都市の農地は都民の貴重な財産 災害時の歯科医療活動は不可欠 |
鈴木 一光(自民党) |
■都市農業の育成 |
質問に入る前に、皆様におわびを申し上げます。
さきの第二回定例会における環境・建設委員会の開催中、私が体調を崩したことによりまして大変に皆様にご迷惑をおかけしましたことを、心からおわびを申し上げる次第でございます。今後は、健康に十分留意して、都政の進展のために努めてまいりますので、復活したニュー鈴木一光にご期待いただきたいと存じます。(拍手)
質問1
ことしは、まさに猛暑、酷暑という言葉がぴったりするような暑い夏でありました。東京では、最高気温が三十度を超える真夏日が六十九日となりましたが、これは、年平均日数でいうと、鹿児島県と並ぶ数字であり、観測史上の記録を更新することになりました。さらに、夜間の気温が三十度を下回らない超熱帯夜の日まで出現しました。ヒートアイランド現象の深刻さをつくづく実感した次第であります。
屋上緑化や壁面緑化などへの取り組みは、都市化の進んだ東京にあって、極めて重要な視点であります。
一方、都市にある農地に目を転ずると、ヒートアイランド現象の緩和効果を初め、さまざまな機能を担っています。
都民の農業に対する意識調査によりますと、東京に農業や農地を残したいと思う人が何と九四%にも達しているのであります。その理由としては、自然環境の保全や災害時の避難場所となること、さらに教育上の観点を挙げる人が多数います。このほかにも、景観や安らぎなど多くの面で農地は評価されており、まさに都市の農地は都民にとってかけがえのない貴重な財産になっているわけであります。
しかし、この東京の農地は急速に減少を続けています。平成十五年までのたった五年間で、約一〇%、八百八十ヘクタールもが失われている危機的な状況であります。何としてもこの貴重な農地の減少に歯どめをかけなければなりません。農業者を支援し、都市農業の振興を図ることは、お金のかからない、大変に効果的なヒートアイランド対策でもあると考えます。
都としての都市農業振興についての基本的考え方について伺います。
答弁1
▼産業労働局長
都市農業振興についての基本的な考え方でございますが、都市の農業は、市街地の中の比較的狭い農地で営まれておりますが、一方で、身近に消費者が多数存在するというメリットがございます。
このため、付加価値の高い農産物の生産、地元での販売など、立地条件を生かした流通の取り組み、また、農産物の安全・安心の追求や環境に配慮した農業を推進することが重要でございます。
さらに、後継者や新たな担い手を確保し、育成する方策の充実が必要と考えております。
質問2
ところで、農業生産は、天候の影響を大きく受けるほか、丹精を込めて生産した農産物も、輸入農産物の増加等に押され、思うような価格で販売できないことも多いようであります。一家を挙げて一年じゅう農業に従事しても、一家の所得が一人のサラリーマンの所得にも満たない経営が多いとの調査結果が出ています。農業経営が不安定で収益性が高くないことが深刻な後継者難の一因ではないでしょうか。
昨年度実施された農林水産関係の補助事業に関する包括外部監査によると、都市農業支援の観点から、全国一律ではなく、東京農業の特徴を見据えた補助事業へのシフトという意見が出されています。これを受け、都では、現在実施中の活力ある農業経営育成事業を積極的に見直すなど、振興施策の改革に取り組んでいると伺っています。
今後、都市農業振興のため、農業を支援する視点から、どのような事業を検討しているのか、お伺いをいたします。
答弁2
▼産業労働局長
都市農業振興のための事業の見直しについてでございますが、都市農業の活力を引き出し、持続性を保つため、収益の拡大や環境との調和を重視した農業に取り組む意欲的な担い手や後継者に対して、支援を重点化してまいります。
具体的には、新技術の導入による効率化を図ること、農産物の加工による高付加価値化を進めること、低農薬型ハウスや雨水利用型かん水施設など、環境に配慮した取り組みを行うことなどへの支援について検討してまいります。
私の地元を含む江東三区では、コマツナの生産が熱心に行われており、都の生産量は全国一と聞いています。しかし、農地の拡大は不可能な状況であり、これからは、栽培施設に資本を投入して、収穫量の増加や品質向上を図る必要があります。
一方、こうした施設化に伴い、例えば水道使用料の増加に伴うコストアップ等が経営を圧迫することにもなります。今後、農家経営の健全化の視点から、きめ細かなサポートを強くお願いをしておきたいと思います。
|
■災害時歯科医療救護活動 |
質問1
東南海地震や南関東直下型地震の発生が危惧されている中、今月一日には浅間山が噴火するなど、都民の災害に対する関心も高まっています。
こうした中、特に、災害時の都民の生命や健康にかかわる医療救護活動については、万全を期す必要があります。災害時には、一般の医療救護活動に加え、歯科医療救護活動も、被災住民の健康保持や避難生活を円滑に過ごす上で必要不可欠のものであります。医療救護活動は、一般の医療に目を向けがちでありますが、多数の傷病者が一度に発生したり、歯科診療所が被災するなど、地域での歯科診療に対応できなくなった場合には、都が迅速かつ適切な歯科治療や応急処置など、歯科診療活動を行う体制を整備する必要があります。
知事は、災害時の医療救護活動についてどのような認識をお持ちか、お伺いをしたいと思います。
答弁1
▼知事
災害時の救護活動における歯科医師さんの活用というものは、一種の盲点だと思いましたが、地震など大規模災害の発生に備え、想定される被害に対応するには、応急活動体制の万全の整備に向けて準備を尽くすことが重要だと心得ております。ご指摘の歯科医療の救護活動もその一つであるとまさに思います。
九月一日の総合防災訓練では、私は目にいたしませんでしたが、既に会場において、被災による歯の損傷への対応処置や、ご指摘の新しい機械を使ったデータの採取、高齢者の入れ歯の紛失への対応を含む実践的な訓練が、東京都歯科医師会などの関係機関と連携しながら行われたそうであります。
今後とも、こうしたさまざまな訓練を積み重ね、被災時の歯科医療を初めとする医療救護体制の整備に万全を期すつもりでございます。
質問2
また、大規模な災害が発生したときには、大変残念なことでありますが、都内の広範囲で同時に多数の犠牲者が発生し、また、身元不明の遺体も多く発生することが予測されます。この身元確認作業は、災害時の歯科医師の重要な役割の一つでもあります。
先日行われた都の総合防災訓練における身元確認訓練の中で、現場で簡便に歯形の撮影ができるデジタルエックス線画像解析装置を活用していました。災害時に発生した多数の身元不明遺体は、一定期間内に火葬するため、身元確認作業は迅速に、正確に、詳細に実施することが求められることから、こういう器材を積極的に取り入れるとともに、平常時からこのような機材の取り扱いについて、研修、訓練等を通じ、スキルアップを図る必要があります。
そこで、都におけるこれまでの身元確認に関する研修会の取り組みと今後の方向についてお伺いをいたします。
答弁2
▼福祉保健局長
災害時の身元確認についてでありますが、都は、災害時の身元確認の一手法として、歯形に着目し、東京都歯科医師会と連携のもと、身元確認班を編成して、平成九年から研修会において知識、技術の普及を図ってまいりました。
さらに、遺体の歯形確認の記録方法を標準化した研修テキストを平成十一年に新たに作成し、これに基づき、実習を中心とした研修や実践的な訓練も実施しております。
今後とも、より一層正確かつ迅速な確認作業ができるよう、ご指摘の器材の活用を含め、技術向上に努めてまいります。
|
■特別支援教育推進計画 |
本年の七月十四日に、東京都の心身障害教育における新たな改革に向けた東京都特別支援教育推進計画概要案が発表されました。この計画概要案に示されている内容のうち、都立盲・ろう・養護学校の再編整備について何点か伺います。
質問1
今回の概要案については、長期計画部分と平成十九年度までの第一次実施計画案を示していますが、長期計画と第一次実施計画の関係及びその後の展開について、基本的な考えをお伺いをいたします。
答弁1
▼教育長
東京都特別支援教育推進計画におきます長期計画と第一次実施計画の関係についてですが、長期計画につきましては、現在の心身障害教育が抱えますさまざまな課題を解決しますとともに、今後のあるべき施策の方向を明らかにするものでございまして、計画期間を平成十六年度から二十五年度までの十年間としております。
また、その実現に向けた具体的な計画として、三次に分けて実施計画を策定いたしてまいりますが、今回の第一次実施計画は、当面、平成十六年度から十九年度までを計画期間としたものでございます。
なお、第二次以降の実施計画の策定に当たりましては、対象となります児童生徒数や進路希望の動向、社会の動向等を考慮しながら、適切に対応してまいります。
質問2
この中の一次配置計画案では、知的障害が軽い生徒を対象とした高等部の設置が挙げられております。現在の知的障害のある高等部の生徒のうち、約六割が、中学校の心身障害学級や通常の学級から進学した、知的障害が軽い生徒ということであります。
従来、福祉に依存する形になりがちだった知的障害がある子どもたちが、これから社会進出や就労自立を目指していくことは、保護者や生徒自身にとって喜びでもあり、願いでもあります。この高等部の設置は、こうした障害のある子どもたちの社会参加、社会貢献のための教育に力を入れていくことで、社会的にも極めて重要な役割を担うことから、大いに評価できるものと考えます。
しかしながら、今回発表された、知的障害が軽い生徒を対象とした高等部は、区部西部の杉並地区、南多摩地区及び西多摩地区ということで、全体的に東京都の西側に重点的に配置されているように見え、地域バランスを欠いていると思います。可能性のある生徒が一日も早く社会で自立できるよう、東京都の東部においても、こうした社会的に意義のある知的障害の軽い生徒のための養護学校高等部の設置について、早期に地域バランスをとっていくような施策の推進が必要と考えます。
仮に、今回の計画に予定されていないために、その実現までに時間がかかるというのであれば、たとえ暫定的にでも、既存の養護学校の活用などを含め、こうした有意義な教育の仕組みを早急につくるべきと考えます。ご所見をお伺いをしたいと思います。
答弁2
▼教育長
知的障害の軽い生徒のための養護学校高等部の整備についてですが、第一次実施計画におきましては、知的障害の軽い生徒を対象とした養護学校高等部の設置を三校予定しておりますが、第二次実施計画以降におきましても、対象となります生徒数の動向や地域バランス等を考慮しながら、配置の拡大について検討してまいります。
また、ご指摘の地域バランスの点につきましては、設置に至るまでの間、東京の東部地域を含め、既存の知的障害養護学校高等部におきまして、職業教育の一層の充実が図れるよう検討してまいります。
質問3
ろう学校の再編整備について伺います。
ろう学校の場合は、減少する児童生徒の教育環境の確保が課題となっておりましたが、この第一次配置計画案では、ろう学校の再編整備として、中高一貫型教育校の設置も計画されております。生徒のニーズにこたえるため、大学等への進学により、高い学力や高度な専門的資格を身につける教育を推進することは重要であり、障害のある生徒がより高い志を持って社会に貢献できるものとして期待すると同時に、早期の実現を求めるものであります。
一方で、その他のろう学校では、高等部を卒業した生徒の社会進出や高度資格取得に対する施策が見えてきておりません。概要案では、石神井ろう学校と大田ろう学校の高等部には、職業教育分野と専攻科がありますが、これを再編整備により、葛飾ろう学校、立川ろう学校に統合するという計画となっています。
大幅に減少している生徒に対し、より高度な指導体制のもとに集団で教育ができる環境を確保する意味で、ろう学校の統合は必要かもしれませんが、職業教育に対する資格取得の欠格条項の見直しが行われ、各種資格取得の門戸が聴覚障害者にも開かれるようになってきました。この計画の実施に当たり、特に立川ろう学校や、ことし改築工事が完成する葛飾ろう学校などにおいて、さらなる職業教育の充実が必要と考えます。見解を伺います。
答弁3
▼教育長
ろう学校における職業教育の充実についてでございますが、お話しのように、障害者の資格取得に関する欠格条項の見直しや就労先企業のIT化の推進など、聴覚障害者の企業就労への範囲が拡大してきております。
現在、ろう学校におきましては、社会性涵養の観点から、自主的な生活態度の育成に努めますとともに、教育課程を類型化し、一般就労に向けた指導の充実に努めております。
今後とも、生徒の職業選択の幅を広げるため、ITを活用したグラフィックデザイン技術の習得や調理師養成コースの設置など、特色ある取り組みを行い、立川ろう学校と葛飾ろう学校における職業教育の充実に努めてまいります。
|
■高齢社会対策 |
高齢者の介護問題については、平成十二年から介護保険制度が導入され、公的な介護サービスの仕組みとして定着しました。現在は、制度施行後おおむね五年後を控えて、抜本的な見直しが検討されております。
しかし、現在の介護保険制度では対応が難しいと思われるさまざまな課題があり、高齢者にとって不安要因となっております。私は、こうした高齢者の不安要因の解消に向けた取り組みについて、幾つかご提案いたします。
質問1
その第一は、高齢者の虐待の問題であります。ことし三月に厚生労働省が公表した、家庭内における高齢者虐待に関する調査によれば、虐待している人の半数以上に虐待であることの自覚がなく、しかもその結果、生命にかかわる危険な状況が一割を超え、心身の健康に悪影響があると見られるケースが半数以上であるなど、極めて深刻な事態がうかがわれます。
こうした高齢者虐待の問題は、高齢者を虐待している家族を責めるだけで解決できるものではありません。つまり、虐待している家族は、同時に高齢者介護の問題に苦しむ当事者でもあると考えるからであります。
このような高齢者虐待の問題の解決については、早期に虐待の事実を発見し、速やかに解決を図る仕組みを構築していくことが何よりも重要ではないかと考えますが、都の認識はいかがでしょうか、ご所見をお伺いをいたします。
答弁1
▼福祉保健局長
高齢者虐待への取り組みについてでありますが、現在、各区市町村では、在宅介護支援センターを中心に、虐待問題を含め、高齢者に関するさまざまな相談に対応しております。また、区市町村における住民向け講演会の開催や虐待の事例検討など、先進的取り組みについて、都は、包括補助制度により支援しております。
今後、虐待に早期に対応するためには、住民に身近な地域において、虐待防止のネットワークを構築することが重要であります。
このため、外部委員を含む検討組織を発足させ、区市町村への具体的な支援や都民への普及啓発のあり方など、効果的な虐待防止策の検討に早急に着手いたします。
質問2
第二の不安要因は、痴呆予防の問題です。厚生労働省の調査によれば、要介護あるいは要支援と判定された高齢者の半数が、何らかの介護や支援を必要とする痴呆性高齢者であるとされています。
高齢者の介護問題の中で、身体機能の面での寝たきりなどの予防については、東京都が介護予防の取り組みを積極的に進めており、ことしから千代田区と稲城市が、東京都老人総合研究所が開発した「おたっしゃ21」を活用して都のモデル事業に取り組んで成果を上げています。全国をリードする先進的な取り組みとして評価するものであります。
同時に、痴呆の予防対策も忘れてはならないと思います。アルツハイマーを初めとして、一たん痴呆が進んでしまってからの治療は非常に難しいといわれます。しかし、早めに発見して対応すれば、その症状の進行をおくらせたり、悪化を防止したりすることも期待できるといわれております。
そこでお伺いをいたします。痴呆についても、都として今後、介護予防と同様に、総合的な予防対策が求められていると考えますが、都の認識をお伺いいたします。
答弁2
▼福祉保健局長
痴呆予防に関する取り組みについてでありますが、現在、都では、区市町村における痴呆予防の取り組みを進めるため、老人総合研究所が開発した痴呆予防プログラムにより、区市町村の職員などを対象として、研修やプログラム実施のためのマニュアル作成などを行っております。
今後、この取り組みをさらに充実させるとともに、地域における痴呆予防の核として、区市町村による在宅介護支援センターや保健センターなどのネットワークづくりの支援など、福祉、保健、医療が連携した総合的な痴呆予防対策を検討してまいります。
質問3
第三は、成年後見制度の活用の問題です。成年後見制度は、痴呆性高齢者など判断能力が不十分であるため契約等の法律行為における意思決定が困難な方々の権利を擁護することを目的として創設された制度であります。
この成年後見制度は、平成十二年の制度創設以来、一定の利用実績はあるものの、まだ制度自体の認知度が低く、その活用が進んでいない状況にあります。また、特に、身寄りのない痴呆性高齢者等が本制度を利用するために設けられた、区市町村長による申し立てが、二十五区市町村で実績が全くないなど、十分に行われていないことが大きな課題として挙げられます。
この背景には、区市町村の体制、マンパワーの問題や、区市町村長申し立ての際の後見人等の候補者の不足など、さまざまな要因があるかと思いますが、こうした課題を早急に解決するとともに、区市町村と法律などの専門知識を有する専門職団体等との間でのネットワークづくりを進め、地域の中で高齢者を支えていく仕組みとして、この成年後見制度を積極的に活用していくべきであります。
そこで、今後、都として、成年後見制度の普及、定着に向けた取り組みを積極的に行っていくべきと考えますが、都の所見をお伺いをしたいと思います。
答弁3
▼福祉保健局長
成年後見制度の普及、定着についてでありますが、痴呆性高齢者など、判断能力が不十分な方が地域の中で安心して生活するためには、福祉サービスの利用に関する契約や財産管理など、幅広い面にわたる援助の仕組みである成年後見制度を積極的に活用していくことが重要であります。
そのためには、住民に身近な区市町村が、民生・児童委員やボランティアなど地域の関係者と連携し、制度の普及に努めるとともに、法律などの専門家の協力を得ながら、区市町村長による申し立てを着実に行っていくことが必要であります。
今後、都としても、家庭裁判所や弁護士会など関係機関との連携を図りながら、成年後見制度が地域の中でだれもが利用しやすいものとして普及、定着するよう、人材育成など、区市町村への支援を積極的に行ってまいります。
|