平成16年第3回定例会 一般質問

新生児聴覚検査事業の継続を
夢と希望ある空港跡地利用を

藤井 一(公明党)
■新生児聴覚検査モデル事業
 
 生まれてくる赤ちゃんの千人に一人か二人は、生まれつき、耳の聞こえ、つまり聴覚に障害を持っているといわれております。この聴覚障害の発見がおくれると言葉が話せなくなりますが、できるだけ早く障害を発見し、適切な療育を受ければ、言語能力を発達させることができます。
 そこで、我が党は、平成十三年、都が新生児の聴覚検査を実施するよう訴えるとともに、都内の若いお母さん方から約十七万人の署名を集め、都知事に強く要望したところであります。
 これを受けて、都は、平成十五年一月から、豊島区と立川市の二カ所を対象に新生児聴覚検査モデル事業を実施しました。都の迅速な対応を大いに評価するものであります。そこで伺います。
 

 
質問1
 第一に、新生児聴覚検査のモデル事業が始まり、一年八カ月たちましたが、現在までの実施状況とその成果について伺います。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 本事業は、平成十四年度から豊島区と立川市の二地区で開始し、現在までに聴覚検査を受けた新生児等の数は、豊島区で約六百三十人、立川市で約九百五十人でありました。現時点までの成果としては、聴覚障害の疑いがある乳児が二名発見され、早期療育につなげることができ、あわせて、聴覚障害に関する知識の普及や関係機関などの連携の大切さが再確認できたことであります。
 

 
質問2
 第二に、療育体制の整備についてであります。
 先日私は、実際に新生児の聴覚検査を実施しているドクターと種々懇談いたしました。そのドクターは、モデル事業は母親から大変好評であり、検査を受けることにより保護者が安心感を得られることや、この検査が聴覚障害の早期発見、早期治療に有効であることが明確になった、その反面、我が子に聴覚障害があると告げられたお母さんは、不安の底に突き落とされる、そこで大事なことは、障害を発見した後の療育体制を早急に整備することですと強調されていました。したがって、新生児の聴覚障害を発見した後の早期の療育体制を整備すべきと考えます。所見を伺います。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 早期療育体制の整備についてでありますが、聴覚障害児を早期に発見し、適切な療育に結びつけることにより、言語発達やコミュニケーションへの影響は最小限に抑えられるため、早期療育体制の整備は重要なことと認識しております。現在、都内では難聴幼児通園施設、都立ろう学校、都立療育センターなど十七カ所で乳幼児療育が行われております。検査普及に伴い、療育が必要な乳幼児はふえていくと見込まれるため、これら療育施設の乳幼児早期の療育体制の充実は必要と考えております。
 

 
質問3
 第三に、モデル事業の継続についてであります。
 新生児聴覚検査モデル事業は、今年度で国の補助がなくなるため、来年度廃止されることが危惧されます。現在、聴覚検査によって障害が判明した新生児の療育が始まったばかりであり、療育を十分に行い、評価するためには、まだまだ時間がかかります。今ここでモデル事業をやめてはならないと考えます。モデル事業で構築した検査、相談療育体制を継続し、さらに充実させるために、都独自で事業を継続すべきであります。今後の都の取り組みについて伺います。
 
答弁3
 ▼福祉保健局長
 モデル事業の今後の取り組みについてでありますが、平成十六年度をもって三年間のモデル事業は終了し、その成果を来年度に最終報告としてまとめる予定でございます。現段階で明らかとなった普及啓発などの課題については、保護者向けチェックリストや関係機関向けハンドブックの作成を行うなど、新生児等の聴覚障害にかかわる早期発見、早期療育に努めてまいります。
 
■ものづくり人材の育成
 
 本年四月、大田区東六郷に都立六郷工科高校が開校いたしました。この学校では、全国に先駆けて、ものづくり人材を育成する東京版デュアルシステムが導入されています。東京版デュアルシステムは、高校生が企業で働きながら技術や技能を身につける新しい職業教育であります。生徒は企業の一員として数カ月間企業の現場で働き、それを学校が授業の一部、単位として認めるものです。後継者不足で悩む中小企業が多い中、このシステムは産業界から熱い期待が寄せられています。開校するまでの関係者のご努力に敬意を表したいと思います。
 そこで、このデュアルシステムについて何点か伺います。
 

 
質問1
 まず、今年度は、生徒が幾つかの職種や業種を企業で体験するインターンシップが行われ、いよいよ来年度から長期の就業体験が実施されると聞いております。そこで、授業の方法及び期間、受け入れる企業数など、具体的な内容について明らかにすべきであります。
 
答弁1
 ▼教育長
 都立六郷工科高校のデュアルシステム科についてでございますが、六郷工科高校におけるデュアルシステム科は、高校生が在学中に、長期の就業訓練を通して、企業や業界が必要とする実践的な技能、技術を身につけさせる新しい教育システムでございます。生徒の企業での学習につきましては、一年次では三十日間のインターンシップを通して、適性に合った業種や職種を見きわめることとしております。また、二年次では二カ月間、三年次では二カ月または四カ月間の長期就業訓練を通して実践的な専門教育を行い、これらの成果を学校が単位として認定してまいります。
 なお、受け入れ企業数は、八月三十日現在で七十八社でございます。
 

 
質問2
 第二に、本年度、六郷工科高校のデュアルシステム科の応募状況は、定員三十名に対して応募者が三十四名であり、若干倍率が低いのが気になります。広く周知する時間がなかったためと思いますが、初めてのデュアルシステムを導入した高校の開設です。多くの優秀な人材を集め、また、技術力のある企業に協力をしてもらうことが重要であります。デュアルシステムに対する生徒や保護者の理解を広げるために広報活動を強化し、また、さらに多くの企業の協力を得るために企業説明会などの機会をふやすべきであります。所見を伺います。
 
答弁2
 ▼教育長
 デュアルシステムの広報活動についてでございますが、都立六郷工科高校におけるデュアルシステムにつきましては、これまでも中学生や保護者、企業に対する説明会の開催やパンフレットの作成、ホームページの掲載などにより、積極的にPRに努めてまいりました。今後、より一層の理解促進を図るため、中学校における出前授業や学校訪問等の機会を活用しました、きめ細かなPR活動を行いますとともに、中学校の進路指導担当教員を対象とします説明会などをふやしてまいります。また、企業に対しましては、大田区工業連合会など地元企業団体の研修会や産業労働局の支援による企業展示会など、さまざまな機会をとらえて、デュアルシステムについての趣旨を説明しますとともに、協力依頼を積極的に行ってまいります。
 

 
質問3
 第三に、デュアルシステムで生徒を受け入れる企業は、訓練期間中、熟練技術者が生徒にマン・ツー・マンで教えたり、また、企業が生徒に対して交通費等を支払うことになる予定と聞いています。しかし、こうした企業の出費、コストに対し、何の手当てもありません。これでは、負担にしり込みする企業も出てくる可能性があります。受け入れ企業に対しては、都知事名で感謝状を贈ったり、企業の費用負担に一定の支援をするなど負担軽減策を講じるべきと考えます。所見を伺います。
 
答弁3
 ▼教育長
 受け入れ企業に対する支援策についてでございますが、東京版デュアルシステムは、産業界と学校とのパートナーシップに基づく新しい職業教育システムでございまして、企業側の多大なる理解と協力を得ているところでございます。デュアルシステムの推進に当たりましては、企業側にさまざまな負担が生じることを考慮しまして、一定期間の実績を踏まえた上で、都教育委員会による──これは新しい職業教育システムの創造でございますので、都教育委員会による感謝状の贈呈や、顕著な実績を上げた企業に対する表彰などにつきまして積極的に検討し、実施をしてまいります。
 
■産学公連携の具体策
 
 東京のものづくり産業は依然として厳しい状況にありますが、今後のものづくり産業を活性化するためには、先端技術の活用が必要であると考えます。特に最先端技術であるナノテクノロジーは、今後の産業活性化に不可欠であります。
 今後、都は、都立の大学や試験研究機関、また企業が共同して最先端技術の実用化、製品化を目指す研究を行っていくとのことであります。これらの研究を行うナノテクセンターが、来年、城南地域に開設される予定であると聞いております。このナノテクセンターの機能を十分に発揮し、貴重な都民の財産に育てるためには、ナノテクに関連の深い精密機械産業など、高度な技術力を持った企業が集積する大田区が、設置場所として最もふさわしいと考えます。
 

 
質問1
 そこで、まず、ナノテクセンターの設置場所、開設時期について伺います。
 
答弁1
 ▼大学管理本部長
 ナノテクセンターの開設についてですけれども、予定しております来年一月に、大田区を含む城南地域において開設できるよう、鋭意準備を進めております。現在、具体的な設置場所などにつきまして、最終調整を行っている段階でございます。
 

 
質問2
 第二に、ナノテクセンターで研究された成果が、将来的に地元企業に還元されていくことが何よりも重要であります。そのため、地元企業との関係を密にしていくべきであります。研究成果の地元還元策について伺います。
 
答弁2
 ▼大学管理本部長
 ナノテクセンターにおける研究成果の還元についてでございますが、ものづくりを担う中小企業は、ナノテクに対しまして、将来発展する分野として非常に高い関心を持っております。しかしながら、まだ新しい分野であるということもございまして、設備が整っていなかったり、最先端の技術情報が不足するなど、研究成果を事業に結びつけていく上では、解決すべき課題も多いというのが現状でございます。したがいまして、新たに開設いたしますナノテクセンターにおきましては、ナノテクに関する最新情報を提供したり、技術相談に応じることなどにより、研究の成果が円滑に還元される素地を培い、ナノテクに関心を持つ中小企業のニーズに的確にこたえてまいります。
 
■羽田空港の跡地利用
 
 都は、本年三月、羽田空港の再拡張のため、国に一千億円を無利子貸し付けすることを決定いたしました。これを受け、国は、本年度、羽田空港の再拡張を事業化し、七月には、第四番目の滑走路を整備する工事の入札を告示しました。来年三月には契約が行われると聞いております。一方、再拡張事業の大きな柱である国際線ターミナル等の整備も着手される予定となっています。平成二十一年に、第四番目の滑走路が完成すれば、実質的な国際空港として羽田空港は生まれ変わります。これにより、再拡張事業の効果が大きく発揮されるものと期待をされております。そこで伺います。
 

 
質問1
 第一に、国際線ターミナル等の整備の仕組みや今後のスケジュールについて伺います。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 羽田空港の国際線ターミナルなどの整備についてでございますが、国は、平成二十一年末の供用開始に向け、PFI手法などにより民間活力を導入し、一体的かつ効率的な整備を行うこととしております。現在、施設要件や整備、運営にかかわる制度設計について検討が進められており、平成十七年度中に入札実施方針の公表、事業者の募集及び契約締結が行われる予定でございます。
 

 
質問2
 第二に、羽田空港跡地対策についてであります。
 当初、国は、羽田空港の跡地面積をおおむね二百ヘクタールとし、これを受けて平成六年、国、都、大田区で構成される羽田空港跡地共同調査に関する連絡会議が設置されました。また、平成九年には、跡地利用計画を策定するための調査委員会も設置され、種々の検討がなされてきました。しかし、その後、国は、跡地面積を七十七ヘクタールから五十三ヘクタールへ変更したために、これらの連絡会議や調査委員会は、平成十一年度以降、五年間で一回も開かれておりません。国と大田区の間に立つ東京都は、事務局という重要な立場にあります。
 そこで、平成二十一年の供用開始に向け、再拡張事業が動き出した今、空港跡地や周辺地域の利用計画を定めるため、連絡会議や調査委員会を早期に再開し、国、大田区など関係者とともに共同検討を行うべきと考えます。所見を伺います。
 
答弁2
 ▼都市整備局長
 空港跡地などの利用計画についてでございますが、その検討に当たりましては、再拡張後の羽田空港の役割や機能との連携に十分留意することが必要であります。このため、都としては、国における国際線ターミナルなどの施設要件の検討状況などを踏まえつつ、地元自治体とも調整しながら、跡地などの利用について取り組んでまいります。
 

 
質問3
 第三に、夢と希望あふれる跡地利用についてであります。
 羽田空港が国際化されれば、世界じゅうから観光やビジネスで多くの人が訪れます。石原知事が力を入れている、千客万来のにぎわい創出のための受け皿の一つとして、この空港跡地を活用すべきであると考えます。例えば、魅力的な世界の商品をそろえた免税店、大人から子どもまで楽しめる総合的な文化、スポーツ、レジャー施設、北海道から九州の本物の温泉に入れる大規模温泉ランドなど、夢と希望にあふれた跡地利用を視野に入れた検討を行うべきであると考えます。空港跡地にかかわる都の取り組みについて、知事の所見を伺います。
 
答弁3
 ▼知事
 羽田空港跡地にかかわる都の取り組みについてでありますが、ともかく世界じゅうで、都心からあれほど近いところにある空港というのは例がございません。しかも、あそこに膨大な空間が今ありまして、かつまた、海老取川を隔てて大谷重工の跡地、それから、隣接する荏原製作所も数倍の広大なスペースを持っていますが、聞くところ、やがて千葉の方に移動する予定だそうでありまして、そういうものを勘案して、私はやっぱり、かなり大きなプロジェクトというものが時代に合った形で考えられるべきだと思います。
 非常に重要な空間、単に大田区だけではなくて、東京にとって非常に大事な空間になると思います。空港機能をサポートするとともに、空港の持つ可能性を活用した跡地の積極的な利用計画を立てることが肝要だと思っております。
 このため、都としましても、国際線ターミナルなどのありようも見きわめながら、地元自治体とも調整して、跡地利用に、今までなかったパターンのプロジェクトというものを展開できればと思っております。
 
■下水道事業の地球温暖化対策
 
質問1
 ことし、日本の夏は猛暑と豪雨に見舞われました。東京では、気温が三十度以上の真夏日が四十日も続き、連続日数の最長記録を更新しました。また、新潟や福井、さらには四国でも豪雨により家屋等に甚大な被害が発生し、多くの人命が犠牲となりました。これらの現象には、地球温暖化の影響が影を落としているといわれています。そのため、地球温暖化防止に向けた積極的な取り組みが重要であります。
 こうした中で、先日、下水道局は、地球温暖化防止計画であるアースプラン二〇〇四を策定し、地球温暖化防止対策に本格的に取り組むことを表明いたしました。この中で、温室効果ガスを二〇〇九年度までに、一九九〇年度と比べて六%以上削減するとしております。そこで、アースプラン二〇〇四の策定に至った背景と、目標を達成するための具体的な取り組みについて伺います。
 
答弁1
 ▼下水道局長
 アースプラン二〇〇四についてでございますが、下水道局は、都内で使用されております電力の約一%にも達する電力を消費しております。また、東京都の事務事業活動に伴う温室効果ガス排出量の四三%を占める最大の排出者となっております。今後さらに合流式下水道の改善や高度処理の推進などに伴い、温室効果ガスの増加が見込まれるところでございます。そのため、一刻も早く地球温暖化防止対策を総合的に進める必要があり、アースプラン二〇〇四を策定したものでございます。
 本プランでは、汚泥の高温焼却などによる温室効果ガス発生の削減や、温室効果ガスの排出が少ない、再生可能エネルギーへの転換に取り組むとともに、民間との連携などを積極的に図りまして、下水道事業から排出される温室効果ガスの削減目標値六%以上を達成してまいります。
 

 
質問2
 第二に、バイオマス発電についてであります。
 私は、本年四月、地元の大田区にある森ケ崎水再生センターにおいて行われた、バイオマス発電事業の式典に参加しました。バイオマス発電とは、下水の汚泥から発生するメタンガスを再生可能な資源として利用して発電を行うもので、さきの記者会見の知事発言にもありましたように、温室効果ガスの削減につながり、環境に優しい電力といえます。また、同センターでは、バイオマス発電で抑制される二酸化炭素の量を、環境付加価値として金額に換算して民間企業に売却する、グリーン電力制度の活用を進めております。
 そこで、現在までのバイオマス発電の運転状況とグリーン電力の販売状況について伺います。並びに、今後、グリーン電力の積極的な活用を促すべきと考えます。所見を伺います。
 
答弁2
 ▼下水道局長
 バイオマス発電の運転状況についてでございますが、森ケ崎水再生センターで本年四月に運転を開始し、八月までの五カ月間に約七百五十万キロワットを発電し、これを使用したものでございます。このバイオマス発電による環境効果といたしましては、二酸化炭素に換算いたしまして、約二千八百トンの温室効果ガスを削減しております。これは、代々木公園約十五個分の森林が吸収する量に相当するものでございます。
 また、グリーン電力制度による環境付加価値の販売は、五つの企業と合計約百二十万キロワットを契約し、これまでの販売額は約二百八十万円となっております。このたび、都庁舎のライトアップに際して、グリーン電力制度が活用されましたように、今後とも環境に貢献する視点から幅広く活用していただけるよう、さまざまな機会を通じましてグリーン電力制度の活用を促してまいります。
 

 
質問3
 第三に、最近、地球温暖化防止に役立つエネルギーとして、用水路等のわずかな落差を利用した小規模発電機が話題となっております。下水道局でも、森ケ崎水再生センターにおいて、小水力発電に取り組むことを明らかにしております。
 そこで伺います。森ケ崎水再生センターで計画している小水力発電事業の内容とその事業効果について伺い、私の質問を終わります。
 
答弁3
 ▼下水道局長
 小水力発電事業についてでございますが、本事業は、処理水のわずか三メートルの放流落差に着目いたしまして、豊富な水量を利用して発電を行うものでございます。発電量は、一年間に約八十万キロワットを見込んでおります。これは一般家庭二百二十世帯分の使用電力に相当するものでございます。これによりまして、温室効果ガスである二酸化炭素を年間約三百トン削減することができるものでございます。
 今後とも、再生可能エネルギーの活用など、温室効果ガスを削減するための努力を一つ一つ積み重ねまして、地球温暖化の防止に積極的に取り組んでまいります。
 

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