平成16年第3回定例会 一般質問

今こそ30人学級に踏み出せ
地震対策に木密地域の改善急げ

東 ひろたか(日本共産党)
■30人学級
 
 初めに、長年の都民の切実な願いである三十人学級について伺います。
 三十人学級を初め、何らかの形で少人数学級に踏み出した自治体は急速に広がり、今年度で四十二道府県に達しました。実施に踏み切ったところでは、学校の子どもたちはもちろん、保護者、教職員初め、だれもが大歓迎しています。
 小学一、二年と中学一年の一部で三十人学級とした鳥取県では、小学校の担任の九六%、保護者の八一%が、よいまたは大変よいと答え、教員からは、子どもの活躍する場面がふえた、学習理解度を把握しやすく、理解不十分な子に多く支援できた、保護者からは、心の安定、落ち着きが感じられるなど、歓迎する声が寄せられています。
 都教委は、三十人学級を拒否する理由として、学習集団は少人数がよいが、生活集団としては四十人を基準とする学級規模が必要だとしてきました。しかし、小学六年生まで三十三人学級となった山形県では、校長先生が、欠席の減少、読書の増加、保健室利用の減少が顕著で、学習と生活が相乗的に向上したと回答しており、実際に、年間四・一日の欠席が三・〇日と大幅に減ってきているのです。学習面はもちろん、生活面でも都教委のいい分が成り立たないのは明らかです。
 文科省は、全国の自治体の流れに押されて、九月三日の事務連絡で、少人数指導の教員加配定数を少人数学級にも完全に自由に使えるようにするとの新しい方針を示しました。今回の新たな条件を生かして、東京でも少人数学級に踏み出すことが求められているのです。
 多摩の市長会からは、少人数学級編制が可能となるよう、一学級四十人という東京都の学級編制基準の見直しを図られたいとの要望も出されるなど、都の少人数学級実施への決断を強く期待する声が圧倒的になっています。
 こうしたもとで、全国で残された五都県の中で、六月には佐賀県知事が来年度実施を表明、石川県でも、九月二十一日の県議会本会議で教育長が来年度実施を表明しました。東京だけが文字どおり取り残されてしまいかねない状況です。
 知事、国の措置を活用するなら、これまで加配されてきた千二百五十人の教員定数のうち八百人程度を振りかえることで、新たな都の財政負担なしに都内の全公立小学校一年生で三十人学級を実施できるのです。橋の一本、二本かけなくとも、子どもたちの教育のためには公共事業を節減しても実行したいと表明して踏み出した山形県知事のように、多くの県では知事の決断が実施の決め手となっています。
 日本共産党都議団は、都内の区市町村長や教育長と懇談していますが、板橋区の石塚区長は、三十人学級は時の流れだと発言し、新宿区の山崎教育長は、三十人学級は私たちも望んでいるところ、都が三十人学級で教員を措置してくれればありがたいと述べています。
 こうした声が上げられる背景には、東京でも不登校や学力不振などが深刻化しており、行き届いた教育が切望されているからにほかなりません。
 あるお母さんは、上の子どものときは、一学年が四十人を超えていたので、分割され、少人数学級でした。そのため、すごく伸び伸びしたクラスになり、保護者会のたびに子どもたちが褒めてもらえました。ところが、弟の場合、四十人のクラスだったため、授業中に座っていられない、話を聞くことができない子どもがいて、もう授業にならないような状態だったといい、早く三十人学級にしてもらいたいと要望していました。
 

 
質問1
 事は、他の県がやっているからというのではなく、東京でもこうした深刻な実態だからこそ、東京都が三十人学級に計画的に踏み出すことが緊急に求められています。石原知事の決断を求めるものです。知事、いかがでしょうか。
 
答弁1
 ▼知事
 三十人学級についてでありますが、これは、他の道府県がやっているから東京都もと付和雷同的に考える問題ではなく、あくまで、教育効果という観点から都が主体的に判断すべきものであると思います。
 教育委員会が、児童生徒が集団生活の中で社会性を養うという観点から、生活集団としての学級について一定規模が必要であるとする点については全く同感であり、学級編制基準を四十人とする教育委員会の判断は妥当であると思っております。
 

 
質問2
 そして、少なくとも、区市町村が国の新たな措置を活用して少人数学級に踏み出すことを希望するならば、これを尊重するのは当然であると考えますが、どうか。明確な答弁を求めます。
 
答弁2
 ▼教育長
 少人数学級に関します区市町村教育委員会の希望の尊重についてのお尋ねでございますが、文部科学省におきまして、少人数指導等のための加配定数の基礎定数化を検討しているとは聞いておりますが、その措置によって、四十人を下回るような少人数学級を実施するための教員定数がふやされるものではないと承知しております。都としてはこれまで、加配定数を活用しまして成果を上げてきた習熟度別授業等の少人数指導をやめてまで少人数学級を実施しなければならないとは考えておりません。
 都教育委員会としましては、教育効果の観点から、引き続き現行の学級編制基準を維持することが妥当であると考えております。
 
■防災対策
 
 関東大震災から八十年、全国で地震が頻発するもとで、東京直下型地震は今後十年以内に四割の確率で発生するのではないかという予測も出され、地震に強い東京をつくることは喫緊の課題となっています。
 

 
質問1
 最近、日本木造住宅耐震補強事業協同組合が、全国でこの三年間に実施した木造住宅の耐震診断のデータを集計して発表しましたが、その内容は、実施した耐震診断四万五千件のうち、危険な住宅が七五%に及んでいるというものです。また、内閣府が九日発表した住宅の耐震化に関する特別世論調査は、耐震性が不足しているとわかっていても、住宅の改修を実施しようと考えている人は四分の一の人にすぎないとしています。十年前の阪神・淡路大震災では約六千五百人の犠牲者が生まれましたが、そのうち約八割が倒壊した建物の下敷きになったものでした。
 地震対策の基本となる住宅の安全の確保は、先送りすることができない都政の重要課題であると考えますが、見解を伺います。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 地震対策における住宅の安全確保についてでございますが、都は従来より、災害時に危険度の高い木造住宅密集地域を対象に、住宅の不燃化、共同化を初めとする各種施策を総合的に展開し、市街地の安全性の向上に取り組んでまいりました。
 また、震災時の建物倒壊などから都民の生命を守るため、耐震診断に関するパンフレットなどを作成し、都民に配布するとともに、都民みずからが簡易に耐震診断ができる方法の周知など、地震に強い住宅づくりを支援してまいりました。
 今後とも、地震時においても逃げないで済む、安全で安心して住める、そういったまちの実現に向けて取り組んでまいります。
 

 
質問2
 木造住宅、とりわけ木造住宅密集地域の改修が急がれているにもかかわらず、改修工事は遅々として進んでいないのが現状です。木造住宅密集地域の改善は、本来、従前居住者の居住継続を前提とした修復型が基本とされるべきですが、最近は、大型道路や再開発と一体で進める事業も見られます。このような事業方式は、住民、とりわけ借家や借地に住む住民の居住継続を困難にする場合も多く、疑問の声も上げられています。
 そこで、木造密集地域の整備の実施に当たっては、都として、種地を確保することや、公営住宅の建設で、事業実施によって居住継続が困難となる住民の居住を保障することが欠かせませんが、どうか。
 
答弁2
 ▼都市整備局長
 木造住宅密集地域の整備に当たっての居住継続についてでございますが、木密地域の安全性を高めるためには、建物の不燃化とともに、道路や公園などの防災空間を確保することが必要であります。
 これらの公共施設整備に伴って、移転や一時的な転居が必要となる住民に対しては、これまでも、コミュニティ住宅と呼ばれる従前居住者用住宅の建設や、都営住宅の期限つき入居制度の活用などにより適切に対応しております。
 

 
質問3
 墨田区京島地区のように、住宅のセットバックなどによる域内生活道路の拡幅、既存住宅の耐震、防火改修、建てかえなどによる防災機能の向上を住民主導で進めること、停滞している現状を打開するために、都がモデル地区を定め、財政、技術、人を集中的に投入して事業を実施することなども考えられると思いますが、見解を伺います。
 
答弁3
 ▼都市整備局長
 木造住宅密集地域における事業の実施についてでございますが、住宅の建てかえに合わせて整備を行う、お話しの修復型の事業だけでは、整備時期が明確に定められず、防災性の向上を早期に達成できない面がございます。このため、防災都市づくり推進計画で定めた重点整備地域など、整備の必要性が高い地域では、待ちの姿勢ではなく、一刻も早く成果があらわれるような取り組みが不可欠であります。
 今後は、都と区が連携し、新たな防火規制の導入や、道路、公園などの基盤整備とあわせた周辺整備を推進し、木密地域の防災性の向上に努めてまいります。
 

 
質問4
 個々の住宅の防災機能を高めることも急がれています。この点では、静岡県が減災の立場から、木造住宅の耐震補強に補助を行うことを開始しましたが、都内でも中野区が、古い木造住宅を耐震改修し、震度六以下の地震で全壊した場合、かかった費用を区が補償する制度を今年度実施しましたが、昨日までに、既に百八十九件の予約申し込みがあったそうです。
 また、墨田区では、木造密集地域の対策のための検討委員会を立ち上げ、区内の五万戸に及ぶ木造密集地域の住宅の倒壊防止策として、三百万円を限度にした倒壊防止策の導入を検討するなど、大地震から都民の生命と財産を守るための対策が区段階で始められています。
 そこで、区市町村が、木造住宅の耐震診断、耐震補強や防火対策への助成に踏み出した場合、都として財政的に支援することが住宅の安全化を推進する上で大きな役割を果たすことになると思いますが、どうか。
 
答弁4
 ▼都市整備局長
 木造住宅の耐震診断への助成についてでございますが、耐震診断などは本来、建築物の所有者などの責任において行われるべきものでありますが、都としてはこれまでも、耐震診断講習会を開催するとともに、簡易診断法の周知を行うなど、都民への普及啓発に取り組んでまいりました。
 今後は、ご指摘のような区市町村への財政支援ではなく、連絡協議会を設置するなど、区市町村との連携を強化することにより、木造住宅の耐震改修の促進に努めてまいります。
 

 
質問5
 マンションの対策も重要です。先日、紀伊半島沖の海底地震の際には、五百キロ以上離れたこの東京でもゆっくりとした震動が発生しました。これは長周期地震動といわれるもので、北海道の十勝沖地震では、遠く離れた苫小牧の石油タンクが共鳴して大災害を起こしたことは記憶に新しいところです。
 長周期地震動は、低層の家屋や中層のビルなどでは影響は見られず、高さ百メートルを超すような超高層ビルの高層部で数メートルの揺れが発生するといわれているものです。今、都心部を中心に超高層の住宅ビルが相次いで建設されており、その対策の必要が叫ばれているところです。
 我が党は、本年、この長周期地震動の対策を求めた際に、都は研究する旨答えられました。そこで、長周期地震動の対策について、都としてどのように進めているのか、改めて伺うものです。
 
答弁5
 ▼都市整備局長
 長周期地震動に対する対策についてでございますが、巨大地震による長周期地震動の超高層建築物などへの影響や対策につきましては、土木学会及び日本建築学会が合同で特別委員会を設置し、検討を進めているところでございます。
 都としては、今後、この検討結果を初め、国の動向にも注目しつつ、適切に対応してまいります。
 

 
質問6
 老朽マンションの対策では、我が党は調査を提案しましたが、その後、都は、築三十年以上の老朽マンションの調査を行い、昨年結果を発表しました。その結果、多くのマンションが耐震診断も受けてなく、診断の結果、対策が必要とされても、耐震補強できないマンションが残されています。せっかく実施した調査を宝の持ちぐされにしないために、都として、老朽マンションの耐震化促進のための計画策定に踏み出すべきではありませんか。それぞれ答弁を求めます。
 
答弁6
 ▼都市整備局長
 老朽マンションの耐震化の促進についてでございますが、都では平成十二年に耐震改修促進実施計画を策定し、これに基づき、新耐震基準以前に建てられたマンションの所有者などに対しまして、耐震診断、耐震改修の必要性を周知するほか、診断機関の紹介や各種融資、助成制度の紹介を行っております。
 今後とも、区市町村と連携し、耐震化の促進に努めてまいります。
 

 
質問7
 地域防災の不可欠な担い手としての二十三区消防団に対する支援策について伺います。
 いうまでもなく、消防団は、日ごろから地域社会に溶け込み、各種の災害対応や警戒活動に当たるなど、多岐にわたる活動を展開しています。特に震災等の大規模災害発生時には、地域の実情に精通し、発生時に即時に対応できる防災機関として極めて重要な存在です。
 消防団にその役割を発揮してもらう上で取り組むべき課題はさまざまありますが、本日は、最も切実な課題として、すべての分団に本部施設を整備する問題について伺います。
 もともと消防団の活動単位は分団です。二十三区内には四百三十九の分団があり、このうち百九十六分団が本部施設未整備となっています。やむを得ずそれらの分団が本部として扱っている防災資機材格納庫の多くは、会議スペースもなく、トイレもない、電気もない、電話もテレビもファクスもないというのが実情です。
 しかし、分団にとっては、責任を持つ地域に団員が集まり、打ち合わせをすることができ、いざというときには駆けつけ、待機することができる拠点施設はどうしても必要です。そういう本部施設がない分団は、台風などの警戒待機の出動などのときは、腰をおろす場所もないまま、風雨にさらされて待機しているのです。町会事務所や神社の社務所を借りる分団もありますが、急な場合や、年末警戒など何日も続く場合などは、借りることが難しいといいます。中には、近所のそば屋の二階を借りて集まるという赤穂浪士の討ち入りみたいな分団もあるわけであります。
 にもかかわらず、石原都政になってからこの五年間に、分団本部が整備されたのは、多い年で三棟、少ない年は一棟で、平均年二・四棟という状況です。これでは、全分団に整備されるには八十年かかります。
 消防団は、消防庁単独の整備だけでなく、他局や区の公共機関と連携するなど、さまざまな手段を講じて、全分団に本部機能を持つ施設を、目標年次を明記して整備計画をつくるべきと考えますが、答弁を求め、質問を終わります。
 
答弁7
 ▼消防総監
 特別区消防団の分団本部施設の整備についてでありますけれども、特別区消防団の分団本部施設は、平時の災害はもとより、震災時におきましても消防団の活動拠点として重要な施設であります。これらの分団本部施設の中には、老朽なものや狭隘となっているものもありますため、その整備につきましては緊急の課題であると認識しております。このため、引き続き、構造、建築年、狭隘度等を勘案いたしまして、順次計画的に整備を推進してまいります。
 

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