第1回定例会 一般質問

外環は需要下方修正後の判断を
核燃料運搬車事故の防災対策を

福士 敬子(無(自治市民))
■都市再生
質問〔1〕
 今、都市再生が進められようとしていますが、東京のような巨大都市の再生は一年、二年でできるものではありません。折しも高齢化が進み、人口の減少も予測され、社会経済が大きく変わろうとしている現在、都市の大規模なインフラ整備は、より確かなシミュレーションや財源のことも十分踏まえ、優先順位を明らかにして慎重に進めるべきだと思います。見解をお伺いします。
 その意味で、外郭環状道路などの整備には、環境面や経済的側面で疑念を持っていますが、ここでは経済面に絞ってお尋ねいたします。
 
答弁〔1〕
 ▼財務局長
 都市再生は、都市開発のみならず、産業の活性化や環境問題への対応など、都民生活の質を高め、東京の活力をよみがえらせるために不可欠のものでありまして、財政状況が厳しくても取り組んでいかなければならない最重点課題の一つであります。
 このため、十五年度予算におきましても、都税収入が八年ぶりに四兆円を割り込む厳しい財政状況でありましたけれども、国庫支出金を確保いたしまして、限られた財源を重点的、効率的に配分をして、公共交通網の整備、それから交通渋滞の解消、ディーゼル車対策など、各種の事業に積極的に取り組むことといたしました。
 今後も、既存施策の見直しなど、財政構造改革を積極的にさらに推進をしながら、投資に対する効果の高い事業への重点化を図ることによりまして、都市再生に関する施策を着実に進めていく必要があると思っております。
 
■外環の建設における環境側面等の最新予測値
質問〔1〕
 外環の整備による経済効果は、二〇二〇年において年間約三千億円と発表されています。一般的には、二兆円の建設費を七年で回収すると受けとめられていますが、建設費の回収とは関連ないはずです。
 この三千億円は、九四年のデータをもとに、九八年に計算したものだそうです。しかし、昨年公表された将来交通需要推計によると、全国での二〇二〇年における自動車保有台数は、それまでの八千九百万台から八千二百八十万台へ七%、自動車走行台キロでは、九千四百三十億台キロから八千六百八十億台キロへ八%、それぞれ下方修正され、その後、減少が予測されています。当然、首都圏の環状方向の自動車需要も今までより下方修正されると考えられ、その分、走行時間短縮による経済効果も減少するはずです。特に、渋滞は少しの交通量減少でも大きく減り、例えば首都高の都心環状線では、中央環状線の整備による交通量の一割減少に対し、渋滞が六割減ることになっています。現在、九九年のデータをもとにした予測が進められているようですが、外環や圏央道の整備に関する議論は、その結果も踏まえるべきです。
 今、採算性で問題となっている本四架橋や東京湾アクアラインの二の舞とならないよう、そして、知事が施政方針表明でもいわれたように、後年の人に過去の選択の過ちが大きな禍根といわれないよう、外環や圏央道は、経済効果の額、また、そのベースとなる環状方向などの交通需要量自体についての最新の予測値を早く公表し、それを念頭に置いて建設の是非を考えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 
答弁〔1〕
 ▼都市計画局長
 最新の予測値については、まとまり次第、公表してまいります。
 いずれにいたしましても、外環は首都圏の渋滞解消や環境改善、ひいては都市再生に必要不可欠な道路でございます。その整備が遅延すればするほど、排気ガスによる大気汚染や渋滞による経済損失等の外部不経済を増加させることとつながります。したがって、一刻も早く外環を完成させることが急務であり、行政としての責務であると考えております。
 
■行政評価
質問〔1〕
 都は、PDCAサイクルに基づいた行政評価システムを導入し、思い切った政策の見直しや組織の廃止などを行う枠組みを整えつつあり、このことは一定評価いたします。しかし、現在の行政評価制度では、評価を行う際の指数が定まっていないため、知事が気に入った政策を評価、推進し、気に入らない政策は財政面のみに着目して廃止といった恣意的な判断をすることが可能になります。
 現在、民間では、組織における財務的視点、顧客の視点、業務プロセスの視点などを明確に設定し、各視点において目標、指数、方策などを定め、視点間の依存関係等をも明確にしながら戦略を決定していくバランススコアカードという手法を用い、企業のビジョン、戦略の決定や評価基準を組織内で共有していくところがふえてきています。
 これは、例えば小児医療を考える際、医師数、病院数、予防医療の充実、その他複数ある目標の関係を明らかにし、各目標の充足を検証します。この場合、予防医療を充実させることにより、医師数や病院数の目標値が下げられることもあります。こうした関係を把握することで、重点的に予算を投入すべきポイントが見えると考えます。
 自治体では、収支を考慮すると、市民の満足度を高めるという相反する要求が重なることも多く、企業以上に戦略的思考が必要になってきます。
 都の事務事業評価は、実績、必要性、効率性、公平性という視点を踏まえ、総合的に分析し、検証するものとしていますが、現在は、評価の時点において目標を理論づけようとするため、評価結果の表現が煩雑になっていると思います。評価結果をシンプルに見やすくするためにも、事前に各視点ごとの目標設定が必要です。今の行政評価では、その部分が欠落していると思います。
 また、局などを評価するには、それぞれの組織がビジョンや目標を持ち、それを個々の事業とつなげ、トレードオフの関係にある項目を明確にすることも含め、すべての事業において各視点ごとの目標を関連づけていくことが必要だと思いますが、見解をお伺いします。
 
答弁〔1〕
 ▼知事本部長
 政策の評価は、当然ながら、最終的には議会のご審議、また都民の判断により行われるべきものでありますが、私どもが実施している事務事業評価におきましては、いわばその前段階として、事業の実績、必要性、効率性及び公平性という多角的な視点から、総合的な評価を行っております。
 このうち、事業の実績につきましては、成果を示す具体的な指標を設定し、目標に対する達成状況を評価しており、また、その他の項目につきましても、それぞれ具体的な評価基準を設けて評点を付しているわけであります。
 今後とも、評価基準の精度を高めるなど工夫を重ね、都民にとってわかりやすい評価制度となるよう努めてまいります。
 
■核燃料運搬事故対策
質問〔1〕
 一九九九年九月のJCO事故では初動段階での対応が問題となり、同年十二月に原子力災害対策特別措置法が成立しました。原子力災害の特殊性に応じた緊急体制、災害対策の抜本的強化の必要性が認識されたわけです。
 この後、やっと都でも核燃料運搬中の事故対策が地域防災計画に組み込まれましたが、通り一遍の図式だけです。
 お隣の埼玉県では、放射性物質事故災害対策計画で、事故発生現場を次のようにとらえています。核燃料物質使用事業所においては、使用量等から勘案すると、事故発生による周辺環境への影響は、輸送中における事故と比較して小さいと考えられ、対策として定めるに当たり、輸送中の事故によるものを中心として、その他の場合はこれを援用。
 東京においても、同様の状況と思われます。現に、都の公安委員会への核燃料運搬届け出は、私がいただいた資料で、この五年間において最高で百五十五件、最低で百十七件、年間平均百三十二件です。単純計算では、約二、三日に一回、東京の道を核燃料輸送車が走っていることになります。
 かつて、私も環八を走る輸送車を追いかけたことがあります。四台の隊列の前後にパトカーがつきますが、早朝でしたので、交差点で信号が変わるたびに隊列の間に一般のタンクローリーが割り込み、前後左右を囲んでいました。しばらく行ってはパトカーが左に寄り、後続車を待つこと数回、環八から関越道に入り、また隊列を組み直していましたが、一回の輸送では、このようにして十数台ぐらい走るようです。核輸送車、三つ葉マークもついており、そこには近づかないよう注意書きもありますが、一般の車は気がつかないようでした。
 このような状況が日常的にある以上、地震とともに追突事故も考えられますが、関係部局さえまるで現状認識は持たれておりません。防災訓練として、核燃料輸送の事故も想定した何らかの対応も入れるべきではないでしょうか。
 さらに、現在、核輸送に関しては、災害対策部のみならず、消防庁にさえ何の連絡もされておりません。しかし、事故があれば、実際の対応は消防庁に大きく依存すると思います。心構えのあるなしでは対応に大きな開きが出るやも知れず、公安委員会として知り得た情報のうち、せめて輸送日時やルートなどについては、関係局及びルート沿線区市町村への内部伝達はされるべきと考えます。それにより、都の認識も一体化できると思いますが、あわせて、防災訓練に関心の強い知事のお考えをお聞かせください。
 
答弁〔1〕
 ▼知事
 核燃料の輸送中に万が一事故が発生した場合は、国は速やかに関係省庁による対策会議を開催し、必要な措置を実施することになっております。
 また、平常時、核燃料物質の輸送日時及び経路などは、これはこのごろ世界ではやっているNBCテロも含めまして、ハイジャックなどの懸念もありますし、安全確保の観点から、国において公開すべきでない情報とされており、慎重に取り計らうべきものと考えております。
 今後とも、庁内各局、警視庁、東京消防庁に十分に連携をとらせ、非常時の対応に万全を期してまいります。
 

 
質問〔2〕
 災害に際しては、消防庁、警視庁なども含め、現場に出向く職員に対し、ガンマ線などの放射性防護服、被曝許容時間内活動など、都として安全対策は十分考えられているか、お伺いします。
 
答弁〔2〕
 ▼総務局長
 核燃料物質の輸送時におけます事故については、基本的には、原子力事業者及び国が対応することになっております。
 都の役割につきましては、警視庁は事故の状況把握に努めるとともに、人命救助、交通規制等を実施し、また、東京消防庁は、火災の消火、救助、救急等の必要な措置を実施することになっております。
 警視庁や東京消防庁では、放射性物質に関します活動基準等を定め、これらの活動に従事する職員の安全確保を図っております。
 なお、災害現場で警察や消防以外の都の職員が直接対応することはございませんが、何らかの対応が出る場合には、国とも連携し、専門家等の指示により、職員の安全確保策を講じてまいります。
 

 
質問〔3〕
 放射能災害による被曝者の救急治療や受け入れ医療機関については、どのように手当てされているか伺います。
 
答弁〔3〕
 ▼健康局長
 被曝患者に対する救急医療は、一次的には救命救急センターを有する災害拠点病院等で汚染除去や応急処置などの初期対応を行うこととなります。
 さらに、専門的治療が必要と診断された場合には、放射線障害専門病院としての機能を担う放射線医学総合研究所に転送するなど、国と連携した対応を行うこととしております。
 

 
質問〔4〕
 災害対策の強化では、隣接地である川崎市に原子力施設があることから、都の地域防災計画で防災訓練の実施が掲げられています。実際に活動されたことがありますでしょうか。
 日本での核燃料輸送は、都内でも交通量の多い環七、環八など、住宅地の中を通り、高速道路に入ります。しかし、関係部局でさえ防災計画に記載されていることすら認識もない状況ですから、一般市民は何も知らず日々暮らしています。
 輸送される核燃料のうち、六弗化ウランは五十六・五度でガス化し、空気中の水分と反応すれば、〇・〇〇五%の濃度でも三十分から一時間で人が死ぬ猛毒の弗化水素と、粒子が大きく窒息死の危険がある弗化ウラニルになります。災害時においては、目に見えず、空気を吸うことで被曝、死亡ということになりかねません。
 災害予防計画の中の防災広報では、障害者、外国人など要援護者への支援体制までうたわれながら、現在は全くの空論に終わっているようです。新年度には防災計画が改定されるようですが、その際には、ぜひ核物質に対し関係部局間の一致した知識と連携を高めた防災計画を策定されるよう申し上げます。
 
答弁〔4〕
 ▼総務局長
 川崎市内には小規模な原子力施設がございます。この施設につきましては、緊急事態が発生した場合に対応する範囲は、原子力安全委員会の防災指針によりますと半径百メートルとされており、都民が避難等の対応を迫られることはございません。
 事故が発生した場合には、原子力事業者から都に対して通報がございます。都は、都民へ迅速で正確な情報を提供する体制を整備し、都民の無用な混乱を防止することにしております。
 都としては、今後とも、事故に際して的確な対応がとれるよう、神奈川県や川崎市などと連携を図ってまいります。
 
■芸術振興策
質問〔1〕
 ヘブンアーチスト制度が選定者や都民の関心を得たようですが、芸術振興策において、都が特定のジャンルに偏ってアーチストを選定し、支援策を行うことは、ジャンル外のアーチストにとってはマイナス面もあると考えます。ヘブンアーチストにおけるジャンル選定及びアーチスト選定について、公平性の担保をどのようにして行っているか、お伺いしておきます。
 
答弁〔1〕
 ▼生活文化局長
 この事業は、大道芸人に対して公園等の公共空間を開放し、都民や観光客に気軽に芸術文化を楽しんでもらう事業でございます。
 そのジャンルとしては、大きく分けてパフォーマンス部門と音楽部門を設けておりますが、厳密な特定はしておりません。似顔絵かきやフェースペインティングなど、大道で芸を演ずるものであれば、幅広い分野からの参加が可能でございます。
 また、選定に当たっては、お客に楽しんでもらえるような一定の水準を確保するために、プロの大道芸人や専門家に審査をお願いしております。
 さらに、合格者数の枠を設けておりませんで、募集も定期的に行うこととしております。
 こうしたことにより、選定についての公平性を確保していきたいと考えております。
 

 
質問〔2〕
 大道芸は、庶民が価値を決めるものです。行政側が余り介入せず、単に場所の開放のみにすべきと思いますが、いかがでしょうか。
 
答弁〔2〕
 ▼生活文化局長
 開放する場所が公共空間であることから、騒音への配慮や営業行為、あるいは危険物の禁止など、一定のルールを守ってもらうこととしております。
 しかし、この事業は、従来に比べ、大道芸人の活動に対する規制を大きく緩和させ、画期的な試みであると考えております。
 今後はさらに活動場所を広げ、この事業が東京の名物となるように、歩行者天国でのイベントの実施など、より一層内容を充実させてまいります。
 

 
質問〔3〕
 アニメフェアでは、賞は若手の登竜門的な位置づけを明確にすべきだと思いますが、昨年のアニメフェアでは、宮崎駿氏がグランプリを受賞しました。既に評価を得ている人は審査員側に回り、若手の公募作品の優秀者にトロフィーを渡すといったイベントこそが、企業振興に加え、芸術振興にも資するコンペティションになると考えます。アニメフェアのコンペティションのあり方について、どのように考えているのか、お伺いいたします。
 
答弁〔3〕
 ▼産業労働局長
 コンペティションには、すぐれた人材の育成とビジネスチャンスの拡大という二つの大きな役割があると考えております。このため、来月実施いたします東京国際アニメフェア二〇〇三では、公募部門とノミネート部門の二つに分けます。若手クリエーターの登竜門としての公募作品と既に映画やテレビなどで放映されている商業作品について、それぞれ二部門に分けまして、すぐれた作品を選考、表彰することにしております。
 都は、今後とも、アニメフェアのコンペティションの充実に努めまして、アニメ産業の一層の振興を図ってまいります。
 

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