平成16年第3回定例会 一般質問

都教委による都議への教員の
個人情報提供の責任を問う

伊沢 けい子(無所属(市民の党))
■都における個人情報の管理
 
 私は、都の教育行政において、個人情報が条例に従って公正に取り扱われることによって、生徒、保護者、教員、そして都民全体のプライバシーが尊重され、公正な教育行政が行われるよう求める立場から質問いたします。
 

 
 生活文化局が出している情報公開事務の手引には、個人情報の取り扱いについてこう書いてあります。個人情報に関する情報は、一度開示されると、当該個人に対して回復しがたい損害を与えることがある、個人のプライバシーに関する情報は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から最大限に尊重するものとする、と書いてあります。
 東京都の個人保護条例の改定が十二月議会でも行われようとしている中で、東京都の行政の職員及び都議会議員自身の個人情報への理解と厳正なる運用がされなければ、都民の信頼を得ることはできません。
 しかし、大変憂慮すべきことに、現実には条例に明らかに違反することが起こっております。
 平成十一年、当時、足立十六中で社会科教員として勤めていた増田都子教諭の個人情報の載った処分説明書、発令通知書、服務事故報告書及び研修所での報告書が、土屋都議、古賀都議、田代都議に教育庁から情報提供され、これらの書類が全くそのままで、全開示の形で、翌平成十二年十一月十日に三都議によって著された著書に掲載され、不特定多数の人たちに個人情報が流れることになり、増田教諭は、プライバシーの侵害、そしてそのことによる精神的被害を理由として、都教委を相手に裁判を起こしています。
 そこで、生活文化局長にお尋ねします。
 
質問1
 都教委は、個人情報を三都議に提供したのは、個人情報第十条二項六号の目的外提供に相当するといっています。そして、情報提供される相手先のうち、東京都議会及び東京都公安委員会があるので、これによって提供したそうです。
 そこでお聞きしますが、東京都議会と書いてあるのは、合議体としての都議会に加えて、都議会議員自身も含まれるのでしょうか。
 もしそうだとすれば、ここに百二十七人いる都議個人がそれぞれ実施機関に個人情報を求めれば、都の情報公開条例及び個人保護条例で禁止されている個人情報を、実施機関の自由裁量で幾らでも都議個人に提供できることになります。すなわち、実施機関は、都の条例を破る自由裁量があるのでしょうか。
 
答弁1
 ▼生活文化局長
 個人情報保護条例第十条第二項第六号の実施機関等に都議会議員個人が含まれるかについてでございますが、この件は現在、裁判で係争中でございますけれども、都議会の議員については実施機関等に必ずしも含まれないものではないと解しております。
 

 
質問2
 そもそも、今回の個人情報の開示は、情報公開条例の中の中核をなす公文書開示制度ではなく、情報公開条例第三章三十二条の情報提供という考えに基づいて行われたと都教委はいっています。しかし、この情報提供という考え方は、報道機関や都民に、都政に関する情報を公にすることを予定しているのであって、都条例で禁止している個人情報を、実施機関が、都議個人に自由に提供できる根拠になるのでしょうか。
 
答弁2
 ▼生活文化局長
 情報公開条例に基づく情報提供として都議会議員に個人情報を流すことが許されるかについてでございますが、情報公開条例における情報提供は事務事業を円滑に執行するために、自主的に、あるいは都民からの求めに応じて必要な資料等を提供し、情報を公にするものでございます。しかるに、個人情報はみだりに公にされるべきものではないことから、既に公になっているなどの例外的な場合を除き、提供されることはございません。
 また、個人情報保護条例第十条第二項に規定する六項目の例外事項に該当する場合は、目的外利用・提供ができるものでございます。
 

 
質問3
 これまでに、実施機関が、処分説明書、発令通知書、服務事故報告書、研修所での報告書と同様の個人情報を都議会に渡したような例を、生活文化局では過去に把握していますか。
 
答弁3
 ▼生活文化局長
 お尋ねの四文書と同様の個人情報を都議会に渡したり、その情報を都議会議員が著書に掲載しているようなことを把握しているかについてでございますが、そのような事例については聞いておりません。
 
 

 
 わかりやすくいいますと、教育庁は情報公開条例、そして個人保護条例に関して超法規的な存在になっているのです。土屋都議たちに全開示で提供された増田教諭の個人情報は、昨日、私が教育庁に要求しますと、やはり全開示の形で、公文書開示制度も経ないで出てくるのです。つまり、ここの百二十七人のうち、皆さんがそれを開示すれば、増田教諭の情報は今でも全開示で、何も墨塗りなしで出てくるというわけです。ということは、これは個人情報漏えいが日常的に教育庁によって行われている動かぬ証拠だと私は思います。
 そして、第三者の都民、そして本人にも開示されない個人情報が都議には出される。そして、今度はもらった側の問題です。こうして出された情報を利用して行われたのが、本などで個人情報を公開することによる三都議が行った人権侵害です。これは本当におかしいんじゃないでしょうか。
 

 
 昨年十二月十五日に都議会議事堂第一会議室にて、先ほどの三都議の主催で、過激性教育を許さない都民集会と題する集会が開かれました。これは、マスコミも含めてだれでも参加できる性格の集会でした。そこで参加者に配られていた資料の中に、七生養護学校の教職員情報誌が三枚入っておりました。この情報の中には、特定の教職員の名前が入っていました。
 私は、これは個人情報にかかわるものなので、一体どういう経路でこの情報が主催者に渡ったのか、昨日、教育庁指導部の職員を呼んで確認しました。そうしたら、これは、昨年六月中旬に七生養護学校から押収した資料を、昨年六月三十日に、現在、指導部の副参事や指導主事である薄井氏、小林氏、半澤氏三名が一緒に土屋都議に渡したとのことでした。
 そこで、私は、これは個人情報ではないですかと昨日お聞きしました。生活文化局に確認したところ、これは個人情報だとはっきりといわれました。しかし、驚いたことに、土屋都議に情報を提供したと答えた薄井氏も同席したにもかかわらず、これは個人情報かどうかわからないという結論だったのです。また、巽指導企画課長は、私は個人情報ではないと思うがという感じでした。つまり、昨年十二月に集会で配られた資料が個人情報かどうかについて私が尋ねているのに、個人情報かどうか調べますから、あしたまで待ってくださいときのういわれたんです。
 つまり、情報提供した教育庁の職員が、情報公開条例でみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならないとうたわれている個人情報が、教育の職員の手によって、個人情報であるかどうかもわからないままに、昨年、土屋都議に渡され、それが十二月の集会で不特定多数の人に配られたのです。これが教育庁の情報提供の実態です。要するに個人情報が何かということも判断できない職員たちが、自由裁量でもって情報を都議に渡すことができるわけです。
 これは、情報を公開された七生養護学校の当事者への明らかなる人権侵害です。これは、平成十一年に増田教諭に対して行われたことも同様です。個人情報が情報公開条例第三十二条、情報提供、そして個人保護条例の目的外利用に当たるから個人情報を開示してよいのだと勝手に解釈し、自由裁量を行使して三都議に個人情報を開示したのです。そして、三都議たちによって、この個人情報が本にまでなって、不特定多数の人の目に触れることになったのです。このことの当事者への損害ははかり知れないと同時に、都民全体の都政への信頼を失うものです。
 

 
質問4
 こんな実態について、横山教育長、あなたはどう責任をとりますか。この法令違反の責任をどうとるのでしょうか。
 ことし、平成十六年七月十六日付で、横山教育長名で、都立学校長あてに、教職員の服務の厳正についてという通知が出されていますが、その中に、法令の遵守と個人情報にかかわる公文書などの管理について、改めて学校内の服務規律について点検するとともに、徹底した指導を行っていただきたいとあります。まず都庁内の職員について、みずからの個人情報にかかわる公文書などの管理について指導徹底してからでなければ、学校長に服務規律の指導など到底できないはずです。まずは教育庁内の職員たちに、個人情報にかかわる公文書などの管理について一から研修していただきたいと思いますが、いかがですか。
 また、都教委が教職員の職務に伴う非行の処分量を定めていますが、この中では秘密の漏えいは免職や停職の重い処分の対象となっています。当事者たちへの謝罪と、二度とこのようなことが起きないように厳正なる処分をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
 
質問5
 次に、知事に伺います。こうした都民の都政への信頼を根本から揺るがすようなことが教育庁内で起こっていますが、横山教育長を任命した知事としてどう対処するのでしょうか、お答えください。
 
質問6
 最後に、情報管理についてお尋ねします。
 増田教諭の処分説明書外三点の個人情報についてですが、研修状況報告書については、当時指導企画課長、現在指導部部長の近藤精一氏が土屋都議にファクスにて提供したことが明らかになっています。ちなみに、この研修状況報告書は増田教諭の病歴まで入った完全な個人情報です。しかし、処分説明書、発令通知書、事故報告書については、教育庁の中のだれが都議に渡したのか、本人が教育庁法務監察課に申し立てまで二○○二年に行っているにもかかわらず、いまだに明らかになっていません。
 これらの三点の書類は、教育庁人事部が管理していますが、裁判の準備書面の中には、人事部が提供した増田教諭の個人情報については古いことなので、だれが提供したかわからないと答えております。これで教育庁内の情報管理がきちんと行われているといえるのでしょうか。お答えください。
 また、これらの人事部の情報が、いつ、だれの手によって都議たちに渡ったのかを再調査して発表することを約束していただけますでしょうか。
 関係局の答弁を求め、再質問を留保いたしまして、質問を終わります。
 
答弁4,5,6
 ▼教育長
 お話の件は、東京都を被告として民事訴訟が提起をされております。現在、係争中の案件でございますが、質問の点については関連しますので、包括的に答弁をさせていただきます。
 まず、ご指摘の教員にかかわる情報の都議会議員の提供の件でございますが、この件にかかわります議員への情報提供は、東京都情報公開条例の開示請求に基づく開示ではございませんで、個人情報保護条例第十条第二項第六号によりまして、情報をチェックする立場にございます都議会議員に、行政機関がみずからの裁量により、保有する情報を提供する情報提供として都教委が行ったものでございます。
 なお、この本件情報の提供は、この提供した当時、本件教員の処分にかかわりまして、実名で既に新聞報道がなされ、都議会のみならず、区議会、国会でも取り上げられている状況がございまして、そういった状況を踏まえまして、提供することが法令上相当であると判断したものでございます。
 次に、昨年十二月に都議会議事堂会議室で開催されました過激性教育を許さない都民集会で配布されました七生養護学校の資料についてでございますが、この資料は、当時の校内性教育検討委員会が作成した情報誌と性教育に関する指導案でございます。お話のように、これらの資料には個人名が確かに掲載されておりますが、東京都情報公開条例第七条第二号の除外情報に該当しますことから、非開示とすべき個人情報ではないと判断したものでございます。
 なお、教育庁職員が議員に対し、確認した後、返答したいと対応したことにつきましては、これは組織的な対応として妥当な判断であると考えております。
 
■再質問
 
質問1
 今の答弁をお聞きいただきまして、恐らくいかに自由裁量でもって都議に渡っているのかということが、逆にわかったのではないかと思います。
 それで、日常的に都教委では、都議の権力を使えば個人情報が流れる、手に入れることができる。しかも、全面公開の個人情報、これは条例で禁止されている情報を得ることができるわけです。こういうことが許されるとすれば、都議を通じて幾らでも個人情報が都内では得られてそれが場合によってはいかようにも流れていくという、都民にとっては本当に聞くも恐ろしい話が通用するということです。
 それから、先ほどの国会、都議会で増田教諭の情報が流れていたから扱っていいなどという、そんな理屈は全く通用しないと思います。
 生活文化局にお尋ねしますけれども、このように都議を通じて日常的に個人情報全面の公開の情報が流れることができる、こういう体制についていかにお考えか、お聞きしたいと思います。
 
答弁1
 ▼生活文化局長
 東京都における情報管理については、適正に管理されているものと考えております。
 

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