(平成15年第四回東京都議会定例会会議録から) 〇議長(内田茂君) 次に、東京都議会海外調査団について申し上げます。 本議会において、去る十一月二十二日から二十八日まで、ミラノ及びロンドンに海外調査団を派遣いたしました。 海外調査団を代表いたしまして、報告のため発言の申し出がありますので、これを許します。 四十五番三宅茂樹君。 〔四十五番三宅茂樹君登壇〕 〇四十五番(三宅茂樹君) 平成十五年度東京都議会海外調査の報告をさせていただきます。 平成十五年十一月二十二日から二十八日までの七日間、イタリアのミラノ市、イギリスのロンドン市を訪問し、調査を行いました。また、都議会海外調査団として初めてシティセールスをすべての訪問先で積極的に展開してまいりました。 調査団は、高島なおき、林田武、矢島千秋、小美濃安弘、秋田一郎、そして私、三宅茂樹の六名でございます。 以下、調査の内容についてご報告申し上げます。 まず、ミラノ市では、世界的に元気であるといわれているミラノの中小企業の実態調査を行いました。従業者九名以下の企業が全体の九二%という小規模企業群の実力が、元気な北部イタリア経済を支えており、中小企業の持つ下請のイメージとはほど遠いものがあり、ニッチ分野、すきま市場で競争力を維持しているところに特徴を見ることができました。 この中小企業群の中心には、職人の面倒を見ることから始まった商工会議所が位置し、海外マーケットへの対応など、その弱点を補う積極的、重要な役割を担っております。しかし、自由濶達、独立自尊のミラノの中小企業にとって、公的融資制度が大きな支えとなっていることも事実であることを確認してまいりました。東京都の独立心と技術力のある中小企業支援策にも、大いに参考になるところであります。 これらの調査を受けて、ミラノ市と周辺地域の技術指導の靴の学校、海外売り上げが七割を占める染め物工場を視察し、世界への開かれたまなざしと取り組みの意欲を実感いたしました。そのほか、ミラノ市の調査では、ミラノ市議会を初め、中心的商業施設ガレリア・ヴィットオ・エマヌエルⅡ世、観光施設の見学、市の概要の確認、低床路面電車の実乗調査、二千台の駐車場が地下鉄駅に直結したパーク・アンド・ライド施設調査を実施いたしました。 次に訪れたロンドン市では、最初にPFIについての調査を行いました。 これはまずPFI事業の学校建設現場を訪れ、現場でその状況を聞くところから始め、次いで事業契約会社を訪れ、責任者と意見交換、そして英国財務省では、PFI事業を推進している担当官と予定時間を超えて質疑を行うなど、日本より五年は進んでいるといわれる英国のPFI事業の全体像と、今後の方向を認識してまいりました。 なお、英国において一九八〇年代にアウトソーシングが盛んだったことが今の英国のPFIにつながったとの担当官の説明は刮目に値するものでありました。 引き続いて調査に当たったのは、東京都も二年前より検討し、若干足踏みの見えるロードプライシング、混雑税であります。この課税制度は、ロンドンにおきまして、本年二月十七日より実施され、対象地域は市中心部二十平方キロ、曜日と時間は、月曜日から金曜日の午前七時から午後六時三十分まで、課税額は一日一台当たり五ポンド、約千円で、車両所有者に課税され、居住車両など一部割り引き、タクシーなどの除外があります。 その効果は、渋滞の激しかったロンドン市中心部混雑度も大きく減少し、環境面も含め、高い評価が得られているようであります。成功のかぎはコンサルタントの活用で、市当局のみではその成功はおぼつかなかったとの認識をしていることが印象的でありました。 続いて、日本の庁舎の常識を覆す大ロンドン市庁舎を訪れ、首都自治体の変遷と現況の調査を行いました。 ロンドン市は、昭和六十一年、一九八六年、サッチャー政権の地方制度改革で、従来のGLC、大ロンドン市議会が廃止され、十四年後、平成十二年、西暦二〇〇〇年に現在のGLA、グレーター・ロンドン・オーソリティー、大ロンドン市が住民の投票により設置されたのであります。この大ロンドン市は、イギリスとしては異例の公選で初めて選ばれた市長と、定数二十四名の小規模市議会で構成されております。 市所管の業務は、警察、消防、交通、都市開発に限定され、交通を除く各業務に市議会議員が執行責任者として役割を担い、これまでの三十二の自治都市バラの行政に立ち入ることなく取り組んでおり、市スタッフは五百二十名程度で市議会の職員であります。そして、市議会は年十回、市長に直接説明を求め、また市長の予算提案に対し、同意、修正権を持ち、政策提案を行うものであります。 現在のイギリスの制度では、地方自治体は英国議会により授権された事務のみを処理でき、また市を代表するのは市議会議長であります。それだけに公選の大ロンドン市長は注目されており、市議会との関係を含めて、英国における新しい地方自治の時代が形づくられていくと感じられました。 ちなみに、現市長リビングストン氏は、前ロンドン市廃止中は下院議員、説明を受けました市議会議員トープ氏は、貴族院議員であったそうであります。首都市議会の重さがわかるような経歴でありました。 以上、概略の報告とさせていただきます。 なお、今回の調査の詳細につきましては、後日、海外調査報告書として取りまとめ、配布させていただきたいと存じます。 ご清聴ありがとうございました。(拍手) 〇議長(内田茂君) 以上をもって、東京都議会海外調査団の報告は終わりました。 (見出し等は編集部) |
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