一ヘクタール、豊島区上池袋一丁目の癌研究会跡地の一・四ヘクタール、千葉市蘇我臨海の川崎製鉄工場跡地八十七・五ヘクタールなどがあります。
そこで伺いますが、将来の東大農場の移転、六年から十年後ということになりますが、跡地の利用については、二十一世紀における日本の都市の最大テーマである、災害に強く、人間と自然とが共生できるという視点、また、緑豊かな都市空間を創造するという理念と目標を明らかにしながら、西東京市や東久留米市を含む広域行政圏の防災公園街区整備事業、仮称東大メモリアル公園として、東京都としても主体的な検討を開始すべきと考えますがどうか、局長の所見を伺います。
答弁4
▼都市整備局長
防災公園街区整備事業について、都も主体的に検討を開始すべきとのことでございますが、東大農場は、教育研究のみならず、災害時の避難場所や自然との触れ合いの場など、緑地として広く市民に開放されております。
農場が移転した場合は、ご提案の防災公園街区整備事業も緑地を保全する手法の一つとして考えられますが、農場移転のスケジュールや跡地利用の方針が定まっていない状況にあります。
防災公園街区整備事業などの事業手法につきましては、今後の跡地利用に関する検討状況を踏まえ、関係者間で協議すべき課題であると認識いたしております。
最後に、国連大学の有効活用について、提案を含め申し上げます。
九月二十一日の本会議の知事発言において、緒方貞子さんが名誉都民に選ばれました。まことに喜ばしいことであります。周知のとおり、緒方さんは、ユニセフ執行理事会議長や国連難民高等弁務官を歴任し、国際的な人道支援活動に尽力された、日本の知性と心を代表する行動する国際人であります。
二十一世紀を迎えた今、このような緒方さんの生き方に学び、国際化、情報化が急速に進む中、みずからの人生の本舞台をNGO、JICA、国連活動などを初めとする国際貢献に求める人々は、私たちの想像をはるかに超え、確実に増大しています。
そこで、提案させていただきますが、貴重な都有地を提供し、青山に誘致した、世界にたった一つの国連大学を東京都としても積極的に活用し、NGOや都立大学との教育連携、アジア都市ネットワーク会議の共催、未来に向けてのAU、アジア連合構想など、国際的な教育、研究や人材育成、国際貢献に積極的に活用すべきと考えます。
二十一世紀における都政の発展のためにも、このような国際機関の有効な活用について、今後真剣に検討されますことを提言させていただき、私の質問を終わります。
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