第1回定例会 一般質問

臨海鉄道の実態を検証し
第三セクター全体を洗い直せ

花輪 ともふみ(民主党)
■都営住宅の市区町村への移管
質問〔1〕
 私は、都営住宅のようないわゆる公営住宅は、市区町村単位での運営が望ましいと考えます。なぜならば、第一に、介護保険や生活保護を初めとした福祉事業は市区町村の業務であり、住宅と福祉のサービスを総合的、効率的に提供することで地域福祉の向上を図ることができること。第二に、都営住宅の広大な敷地や建物を活用して、障害者やお年寄りのグループホームや保育園など、地域の実情に応じた福祉施設づくりに役立つこと。そして第三には、地域ごとに、子持ちの若年ファミリー世帯を優先したり、長年その地域に住んできた高齢者の方々を優先するといった、きめ細かな対応も可能になるからです。他県の状況を見ても、公営住宅は市町村での運営が圧倒的です。
 委員会で私が移管について問えば、住宅局の方は、ご趣旨ごもっとも、既にその方向で積極的に取り組んでおりますと答えます。しかし、その具体的計画を聞けば、まずは百戸未満の小さな団地から、今後十年間で二万戸の移管を目指しますとのこと。全部で二十六万戸の都営住宅のうち、十年で二万戸。全部移管するとしたらば、百三十年計画です。
 計画戸数が少ない理由について、局は、市区町村がなかなか積極的になってくれないんですよと嘆きます。私も最初は、ああ、そうでしょう、市区町村に大変な財政負担がかかるんだから、なかなか難しいだろうな、そんなふうに考えていました。しかし、それは間違った認識でした。財政的な負担はかからないのです。なぜならば、都営住宅の土地建物は市区町村へ無償で譲渡しますし、通常の人件費、修繕費、そしてまた管理費、事務費はもちろんのこと、長期大規模修繕や滞納の危険率を換算してもなお、圧倒的に家賃の収入の方が多いんですね。さらに、将来建てかえをするときも、建設費のほとんどは国と都から出ます。また、近傍同種の家賃との差額も出ます。
 財政負担がなく、地域福祉の推進ができるのに、どうして自治体は移管に前向きではないんだろうかなと思い、私は、幾つかの自治体の担当と直接会い、または電話でヒアリングをさせていただきました。
 その結果、ヒアリングをしたすべての自治体が、地域福祉の向上につながる、さらに、財政的な負担はない、それどころか財政的にメリットがあるということを十分に認識していることがわかりました。しかし、その上で、幾つかの自治体の担当から、都営住宅は精神的な負担になるのでとか、厄介だからという言葉を聞きました。
 まさに、移管の進まない原因は、この言葉に集約されていると思います。論理的にも数字的にも実際にも地域福祉に役立つことはわかるけれども、面倒くさい。これは甘えです。さらに、現場に近い係長さんとか課長さんほど、面倒くさいという言葉を使います。確かに、新しいことに取り組むとき、現場は大変でしょう。しかし、面倒くさいといわずに、それを乗り越えていかなければ、未来はつくれません。
 逆に、区の部長クラス以上になると、皆さん積極的な意見でした。特に世田谷区の助役は、移管は区民にとってメリットがある、百戸未満とか百戸以上にとらわれず、いつでも移管の協議に応じる、このことを本会議場でいってもらっても構わないということでした。
 以上のことからもわかるように、現場同士での話し合いではなかなか進みません。移管の成否は、受け入れる側の上層部の姿勢にかかっています。ぜひ精力的に自治体首脳部への働きかけをしていただきたいと思います。
 ここでお尋ねをいたします。現在、移管対象を原則百戸未満の団地としていますが、それにとらわれず、百戸以上の団地についても積極的に移管の協議を行い、百三十年などという計画を前倒しに達成すべきと考えますが、決意と今後の取り組みについてお答えください。
 地味な課題ですが、地方分権による地域福祉の充実はもとより、移管が完了すれば、住宅局の必要性もなくなります。都庁のスリム化にもつながりますので、積極的な答弁を期待します。
 
答弁〔1〕
 ▼住宅局長
 公営住宅には、地域の特性に応じたまちづくりや福祉施策との連携が求められており、住民に最も身近な自治体である区市町村の役割が一層重要となっております。
 ご指摘のような現状がすべてであると認識しておりませんが、これまでも、お話の規模の団地につきまして、弾力的に移管の協議をしてまいりました。今後とも、区市町村の意向や実情に配慮しながら、積極的に協議の対象としてまいります。
 また、移管に際しましては、区市町村が地域の実情に応じて建てかえを行う、建てかえ時移管制度を活用するなど、区への移管計画の早期達成と、市町村移管の積極的な推進に努めてまいります。
 
■第三セクター(東京臨海高速鉄道株式会社)
質問〔1〕
 この会社は、新木場から臨海副都心を通り大崎までの十二・二キロを結ぶ、りんかい線を建設、運行する会社です。平成三年にこの会社が設立したときには、総建設費三千百億円、全線開業時の利用者は十九万四千人の計画でした。ところが、実際には、ご多分に漏れず、総建設費は一・五倍の四千六百十七億円、全線開業時の利用者は予定の半分の約十万人でした。これに伴い、この会社の財務状況は逼迫し、第三セクターといえども、都の債務保証なしでは銀行の融資を受けられなくなりました。
 私は、都民の足として必要な電車です、債務保証そのものには反対はいたしません。石原知事にとっても苦渋の選択だったと思います。しかし、都民を連帯保証人にするのですから、都民や議会に対し、今後のリスクに対するそれなりの説明責任があるはずです。
 会社の運賃認可申請書によれば、資金不足は十五年度にとどまらず、毎年百億円前後の不足で、最終的には八百九十四億円ほどの資金不足が生ずるとのことでした。私は考えました。八百九十四億円という額も大変な額ですが、果たして本当に八百九十四億円で資金不足は済むのだろうかと。
 そこで、昨年つくり直したという長期の収支計画表を見せていただきました。それを見てびっくりしました。何と、今後四年間で利用者の数は現在の二倍の一日平均約二十万人になるそうです。臨海の開発が計画どおりに進むと、倍増するそうです。臨海の開発が計画どおりに進まなかったから、この会社は経営危機に陥っているということにまだお気づきではないようです。
 これだけではありません。運賃は何と五年に一度、一○%ずつ上げるそうです。が、人件費は五年で一・七%、物品費は二・二%、ほとんど上がらない計画です。(発言する者あり)いいですか、収入である運賃にインフレを見込むのであれば、支出である人件費や物品費にもしっかりとインフレを見込むのが収支のイロハです。また、利用者がふえても職員の数はふえない計画になっています。入りを多く見込んで、出を少なく見込む、いいかげんな収支計画であり、資金不足のリスクは八百九十四億円では済まないのではないですかという私の指摘に、局からは合理的な説明はいただけませんでした。
 このように、この会社の収支計画は、都合のいい数字を並べてつくった全くの絵そらごとです。これが第三セクターの実態です。こんないいかげんな収支計画を信じて、何百億円もの連帯保証人になってくれというには、あんまりにも無理があります。将来のことはわからないし、都が連帯保証するのだから、細かいことは気にするなという無責任な声も聞こえてきそうですが、都民の貴重な財産を預かる、貴重な税金を預かる立場として、みずからの財産を担保に入れるくらいの覚悟と緊張感を持つべきだと思います。
 私は、鉄道事業は息の長い事業で、そう簡単に黒字転換するものではないということもわかっています。債務保証そのものには反対しません。しかし、だからといって、いいかげんな収支をつくっていいわけがありません。今回の債務保証に当たっては、収支計画を地に足のついたものにつくり直して、議会や都民に対し、これからどれくらいリスクがあるのか、それをしっかりと説明するべきであると思いますが、いかがでしょうか。
 さらに、過去の総括を含め、その責任の所在を明らかにするべきと考えますが、いかがですか。
 恐らく答弁は、JRや国鉄清算事業団との絡みがとか、政治的な難しい背景がとか、バブルがはじけたからとか、地下工事中に水が出たとか、銀行が貸し渋るからとか、自分たちには責任はありません、すべて不可抗力ですと答えるのでしょう。確かにそうした面もあるかもしれません。しかし、すべて人のせい、だれかのせいで済まされるのですか。見通しの甘さはなかったのですか。都庁組織全体の問題として、また、第三セクター全体の問題として、しっかりと失敗の原因を明らかにし、責任の所在を明確にして、同じ過ちを繰り返さない、再発防止の取り組みが具体的に行われることなくして、どうして都民を連帯保証人にすることができるでしょうか。知事、明確なお答えをお願いします。
 
答弁〔1〕
 ▼都市計画局長
 りんかい線の収支は、世界都市博覧会の開催中止等、乗客数や建設計画に関する基本的な前提条件の変化を受けて、これまでも見直しを行ってまいりました。先般、会社が国に提出した運賃認可申請におきましては、直近のデータ等に基づいた収支予測を行っております。全線開業後、現時点で、予測された乗客数はほぼ確保されております。
 しかしながら、引き続きの経営努力は必要でありますので、今後は、乗客動向の推移等を踏まえた中長期の抜本的な経営改善計画を早期に策定するよう、強く会社に求めてまいります。
 

 
質問〔2〕
 この臨海高速鉄道の常勤役員のうち、二人は国からの天下り、残りの二人は東京都からの天下りです。見通しや経営責任が甘かった背景に、身内同士の甘えやなれ合いはなかったのでしょうか。
 長野県の第三セクター、しなの鉄道は、百円もうけるのに百二十八円かかるという赤字会社でした。しかし、田中知事が県の天下り社長を退任させ、旅行代理店のHISという会社から社長を招いたところ、八十九円のコストで百円稼げる黒字体質になったとのこと。
 お尋ねします。今回の東京臨海鉄道に対する債務保証に当たっては、先ほどのようないいかげんな収支予測を出してくる天下り経営陣にはご退任いただき、民間より優秀な経営者を招くべきと考えますが、いかがでしょうか。
 
答弁〔2〕
 ▼総務局長
 都は現在、各団体の経営改善計画を盛り込みました監理団体改善実施計画の実現を目指しますとともに、経営目標の達成度評価制度の導入などによりまして、各団体の経営努力を促しております。
 今後も、各団体の経営状況の的確な把握に努めまして、より一層経営改革が進むよう、必要な指導、支援を行ってまいります。
 また、監理団体の役員の外部登用につきましては、経営上の必要性などから、団体みずからが判断すべきものでございますが、現在、既に幾つかの団体におきまして民間企業出身者が役員に就任しております。
 今後とも、高い専門性やすぐれた経営感覚などが求められるポストで、団体が必要とする能力、経験を有します人材が登用されるよう、必要な支援をしてまいります。
 

 
質問〔3〕
 第三セクターの役員に、経営に対するインセンティブと責任感を持たせるために、就任時に会社の株式を購入させてみてはいかがでしょうか。答弁を求めます。
 
答弁〔3〕
 ▼総務局長
 都におきましては、従来から、団体役員のインセンティブや責任意識を向上させるための取り組みを行ってまいりました。ご提案の株式の購入につきましては、各団体が、みずからの経営方針や法令等に基づきまして判断すべき問題だと考えております。
 

 
質問〔4〕
 今回の問題に限らず、石原知事は、幹部職員の天下り野放し状態をいつまで許すおつもりですか。天下りは、第三セクターを初めとした監理団体では無責任な経営に、そして民間企業には、官と業との癒着の温床になっています。明確にお答えください。
 
答弁〔4〕
 ▼知事
 りんかい線に限らず、都はこの数年間、外部監査を入れまして、いろんな新しい発見と申しましょうか、問題の指摘が行われています。また、それを受けて、各部局もその改善に努めておりますし、まだ至らぬものがありますけれども、体質は大分変わってきていると思います。
 それにかかわって、外部団体の整理もかなり進んできたと思いますが、いずれにしろ、幹部職員の再就職についてでありますけれども、都では、幹部職員の再就職については、従来から独自の取り扱いの基準を設けて、規制を行っておりまして、野放しというご指摘は当たらないと思います。
 職員が退職後に、在職中に培った知識や能力を民間企業などにおいて活用して、社会的に貢献することは意義があると思います。
 今後とも、都と民間企業などとの関係を厳正に保ちながら、都民からの誤解を招かぬように、適切に対処していくつもりでございます。
 

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