平成16年第3回定例会 代表質問

地方分権改革は根本的な議論を
多摩振興を推進し活性化を図れ

比留間 敏夫(自民党)
■行財政問題
 
 さて、ことしの夏は記録的な猛暑となりましたが、もう一つ、日本じゅうを熱くしたのは、アテネオリンピックにおける日本選手団の活躍であります。金メダルは東京大会に並ぶ十六個、総数では史上最も多い三十七個を獲得いたしました。選手が流すうれし涙、そして悔し涙、日本にいる私たちも共感し、ともに喜び、ともに悲しんだ十七日間でありました。
 この十七日間、選手の胸に輝く日の丸、そして、何よりも表彰式において掲揚される日の丸と演奏される君が代、この場面を見るたびに、私たちは、日の丸の美しさ、そして君が代の荘厳さを改めて認識するとともに、日本国民であることに誇りを感じることができました。
 選手たちの活躍の裏には、オリンピックという舞台に立つまでに血のにじむような懸命な努力があったということはいうまでもありません。私たちが日本にいながら選手とともに涙を流すほど感動を覚えるのは、この舞台の裏にある懸命な努力を感じているからであります。メダルをかち取った選手だけでなく、みずからの目標に向かって全力で競う姿を見せてくれたすべての選手に、感動をありがとうと、お礼をいいたいと思います。
 オリンピックがもたらしたものは、これだけではありません。この夏の猛暑と相まって、電気製品を中心に消費が拡大し、景気回復に弾みがつきました。米国や中国で景気が減退するとの懸念から、我が国経済の先行きに対する慎重な見方もありますが、景気が回復基調にあることは間違いありません。この機を逃すことなく、日本全体の構造改革を着実に進めることによって経済を活性化させ、一日も早く安定的な成長路線に乗せることが、我が党に課せられた使命であります。
 

 
質問1
 戦後六十年近くを経て、ほころびや矛盾が露呈してきた我が国統治機構を抜本的に改革し、日本を未来に向かって力強く再生させるためには、既存の中央集権システムを打破し、真の地方分権を進めることが不可欠の課題であることはいうまでもありません。地方分権を確立し、地方が真に自立を果たすためには、地方行政運営の重要な一翼を担う議会においても、政策提案機能を強化することが重要であります。
 都議会においても、こうした観点に立ち、二十一世紀のあるべきグランドデザインを胸に、行財政改革基本問題特別委員会を設置し、七年間にわたり幅広い見地から行財政改革の議論を行ってきました。有識者のヒアリング、知事を初め理事者との議論は二十六回にわたり、この間に行った議論は、我が党の議事録だけで見ても、実に一七四ページに及んでいます。国、地方を通じた改革の必要性から、大都市行政、広域行政のあり方を精力的に議論し、区市町村との役割分担、広域連携、国からの税源移譲、課税自主権、補助金問題など、今後の自治制度のあるべき姿の方向性について、都議会から政策提案として、このたび報告書をまとめたところであります。
 三位一体改革に端を発した国の地方分権改革論議が財源配分論に終始する中、我が党は、国、地方を通じた行財政制度のあり方から論議をすることが、改革に向けた本質的な議論と考えております。骨太の改革における地方分権は、単なる財源配分の改革であってはならないのであります。
 行政改革、地方分権改革は新たな段階を迎えており、真の行財政改革、真の地方分権改革につながる考え方を具体的に示すことが重要と考えます。東京から日本を変えていく石原知事の改革の到達点ともいうべき改革大綱なるものを、都民、国民に示すべきではないでしょうか。我が党もさらに議論を深めていく決意でおりますが、知事は、今回の行財政改革基本問題特別委員会の報告書をどのように受けとめ、今後、都政にどのように生かすのか、所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 まず、特別委員会報告の都政への反映についてでありますが、この委員会が目指したものは、都政百年の大計ともいうべき二十一世紀のグランドデザインを念頭に置いて、中長期的な視点から都政のあるべき姿を描くところにあったと伺っております。その後、七年間もの長きにわたって、自治のあり方について本質にまで踏み込んだ審議を続けられました。
 このたび大都市行政の充実強化、自立した地方税財政制度の確立、広域自治体と基礎的自治体の新しいあり方についてなど、大変示唆に富んだ報告をいただきました。行財政改革の大綱の策定についても、いろいろご提言がありました。行財政改革について都議会が今後の方向性を示されたことに敬意を表したいと思います。
 今後は、これを受けて、これを大小いかなる施策に施して具体化していくかということが問題だと思います。
 今、地方分権改革の行方は混沌としておりまして、予断を許さない状況にありますが、都としては、これからも国に働きかけ、本質的かつ抜本的な改革を進めるとともに、その動向が都に与える影響を明らかにしながら、みずからもより一層の行財政改革に取り組むことが必要と考えております。
 特別委員会報告が示した方向性は時宜を得たものであり、これを生かしながら、東京から日本を変えるという思いを新たに、改革の取り組みを具体的に進めていきたいと思っております。
 

 
質問2
 先ほども申し上げましたが、国、地方を通じた地方分権改革の論議は、財源配分論に終始しております。残念ながら、先月の新潟で開催された全国知事会での大方の議論では、地方分権の問題は三兆円の税源移譲と国庫補助金廃止の数字合わせだけに終始しています。その最たるものが、義務教育費国庫負担金の一般財源化の問題であります。義務教育のあるべき姿を議論せずに、財源問題だけを論じ、国庫負担金を廃止するなど、到底許されるものではありません。
 石原知事もこうした動きに強い危機感を覚え、知事会議の場にとどまらず、マスコミにも積極的に登場し、鋭い本質的な意見を述べておりますが、一部マスコミは、知事会においてあたかも石原知事が義務教育費国庫負担金の廃止に賛成したかのような、誤った報道をしました。知事はこうした報道を強く否定されましたが、都民の中には、いまだ誤った情報に不安を覚えている方もいると思います。
 そこで、改めて義務教育費国庫負担金制度に対する知事の真意を伺い、こうした都民の不安を明快に打ち消していただきたいと思います。
 
答弁2
 ▼知事
 義務教育費国庫負担についてでありますが、ご指摘のように一部のメディアが非常に取り違えた報告をしまして、私も大変不本意で、迷惑でありましたし、翌日改めて別途に記者会見をいたしました。要するに、官僚出身の知事さんが多いせいか、私を含めて三人ほど代議士出身の知事もおりましたけれども、採決の手続について余りなれてないんですね。それで、前日、深夜まで、一時近くまで議論をしまして、その後なお、司会の全国知事会会長の梶原さんがかなり複雑な質問書をつくって、回答を求めてきまして、それによって集計して、私たちの主張は少数ということでくくられたわけでありますが、なお、その次の日に、これをどういう形で報告するかという議論になりまして、前日深夜までやったわけでありまして、この珍しい長い時間の熱心な議論というものをないがしろにするわけにいきませんので、当然、反対の少数意見も付記して報告をすべきだと。会長もそのつもりでおりましたが、不思議なことに神奈川県の松沢君から異議がありまして、これは国対県の戦いであるので、反対意見まで付記すると足元を見られるおそれがあるから、反対意見は付記すべきでないという異論が、議論が出ました。
 私はこれに真っ向から反対しまして、昨夜の討論というものをそんたくする意味でも、当然、少数意見、反対意見を付記して述べるべきだということで、司会の梶原会長もこれを是として、そういう形で採択することに異存はございませんかということで、私は挙手をいたしました、当然ですけれども。ところが、少数意見付記を反対した松沢知事までが賛成の挙手をしたので、非常に議場が混乱したんですが、結果として──また事務局が非常に不手際で、余計なペーパーを出したものですから、非常に誤解を受けましたが、いずれにしろ、私は基本的にこれに反対でございますし、私の次の日の、またまた記者会見を、党の方も、自民党の方の保利耕輔君、これは教育問題の調査会長をしているようですけれども、彼がわざわざ来てくれまして、なお意見を詳しく聞きたいということで、いろいろ意見を開陳いたしましたが、いずれにしろ、この案件について全国知事会があそこでああいう討論をすることそのものが本末転倒でありまして、もともとこれは、地方分権というものをいかにするか、三位一体論でありますけれども、その最たるものは、既に百二十兆の、直接間接、赤字を来している交付税制度というものも考えないと、とてももたない。そのために何をどういうふうに削っていくかという議論が行われるべきなのに、これはやっぱり総務省の一つの、何というんでしょうか、大きなコントロールでしょう、一番力のない文部省にターゲットが絞られて、いきなり、総務省がサジェストした案としてでしょうね、義務教育の国庫負担というものを撤廃して、その分の三兆円を地方にくれてやるという。また、これに、地方ものどから手が出るようにお金が欲しいんでしょうが、私にいわせるとあさましく飛びついて、日本の教育というものをこれからどうするか、それに大きな寄与をしている義務教育がどうあるべきか、また、こういう制度というものを撤廃することで、義務教育のいわゆるナショナルスタンダードがでこぼこになって、地方自治体によっては非常に義務教育の質が落ちる可能性もあるわけですが、そういったものの懸念を全くしんしゃくせずに、いきなり金をもらうかもらわないかの論になったわけであります。
 いずれにしろ、この国庫負担金の使途は教職員の人件費でありまして、地方に裁量の余地のない経費であります。お金に印がついているわけじゃないんですが、しかし、これが地方の自由裁量に任せられますと、場合によっては教員の人件費というものを軽減してでもほかに回す可能性もあるわけで、それによってその地域の教育の水準が落ちる可能性もあるわけです。
 また、仮に国庫負担金を一般財源化しても、自治体の交付税への依存度は高まるばかりでありまして、これは自立どころか国の地方支配が強まるばかりであります。
 そもそも我が国の将来を左右する義務教育のあり方について、国家レベルで、閣議でも一向に議論されないままにこういったものがぽかっと出てくる。私は、ですから、出席する前に、前の文部大臣に電話をしまして、君の本意はどこにあるんだ、文部省の声が全然聞こえないじゃないか、私は、大臣というわけにいかぬでしょうから、審議官なりをその場所に出席させたらどうだ、多分それは拒否されるだろうから、私が責任持って、文部省のじかの、しかも最高責任者の君の、文部大臣の声を取り次ぐからペーパーをよこせといいましたら、これまたお粗末なペーパーが来まして、これは突き返しまして、君自身のサインのあるものをよこせということで、やっとそのペーパーが届いて、私、それを取り次いだんですが、これまたにべもなく拒否されまして、こんなものをここへ出すことそのものが筋違いだという知事まで出てきて、私はその知事に、じゃ、あなたのところは交付団体だけれども、お金が足りなくなったら一体どうするんですかということを聞きましたら、それは交付税に頼みますと。交付税そのものをどうするかしないかという問題が三位一体論であるのに、この本末転倒、それにも申し上げたんですけれども、あなたのいっていることは本当に前後左右合致してなくて支離滅裂ではないかということを反論しましたら、それに対する答えもありませんでしたが、いずれにしろ、本来、公教育の根幹である義務教育の水準確保は、あくまでもこれは国の責任で行われるべき問題であると思います。
 ちなみに、これがどう決まろうと東京は今限り痛くもかゆくもありませんが、しかし、これは東京の存在を超えて、やはり国全体の義務教育の水準の維持、平均的な維持ということが眼目であります。その見地から、都は、義務教育費の国庫負担金の廃止、一般財源化については、一貫して反対してまいりました。それについて間違った報道があって遺憾でありますけれども、その姿勢は今までも今後も全く変わりません。ちょっと長くなりましたが……。
 

 
質問3
 さらに問題とすべきは、税源の移譲に伴い、東京と地方の税収格差がこれまで以上に拡大するという、東京ひとり勝ち論のことであります。国と各省庁は、この三位一体改革を、みずからの権益確保、予算確保の戦いととらえ、みずからの都合のよい情報ばかりを意図的に流しています。地方分権改革の根本的な議論を避け、問題を大都市対地方の構図にすりかえることにより、本質的改革から国民の目をそらそうとしております。知事は、このひとり勝ち論に対してどのようにお考えなのか、所見を伺います。
 
答弁3
 ▼知事
 東京ひとり勝ち論についてでありますけれども、このような主張は、地方分権改革の方向をゆがめて、我が国の進路を誤らしめるものだと私は思います。
 現行の地方自治制度の最大の問題は、自治体の自主的な課税など、財政運営の持つ自立性を著しく規制したまま、わざわざ国を介して過剰な再配分をしていることであります。その結果、都道府県では不交付団体が東京のみといういびつな現況を招いているわけであります。この制度全体の改革なくして真の地方分権制度は実現しませんし、日本の発展もないと思います。
 ちなみに、そこまで議論は至りませんでしたけれども、この問題、これからも議論しなくちゃいけませんが、東京都としては、東京都の試案を提出いたしました。これは何人かの知事から非常に強い共感を得ましたが、東京の試案を国が思い切って実行すれば、東京だけではなしに、大阪であるとか神奈川県であるとか横浜市、あるいは千葉市といった、全部やったわけではありませんけれども、かなり主要な県あるいは政令都市というものが堂々と不交付団体として立っていけるわけでありまして、それをそういう形に規制し、交付団体におとしめている国そのものの現況の制度が、私はやっぱり間違っていると思うし、非常に不公平であると思います。
 アジア諸国が目覚ましく経済発展を続ける中、熾烈な国際競争に勝ち抜くためにも、国の発展を牽引する東京などの大都市への重点投資が不可欠であると思います。
 また、都民一人一人に着目しますと、その生活の質は決して豊かとはいえません。交通渋滞であるとか住宅の狭さであるとか環境問題の解決など、大都市特有の莫大な行政需要への対応も必要となっております。
 東京がたまたま不交付団体であることで、東京都すなわち富裕団体とみなして財源を東京から地方に移そうという非常に安易な議論は、改革の本旨にもとるだけではありませんで、日本の将来の発展を危うくするものでありまして、今後とも断固として反対していく覚悟でございます。
 

 
質問4
 さて、地方分権改革の議論においては、広域自治体と基礎的自治体との関係をどのように再構築していくかという議論も忘れてはなりません。とりわけ東京においては、都市間競争が激化する時代を迎え、その集積のメリットを最大限生かし、都民生活を向上させるとともに、国際競争に勝ち抜いていかなければなりません。今後、こうした観点から、新しい地方分権体制や施策の構築に向け、広域自治体と基礎的自治体がそれぞれの役目と責任をより明確にしつつ、さらに強い連携関係を築いていくべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁4
 ▼知事本局長
 広域自治体と基礎的自治体の連携についてでございますが、国際的な都市間競争が激化する中で、東京がこれに勝ち抜いていくためには、広域自治体である都が大都市地域を一体的に経営することにより、東京のポテンシャルを十二分に引き出すことがますます重要になってきております。
 一方、住民に身近な基礎的自治体は、生活に密着したサービスの主たる担い手として、都民の暮らしの質を高める観点から、その役割を十全に果たすことが期待されているわけであります。
 都としては、この二点を両立させることが大都市経営の最も重要な課題と考えておりますが、そのためには、お話にありましたとおり、基礎的自治体との連携の強化が不可欠でございます。
 今後、連携の強化に向け、種々工夫を凝らしながら一層努力してまいります。
 

 
質問5
 さらに、都と特別区との関係は、現行自治制度の中では特別なものであります。特別区は、平成十二年の都区制度改革により、二十三区は基礎的な自治体に位置づけられるとともに、清掃事業など住民に身近な事業が都から移管され、都と特別区は対等、協力の関係になったとされていますが、二十三区が目指す普通地方公共団体への移行は、いまだ道半ばであります。地方の中での分権を都区制度改革として引き続き骨太な議論のもとに中長期的視点から進めていく必要があります。
 一方、現実的な課題として、平成十二年の都区制度改革に伴い、都と特別区の役割分担のあり方など、引き続き協議すべき事項として五項目の確認事項がありますが、現在、都と特別区で検討を進めていると聞いております。この役割分担を含めた五項目に関する検討がどのような状況にあるのか、今後どのように進めていこうとされているのか、伺います。
 
 ▼総務局長
 都区制度改革時の五項目の確認事項についてでございますが、東京が活力と魅力のある首都として、また世界都市として発展していくためには、都と特別区が適切に役割分担し、大都市機能の維持、強化を図っていく必要がございます。このような観点から、東京の大都市経営にふさわしい自治のあり方につきまして幅広く議論していくことが重要と認識しております。
 五項目につきましては、十七年度の合意形成に向けまして、現在、都と特別区によります検討組織を設置し、検討を進めております。
 このうち、基本となります都と特別区の役割分担につきましては、ことしの十二月から来年の一月を目途に、具体的に都の考え方を示し、協議を進めてまいります。
 

 
質問6
 石原知事は、就任直後、財政再建団体への転落を回避すること、財政の弾力性を回復させることの二つを目標として財政再建推進プランを策定し、給与削減等の内部努力や施策の見直し、徴税努力等の歳入確保など、財政再建に聖域なく取り組んでまいりました。このプランは昨年度で一区切りとなりましたが、この計画期間中の努力により、財政再建団体への転落は何とか回避することができたものの、もう一つの目標である財政の弾力性の回復については、なお厳しい状況にあります。
 都は、先日、十五年度決算を発表しましたが、この決算の状況をどのように総括しているかを伺います。
 
答弁6
 ▼財務局長
 十五年度は財政再建推進プランの最終年度であり、財政健全化の努力を鋭意進めてまいりましたが、都税収入が二年連続でマイナスとなるなど厳しい財政運営を強いられ、実質収支は六年連続の赤字決算となったところでございます。
 また、財政の弾力性を示す経常収支比率は二年連続で悪化し、九七・九%と、依然として危険な水準が続く状況となっております。
 こうしたことから、厳しい財政環境が続く中、今後とも、財源不足の解消や経常収支比率の改善といった第二次財政再建推進プランの目標達成に向けて、財政構造改革にさらに積極的に取り組むことが必要であると考えております。
 

 
質問7
 さて、我が国経済は、最近発表された経済指標からも、銀行の不良債権問題が大きな山を越し、雇用も全業種にわたって回復が見られるようになりました。また、本年三月期の決算では、多くの企業が経常収支を伸ばしております。ただ、中小企業には景気回復の実感は依然乏しく、継続的な振興策が大きな課題であります。日本経済が回復に向かっている原動力となっているのは、いうまでもなく、民間企業が中心となって、大きな痛みを伴いながらも構造改革を進めてきた成果にほかなりません。
 こうした反面、急速に高まる少子化により、行政サービスの財源を支える働き手が減り、その一方、高齢化が進むことで、福祉関係の支出が増大することは目に見えております。このような、そう遠くない将来の社会の変化に備えるためにも、都は、財政構造改革を着実に進めることが重要であります。
 一方、東京は、急速に進む国際化、情報化の中で、世界的な都市間競争に勝ち抜くとともに、明るさの見えてきた日本経済を引っ張り、回復を着実なものとしなければなりません。そのために、限りある財源を最大限に活用し、東京の将来を見据えて、真に必要なものに集中投資をする必要があります。このことが、東京の未来を築き、また、地域経済に活力を呼び起こし、中小企業者を初めとする都民全体に元気と明るさをもたらすものであります。
 今年度、予算編成は実質的にスタートしていますが、我が国経済の現況に対する率直な感想と、十七年度予算編成における課題について、知事の所見を伺います。
 
答弁7
 ▼知事
 我が国経済の現況についてでありますが、企業収益の改善や設備投資が増加するなど、景気の回復を示す指標は着実にふえてきてはおりますが、一方では、アメリカ経済の減速や世界的な原油価格の高騰など、懸念材料も多くございまして、まだまだ予断を許さない状況にあると認識しております。
 我が国の経済がデフレから脱却し、国際競争力を取り戻してさらに発展していくためには、短期的な経済の動向に一喜一憂することなく、社会のさまざまな制度疲労がもたらす構造的な課題に的確に対応し、真の日本経済再生を図ることが必要であると考えております。
 次いで、予算編成における課題についてでありますが、十七年度予算編成に当たっては、国際競争力の向上や治安の回復、中小企業対策など、喫緊の課題に対して重点的、効果的に財源を配分し、東京、ひいては日本の再生を図ることが求められていると認識しております。
 また、一方で、都財政は巨額の財源不足や隠れ借金が依然として存在しておりまして、基金残高も減少するなど、財政の対応能力は既に限界を迎えつつあります。このため、第二次財政再建推進プランを強力に推進し、財政運営上のこうした問題を解決していくことが不可欠となってきております。
 したがって、来年度予算編成における最大の課題は、首都東京の再生と都民サービスのさらなる充実を目指しつつ、財政再建の足取りを確かなものにすることであると認識しております。
 
■多摩振興に関する重要課題
 
質問1
 横田基地の問題について伺います。
 新聞報道等で明らかなように、現在、世界的規模で米軍の再編が進められており、その中で横田基地のあり方に関してもさまざまな意見が出ており、協議の行方が注目されております。
 我々は、立川飛行場と同様に、横田飛行場についても、その返還を実現し、多摩の活性化に役立てていくべきと考えます。また、一都八県にまたがって存在する米軍管理の横田空域のため、羽田空港と西日本を結ぶ航空機は、不自然な非効率な飛行を強いられているばかりか、航空路の過密化により、安全面での懸念も生じています。こうした問題を解決するためには、横田空域についても一刻も早い返還を実現することが必要であります。
 そこで、横田基地並びに横田空域問題に対する知事の基本的取り組み姿勢について伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 横田基地及び横田空域の返還についてでありますが、米軍再編の動きの中、いわゆるトランスフォーメーションの中で、米空軍は主要な機材を既にグアムに移しておりまして、横田基地の平時における軍事的な比重はほとんどもう低下しております。この機をとらえ、返還に向けた第一歩として、米側に軍民共用化を迫ることが必要であると思います。
 さきにテキサス州での小泉総理、ブッシュ大統領のサミットの会談の中で、前日にも電話がかかってまいりましたが、外務省を通すと事がごたごたするだけで、自分がじかにこれを持ち出すということで、サミットの主題になりまして、ブッシュ大統領もこれを了承した瞬間、これは、アメリカ側では国務省を飛び越して国防省のマターになって、向こうの司令官が具体的にアプローチをしてくるような進展を見せましたが、だめなのは日本側でありまして、先般も、実は、軍民共用した後の、東京側がこれをいかに使うかというコンセプトを示してほしい、それは東京に依頼がありましたので、日本側の案として出しまして、それに対する回答が、米軍として出しているのに、回答など来てないということを、外務省はうそをつく。この間、どうもらちが明かないので、防衛庁の事務次官を呼びまして話しましたら、いや、来てますよということで、来てることは確かですけれども、私も詳細は知らない。つまり外務省は、何かこの問題のイニシアチブを東京都がとったことがこけんにかかわるのかどうか知りませんが、いずれにしろ、そのトランスフォーメーションの大きな動きの中で、これは一回棚上げして先送りしようというのがどうも基本的な姿勢のような気がしますので、これはもうけしからぬ話でありまして、今後も官邸を通じてプッシュしまして、トランスフォーメーションはむしろ、内容をいろいろ検討しますと、横田の返還にも通じる大きなきっかけになると思いますので、東京都としても積極的に動いていくつもりでございます。
 ご指摘のように、この空域が返還されて日本の管制下に戻りますと、西行きの幹線を飛ぶ飛行機は、大阪に行くにしろ、あるいは博多に行くにしろ、あるいは韓国に行くにしろ、十分以上時間が短縮されるわけでありまして、これは非常に経済効果もあるわけでありまして、そういったものを踏まえて、これから米側にというよりも、国といいましょうか、外務省に強く、しりをたたいて、これが早期に実現されるように努力をするつもりでございます。
 

 
質問2
 次に、道路整備について伺います。
 まず、圏央道ですが、青梅インターから日の出インター間が既に完成しており、続くあきる野インターまでの区間は十六年度に、さらに、あきる野インターから中央道に接続する八王子ジャンクションまでの区間についても十七年度開通を目指して整備が進められております。圏央道の機能を十分に発揮させ、周辺の道路交通の円滑化を図るために、これらの整備に合わせて、各インターに接続するアクセス道路の整備が重要と考えます。
 そこで、圏央道アクセス道路の整備状況と今後の取り組みについて伺います。
 
答弁2
 ▼建設局長
 圏央道アクセス道路についてでございますが、アクセス道路は、圏央道の機能を十分に発揮させ、多摩自立都市圏の形成を図る上で重要な道路でございます。
 都は、新五日市街道など六路線をアクセス道路として位置づけ、これまでに五路線の整備を完了しております。
 現在事業中の新滝山街道は、あきる野インターから高尾街道までの区間が本年四月に開通し、全線七キロのうち三・三キロが完了したことにより、高尾方面とのアクセスが大幅に改善いたしました。残る三・七キロにつきましては、事業中区間の整備促進を図るとともに、未着手であった高尾街道から東側二・六キロの区間におきましても、今年度から用地取得を進めてまいります。
 

 
質問3
 圏央道を初め高速環状道路の事業が促進される一方、多摩地域の幹線道路はいまだその整備が不十分であり、加えて、踏切や交差点、橋梁など、通行の妨げにより、慢性的な交通渋滞が発生しています。都市計画道路については、現行の第二次事業計画が終了する十七年度末を目途に、新たに多摩地域における都市計画道路の整備方針の策定が進められていると聞いております。多摩地域における今後の道路整備のあり方について、知事の所見を伺います。
 
答弁3
 ▼知事
 多摩地域における今後の道路整備についてでありますが、多摩地域は、圏央道の完成や横田基地のこれからのあり方次第で、都市構造が大きく変貌を遂げる地域だと思います。一方で、観光を含めたさまざまな産業の振興により、多摩を自立性の高い活力ある圏域に形成していくことが求められております。
 私も驚きましたが、巨木というのは直径二メートル以上ある木のことだそうでありますけれども、この巨木の数が一番多いのは東京都でありまして、奥多摩の森がそれでありまして、一部、御蔵島のような島もありますが、こういった、つまりだれが仰いでもさわってでも感動する巨木という観光資源が日本で一番数多くありながら、残念ながら、これが情報としても活用され切れてない。いずれにしろ、これも経済活動の一つになると思いますけれども、いずれにしろ、そういう可能性を開発するためにも、それを支えていく骨格道路を整備し、広域的に人や物の流れの円滑化を図ることが絶対に必要だと思います。
 今後も地元の意見を踏まえて道路整備を推進し、東京のみならず首都圏の活力の一翼を担う多摩を実現していきたいと思っております。
 

 
質問4
 多摩地域の新たな整備方針では、区部と同様、優先整備路線の選定が行われると思いますが、選定に際しての都の考え方を伺います。
 
答弁4
 ▼都市整備局長
 多摩地域の都市計画道路の新たな整備方針についてでございますが、優先整備路線の選定に際しては、まず渋滞緩和や防災性の向上、環境改善の視点を基本に考えております。
 加えて、横田基地の軍民共用化を視野に入れるとともに、近隣県などとの広域的な道路網の形成や都市間の連携強化、沿道の街並み景観の創設など、多摩地域の特性を生かす視点を重視したいと考えております。
 今後、関係市町と連携し、多摩地域の発展に資する道路整備を推進してまいります。
 

 
質問5
 都市計画道路の中でも、調布保谷線、府中所沢鎌倉街道線など南北幹線道路五路線の整備は、各地域が自立しつつ、それぞれの機能を効率的に結びつけ交流を進めていくためにも、早急に進める必要があります。南北道路の整備状況と今後の取り組みについてもお伺いをいたします。
 
答弁5
 ▼建設局長
 多摩南北道路についてでございますが、南北道路は、交通の円滑化はもとより、豊かな都民生活を支える上で重要な幹線道路でございます。
 このうち調布保谷線、府中清瀬線、八王子村山線では、早期完成に向け、多摩川原橋や是政橋など橋梁部も含め、全線にわたり事業を推進しております。
 また、府中所沢鎌倉街道線、立川東大和線では、府中区間や国立市谷保区間等におきまして今年度末の開通を目指すなど、事業中区間の早期整備に取り組んでおります。
 未着手区間では、府中所沢鎌倉街道線の国分寺区間の事業化に向けて、引き続き沿道環境に配慮した質の高い道路整備を目指し、必要な手続や調査を進めてまいります。
 

 
質問6
 これまで我が党は、渋滞解消だけでなく沿線のまちづくりにも大きな効果がある連続立体交差事業の促進を強く求めてまいりました。既にJR中央線では線路の切りかえ工事が実施され、また、JR南武線においては一部の区間で高架化が行われるなど、事業は着実に進められています。早期完成に向けた今後の取り組みについて伺います。
 
答弁6
 ▼建設局長
 多摩地域の連続立体交差事業についてでございますが、本事業は、南北方向の交通渋滞や地域分断を解消し、都民生活と都市活動を向上させる重要な事業でございます。
 JR中央線は、三鷹─国分寺間で、本年、仮線への切りかえを完了し、来年度、高架橋工事に着手いたします。西国分寺─立川間では、来年度から仮線への切りかえを行う予定でございます。
 また、JR南武線は、現在、矢野口駅付近の高架橋工事を行っており、来年度には鶴川街道など八カ所の踏切を除却いたします。
 今後とも、圏央道アクセス道路、南北道路などの道路整備事業や連続立体交差事業について、道路特定財源を原資とする国費の拡大など財源確保を図りながら、住民の理解と協力を得て積極的に推進してまいります。
 

 
質問7
 さらに、渋滞緩和の効果を早期に実現できる交差点すいすいプラン一〇〇を引き続き強力に推進していくため、次期の交差点すいすいプランを策定中と聞いていますが、現在の策定状況と今後の取り組みについてお伺いをいたします。
 
答弁7
 ▼建設局長
 次期交差点すいすいプランについてでございますが、現行プランは、比較的短期間に少額の投資で交通渋滞の緩和や沿道環境の改善などに大きな効果を上げております。
 新たなプランの策定に当たりましては、路線全体の効果を一層発揮させるため、これまでの実績や他事業との連携を重視した箇所の選定を進めております。
 また、都と地元市町とが協力して、より効率的な事業執行ができる体制づくりにも取り組んでまいります。
 年内に中間のまとめを公表し、都民の意見を参考にしながら、本年度じゅうに次期プランを策定してまいります。
 

 
質問8
 中央道の料金問題についてお伺いをいたします。
 多摩地域の住民が高速道路を利用して都心に行く場合、中央道と首都高の両方の道路を使用しなければなりません。しかしながら、同じ東京都であるのにもかかわらず、その料金は、利用者や都民の感覚から見て合理的な料金体系とはなっていません。これまでこの問題については我が党としても幾度となく要請してきたところですが、残念ながら今日まで実現されていない状況です。過日、日本道路公団総裁に対して、多摩地域と区部との間の高速道路料金負担が軽減されるよう要望してきたところであります。
 そこで、これまでにない大胆な発想のもと、中央道の高井戸から八王子インター間を東京都が買い取り、この区間を無料化して都民に解放してはどうでしょうか。取得に要する費用や将来にわたる管理費など膨大な財政負担の問題があるでしょうが、多摩地域の振興の観点からぜひとも実施すべきと考えますが、見解をお伺いをいたします。
 
答弁8
 ▼都市整備局長
 中央自動車道の料金問題についてでございますが、多摩地域から都心へ高速道路を利用するに当たりましては、首都高速道路と中央道の管理者が異なることから、別料金となっております。このため、高井戸から八王子までの区間を首都高に組み入れ、高速道路利用における料金格差の是正を求める要望がかねてからあったことは承知しております。
 今般、都議会自由民主党の国や日本道路公団への働きかけなどにより、中央道のETC利用者につきましては、本年十一月より、深夜時間帯の料金が三割引に、さらに一月には、割引時間帯が広がるとともに、割引率も五割に拡大することとなりました。
 ただいまいただきました新たな提案につきましては、公団民営化に向けた高速自動車国道の仕組みを初め多くの困難な課題がありますが、都といたしましては、高速道路の料金体系について、さらに利用者の視点に立った見直しが行われるよう、関係機関に働きかけてまいります。
 

 
質問9
 産学公連携について伺います。
 都の新しい大学である首都大学東京は、ダイナミックな産業構造を持つ高度な知的社会構築の実現を目指し、その一環として、来年四月開校に合わせ、日野キャンパス、現在の科学技術大学に産学公連携センターの開設を予定していると聞いています。日野キャンパスのある地域は、先端的な電子部品や電気・機械器具製造業などが集積するとともに、大学や企業の研究機関も数多く立地しています。産学公連携センターは、多摩地域を初めとする東京全体の産業振興に向けて、今後どのような取り組みを行っていくのか、見解を伺います。
 
答弁9
 ▼大学管理本部長
 首都大学東京は、大都市東京をベースとする地場優先の大学として、研究成果を社会に還元し、中小企業等の振興に寄与する大学としていく必要がございます。平成十七年四月、新大学開学と同時に開設予定の産学公連携センターにおきましては、こうした観点から、技術移転や共同研究などを通じ、大学と企業、行政、試験研究機関などとの緊密なネットワークを組織的に構築してまいります。
 首都大学東京の研究成果を企業に移転し、製品化、実用化につなげるという明確な目的意識を持って、実効性の高い具体的な成果を上げ、東京の産業振興に貢献できるよう積極的に取り組んでまいります。
 

 
質問10
 府中病院のキャンパスに建設を予定している小児総合医療センターについては、清瀬小児病院、八王子小児病院、梅ケ丘病院の三つの小児病院の医療機能をそのまま移転するのでなく、将来を見据え、百年の計に立って、都における小児医療の拠点として整備を進めていくことが重要です。医療機能の集約や人材の有効活用など、三病院を統合するメリットを生かし、また、あすを担う子どもたちの未来を約束する施設として整備されてこそ、意味あるものと考えます。小児総合医療センターの機能について、都はどのような考え方に立って整備を進めていくか、伺います。
 小児科医の不足は、高齢化が叫ばれている今日、将来にわたり安定的な小児医療の提供体制を構築していくためには、何よりも診療を担う小児科医を育成し、定着させていくことが基本といえます。
 そこで、新しく整備する小児総合医療センターを小児科医などの臨床医を育成する場として積極的に活用していくべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁10
 ▼病院経営本部長
 小児総合医療センターの機能についてでございますが、同センターは、子どものさまざまな疾患に対する高度かつ専門的な医療はもとより、小児精神部門と一般小児部門とが共同して、心と体の両面から総合的な医療を提供してまいります。
 また、隣接する多摩広域基幹病院と連携をいたしまして、出生から小児期、思春期、成人に至るまでの継続的な医療を提供するなど、将来の小児医療の発展を視野に入れ、国内外の小児医療をリードする拠点として整備をしてまいります。
 次に、小児科医などの臨床医の育成についてでございますが、医科大学を有しない東京都といたしましては、ご指摘のとおり、豊富な症例に接することができる小児総合医療センターを臨床医の育成の場として活用していくことが、大変重要なことと認識をしております。
 このため、同センターにおきまして、初期の臨床研修から高度な専門研修に至る臨床教育の体系を整備いたしまして、幅広い診療能力の修得の場として提供することにより、国に先駆けて小児医療分野における人材育成に努めてまいりたいと存じます。
 

 
質問11
 深刻な状況にあります多摩地域のシカ被害についてであります。
 本年、第一回定例会において我が党の臼井議員が本件について質問し、また八月には、宮崎、倉林、林田の三議員が、奥多摩町の厳しいシカ被害の現場を視察してまいりました。
 シカの生息数は現在三千頭と推計されるまでに急増しており、杉、ヒノキの苗木を初めあらゆる植物を食い荒らし、森林の表土がむき出しになって裸地化しています。また、七月の局地的な豪雨により、裸地化した森林から土砂の流失や土石流が発生し、町の水道施設や民間の変電施設が大きな被害を受けました。今後、被害がさらに拡大すれば、森林の機能が十分に発揮されなくなり、都民の飲み水である奥多摩湖の水質が悪化することも予想されます。
 こうした事態は既に市町村の手に負える状況にはなく、都として直ちに緊急対策を講ずるべきときであると考えます。都は、シカ被害の実態をどのように把握しているのか。また、シカ被害に対して関係各局において当面どのような対策を講じていくのか、伺います。
 対策を進めるに当たって、当面、緊急対策とともに、シカの適正な生息頭数を管理する長期的、具体的な計画が不可欠です。そして、策定した計画に基づき、関係局が密接に連携し、実効性のある事業を都庁の総力を挙げて進めるべきであります。
 また、生息域が山梨県、埼玉県にまたがっていることから、隣接県と共同で取り組む広域的な対策も必要があると思います。シカの頭数管理を含む対策について、さきに指摘をした視点も踏まえ、今後どのように取り組んでいくのか、伺います。
 
答弁11
 ▼環境局長
 まず、シカ被害の実態と当面の対策についてでございますが、急増したシカの食害により、多摩の森林では、広範囲にわたり樹木の立ち枯れ、下草の消失、土砂の流出などの被害が生じ、多摩の自然に対して深刻な影響を与えており、都民の水道水源であります奥多摩湖への影響も懸念されている状況にございます。
 被害をこれ以上拡大させないため、庁内に設置いたしましたシカ対策連絡調整会議におきまして、シカの捕獲、治山治水など、十六年度に実施する緊急対策を取りまとめたところでございます。関係各局が連携いたしまして、速やかに対策を推進してまいります。
 まず、シカの捕獲につきましては、奥多摩町などと協力いたしまして、水道水源林を含め六百頭の捕獲を行うほか、山梨県域にある水道水源林についても関係自治体と調整を図っていきます。
 また、川乗山の治山工事、峰入川支流における砂防ダムの設置、水源林の被害防止対策なども行ってまいります。
 さらに、奥多摩町営の水道施設につきましては、飲み水の安全で安定的な供給が確保されますよう、積極的に支援してまいります。
 次に、シカの頭数管理を含む今後の取り組みについてでございますが、対策を計画的、効果的に進めるため、生息調査に基づく適正な頭数管理を基本に据えたシカ保護管理計画を早急に策定いたしまして、各局連携のもと、シカの計画的な捕獲、植生の回復などの実効性ある対策を推進していきます。
 対策の実施に当たりましては、市町村及び関係団体等と十分な連携を図りますとともに、隣接する山梨県、埼玉県とシカの捕獲を共同で行うなど、広域的な取り組みも進めていきます。
 これらにより、多様な動植物の共存、水源涵養、土砂流出防止など、森林の多面的な機能が確保された多摩の豊かな森を再生してまいります。
 

 
質問12
 以上、個別の課題を幾つか述べてまいりましたが、これまでの多摩振興策として、多摩の将来像二〇〇一や、多摩アクションプログラムが策定されているものの、実効性のある方策がいまだ十分に示されていないのではないでしょうか。多摩地域は首都東京のさらなる発展のかぎを握る地域であることは間違いなく、都としても今まで以上に積極的に事業を展開し、課題を解決していくことが必要であると考えます。
 そこで、多摩振興に関して最後に知事に、東京都あるいは首都圏の中で多摩地域をどのような地位に位置づけ、今後どのように多摩振興に取り組んでいくのか、決意を伺います。
 
答弁12
 ▼知事
 多摩地域の振興についてでありますが、多摩地域は、圏央道が完成したり横田の基地が軍民共用、さらに返還されることによって、東京に大きな活力を呼び戻し、首都圏の発展を牽引する大きな可能性を秘めた地域であると認識しております。多摩振興に当たっては、こうした可能性を強力に開花させていくことが必要でありまして、このため、交通基盤、産業振興、医療、環境など、多摩地域の発展をリードし、重点的に取り組むべき事業を年内にも明らかにし、活力と魅力にあふれた多摩の実現に力を尽くしていきたいと思っております。
 
■島しょ振興
 
質問1
 初めに、村民の悲願である帰島が実現することになりました三宅島から伺います。
 都は、村の支援要請を受け、三宅島帰島支援対策本部を設置して、現地にも職員を赴任させるなど、全庁的な取り組みを開始しました。我が党も、この一日、知事に対して、緊急要望書を提出して、宅地内の土砂排除、阿古漁港の施設復旧、居住不可能になった村民の住宅確保など八項目について、早急に取り組むよう申し入れを行ったところです。帰島するかどうかは最終的には村民の判断となるわけですが、行政による支援も欠かせません。
 都は、全島避難以来、さまざまな形で避難中の村民を支援してまいりました。この三月、国が法律を改正して、居住安定支援金など、最高二百万まで支給できるようになったことは大きな前進でありますが、その用途は住宅本体の建設費用には充てられず、その額も決して十分とはいえません。今回の災害の状況にかんがみ、村民の自立支援を一層促進するなど、都独自の新たな支援制度を創設することも必要と考えますが、見解を伺います。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 三宅村民に対する都独自の新たな支援制度の創設についてでありますが、村民の生活再建は、自助努力を基本に、国の被災者生活再建支援制度を初めとする既存の制度を活用しながら進められるものと考えております。
 しかしながら、今回の三宅島噴火災害は、村民が四年以上の長期にわたって避難生活を余儀なくされている過去に例のない災害であり、住宅などの生活基盤も甚大な被害をこうむっている状況にあります。
 今後、ご提案の趣旨も踏まえ、関係局と緊密な連携を図り、適切に対応してまいります。
 

 
質問2
 医療体制の確保についてですが、帰島方針の発表以来、三宅支庁や三宅村の職員が島に渡り、来年二月の村民の帰島を迎えるため、準備作業に取り組んでいます。また、十月以降、公共施設復旧のため、作業員の増員や村民の準備帰島が始まります。現地において確保が困難な医師や看護師などの配置について、都はどのように考えているのか、お伺いをいたします。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 三宅村への医師や看護師等の配置についてでありますが、依然として火山ガスが発生している三宅島において、村民が安心して帰島し、生活できるようにするためには、医療体制を十分に確保することが極めて重要であると認識しております。
 こうした観点から、今後、三宅村の要望に十分こたえられるように、村民の帰島スケジュールに合わせまして医師の確保に万全を期すとともに、看護師などの医療スタッフの配置についても積極的に支援してまいります。
 

 
質問3
 帰島後に村民の皆さんが自立していくためには、さきに掲げた支援金の支給に加え、就労の場の確保が何よりも重要です。島内においてはインフラ整備はほぼ完成しているものの、今後もまだ多くの復旧事業が必要となってくると思います。このような事業に村民を優先して雇用していくべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁3
 ▼総務局長
 三宅島帰島に伴います復旧事業への村民の優先雇用についてでございますが、村が真に復興するためには、村民が就労によりましてみずから収入を得て、自立して生活していくことが重要な課題でございます。
 このため、帰島後当面の間におきましては、島内で実施されます砂防ダム建設等の災害復旧事業や農地復旧、漁場整備等の産業基盤整備事業に積極的に村民を雇用するなど、村民の就労の場の確保に努めてまいります。
 

 
質問4
 知事は、三宅村長の要請を受け、帰島への取り組みを全力で支援していくとのコメントを発表されましたが、改めて三宅島の支援に向けた知事の力強い決意のほどを伺います。
答弁4
 ▼知事
 三宅島の帰島支援についてでありますが、危険な火山ガスが発生している中での帰島については、あくまでも自己責任により、村民の方々が自身で判断されて選択されるべきものと思っております。
 この自己責任という意味が非常に強くゆがんでとられて、何か都は、我々を見放した形で、おまえら勝手にしろといっているのかというふうな誤解があるようですが、そうではないんです。しかし、例を挙げますと、今まで都は、いつ皆さん帰っていただいてもすぐ生活できるように、住宅は別でありますけれども、社会資本、特にライフラインの整備はいたしましたし、次の災害に備えての砂防ダムもほとんど完成いたしました。しかし、ガスだけは防ぎようがないわけでして、こういう作業の間に頻繁に現地に赴いていた東京の職員、課長ですけれども、体質的に非常に弱い人で、子どものころから小児ぜんそくの気があった。それはもうすっかりおさまって治ってたと思ったら、この作業をやっておられて頻繁に三宅島に行っていたために、病気が再発したんです。こういう事例がございまして、これは人によって条件が違うでしょうけれども、それがさらに悪い形で出てきた場合の責任というのは、これはやっぱりご自身が認めていただきませんと、そこまで東京都がギャランティーするわけにはとてもまいりません。現に専門家は、いまだに危険だということを申しているわけでありまして、それでも皆さんが、帰心矢のごとしということで、あえて島に帰られると、地域によっては依然として危険なところがあるわけで、そこは作業の場でもあったりするわけですから、そういう意味で自己責任ということを申し上げました。
 いずれにしろ、三宅村は、ガスの状況、村民の意向、安全対策などを総合的に判断し、来年二月を目途に帰島する方針を決定されたわけであります。
 都は、村の決定を尊重し、直ちに副知事を本部長とする帰島支援対策本部を設置いたしまして、帰島に備え、漁業施設や生活に関連した公共施設などの復旧、山林の保全などの緊急支援事業を実施してまいります。来年の二月の円滑な帰島に向けて全力で支援をいたしてまいりましたし、それは評価もし、ご理解いただきたいと思います。
 

 
質問5
 都が発表した小笠原諸島振興開発計画素案について伺います。
 小笠原諸島は昭和四十三年に日本へ復帰して以来、島民の皆さんを初め、関係者が一丸となって復興に取り組んでまいりました。その結果、今日まで、住宅、道路を初めとする生活基盤や港湾設備などの産業基盤の整備が進み、過去に比べ、島民の生活や福祉は向上してきているといえます。これは、これまでの振興開発事業の成果と考えます。
 しかしながら、高齢社会を迎えた今日、福祉、医療の充実や島内の産業活動の活性化など、課題も山積し、自立へ向けた取り組みが今後一層求められるところであります。
 小笠原諸島は、その地理的条件等がはぐくんだ貴重な固有種が生息する自然の宝庫として、世界的にも注目されています。今後の課題である島内産業の活性化には、こうした自然の財産を活用した観光業の充実が不可欠であります。都が定める振興開発計画ではどのように小笠原諸島の振興開発に取り組んでいくのか、伺います。
 
答弁5
 ▼総務局長
 小笠原諸島の振興開発についてでございますが、復帰以来、都は、島の振興と生活の安定を目指しまして、産業基盤や生活基盤の整備に重点的に取り組んでまいりました。
 今回の振興開発計画素案では、最大の地域資源でございます恵まれました自然環境の保全と観光振興の両立によります自立的発展を目指すことを基本理念としております。
 具体的には、例えば、世界自然遺産の登録に向けまして、移入種対策や、自然保護上重要な地区の指定を実施するとともに、来年のテクノスーパーライナーの就航を契機に、観光客の増加を目指し、新たな観光ルートの開発や宿泊施設など受け入れ態勢の充実に取り組んでまいります。
 

 
質問6
 島しょ地域において、独特の教育活動を行っている大島南高校について伺います。
 この高校では、実習船を持ち、海洋に囲まれた環境の中で、島外からの生徒が寄宿舎で寝食をともにしながら学んでいます。大海原での実習を通じて、今の若者に不足がちの忍耐やおのれにかつ心を育成するなど、こうした環境ならではの全人的教育が可能であります。
 また、各国からの留学生を受け入れ、寄宿舎でともに生活し、学ぶことによって、国際的視野を持った人材育成が行えるなど、アジア、環太平洋諸国の国際交流の拠点とすることも可能です。
 そこで、こうした内容の実現に向けた取り組みについて、所見を伺います。
 
答弁6
 ▼教育長
 都立大島南高校におけます全人格的教育や国際交流についてでございますが、お話しのとおり、海洋に囲まれた環境の中で、実習船や寄宿舎を活用した全人格的教育を行うことや、アジア・環太平洋諸国の国際交流の拠点としますことは、次代を担う国際感覚豊かな、たくましい人間を育成する上で、極めて意義あることと認識しております。
 こうした大島南高校が持ちます施設設備上の利点や地理的条件を最大限に生かした教育のあり方につきまして、今後、庁内に検討組織を設置しまして、大島町や関係機関とも十分協議しながら検討を進めてまいります。
 
■治安対策
 
質問1
 危機的状況と思われていた東京の治安を早期に回復するため、昨年八月、東京都は緊急治安対策本部を設置しました。これにあわせて、我が党も同様の本部を設け、行政と議会が一体となっての取り組みを行っています。この間、関係機関や都民の方々の努力には心から敬意を表します。
 その後、東京の治安状況は、検挙件数、検挙人員、検挙率がいずれも向上しているばかりでなく、特に強盗、ひったくり、侵入窃盗など、都民が実感できる犯罪の認知件数が、本部発足前の昨年度同期と比べて二〇%以上減少し、改善の兆しがあらわれつつあると聞いております。
 知事はこの一年を振り返って、東京の治安状況をどのように評価されるのでしょうか。
 
答弁1
 ▼知事
 東京の治安状況についてでありますが、治安の維持こそ最大の都民福祉であるという観点から、治安対策が首都東京における緊急の課題であると考え、昨年、治安対策担当の副知事を置き、そのもとに緊急治安対策本部を設置いたしました。
 以来、東京都が率先して、不法滞在外国人対策を初めさまざまな施策を展開してまいりました。このことが世論を動かし、治安回復に向けた国の本格的な取り組みを──やや動きが見られまして、さらには、区市町村、民間団体などの動きにもつながってきたと思います。
 現在、各地で防犯のパトロールや防犯設備の自主的整備が進められるなど、都民の中に、もう自分たちの安全は自分たちで守るという積極的な姿勢が定着し始めております。
 こうしたさまざまな取り組みの結果、東京の治安にはやや回復の兆しが見え始めたと評価しておりますが、まだまだ努力が必要であります。
 例えば、不法入国者あるいは不法滞在者による犯罪を減らすためには、我が国が必要とする外国人勤労者が日本に定住し、正規に働けるような、思い切った大規模な移民政策を確立することなどが私は必要だと思います。
 私はよく勘違いされて、レイシストなんていわれますけれども、私は代議士のころから、実は、日本は大幅な移民政策をとるべきだということを主張してまいりました。そもそも日本人は決して単一民族ではございません。日本の従来の原住民の方々は、北海道のアイヌの方々と沖縄の方々でありまして、これを分断する形で、朝鮮半島経由で、あるいはシナ海を渡って、大陸などから多くの民族が日本にやってきて、ここで混血したわけでありまして、そういう意味では、アメリカ合衆国の「しゅう」を、ステーツの州ではなしに大衆の衆と書いた例もございますけれども、日本はまさに、世界で最も典型的な合衆国だと思います。その我々のルーツはシナにあり、朝鮮にあり、あるいはモンゴルにあり、メラネシアにもあり、インド、パキスタンにもあるわけでありまして、私は、そういう意味で、私たちはちゅうちょすることなく、大きな目的のために、治安もその一つでありますけれども、国としては積極的な移民政策を展開すべきだと思っております。
 今後も、都民の方々や国その他の関係機関と協力して、一日も早く東京の治安の本格的な回復を実現していきたいと思っております。
 

 
質問2
 東京の治安を回復するためには、地域の警察活動の拠点となる交番や駐在所の役割は極めて重要です。私は地域の安全・安心の核となるのは、地域に根づいた交番、駐在所であると考えます。
 一方、交番不足から、犯罪の多発に危機感を募らせた町田市の繁華街では、民間交番をこの秋に開設するとの報道もなされています。一時よりは改善されたものの、犯罪認知件数は依然深刻な状況にあります。そうした意味で、交番の人的拡充はもちろんですが、老朽化した狭隘な交番や駐在所の新築、増改築を急ぐ必要があります。
 そこで、交番の整備促進を通じて、地域の人々の安心と信頼を回復するよう、緊急交番整備事業というようなものを提案したいと思いますが、警視総監の所感を伺います。
 
答弁2
 ▼警視総監
 交番、駐在所が地域の警察活動の拠点として大変重要な役割を担っていることは、議員ご指摘のとおりであります。
 このために、警視庁といたしましては、交番、駐在所の設置につきまして、その地域における事件、事故の発生状況あるいは人口、面積等、その地域の実情を総合的に勘案して、計画的に行ってきているところであります。
 また、交番、駐在所の増改築につきましては、必要性の高いものから、これまで順次整備をしているところでありまして、この五年間で八十九カ所の増改築を行ったところでありますけれども、今後とも、新設を含めまして、ただいま申し上げました状況を勘案しながら、交番等の整備促進を図ってまいりたいと考えております。
 

 
質問3
 青少年をめぐる問題も大変気がかりです。東京にとどまらず、全国的に少子化が進んでいる一方で、不登校の児童生徒、非行少年、児童虐待件数が増加し、青少年の性行動に関する規範が低下するなどの問題が発生し、我々も東京の将来を担う青少年が置かれている状況を憂慮しております。
 このたび東京都は、庁内、区市町村、関係機関の力を結集して、青少年育成総合対策推進本部を設置し、青少年の健全育成に複合的、重層的に取り組むこととしていますが、同本部の本部長を務める竹花副知事が青少年をめぐる現状をどのように認識され、どのような取り組みをされようとしているのか、所見を伺います。
 
答弁3
 ▼竹花副知事
 青少年問題への取り組みについてお答えいたします。
 これまで、緊急治安対策として少年犯罪対策に幅広く取り組んできましたが、その中で、青少年をめぐる危機は、少年犯罪にとどまらず、例えば不登校、高校中退者の問題、働く意欲も学ぶ意欲も持たないニートと呼ばれる若者の増加、あるいはネット社会の持つ子どもたちへの悪影響、さらには青少年の無軌道な性行動の問題など、多様な問題があることを実感してまいりました。
 また、このような状況が続けば、多くの青少年の幸せな人生を確保できないばかりか、我が国社会の将来にも重大な懸念が生じかねないと思っております。
 そこで、都といたしましては、八月に青少年育成総合対策推進本部を設置いたしまして、関係部局、国、区市あるいは警察等から職員を受け入れ、総合的な対策を講ずる体制をつくったところでございます。
 そこで、まず、青少年をめぐる、今申し上げましたような危機というものの内容について、多くの都民と認識を共有するための手だてを講じてまいります。そして、例えば社会的不適応につながる可能性のある不登校、高校中退についての対策や、ネット社会に翻弄されないための取り組み、性行動のあり方についての検討などを進めてまいります。
 この課題が簡単なものではないことは重々承知をいたしておりますけれども、子どもたちのために、日本の社会のために、議会の皆様方はもちろんのこと、都民の方々や関係団体、関係部局と一体となりまして、社会全体の動きの起爆剤となるように、真剣に取り組んでまいりたいと考えております。
 
■無電柱化推進計画
 
質問1
 電柱や電線は歩行者や自転車の通行の支障となり、さらに災害時の電柱の倒壊は避難や救助活動に大きな障害となります。電線類の地中化事業の推進は差し迫った課題といっても過言ではありません。
 そこで、都は無電柱化推進計画に基づき、平成十六年度から五カ年で、四百二十キロメートルの電線類の地中化を行うこととしています。これを着実に実現するためには、これまで以上に地中化事業を強力に推進する必要がありますが、そのための方策について伺います。
 
答弁1
 ▼建設局長
 無電柱化推進計画についてでございますが、電線類の地中化事業は、防災機能の強化、安全で快適な歩行空間の確保、良好な都市景観の創出を図る上で大変重要でございます。
 この計画の推進に当たりましては、さらなるコスト縮減と事業期間の短縮の取り組みが不可欠であります。そのため、浅い位置への埋設と構造のコンパクト化を図った次世代型電線共同溝を本格的に採用するとともに、電線管理者が所有しているマンホールや管路の既存ストックを有効に活用してまいります。
 今後とも、財源の確保を図りながら、電線管理者や地元区市等と連携し、地中化事業を一層推進してまいります。
 
■豪雨災害対策
質問1
 この七月、新潟、福島地方において、深刻な水害が発生をいたしました。一日に四〇〇ミリを超える猛烈な豪雨の結果、堤防の決壊などにより、家屋約一万四千戸、道路や橋梁の破壊や冠水など甚大な被害が発生し、特に痛ましいことは、高年齢者を中心に、十五人ものとうとい命が失われました。その後も福井県の集中豪雨や台風十六号などにより、全国各地で大きな被害が生じています。
 我が党は、災害発生直後、直ちに議員など七名を新潟県に派遣し、復旧活動を支援する中で、改めて水害の恐ろしさを実感いたしました。東京が同様の豪雨に見舞われたならば、大規模な冠水により、首都機能が麻痺し、我が国の社会経済活動に大きな影響を与えることは確実です。このような事態を防ぐためにも、水害への備えを着実に実施すべきと考えますが、水害対策の基本となる河川整備の取り組みについて伺います。
 
答弁1
 ▼建設局長
 河川整備の取り組みについてでございますが、水害から都民の生命と財産を守るため、現在、一時間五〇ミリの降雨に対処できるよう河川の整備を進めておりまして、その整備率は五九%でございます。
 このため、水害のおそれの高い神田川、空堀川等におきまして引き続き河道の拡幅を進めるとともに、環状七号線地下調節池などの整備を行い、水害の早期軽減を図ってまいります。
 また、新潟、福井などでの水害を受け、直ちに緊急点検を実施いたしました。その結果を踏まえまして、護岸の補強や根固め等の防災工事を緊急度の高い箇所から早急に実施してまいります。
 今後とも、財源の確保に努め、重点的かつ効率的に事業を推進してまいります。
 

 
質問2
 また、今回のような記録的な豪雨に対しては、地域の方々に的確な情報を迅速に提供するソフト対策が欠かせません。そのための取り組みはどうなっているのでしょうか。
 
答弁2
 ▼建設局長
 河川のソフト対策の取り組みについてでございますが、大雨の際の河川水位や雨量の情報提供、ハザードマップの公表などは、迅速かつ的確な避難や都民みずからの災害対策への取り組みに大変有効でございます。
 これまでも、インターネット等による情報提供を行うほか、神田川など区部の十六河川におきまして浸水予想区域図を公表してまいりました。今回の豪雨災害を踏まえ、多摩地域の浸水予想区域図は、一年前倒しいたしまして来年度公表するとともに、新たに河川の水位予測情報の提供についても検討を進めてまいります。
 今後とも、浸水被害の軽減に向け、関係防災機関と連携し、ソフト対策に積極的に取り組んでまいります。
 
■東京港から物流改革
 
質問1
 東京港の国際競争力強化と東京港から発信する物流改革について伺います。
 東京港はこの七月、隣接する横浜港とともに、京浜港として、いわゆるスーパー中枢港湾の指定を受けました。スーパー中枢港湾のねらいは、港湾コストの低減やコンテナ貨物の通過時間の短縮など、世界の先進国に匹敵するレベルまでに高め、危機に瀕する我が国国際港の起死回生を図ることにあり、東京港から発信する物流改革は、まさにこれからが正念場であります。
 我が国企業の生産拠点の海外展開に伴い、東アジア諸国との物資の輸送は、国内輸送に準じて緊密なものとなっています。また民間企業ではIT化やシステム化など、物流効率化に向けた必死の取り組みがなされています。
 一方で、東京港は首都圏における輸出入の約五割を取り扱っており、首都圏を舞台とする港湾物流を広域的な視点から展開していくことが求められます。
 そこでまず、首都圏物流ゲートウエーである東京港は日本の物流改革において先導的な役割を果たしていくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 物流改革における東京港の役割についてでありますが、我が国のトップ港湾である東京港、これは横浜港とあわせてスーパー中枢港の指定を受けました。当然のことだと思いますが、首都圏物流のゲートウエーとして、物流改革の上で先導的な役割を果たしてまいりましたし、これからも果たしてまいります。
 これまで都は、みずから、ふ頭利用の共同化や日曜ゲートオープンの実現など、先進的な取り組みを展開してもまいりました。
 また、特区提案を通じて国を動かし、税関や動植物の検疫の日曜開庁などを実現し、さらに水先制度の改善を国に要求するなど、規制緩和を促進してまいりました。
 今後も、横浜港など隣接する港湾はもとより、内陸部の自治体との連携も視野に入れて、広域的な物流ネットワークを強化していきたいと思っております。
 

 
質問2
 東京港には、アジア航路など比較的中小規模の船舶が主として利用する公共ふ頭のほかに、北米や欧州など国際基幹航路の多くが寄港する公社ふ頭があります。このうち、公社ふ頭は首都圏の輸出入コンテナ貨物の半分近くを取り扱っております。
 しかし、物流改革の必要性が高まっている今日、公社ふ頭についても、決して現状に安住しているわけにはいきません。かつて世界第三位の取扱量を誇った神戸港でも、公社ふ頭の実に三分の一が遊休施設となっているところであります。
 そこで、今後、都は港湾管理者として、公共ふ頭のみならず公社ふ頭を含め、総合的にふ頭運営の効率化を進めるべきと考えますが、どのように取り組んでいくか、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼港湾局長
 東京港の国際競争力の強化を図るためには、共同化やフルオープンなどを推進し、港湾諸施設を最大限に有効活用して、ふ頭当たりの貨物取扱量をアジア主要港並みに向上させることが不可欠でございます。とりわけ首都圏の生活と産業を支える重要な役割を担う公社ふ頭には、一層の企業性の発揮が求められております。
 都といたしましても、公社とともに大井、青海の協議会等を通じて、ふ頭施設の相互融通や共同利用を強力に推進するとともに、国に対し、ふ頭コスト低減策の充実を求めてまいります。
 今後、港湾管理者として、公共、公社ふ頭の枠にとらわれることなく、背後機能の充実を含めたふ頭運営の改善に総合的に取り組み、世界水準の効率性を実現してまいります。
■中小企業対策
 
質問1
 中小企業対策は産業政策の根幹であり、我が党が最も重点を置いてきた分野の一つでもあります。今後は施策のさらなる展開を図るべきと考えますが、以下、三点について、具体的に伺いたいと思います。
 まず、商店街の振興についてですが、青梅では現在、商店街を中心に、昭和三十年代をイメージしたまちづくりが進められており、往年の映画看板がたくさん飾られ、新たな観光スポットとなっています。中でも、「日蝕の夏」という大型の映画看板は、現に都知事である若き日の石原慎太郎原作、脚本、主演の作品であることから、大層な人気を博している。地域おこしの一役を買っております。
 また、府中では、市民マイバック持参運動を開始した市に協力して、三十を超える商店街が、市民とともにごみ減量やリサイクルに取り組んでおります。こうした地元商店街の協力は、市の環境行政を推進する原動力となってもいます。
 このほか、商店街が地域の福祉や防犯などに取り組む例も多く、子どもたちが健やかに育ち、お年寄りが安心して暮らせるまちをつくる上でも、商店街が果たす役割はますます重要となっております。
 行政としても、商店街を強力に後押しする必要があります。都は新・元気を出せ商店街事業を初めとして、商店街振興施策を一層充実、強化すべきと考えますが、見解を伺います。
 
答弁1
 ▼産業労働局長
 商店街の振興についてでございますが、商店街は、地域経済を支えるほか、地域コミュニティの維持、発展に重要な役割を果たしております。
 今年度の新・元気を出せ商店街事業においても、空き店舗を活用して高齢者の健康と暮らしを支える拠点をつくる事業や、子どもたちとともに商店街のエコ活動を考えるイベントなど、地域の福祉や環境等に貢献するすぐれた取り組みがございます。
 今後とも、こうした商店街の意欲的な取り組みが進むよう、区市町村と連携して商店街振興施策の一層の充実に努めてまいります。
 

 
質問2
 金融施策について伺います。
 中小企業の資金繰りも一時と比べれば好転しているとのことですが、個々の中小企業にとっては、景気が本格的に回復しつつあるという実感は乏しく、依然厳しい経営環境にあるというのが実情であります。
 いうまでもなく、中小企業金融の大きな柱は制度融資であり、我が党はこれまでその充実に努めてまいりましたが、今年度、都が中小企業にとってよりわかりやすく、使いやすい制度を実現されたことは承知していますが、年末の資金需要期に向けて、真に資金を必要としている企業に対し、制度融資による支援強化策を打ち出すべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼産業労働局長
 制度融資による支援強化についてでございますが、本年四月に都が実施いたしました事業資金の調達等に関する調査によれば、借り入れ等に関する金融機関の姿勢を厳しいとする中小企業の割合は、平成九年の調査開始以来最も低くなるなど、中小企業の資金繰りは、全体的に見れば好転しつつあると考えております。
 しかしながら、本格的な景気回復に向けた足取りをより確かなものにしていくためには、ご指摘のとおり、個別企業のニーズに対応した一層の金融支援が必要でございます。
 そのため、年末に向けて、融資要件の緩和など具体的方策を検討してまいります。
 

 
質問3
 中小企業の再生支援について伺います。
 都内産業の活性化のためには、企業の経営が危機に陥った場合の人材や技術、ノウハウなど、貴重な経営資源が喪失されないような仕組みづくりが必要です。事業の再生や他の企業への承継等を円滑に進めるための総合的な支援策が求められます。
 この十月、東京都が創設する再生ファンドは、資金調達と経営支援の両面から中小企業の再生を後押しし、ひいては地域経済の活性化、雇用の確保を図ろうとするものであります。
 しかし、真価が問われるのはむしろファンド創設後の対応です。ファンドが十分に機能を発揮するためにも、再生見込みのある企業を着実に投資へとつなげていく都の主体的な取り組みが必要と考えますが、所見を伺います。
 
答弁3
 ▼産業労働局長
 中小企業の再生支援についてでございますが、再生ファンドの効果を高めるためには、地域金融機関や再生支援協議会と連携を図るなど、再生に真剣に取り組む中小企業の掘り起こしが不可欠でございます。
 都といたしましても、再生ファンドの創設に合わせて東京都中小企業振興公社に再生相談窓口を設置し、再生支援を要する案件の発掘につなげてまいります。こうした取り組みを通じ、より多くの中小企業の再生を促進し、東京の経済の活性化に努めてまいります。
 
■水道料金の改定
 
質問1
 水道事業について伺います。
 水道局では、先般、中期経営計画である東京水道経営プラン二〇〇四を発表しました。プランでは、安定給水の確保を初め、安全でおいしい水の供給や都民サービスの充実、多摩地区水道の広域的経営など、東京の水道が直面する課題の解決に向けた施策が盛り込まれています。
 中でも、今回のプランの大きなポイントは、十年ぶりとなる水道料金の見直しです。見直し案では、基本水量の引き下げなど、これまでの料金体系を大幅に見直すとともに、企業努力により、料金を平均で二・二%引き下げる内容となっています。
 そこでまず、今回の水道料金見直しに当たって、基本的な考え方を知事にお伺いいたします。
 
答弁1
 ▼知事
 水道料金見直しに当たっての基本的な考え方についてでありますが、水を治め、水を安定供給することは、国や自治体の重要な責務であります。その対価である水道料金には、都民の理解があくまでも不可欠でございます。
 水道事業を取り巻く環境が大きく変化する中、現行の料金体系は、全使用者の半数近くが画一料金ということになるなど、水利用の実態にそぐわない面が出てきておりまして、もはや看過できない状況となっております。
 こうしたことから、基本水量の引き下げなど、これまでの料金体系を見直すとともに、企業努力をさらに徹底し、都民生活にも最大限配慮して、料金を平均で二・二%引き下げることといたしました。
 

 
質問2
 一方、生活保護世帯や公衆浴場事業者の一部については値上げとなるなど、問題点も含まれているといわざるを得ません。この点について、水道局ではどのように認識しているのか伺います。
 
答弁2
 ▼産業労働局長
 一部の使用者が値上げとなることについてでございますが、生活保護世帯や公衆浴場事業者などの一部が値上がりとなることは承知をしておりますが、今回の料金体系の見直しは、都民生活へも配慮しつつ、節水を促す仕組みやコストに見合った負担の実現を求める都民の声にこたえることを目的として行うものでございます。
 生活保護世帯に対しましては、引き続き基本料金を免除することとしておりまして、これによりまして、一般世帯に比べ安価な料金となっております。
 また、公衆浴場につきましては、従前から原価を大幅に下回る料金で供給をしているところでございます。
 

 
質問3
 今回のプランでは、三年間の企業努力として、職員定数の三百五十人の削減や水道業務手当の廃止を含め、三百十五億円を計上しており、これらを都民に還元することで、料金の引き下げを可能とするものです。
 都市の維持、発展にとって欠くことのできないインフラである水道を健全な形で次の世代に引き継いでいくことが現在の私たちに課せられた使命であります。そのためには、厳しい経営環境の中にあっても、長期的な視点に立って、施設整備等の必要な事業を先送りすることなく、着実に実施するとともに、強固な経営基盤を確立していく必要があると考えます。都民の財産である水道を将来にわたり健全に運営していくことについて、水道局の見解を伺います。
 
答弁3
 ▼産業労働局長
 水道事業の経営基盤の確立についてでございますが、水道は、都市の維持、発展に欠くことのできない基本的なライフラインでありますことから、これまでも長期的な視点に立った施設整備を進めるとともに、経営基盤の強化に努めてまいりました。
 今回の計画案におきましても、おおむね十年後を見据えた施設整備長期目標を設定いたしまして、これに基づいて必要な施策を着実に実施するとともに、効率性の一層の向上を図り、強固な経営基盤を確立することとしております。
 この計画案に盛り込みました水源林管理の充実や貯水槽対策など、水源から蛇口に至るまでの総合的な施策を推進することにより、今後とも、ハード、ソフト両面にわたりまして、首都東京にふさわしい水道サービスの実現に向けて全力で取り組んでまいります。
 
■福祉、保健、医療施策
 
質問1
 まず、生活保護制度について伺います。
 六年連続して三万人を上回っている自殺者数、依然高い失業率など、一般都民にとっては景気回復が真に実感のあるものとなってはいません。こうした中、最後のセーフティーネットとして、生活保護制度は各種の社会保障制度とともに、国民の安心を支える仕組みとして、大きな役割を果たして、今後とも、その役割を担うことが期待されています。
 しかし、戦後復興期に始まった現行の生活保護制度については、保護を受けながら、自立に向けて懸命に努力している人がいる一方で、中には、手厚い保護を受け続け、自立しようとする意欲が感じられない人も多いといった指摘がされるなど、制度や運用を見直し、今日の時代状況に適合させていくことが求められています。
 都は、本年七月、国に対し、生活保護制度改善に向けた提言をまとめましたが、その中で、自立支援に向けた取り組みがこれまで以上に求められている視点から、幾つかの具体的な提案がなされ、私も全く同感であります。
 都はこうした提案だけでなく、動きの鈍い国に率先して、福祉事務所と協力して、積極的な対応策を講ずるべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 生活保護における自立支援の取り組みについてでありますが、生活保護制度は、国が生活に困窮するすべての国民に対して必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともに、その自立の助長を図ることを目的としています。しかしながら、現状は、自立を支援するための相談活動や支援の仕組みが十分に機能しておりません。
 このため、都は福祉事務所などの意見も踏まえ、自立支援施策の充実を初め生活保護制度の改善に関する具体的な方策を、本年七月、国に対し提案いたしました。
 今後、都としては、ご指摘を踏まえ、福祉事務所が効果的な自立支援施策を講じていけるよう、既存の仕組みの再構築を含め、積極的に対応してまいります。
 

 
質問2
 生活保護の中の教育扶助は、義務教育に必要な費用を内容としており、高等学校については、対象にしていません。高等学校への進学率が一〇〇%近くになった現在、被保護世帯における高校進学率は八割をやっと超えた程度にとどまっています。経済的な理由が大きいと聞いていますが、次代を担う子どもたちがみずからの将来を切り開くため、意欲のあるすべての子どもたちが高校教育を受けやすくするための環境を整える必要があります。
 都は、国に対して、教育扶助の高等学校等まで拡大を強く迫るべきと考えます。いかがでしょうか。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 教育扶助の対象拡大についてでありますが、高等学校などへの進学が一般的である状況を踏まえると、意欲のあるすべての子どもたちが進学できるよう、教育扶助の基準を見直すことが必要であります。
 このため、都は、教育扶助の対象を現在の義務教育から高等学校などまで拡大するよう、今年度、国への提案要求を行いました。現在、国においては、都の提案を受け、教育扶助の対象拡大も生活保護制度の検討課題として取り上げており、今後、その実現に向け、国に強く働きかけてまいります。
 

 
質問3
 民間社会福祉施設のサービス推進費補助について伺います。
 社会福祉法人の施設に対する民間社会福祉施設サービス推進費補助については、施設代表者との合意を踏まえ、本年四月から再構築されました。しかし、福祉サービスの特性を踏まえれば、制度変更により、福祉施設の運営に支障が生じるようなことがあってはなりません。
 我が党は施設代表者との十分な意見交換と施設種別の状況に応じた加算や十分な経過措置期間の設定などを求めてきました。その結果、五年間にわたる経過措置が設けられ、四年目以降の取り扱いについては、改めて施設代表者との意見交換を行うことが合意されました。
 再構築後、六カ月が経過したわけですが、施設のさまざまな努力が進められていると聞いていますが、今回の再構築の目的を踏まえるならば、施設の実態を不断に把握し、都民ニーズの変化等に的確に対応した補助制度としていくことが重要であると考えます。所見を伺います。
 
答弁3
 ▼福祉保健局長
 民間社会福祉施設サービス推進費補助についてでありますが、施設代表者との合意を踏まえ本年四月に再構築したサービス推進費補助は、福祉サービスの質の向上を目的に、施設のさまざまな取り組みに対する努力加算項目を設定しております。
 その結果、例えば十三時間以上開所する保育所が昨年度実績の約二倍にふえるなど、都民ニーズにこたえる施設の取り組みが着実に進んでいると認識しています。
 今後とも、関係者との意見交換を行いながら取り組みの実態を把握し、必要に応じて努力加算項目の見直しを行うなど、社会状況や都民ニーズの変化に的確に対応した仕組みとなるよう努めてまいります。
 

 
質問4
 脱法ドラッグ対策について伺います。
 脱法ドラッグは、麻薬や覚せい剤と比較して、使用することに対する抵抗感や警戒感が少なく、比較的容易に入手できることから、麻薬や覚せい剤などの薬物の乱用のきっかけとなると同時に、健康被害の発生や犯罪への誘引ともなる非常に危険な薬物です。
 都はこれまでも、東京都薬物乱用対策推進本部を設置して、関係方面と協力をして、薬物に対する正しい知識の普及や乱用の危険性の啓発、脱法ドラッグ対策取り組み方針の策定など、総合的な対策の推進に努めております。
 しかしながら、夜の繁華街の路上で堂々と売られ、またネット上で公然と売買されるなど、幅広い年齢層にわたって乱用されているのが実態です。脱法ドラッグの製造や販売が国の法令で禁止されていない以上、都が率先してこれを規制する条例を制定することはぜひとも必要であります。脱法ドラッグを規制する必要性や意義を踏まえ、改めて条例制定に向けての知事の決意を伺います。
 
答弁4
 ▼知事
 脱法ドラッグ対策についてでありますが、脱法ドラッグの乱用は、今はもう大都市に先鋭的に生じている現象、問題でありまして、都内における乱用の実態やその危険性、青少年に及ぼす広範な悪影響などは、既にもう看過できない状況にございます。このまま放置すれば、いずれ全国に広がるのは必至でありまして、本来は、国が法令によって率先して対処すべきものにもかかわらず、国のこの問題に対する認識はほとんど希薄でありまして、動きも非常に鈍い。
 都は、青少年を薬物乱用や犯罪から守り、都民の健康と安全を確保するため、脱法ドラッグの規制に向け、全国に先駆けて条例を制定するつもりでございます。
 
■教育問題
 
質問1
 初めに、特別支援教育推進計画について伺います。
 今後の都の特別支援教育推進に関する総合的な計画の策定に先立つ形で、この七月、計画の基本理念や計画の主な概要及び第一次配置計画案などを内容とする東京都特別支援教育推進計画概要案が示されました。この計画概要案の中で示された、知的障害が軽い生徒を対象とした養護学校高等部の設置など、生徒の卒業後の進路について、企業への就労や資格取得に道を開くこととなり、将来の社会的自立への可能性を高めることが期待できるものと考えます。
 特別支援教育の推進に当たっては、これまでの心身障害教育が抱える課題の抜本的解決を図るとともに、児童生徒の社会適応力を一層高め、社会的自立に向けたその成果が着実に上がるよう努めていくべきであります。
 この計画概要案をもとに、この秋策定する特別支援教育推進計画の基本的な考えと施策の方向を伺います。
 
答弁1
 ▼教育長
 東京都特別支援教育推進計画の基本的考え方と施策の方向についてでございますが、この計画の策定に当たりましては、障害のある児童生徒一人一人の能力を最大限に伸長するため、乳幼児期から学校卒業後までのライフステージを見通した多様な教育を展開して、社会的自立を図れる力や身近な地域の一員として生きていける力を培い、ノーマライゼーション社会の実現に寄与することを基本理念といたしております。
 また、都立盲・ろう・養護学校の生徒の社会的自立に向けた後期中等教育の充実や、児童生徒数の増減等に対応した盲・ろう・養護学校の適正な規模と配置、さらに、教員の資質、専門性の向上などの教育諸条件の整備及び小中学校におけます特別支援教育の充実への支援などを施策として推進してまいります。
 

 
質問2
 ろう学校再編整備では、現在の八校から四校に統廃合するとしていますが、閉校する学校の幼稚部、小学部については、当面の間、分教室として設置するという計画が示されております。
 この計画については、保護者に対する説明会等では、分教室化に伴い、早期に幼稚部、小学部を募集停止していく予定と説明したと聞いております。このことで、特に幼稚部の保護者を中心に、不安の声が広まっています。今回の計画はあくまで障害のある児童生徒のためのものであるということを考えれば、分教室の存続の仕方について、児童生徒等の状況を十分に踏まえ、柔軟に検討していくべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼教育長
 ろう学校の分教室についてでございますが、都立のろう学校は、児童生徒数の減少によりまして、適切な学習集団、学級規模を確保することが困難な状況にございまして、学校の活性化や教育の充実を図ることを目的として再編整備を行う必要がございます。
 都教育委員会としましては、保護者等の聴覚障害に対します専門的な教育ニーズにこたえるため、ご指摘の再編整備の中で設置する分教室の存続期間につきましては、今後の児童生徒数の動向を踏まえまして柔軟に対応しますとともに、分教室として設置している間は、幼児、児童の受け入れを継続していく方向で検討してまいります。
 

 
質問3
 計画概要案では、学校の関連施設である寄宿舎等の再編整備も取り上げられています。ここでは、寄宿舎本来の目的である通学困難による入舎率が非常に低いということで、規模、配置等を見直すことはやむを得ないものと考えますが、寄宿舎の利用については、このほかに生徒の基本的生活習慣、自立心を育成するという教育上の利用も認めてきたという経過もあります。こうした寄宿舎の役割について、保護者の方から、ぜひ残してほしいという意見を耳にしております。寄宿舎がこれまで果たしてきた教育上の役割についてどのように考えて対応していくのか、伺います。
 
答弁3
 ▼教育長
 寄宿舎の教育上の役割と今後の対応についてでございますが、寄宿舎は、児童生徒が基本的生活習慣を確立したり、集団生活のマナーを身につけたりすることなどの役割を果たしてきております。こうした役割につきましては、寄宿舎が設置されている、いないにかかわらず、盲・ろう・養護学校としての重要な指導内容でございまして、生活指導や宿泊行事等の中で重点的に指導を行っていくべきものであると考えております。
 今後の寄宿舎の再編整備に当たりましては、各学校の生活訓練施設を整備して、生徒指導や宿泊行事等の内容の充実を図りまして、児童生徒一人一人の社会参加、自立に向けた計画的、継続的な指導を行ってまいります。
 

 
質問4
 公立高校の学校週五日制が平成十四年四月から完全実施され、二年が経過をしました。学校週五日制の趣旨は基本的に理解するものですが、学校の現場からは、授業などにゆとりがなくなったり、例えば中学校では、学習指導要領に示された授業時間を確保することが難しいのではないかとの声があります。
 また、都民の間でも、土曜日に塾に行って勉強している子、行っていない子との間で学力に差があらわれ、経済格差が学力格差につながっているのではないかと危ぶむ声や、私立学校の多くが土曜日にも補習等をしていることから、公立学校と私立学校での学力格差が広がることを懸念する声もあります。
 学校週五日制導入の趣旨に反し、子どもたちがみずから学び、みずから考えることの土台となるべき確かな学力が揺らぎ、授業そのものにもゆとりが失われるとしたら、まことに遺憾なことであるといわざるを得ません。都教委は子どもたちの学力についてどのように考えているのか、お伺いをいたします。
 
答弁4
 ▼教育長
 子どもたちの学力についてでございますが、学力は、単に知識の量だけではなくて、みずから学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力などを含めたものとしてとらえることが重要でございまして、これらの能力などを育成することによって確かな学力が身につくものであると考えております。
 都教育委員会としましては、これまで、児童・生徒の学力向上を図るための調査の実施や、習熟の程度に応じた少人数指導の実施や学習指導カウンセラーの派遣等を通しまして、児童生徒の学力向上を図ってきたところでございますが、今後は、こうした施策をさらに実効性のあるものにするため、学力調査の結果に基づきまして、すべての学校で授業改善推進プランを作成しまして、確かな学力の定着を図る取り組みを区市町村教育委員会と連携して推進をしてまいります。
 

 
質問5
 また、保護者の学力低下への不安に対して、公立の小中学校では土曜日に補習授業を行っている学校がありますが、こうした場合の教員の半日勤務の実施などの対応について伺います。
 さらに、学校週五日制の本来の趣旨を生かすため、都教委としてはどのように取り組んでいくのか、伺います。
 
答弁5
 ▼教育長
 公立の小中学校で土曜日に補習授業を行った場合の教員への対応についてでございますが、お話しのように、保護者の要望などによりまして、希望する児童生徒を対象に土曜日に補習授業を行っている学校や、今後、実施を検討している学校がございますが、そうした補習授業に従事している教員への対応にはいろいろ課題がございまして、早期に解決をしなければならないものと、私どもとしても認識いたしております。
 そのため、都教育委員会としましては、教員が土曜日に補習を行ったような場合、教育活動への影響にも配慮しながら、特例的な勤務の振りかえ策などを具体的に検討してまいります。
 次に、学校週五日制の趣旨を生かすための取り組みについてでございますが、学校週五日制の趣旨は、学校、家庭、地域社会での教育や生活全体で子どもたちに生きる力をはぐくみ、健やかな成長を促すことにございます。
 都教育委員会としましては、学校教育において児童生徒に確かな学力を身につけさせるとともに、心の東京革命の一環としてトライ&チャレンジキャンペーン等を実施して、児童生徒の豊かな心の育成に努めておりますが、今後は、平成十六年四月に策定をしました東京都教育ビジョンにおける提言の具現化などを通しまして、学校、家庭、地域社会が連携した教育の一層の充実に努めてまいります。
 

 
質問6
 次に、教科書採択について伺います。
 来年四月、都立では初めて、中高一貫校が台東地区に開校します。この学校で使用する教科書の採択が先般行われました。今回の教科書採択では、特に歴史教科書の採択に対しては、特定の教科書を採択させないという外部からの強い圧力があったと聞いています。こうした状況下にあって、都教委はそのような外部の圧力にも影響されることなく、教育委員会を公開で行い、教育委員会の権限と責任において教科書を採択したことは、我が党としても高く評価をいたします。
 来年度は、全国の中学校で使用する教科書が改訂され、新たに採択されますが、今後とも都教委、外部からの圧力に影響されることなく、毅然とした態度で、公正かつ適正に教科書採択を行うべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁6
 ▼教育長
 教科書採択についてでございますが、お話しのように、今般の台東地区中高一貫六年制学校の中学校で使用する教科書の採択に当たりましては、特定の教科書を採択しないようにという要請等が多数ございましたが、都教育委員会としましては、採択権者の権限と責任におきまして、文部科学省の検定を受けた教科書の調査研究を行うなど、台東地区中高一貫六年制学校で使用するのに最も適した教科書を公正かつ適正に採択をいたしました。
 ご指摘のように、来年度は四年に一度の中学校用教科書の採択がえの年に当たりますが、都教育委員会としましては、今後とも、法令等に基づき、公正かつ適正に教科書採択を行ってまいります。
 

 
質問7
 教育問題の最後に、私学振興の立場から一言触れておきたいと思います。
 第二次財政再建プランでは、私立幼稚園の学校法人化を促進するため、今年度から私立幼稚園教育振興事業費補助の単価が削減されることになりました。我が党の要望で、五年間の経過措置が設けられたところでありますが、しかし、それでもなおその影響は少なくないとの声もあり、園児保護者への負担に影響を及ぼすことがあってはならないと思います。そこで、既定の方針は方針として、もう一歩何らかの激変緩和措置を講ずることができないかと考えますが、所見を伺います。
 
答弁7
 ▼生活文化局長
 第二次プランでは、私立幼稚園の学校法人化を促進するため、今年度から私立幼稚園教育振興事業費補助の見直しを行い、五年間の経過措置を設けたところでございます。
 このプランの基本方向については、今後とも堅持していく必要がありますので、私立幼稚園の経営実態を踏まえて、ご指摘の点も含め慎重に検討を行い、適切に対応してまいります。
 
 

 
 さて、今年度中に、都内で新たに百歳を超える長寿者が初めて千人を超え、高齢化は一段と進んでいます。その一方、合計特殊出生率はとうとう一を切ってしまいました。少子高齢化は先進国の共通の現象ですが、経済の活力をどのように維持発展させるか、大きな問題です。これからは高齢者が長く現役として活躍でき、未来を担う子どもたちが厳しい社会変化の中で適応力を高めていくことがとても大切なことだと考えます。
 さきのオリンピックでは、我が選手たちが世界に通用するような努力と成果を示し、やればできるという自信を我々に取り戻してくれました。こうした意味から、あらゆる分野において、努力することがとうとばれ、報われるような社会の形成が極めて重要です。我が党はそのために全力を挙げて邁進することをお約束をし、質問を終わります。

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