質問〔1〕
近い将来に迫ったといわれるマグニチュード八クラスの東海地震、さらには予知困難な直下型地震の襲来など、首都東京の震災対策は、文字どおり待ったなしの重要課題であり、本日はその中の何点かに絞って伺います。
まず初めに、大規模地震の被害から大切な都民の命と財産を守るための木造住宅の耐震補強の問題です。
なぜ私がこの問題を重視するかというと、十万棟の家屋が全壊、六千四百三十五人の死者を出した阪神・淡路大震災の際に、長田町を初め、死者の圧倒的多くが、耐震基準を満たしていない木造住宅の倒壊によるものであったからです。当時、テレビの画面に映し出された火災についても、その多くが倒壊した家屋から発生したものでした。もしこれらの住宅に耐震補強が施されていたら、多くの人命が失われずに済んだことでしょう。
そこで、私は、震災対策に積極的に取り組んでいる静岡県を訪ねてまいりました。東海沖地震の危険にさらされている同県では、一昨年、アクションプログラム二〇〇一という震災基本計画を策定しましたが、それを見ますと、その第一の理念は、県民の生命を守るとされ、減災、すなわち震災の被害をゼロにすることはできないが、可能な限り減らしていこうとする立場から、建物などの耐震化が施策の第一に掲げられております。
それは、倒壊の危険のある住宅の改修について、静岡県が県の自主事業として独自に助成するもので、既にこの助成を使って一千件の住宅で耐震補強が行われたといいます。静岡県は、この耐震補強を始めるに当たって耐震補強のアイデアを募りましたが、これに応じて全国から参加があり、基礎と柱を結束したり、かすがいを入れるなどの補強や、寝室のみを補強するもの、家屋の外から支柱を立てて支えるものなどが寄せられたということであります。また、高齢者など耐震補強の負担ができない人には、耐震用のベッドも開発されていました。
今、耐震補強の取り組みは他の自治体にも広がり始めております。宮城県では、緊急経済産業再生プランの事業の一つとして、今年度から二年間に限ってですが、耐震改修工事の一部の助成に踏み出しております。また、都内では、中野区が、区内に八万棟ある木造住宅の耐震補強に対する補助を来年度からスタートさせる計画を明らかにしております。
現在、東京には約二百三十万戸の木造住宅があり、そのうちの少なくない住宅が建築基準を満たしていず、倒壊の危険が予想されるものとなっております。また、大規模な震災被害が予想される木造住宅密集地域が都内には二万四千ヘクタールも残されており、そのうち五千八百ヘクタールが早急に整備が必要な地域とされております。今、大地震に襲われたならば、家屋の倒壊による、失われる人命と経済的被害ははかり知れません。
私の住む板橋区の大谷口地区では昨年の九月に避難訓練を行いましたが、避難路が火災発生想定地点に当たっていたり、家が倒壊する場所であったりなど、行く手を阻まれて、結局、避難場所には到達できませんでした。このとき私は、これらの住宅が耐震補強できれば、どれだけ被害を軽減でき、住民の皆さんがどれだけ安心することができるだろうと改めて考えさせられました。
木造住宅密集地域の耐震改修については、国の制度があり、来年度、拡充が予定されておりますが、一定の道路に面していなければならないこと、区市町村が受け皿とならなければならないなど、条件が厳しく、利用しにくい制度となっています。
そこで、耐震診断や耐震補強を必要とする木造住宅を対象とする助成事業を都独自に立ち上げることを提案するものであります。
国の事業についても、本格的に事業を推進するためには、自治体や利用者の負担を軽減するために、都として上乗せ補助を行うことが欠かせないと考えますが、いかがでしょうか。
答弁〔1〕
▼住宅局長
木造住宅の耐震診断等に対します都独自の助成についてでございますが、耐震診断等は、本来、建築物の所有者等の責任において行われるべきものでございますが、都といたしましては、これまでも、耐震診断講習会の開催や簡易な耐震診断の方法の周知を行いますとともに、技術者の育成や都民への普及啓発に取り組んでまいりました。耐震診断等に関する助成事業は既に多くの区市において実施されておりまして、都独自の助成事業を創設する考えはございません。
次に、国の補助制度に対する上乗せ補助についてでございますが、都といたしましては、これまでも区市町に対しまして国の制度の周知を図ってまいりました。今後は、お話しのような補助事業への上乗せではなく、国の制度改正の動向を踏まえまして、区市町との連絡協議会を設置するなど、さらに連携を強化することによりまして、木造住宅の耐震改修促進に努めてまいります。
質問〔2〕
二つ目に、長周期地震動やマグニチュード八の地震など、これまでの想定や研究を覆すような新たな地震被害への対応を急ぐことです。
まず、長周期地震動については、昨年の第三回定例会で、我が党の河野議員が長周期地震動の超高層ビルへの脅威について指摘をし、そのやさきに、十勝沖地震で、震源地から二百六十キロも離れた苫小牧で石油タンクの被害が発生しました。
いうまでもなく、揺れの往復にかかる時間を周期と呼び、建物では、高くなればなるほど、その周期が長くなり、五十階以上の建物では五秒程度の振動で建物が共振し始めます。関東大震災では周期が八秒と長く、大きかったことが確認されております。
超高層ビルが長周期波に襲われた場合、倒壊の危険があること、また倒壊に至らなくても、建物内部の人や家具、パソコンなどの電化製品などが物すごいスピードで飛ばされるなどの現象が起こること、エレベーターが停止したり、建物の中にいる人々がパニック状態に陥ることなどが想定されます。
首都高速道路についても、都の報告でも、揺れが大きい場合には、橋げたがずれたり、橋脚が移動するなどの被害が発生する確率が高いとされております。加えて、都心の地下街や地下鉄など深い地下構造物と長周期地震動との関連はどうなのかなど、解明と対策は緊急を要しております。
また、日本土木学会が最近、日本建築学会とともに発表した、マグニチュード八クラスの震源域での巨大地震に備えて耐震基準を見直すことを提言したことは、各方面に衝撃を与えております。ちなみに、マグニチュードが一大きくなると地震波の振れ幅が十倍大きくなり、二大きくなると百倍といわれております。
そこで、都の地域防災計画を、これらの新しい知見や研究に基づいて改めて検証を行い、必要があれば計画を見直すことを提案するものでありますが、いかがでしょうか。
答弁〔2〕
▼総務局長
東京都地域防災計画は、災害対策基本法に基づきまして東京都防災会議が作成する計画でありまして、最新の知見や社会経済状況の変化を踏まえ修正することにより、着実な震災対策を進めていくものでございます。
ご質問の長周期地震動などが超高層建築物等にどのような影響を及ぼすかにつきましては、今後研究してまいります。
質問〔3〕
日本土木学会には巨大地震災害への対応検討特別委員会が設置されており、静岡県は職員を派遣しているとのことです。私は先日、この特別委員会委員長の濱田政則早大教授にお会いいたしましたが、教授は、東京都が特別委員会に参加することについて大歓迎と述べておりました。
都として特別委員会に参加し、その成果を防災計画や対策に反映することは極めて意義あるものと思いますが、いかがでしょうか。
答弁〔3〕
▼都市計画局長
土木学会の設置した巨大地震災害への対応検討特別委員会についてでございますが、長周期地震動の建築物等への影響については未解明な部分が多いとされ、昨年十一月、ご指摘の特別委員会が設置され、土木学会、日本建築学会が共同して調査研究を進めることといたしました。
都としては、国や学会等における動向を注目しつつ、最新の情報、知見を取得してまいります。
質問〔4〕
震災の被害をできる限り減らす減災の立場から、消防救急体制を強化することも重要な課題です。都の地域防災計画によると、区部直下の地震想定結果では、大規模地震時の出火予想は、東京全体で木造、非木造合わせて八百二十四件とされ、そのうち消火できる件数を五百三十件と見込んでおります。この出火予想自体かなり控え目なものでありますけれども、それでもおよそ三百件の火災には手つかずということになります。また、木造住宅密集地域の倒壊家屋からの救出、超高層ビルや地下街などへの対応、新宿や渋谷などの繁華街や雑居ビル火災などへの対応が求められます。
これに対して、消防救急体制は不足しており、しかも、夜間人口を前提に消防署が配置されていることから、昼間人口の多い都心部などはどうしても手薄になりかねません。また、災害時に活躍するハイパーレスキュー隊は、現在、区部二隊、多摩一隊の計三隊しか配置されておりません。
そこで、ハイパーレスキューの増設、救急車の思い切った増車など、救急救助体制を緊急整備すること、超高層ビルや地下施設での緊急マニュアルを策定することなどが急がれますけれども、どうか、お答えいただきたいと思います。
答弁〔4〕
▼消防総監
震災時におきまする救助救急体制等についてでございますけれども、震災時には、火災による災害のほか、同時多発的に救助救急事象が発生することが予想されております。このため、高度の救助救急技術を有する消防救助機動部隊を初め、救助車、救急車に加えまして、非常用救急車八十台を投入するなど、当庁の機動力を挙げて救助救急活動を実施することとしております。
また、必要によりまして東京都外から緊急消防援助隊の応援を受けることとしております。さらに、震災時の救助救急活動を含む震災消防活動基準を策定しております。
今後におきましても、東京の都市構造の変化に伴い予測される災害態様に対応した消防力の整備に努めてまいります。
|