夜間保育の提供と不育症対策を 自転車の幼児乗せに安全教育を |
初鹿 明博(民主党) |
■少子化対策 |
昨年度の国の合計特殊出生率は一・二九と過去最低となり、東京はついに〇・九九八と、一を割り込んでしまいました。東京の少子化対策は、まさに待ったなしのところまで来ています。そこで、少子化対策について何点かお伺いいたします。
質問1
私は、少子化問題を考える上で、父親の育児参加が重要な要素の一つと考えます。しかし、この国の男性の育児へのかかわりはお寒い限りで、一日平均一時間にも届いていません。また、ことし六月に国が策定した少子化社会対策大綱では、育児休業の取得率の目標を女性八〇%、男性一〇%としていますが、男性の取得率は一%にも満たないのが現状でございます。
男は仕事、女性は家庭という考え方が、社会全体でも企業の中でも、依然根強く残っていることなどが影響しています。すべての労働者、特に男性が育児休業を取得しやすくするためには、まずは企業の経営者などの管理職が古い意識を改め、育児休業制度の理解と認識を深めるとともに、職場の同僚の理解と協力を得ていくことが不可欠であります。
さて、東京都は、次世代育成支援対策推進法に基づき、今年度中に数値目標を盛り込むなど、具体的な目標を設定した行動計画を策定しなくてはなりません。男性の育児休業取得率の向上について積極的に取り組むべきと考えますが、ご所見を伺います。
答弁1
▼産業労働局長
男性の育児休業取得率の向上についてでございますが、男性の取得率が低い原因として、一般的に男性の取得に対する心理的な障壁が高いことや、企業等において、男性の育児参加に対する認識が、必ずしも十分でないことなどが指摘されております。
こうした状況も踏まえ、都は、男性を含めた労働者が、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備に向けて、各種セミナーやシンポジウム、労働相談等、さまざまな機会を活用しながら、企業等に対する普及啓発に積極的に取り組んでまいります。
質問2
ところで、次世代育成支援対策推進法では、三百一人以上の企業も、国が示す策定指針に即した行動計画の策定を義務づけられています。この策定指針によりますと、企業の実情を踏まえた取り組みの推進として、企業によって、子育て中の労働者数や雇用形態など労働者のニーズが異なることから、アンケート調査や労働組合等に対する意見聴取などの方法により、労働者の意見を反映させる工夫を求めています。また、育児・介護休業法では、三歳未満の子を養育する労働者に対して、勤務時間の短縮等、育児と仕事の両立を支援するための措置を講ずるよう義務づけています。
しかし、現実の育児支援制度は、個々の労働者の希望と必ずしも一致しておりません。個々の労働者の事情に即した、真に育児と仕事の両立を支援する制度とすべきと考えますが、ご所見を伺います。
我が国は、間もなく人口減少社会に突入します。労働人口はますます減少し、優秀な人材の確保は、企業にとって存亡にかかわる大きな課題となります。その中で近年、労働者の家庭責任に配慮した企業、いわゆるファミリーフレンドリー企業が、優秀な人材の確保や従業員の帰属意識を高め能力を発揮させる手段として位置づけられていることに注目すべきです。企業に対する普及啓発も、このようなプラスの視点から取り組む必要があると考えます。
答弁2
▼産業労働局長
企業における育児支援制度についてでございますが、平成十五年度に都が実施いたしました男女雇用平等参画状況調査においても、事業主が実施している育児支援の措置と、労働者が希望するものとが、一致していない面が見られております。
この調査結果も踏まえ、育児・介護休業法に基づき、事業主が勤務時間短縮等の措置を講ずる際には、子育て期にある労働者の意向が十分反映されるよう、国に対し制度の改善を要望するとともに、企業等に対する普及啓発を行ってきたところでございます。
今後とも、育児支援の充実に向けて、引き続き国や企業等に対して働きかけてまいります。
質問3
今後の保育のあり方について質問します。
大都市東京は、終電終了まで、もしくは二十四時間営業するスーパーなどがあり、私たち都民は、大変便利な生活を享受しています。その便利さとは裏腹に、そのようなところで働く方々の勤務形態に配慮をした保育サービスを提供する必要が生じています。勤務時間、勤務形態が多様化する中、夜間の時間帯に対応した保育サービスの提供が求められていると考えますが、ご所見を伺います。
答弁3
▼福祉保健局長
夜間の時間帯の保育サービス提供についてでありますが、東京においては、交代制勤務など多様な勤務形態で働いている人が多くおられます。このため、午前七時から午後六時の十一時間を基本とする認可保育所の開所時間では、保育サービスを十分に利用できない面がございます。
認証保育所制度は、こうした大都市特有の保育ニーズに、柔軟かつ的確にこたえるために創設したものでありまして、すべての保育所が十三時間以上の開所を実施しております。
なお、認証保育所の中には、二十四時間開所しているところもありますが、開所時間帯とは、大人の都合だけでなく、子どもの利益を第一に考え、設定されることが望ましいと考えております。
質問4
現在、認可保育所に入所するには、保育に欠ける要件を満たさなくてはなりません。この保育に欠ける要件は、昼間勤務を常態とする働き方が優先とされるため、夜間に飲食店など、いわゆる水商売で働く親は、対象外とされてきました。そのため、高い保育料を負担して二重保育をしたり、ベビーホテルなどの認可外保育施設を利用せざるを得ない方々が大勢います。また、こうした施設の中には、保育環境に問題がある施設も少なくありません。
つまり、認可保育園への入所は、雇用が安定し収入も高い方が優先され、雇用が不安定で収入も少ない方は入所できず、高い保育料を負担することを強いられているのです。その背景には、パートなどの非常勤は常勤に比べ、また夜の仕事は昼間の仕事に比べて低く見る、職業に対する差別意識があるように思えてなりません。
私は、あらゆる職業に対する偏見をなくすこと、そして本来行政が手を差し伸べるべきはどこなのかを考えたとき、この現在の保育に欠ける要件を見直すべきと考えますが、東京都の見解を伺います。
答弁4
▼福祉保健局長
保育に欠ける要件についてでありますが、現在の児童福祉法では、保育の実施基準として、児童の保護者が昼間労働することを常態としていることを、入所要件の一つとしております。そのため、非常勤やパートタイムなどの就労形態や、不規則勤務や夜間勤務などの勤務時間では、認可保育所に入所することが困難な状況にございます。
保育サービスを必要とする人が、保育所を利用できるようにするためには、保育に欠ける要件を見直し、都民の生活実態に即したものに改めることが必要であり、都は、保育所制度の改革の柱の一つとして、国に提案要求をしております。
質問5
育児休業、保育について述べましたが、これらは最低限必要なことではありますが、これだけで少子化が解決できるとは考えていません。知事のおっしゃるとおり、子どもを何人産むかは、個人の価値観や人生設計の問題で、子どもは要らないと思っている人に対して、行政が産めよふやせよと声高に騒ぎ立てたところで、子どもを産むものではないのは、いうまでもないことです。
子どもが欲しいにもかかわらず、さまざまな理由で子どもができない夫婦に対して支援をすることが、少子化に歯どめをかける上で効果的だと考えます。その点では、不妊治療中の夫婦に対して、東京都が助成を行うようになったことは評価に値します。しかし、さらにもう一歩踏み込む必要があると考え、問題提起をさせていただきます。
不妊は、なかなか妊娠しない状態を指しますが、妊娠するものの、産まれてこない命もあります。現在、我が国の年間の出生数は、約百十万台となっていますが、一方で、妊娠継続を望みながら自然流産に帰した妊娠は、年間三十から四十万件あるという説もあります。この子どもたちの多くが、流産することなく誕生していたら、少子化もかなり改善できるのではないかと考えます。
さて、不育症という言葉をご存じでしょうか。育たずと書きます。不育症とは、厳密な医学用語でありませんが、妊娠は成立するものの、流産、死産、早産などが繰り返し起こり、赤ちゃんを抱くことが困難なケースを指します。昔は、流産しても、流産は自然淘汰的なものだからとして、次の妊娠に向けて特別な取り組みは行われてきませんでした。近年の医学の進展に伴って、流産の原因も徐々に解明され、適切な治療を行うことにより、子どもを授かることができるようになってきています。
しかし、不育症は、一般的にまだまだ認知されておりません。そのため、適切な治療を行うことにより、赤ちゃんが誕生する可能性があるにもかかわらず、自分が不育症であることに気づかず、何度も流産や死産などを繰り返している可能性すらあります。
不育症は、妊娠するにもかかわらず、何度も流産や死産などを繰り返すため、母親の身体的負担に加えて、精神的な負担も多く、仮に再度妊娠しても、また流産してしまうのではないかという不安を抱き続けてしまうといいます。
また、不妊と異なり妊娠が成立しているため、女性のみが責任を感じてしまい、うつ状態になってしまう当事者もいると聞きます。そのため、不育症の治療には、産婦人科的な治療とともに、精神的なケアも、あわせて行う必要があります。私は、不育症に関する都民の認識を高め、なぜ赤ちゃんを抱けないのかと一人で思い悩むのではなく、適切な治療を受けるように促していくことが重要であると考えます。
そこで、不育症について、都としても普及啓発に向けた何らかの取り組みを行うべきと考えますが、所見を伺います。
答弁5
▼福祉保健局長
不育症についてでありますが、さまざまな原因で、流産、死産などを繰り返す、これまでいわれていた習慣性流産を含むお話の不育症は、適切な治療を行うことにより、無事出産に至る可能性があるとの専門家の意見があります。しかし、ご指摘のとおり、このことが十分知られていないため、自分が不育症であることに気づかず、適切な治療を受けていない方もいると考えられます。
今後、都としては、不育症につきまして都民の理解を深め、適切な治療につながるよう医療機関の協力を得て、普及啓発に努めてまいります。
質問6
石原知事は、昨年、東京都の出生率が一を割り込んだことを受けて、東京から子どもの声が聞こえなくなったら悲しいじゃないのといい、都ができる条件整備は行うと会見で述べられました。今後、どのように少子化対策を進めていくのか、知事のお考えを伺います。
答弁6
▼知事
少子化対策についてでありますが、これは、行政の関与によって、現在の少子化の急速な進展を防いだり、いい方に転換していくことには、やはり限界があると思います。
しかし、この少子化は、国全体の将来に大きな影響を与える大問題であることに違いありませんが、都も、これまで大都市特有の保育ニーズを踏まえた独自の認証保育所の創設を初め、安心して子どもを産み育てる環境の整備を積極的に推進してはきましたが、また今後とも、組織を超えて横断的、総合的に少子化対策に積極的に取り組んでいきたいと思っておりますが、結局、帰するところは、やっぱり人生に関する個々の価値観の問題に帰すると思うんです。
後で生活文化局長が答えると思いますけれども、おっしゃるとおり、私も通勤の途中に、若いお母さんが前後左右に赤ん坊を乗っけて、しかも背中にまで産まれたての子どもをしょってね、いってみりゃ、お父さんを除いて一家四人で自転車で走っているようで、ぞっとするわけですよ。こういうものにヘルメットを提供するぐらいのことは、それは金銭にすれば易しいことですけれども、しかし、せっかく三人も子どもを産んで、要するに一緒に自転車で走っているお母さん、見上げたもんだと思いますが、それに対する補助ぐらいのことは簡単でしょうけれども、そんなことをいうと、後で局長に怒られるかもしれませんが……。
ただやっぱりですね、帰するところ、人生観というか、人生の価値観の問題を、どうポジティブに変えていくかということを、私たち本気で考えて、そういう啓蒙というのをうまくやっていかないと、これは先般、違う質問について申しましたが、思い切った移民政策をとろうが、結局そういったものが結果として実ってこない。労働力の補てんにはなっても、新しいカップルが国際的にでき上がって、子どもを産むというところまでいかないんじゃないか。
この問題は、本当に頭が痛いというか、どこから切り込んでいっていいか、帰するところは、やっぱり最後、価値観という非常につかみどころのない、しかも決定的な問題になってくるわけで、これはお互いに、少しこれから知恵を出し合って研究しましょう。
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■補助いす付き自転車 |
乳幼児を育てている母親が、買い物や保育所、幼稚園への子どもの送り迎えをする上で欠くことができないものとして、補助いすつきの自転車があります。サドルの前や後ろに子どもを乗せて、自転車を走らせるお母さんの姿を目にしたことがあると思います。中には、自分の前後に一人ずつ、場合によっては、さらにもう一人おんぶをしているという方もいます。私の妻も、その一人でした。この補助いすつき自転車の転倒による子どもの負傷事故が、十年間で約二倍と急増しています。都立墨東病院では、補助いすつき自転車の事故で、乳幼児が年間に約百五十件も治療を受けています。走行中にいすから落ちてしまうことを防止するために、シートベルトでくくりつけられているため、転倒すると、足から着地することができず、直接頭部を地面に打ちつけ、頭蓋骨陥没などの重大な結果に陥っているケースもあります。墨東病院に勤務していた脳神経外科の宮本医師の調査でも、頭部外傷が外傷全体の三六%と、部位別で最多となっております。
また、事故の起こる状況ですが、走行中に運転者が誤って転倒してというのが、四四%と最も多くなっておりますが、スタンドを立ててとめていた自転車ごと転倒というケースも一四%もあり、保護者の認識の甘さや不注意が、事故につながっているといえます。子どもの安全を守るのは親の自己責任であるのはいうまでもありませんが、多くの親に危険だという認識が欠けているのであれば、何らかの対策を講じる必要があると考えます。
自動車には、チャイルドシートが義務化されましたが、自転車には、自動車よりも、より身近で危険があるにもかかわらず、その危険が十分に知られておらず、また対策も立てられているとはいえません。
そこで、補助いすつき自転車に子どもを乗せる際に、ヘルメットの着用を進める必要があると考えます。転倒事故を減少することにはつながりませんが、ヘルメットを着用することにより、頭蓋骨陥没などの重大なけがからは、子どもを守ることができます。アメリカでは州によって異なりますが、子どもが自転車に乗る場合に、ヘルメットの着用を義務づけております。私たち民主党は、この六月に、補助いすつきの自転車に子どもを乗せるとき、ヘルメットの着用を義務づける趣旨の道路交通法改正案を国会に提出し、衆議院の内閣委員会で、山花議員が、国家公安委員長に対して質疑も行いました。また、墨東病院のおひざ元の墨田区で、我が党の堺井ゆき区議もこの問題を取り上げております。
山花議員の質問を受けて、現在、警察庁でヘルメット着用の義務化について、検討が行われているということです。また、警視庁もこの動きを受けて、全国交通安全運動などのあらゆる機会を利用して、普及啓発に努め始めています。
質問1
東京都においても、補助いすつき自転車の危険性や安全対策について、パンフレットなどを作成して、各自治体、保育所、幼稚園、保健所、自転車販売店などと連携をしながら、普及啓発をする必要があると考えますが、ご所見を伺います。
答弁1
▼生活文化局長
補助いすつき自転車の安全対策、普及啓発についてお答えいたします。
東京都は、これまでも自転車の安全利用については、東京都交通安全実施計画の重点施策の一つとして位置づけ、各種施策を推進してまいりました。ご指摘のように、自転車の転倒による幼児の負傷事故を防止するためには、安全対策について、特に保護者に対する注意喚起が重要であると認識しております。
そのため、新たな取り組みとして、親子、高齢者が参加した三世代による体験型の交通安全教育を目指す、地域の交通安全ふれあいフェアを十月に開催することとしており、その中で、保護者への安全教育も実施する予定でございます。
今後とも、区市町村や関係機関、団体等と連携しながら、各種広報媒体の活用や安全教育の充実など、積極的な普及啓発活動を推進してまいります。
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