▼大河原委員
生活者ネットワークを代表して、締めくくり総括質疑を行います。
まず、質問に先立ちまして、過日の私の質疑に対する浜渦副知事の答弁姿勢について一言申し上げます。
本委員会の初日冒頭、委員長からは、簡潔明瞭な答弁を理事者にお願いする旨のご発言があり、再三この場でも確認されてまいりました。しかし、二十日の私の質問に対する浜渦副知事のご答弁は、不必要に長い経過の羅列と、適切さを欠いた表現もあり、さらに、先に答弁に立つべき福永副知事の答弁時間をも封殺する、まことに遺憾な答弁であったと思います。議会軽視といえる答弁姿勢に対しては、強く抗議をいたします。
▼大河原委員
既にアメリカでは、ダムはむだとばかりに、新規のダム計画は一カ所もなく、古くなったダムの撤去が始まっています。二十世紀の最後の十年には、ダム建設の生態系への悪影響などがクローズアップされ、ダムの検証が進みました。そして、アメリカ経済が大規模な水源開発を支えられなくなったこと、また環境保護を求める国民の支持を得られなくなったこと、ダムにかわる代替手段の方がはるかに安上がりで環境への影響が小さくなっていることから、ダム建設時代の終えんを宣言しております。
一方、日本では、いまだ約三百五十カ所のダム計画があります。かけ声ばかりの公共事業の見直しでは、ダム計画の中止や廃止は期待できません。しかし、特にこの十年、日本でもダムに対する考え方は大きく変わってきております。特に、財政の危機的な状況の中で、自治体自身が水源開発からの撤退や一部撤退を決め始めたことを歓迎いたしますし、同時に、東京の現状を検証することが急務であるというふうに思います。
東京の自己水源は、水道の約二割をカバーしているにすぎず、八割は利根川、荒川水系のダムに頼っていることはご承知のとおりです。これまで東京では、人口集中による都市用水の需要が増加し続けるため、それに見合うダム建設がなければ、将来の水需要が充足できないと考えられてきました。しかし、実際に都市用水が増加したのは一九九〇年ごろまでのことです。
最近十年の水道用水の状況、水需給計画と実績を見てみますと、手元にお配りいたしました資料をごらんください、平成十二年度の水需要計画は六百二十万トンと見込まれていましたが、実際は五百二十万トンにとどまり、計画と実績には百万トンの乖離が生じています。これはどうしてでしょうか。
また、東京都はこれまで、水需給計画をどのように見直してきたのでしょうか。また、都の人口将来予測は、二〇一〇年の一千二百二十六万人がピークと見込まれており、今後とも水需要が大きく伸びるとは思えません。
このような状況を踏まえれば、今こそしっかり水需給計画を見直すべきだと考えますが、見解を伺います。
▼水道局長
最近の水需要は、長期にわたる景気の低迷などの影響を受けまして、計画に対して下回っているものと考えております。
水道需給計画につきましては、これまでも、都の長期構想の策定などに伴い、そこに示される人口や経済成長率などの基礎指標を踏まえまして、適宜適切に見直してきております。
将来の水需要につきましては、現在、水使用実績と関連する社会経済指標などのさまざまなデータに基づき、分析を進めているところでございまして、これらの分析をもとに、今後とも総合的に検討してまいります。
▼大河原委員
これが、(パネルを示す)今ご答弁がありました、その様子を示したパネルです。水道用水を見ますと、一日の最大給水量は、昭和五十三年には日量六百四十五万トンだったものが、七一年ごろからは横ばいの状態が続き、一昨年、二〇〇一年の最大給水量は五百三十九万トン、平均給水量は四百六十六万トンでした。最近の五年間は特に、人口が微増してきたのですけれども、給水量はほぼ漸減しています。
現在、都の公表している保有水源量は六百二十三万トン、この赤いポイントがそうですが、八十万トン以上も余裕があるというふうに思います。
さらに、実はこのほかにも、東京都には隠された保有水源がございます。それは、都営水道への一元化の後にもくみ上げられている多摩地域の地下水、日量四十万トンの地下水です。
自治体の水道であったときには正規の水道水源であった地下水が、一元化後も使い続けられ、渇水期にはより多くくみ上げられる、むしろ頼りになる水源であるわけなんですが、実は予備的な水源としてしか位置づけられておりません。当然、これらの地下水を正規の水源として位置づけるべきと考えますが、この点、見解はいかがでしょうか。
▼水道局長
地下水につきましては、揚水規制が実施され、地盤沈下は沈静化してまいりましたが、地域によりましては、依然として再発の危険があり、今後も揚水規制の継続が必要とされております。
また、水質につきましても、トリクロロエチレン、ジオキサンなどが検出されたことから、一部の井戸の使用を中止してきた経過がございます。
このように、地下水は、地盤沈下や水質の面から、長期的に見て、水源としての安定性に欠けるため、予備的な水源に位置づけております。
しかし、地下水は、平常時はもとより、渇水時や震災時においても身近に利用できる貴重な水源でありますことから、今後とも、地盤沈下や水質の動向に十分配慮しながら、可能な範囲で活用を図ってまいります。
▼大河原委員
今のご答弁ですけれども、ダムをつくった暁には、地下水から河川水に切りかえる計画が東京都にもありました。その名残が、地下水をいつまでたっても正規の水道水源と位置づけない姿勢にあらわれていると思います。
既に地盤沈下は沈静化しています。科学的な地下水管理が必要とされる時代になってきているわけなんです。適正にくみ上げれば、そのことは可能です。私がいっているのは、今ある、現実にくみ上げている地下水を正規と位置づけよということです。環境サイドからの地下水に対する危惧もあるでしょうが、正規の水源への変更は、水道局の姿勢、考え方で可能ではないかと思います。
なぜなら、現実に杉並でくみ上げている水道水源、これは地下水ですが、規模も小さく、浅い井戸です。立派に水道水源として位置づけられております。この水道行政の大きな矛盾を早期に解決されるよう望みます。
さて、地下水、この多摩地域の四十万トンを加えれば、都の現有の水源は日量六百六十三万トン、給水実績と比較すれば百万トンを超える余裕、つまり水が余っています。しかし、東京都は、さらに日量七十九万トンの新規の水源開発を進めています。
都は、八ッ場ダムを初め五つの計画に参加していますが、既に暫定水利権で使っている分もあり、将来の保有水源は七百二十六万トン、十分過ぎるほどだと思います。水余りがさらに拡大すると予想されます。
お手元に資料を配布させていただきましたが、八ッ場ダムは、国土交通省が群馬県長野原町に建設する、総貯水量一億七百五十万トンの重力式のコンクリートダムです。
先ほどダムの高さについて誤りを見つけました。正しくは、ダムの高さ、百三十一メートルです。ご訂正ください。
利根川水系の吾妻川をせきとめ、関東の耶馬溪といわれる吾妻渓谷を大部分水没させます。そして、右岸の川原湯温泉郷を含む三百四十戸の民家、そして、吾妻川に沿って走っていたJR吾妻線や国道、町道が水没する計画です。
建設の目的は、東京、埼玉、千葉、茨城、群馬の一都四県に日量百二十二万トンの都市用水の供給です。
ダム構想ができたのは、今から五十年前。しかし、この基本計画、六五年にできた計画では、これは初めての現地再建方式という形で、つまり、住民の方たちが離散することなく、この現場で生活を再建できる方式がとられました。
続いて伺いますが、資料にもございます、執行率が、現状、工事の進行状況ですが、六二%と資料にあります。工事の進行状況の把握と、それから、建設事業費並びに関連事業費の総額はどのくらいになっているでしょうか。そして、そのうちの都の負担分、また、平成十三年度までの支出の合計と都負担分をご答弁ください。
▼都市計画局長
八ッ場ダムの建設事業でございますが、平成六年の工事用進入路の着手により本格化いたしました。現在は、水没地域の用地買収とともに、代替地の造成、つけかえ道路、新たな鉄道トンネルなど、ダム周辺の事業は相当程度進んでいると認識しております。
次に、八ッ場ダムの建設事業費及び関連事業費の総額でございますが、現在三千百十九億円でございまして、そのうち都の負担額は五百二十二億円でございます。
また、平成十三年度末までの支出額の合計は千五百五十一億円でございまして、そのうち都の負担額は二百八十二億円でございます。
▼大河原委員
ただいまのご答弁では、本格化して工事が進んでいる様子が把握されているようですが、このように莫大な負担額を拠出しているにもかかわらず、実は、補償の基準が調印されて後、もう二年たっているんですけれども、つけかえ道路や橋など関連事業は行われていますが、現地再建方式といわれている住民のための代替地の造成が進んでいません。代替地はもともと地すべり地帯にあり、その工事がまだ進んでいないこと、代替地造成に入っていく道路のその買収ができていないこと、全く方式としても破綻を来していると思います。
今、何よりもダムの本体工事が始まっていないんですね。既に一千五百五十一億円使っている、そうした中でダムの本体工事が行われていない。これはもうダム計画の中止も可能だというふうに思います。見直しの大きなチャンスです。
そして、皆さんのお手元に、委員のお手元に配布してありますパンフレットにもありますように、八ッ場ダム計画には、吾妻川の酸性の水質、また中和生成物を沈殿させる品木ダムの問題、また渇水時の利水効果も決して大きくないこと、治水面では、森が緑のダムとして既に洪水調節の機能を果たしており、堤防の整備とともに、利根川のはんらんの危険性が低くなってきているという現実があります。
もう一枚パネルを用意しましたが(パネルを示す)渇水期、七月から九月には、よくダムの底が見えるような、そんなマスコミの報道があります。でも、夏のこの時期というのは、多くのダム、すべてのダムで、台風や大雨のために、実はこの洪水調節容量、こうしてダムの水を減らしているわけなんですね。ですから、私たちがダムの底を見ても、このことをしっかりと考えていなければ--八ッ場ダムも、夏の利用できる水は、この下の部分しかないんです。利水としても大変に効果の少ないダムといわなければなりません。
ところで、八ッ場ダムの総事業費は、先ほど二千百十億円というふうにいわれましたが、既に十七年がたっています。当然、今後の事業費の大幅な増加が見込まれます。事業費の改定のスケジュールと、その際、東京都としての可否の判断はどのような手続で行われるのか、伺います。
▼都市計画局長
八ッ場ダム事業は、特定多目的ダム法に基づくものでございまして、その事業計画案の策定及び変更は、事業主体である国土交通省が行うこととなります。
事業費改定のスケジュールにつきましては、国土交通省が事業の進捗状況やその必要性を見きわめながら適切に判断するものと考えます。
また、事業費の改定に当たりましては、あらかじめ農林水産省など関係行政庁の長に協議するとともに、関係都道府県の知事の意見を必要とし、その際には議会の議決を経なければならないとされております。
▼大河原委員
改定は本年度中にも行われるというようにも聞いております。都議会各委員の皆さんにも、ぜひともこの問題、調査を重ねていただきたいと思います。
最も受水量の多い埼玉県でさえ、実は、八ッ場ダムを必要としながらも、将来は受水量を減らすという可能性もあると聞いています。実際、茨城県では、霞ヶ浦導水事業から一部撤退、つまり水利権の一部返上を行って、百三十億円もの負担金を減らしました。ダムをつくり続けてきた時代が確実に変わってきているわけです。淀川水系では、現在計画中、工事中の五つのダム、原則中止という方向で検討しております。
計画の見直しのルール化が必要であると思いますが、国の動向も踏まえ、都としてどのように考えるのか、伺います。
▼都市計画局長
首都圏の水資源開発は、水資源開発促進法によります利根川及び荒川水系における水資源開発基本計画、通称フルプランに基づき進められております。フルプランは、将来の水需要と供給の全体像を見通した計画でございまして、これまで社会状況の変化に対応し、適時適切に見直しがなされてまいりました。
都といたしましては、将来にわたって安定した水の供給を図るため、水需要を的確に予測し、現在策定中の第五次フルプランに反映させるよう、国に働きかけてまいります。
▼大河原委員
私は、知事が近隣自治体との水の相互融通を検討されているということに注目しております。災害時だけではなく、日常的に水を融通し合うことができたら、例えば水の足りない自治体へは余裕のあるところから回し、ダム建設を中止させることができるのではないかと考えているからです。
そこで最後に、政治家である知事に伺います。
都は、地下水を正規の水道水源に位置づけ、水需要計画を修正して、ぜひとも水源開発を見直すべきです。そして、八ッ場ダムを初めとする首都圏の水源開発を見直すため、関連自治体と国に呼びかけ、円卓会議をしてはいかがでしょうか、ご見解を伺います。
▼知事
私はかねがね、政治、政というのは、一には税、二には、やはり人間の生活というものを潤わせる、あるいは正常に運営させるために不可欠な水ではないかと思ってまいりました。ですから、この水を治め、水を安定供給することは、国や自治体の重要な責務であると思います。
都はこれまでも、水源地の方々の理解と協力を得ながら、これは電力も同じでありますけれども、国や関係自治体とともに水資源の開発に努めてまいりました。
ご指摘の地下水というのは、初めてのサジェスチョンでありまして、これも、埋蔵量その他の問題があると思いますが、一つの大きな手だてだと思います。
ただ、やはり既に国土交通省が決め、それに着手しているこの八ッ場ダム、これから世界の天候異変というものがどういう気象状況を日本にもたらすか、未知の問題がありまして、十全にものを備えていくことで、私は都民の負託にこたえることはできると思いますし、今のところ、この八ッ場ダムを根本的に見直すための改めての合議をするつもりはございません。
▼大河原委員
今のところ、まだまだ知事と私たちとの距離はかなりあるようですが、水源開発の見直しは時代の要請であり、東京都の財政の健全化にも資するものです。ぜひとも再考をお願いします。
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