質問〔1〕
約四百万人が居住する多摩地域は、東京圏の広域的な都市構造を構築する上で重要な役割を担っております。多摩地域が活力と魅力にあふれた地域づくりの理念のもと、今後も東京圏の発展に寄与していくためには、都市施設の整備や充実が必要不可欠と考えます。
特に水道と下水道については、都民が生活し、都市が活動していく上で、一日二十四時間、一年三百六十五日、欠くことのできない大切なライフラインであります。
日本のGDPは五百十三兆円、東京では、一日当たりに換算すると約二千三百億円にもなります。仮に東京で水道、下水道という水の流れが途絶えたとすると、相当の経済ロスが考えられます。また、世界的に見ても、都市の発展にとって上下水道は欠かせない施設であり、このことは歴史が証明しております。知事は、政の根幹は税と水だといわれましたが、まさにそのとおりだと思います。
私は、都民から選ばれた者として、多摩地域における広域的な施設整備の必要性を常々感じているところです。人々が安心して暮らせるためには、水道や下水道のネットワーク化を強化し、平常時はもとより、震災や事故時にもその機能が損なわれないよう、日ごろから万全の備えをする必要性があると思います。私はこのように考えておりますが、知事の率直なお考えをぜひともお伺いしたいと思います。
答弁〔1〕
▼知事
私も、知事に就任する前は、東京全体が一つの水道の体系でできていると思っていたんですけれども、武蔵野市とか昭島とか羽村とか、そういった幾つかの自治体が独自の水道事業をしているということに、改めて認識を持ちました。
水道と下水道は、都市にとって不可欠のライフラインでありまして、これがいっときともとまることは許されないと思います。
世界の歴史を振り返りますと、紀元前の古代都市でも明らかなように、文明の発祥や都市の発展には上下水道は不可欠でありました。
また、都市機能が高度に集積した東京では、その重要性ははかり知れないものがございます。
首都東京の都市機能並びに都民生活を守るために、老朽施設の計画的な更新はもとより、耐震性の強化、施設のネットワーク化など、ご指摘のように上下水道施設の信頼性を一層向上させるように、今後も努力していきたいと思っております。
質問〔2〕
多摩地区の水道は、昭和四十八年の市町営水道統合開始以来、広域的な施設整備を進めることによって、給水の安定性は格段に向上してきました。しかしながら、大部分の水道施設は、統合以前にそれぞれの市町域を対象とした施設を引き継いだものであり、その管理も市町が行っている状況にあります。このため、施設の停止や水道管破裂など大きな事故があった際には、隣接市町からの応援が難しいのではないか、また、対応に時間を要するものではないか、そうした危惧を持っております。
現在、水道局では、市町域にこだわらない施設整備に取り組んでいますが、施設の運営管理など市町への事務委託を解消し、直接都が対応できるよう、一日も早く改善してもらいたいと考えます。
そこでまず、多摩地区における水道の現状と課題、一層の安全給水の確保に向けた今後の取り組みについて、水道局長の所見をお伺いいたします。
答弁〔2〕
▼水道局長
多摩地区の水道は、都営水道への一元化により、量の確保といった面では所期の目的を達成しております。
しかし、水道施設の多くは、都営水道統合以前からの小規模施設を継承してきたことから、配水区域が市町域ごとに細分化され、施設間相互の連絡が不十分といった状況にございます。したがいまして、大規模な事故時等の対応においてご指摘の問題点があるほか、平常時においても、広域的水道としての効率的な施設運営が困難な状況にございます。
今後は、事務委託解消を中心とする経営改善を着実に進め、市町域を越えた広域的配水区域への再編や施設間のバックアップ機能の強化を図るとともに、施設運営面における簡素化、効率化を一層推進し、多摩地区における安定給水の確保に努めてまいります。
質問〔3〕
多摩地区の水道普及率は、都のこれまでの努力もあって、ほぼ一〇〇%となっています。しかし、給水区域内にありながら、いまだ水道が整備されていない地区が山間部の一部にあります。これらの地区では沢水などを利用していますが、冬場には沢水が枯れて水不足が生じ、降雨時には水が濁るなどの問題があり、一刻も早い水道整備を望む声があります。
水道は日常生活に不可欠なものであり、こうした地区の住民要望にこたえて、早期に安全な水道水を安定して供給する必要があると考えますが、所見をお伺いいたします。
答弁〔3〕
▼水道局長
多摩地区の未普及地区につきましては、山間部という地域特性から、水利用の実態や技術的課題等を検討の上、配水管の延伸やポンプ所の設置など、施設整備を鋭意進めてきております。
ご指摘のとおり、未普及地区におきましては、沢水の枯渇や濁りなどが生じることもあり、水道整備の要望が寄せられております。
今後も引き続き、地域の実態や要望を踏まえまして、未普及地区の早期解消に努めてまいります。
質問〔4〕
水道未普及地区の一つである八王子市の高尾山は、明治の森高尾国定公園内にあり、都心から交通の便に恵まれ、都民を初め数多くの観光客や登山者が四季を問わず訪れています。その数は、地元観光協会の調べによると、年間二百五十万人に上っております。ご承知のとおり、高尾山には都のビジターセンターや市の施設などがありますが、これらの施設では、他の未普及地区同様の課題を抱え、水道整備に対する強い要望があります。
昨年の四月、改正水道法が施行となりましたが、この法改正の考え方には、利用者の多い、こうしたいわばレジャー施設などに対し、より安全な水を供給したいという思いもあるわけです。私も、多くの都民が訪れるこのような場所には、都が直接水道の整備を行うべきと考えます。
高尾山という地域特性あるいは急峻な地形などから、さまざまな技術的課題も多いと思いますが、水道整備へ向けた今後の取り組みについて伺います。
答弁〔4〕
▼水道局長
高尾山は、観光地といった地域特性や四百メートルに及ぶ高低差があることなどから、これまで、水使用実態の把握を初め効率的な給水システムや維持管理方法など、給水上の技術的諸課題について検討してまいりました。
今後は、これらの検討結果などを踏まえまして、地元八王子市や関係部署との調整を行い、実施に向けて水道整備計画を早期に策定してまいります。
質問〔5〕
多摩地域では、多摩川の両岸に、流域下水道の六つの処理場が向かい合う形で立地しています。多摩川中流域では、河川水量の半分以上を下水処理水が占めるなど、流域下水道は多摩地域の水循環にとって重要な役割を担っております。
私にとって身近な水辺である多摩川に足を運び、下水処理場が向かい合っているのを見るにつけ、私は、互いの処理場を結べば、二つの処理場を一つの処理場として効率的に運営できるとともに、災害時のバックアップにも役立つと感じていました。下水道でも、各施設間を結んでネットワーク化をすれば、その効果は大いにあるものと考えます。
来年度、多摩川上流処理場と八王子処理場の間を結ぶ連絡管の建設に着手すると説明を受けました。この連絡管は、私のこうした考えに沿っているように思え、関心を持っているところです。そこで、処理場間を結ぶ連絡管について伺います。
まず、多摩川を横断して二つの処理場を結ぶとのことですが、連絡管の具体的な計画内容と整備効果について伺います。
答弁〔5〕
▼下水道局長
施設更新に伴って必要となる施設建設のコスト縮減が図れること、また、水量増に伴って必要となる施設の増設時期をおくらすことができること、さらに、災害時のバックアップ機能も確保でき、安全性の向上が図れるなど、さまざまな効果が期待できるものでございます。
質問〔6〕
流域下水道では、多摩川沿いに、ほかにも四つの下水処理場があります。これらの処理場についても相互に結ぶ計画があるのか、関心のあるところです。そこで、今後の連絡管整備について都の考えを伺います。
答弁〔6〕
▼下水道局長
お客様である都民に低廉で質の高いサービスを提供していくには、流域下水道事業のすべての施設を有効に活用していく必要がございます。
今後、ほかの処理場につきましても、費用対効果や財政状況などを検討し、一元的かつ効率的な運転管理体制の整備を進めてまいります。
質問〔7〕
都市活動に伴い大量に発生する廃棄物を資源化してゼロにするゼロエミッションは、環境への負荷を削減し、都市と地球を持続的に発展させる重要な取り組みです。とりわけ内陸部にあって処理地が限られている多摩地区では、こうした取り組みが重要となっています。
廃棄物といえばごみ問題に目を向けがちですが、多摩地域では、大量の下水汚泥の処理、処分も大きな課題です。四百万人近くの都民が生活する多摩地域の下水道普及率は九三%に達し、多摩川にもアユが遡上するまでになりました。しかし、その結果として、都が管理する多摩地域の七つの下水処理場だけでも、年間二十四万トンの下水汚泥が発生しています。
都では、この下水汚泥を全量焼却して八千トン程度に減量し、さらには平成九年度から全量資源化しています。こうした取り組みは大変評価のできるものです。
先日、多摩地域で発生した汚泥を地域内でリサイクルするとの考えから、都は、汚泥焼却灰をアスファルト舗装材料の原料として活用する技術を開発し、事業を開始したと聞きました。この事業には八王子市にあるアスファルト工場が協力するとのことであり、今回の都の取り組みに対して大いに関心を持っているところであります。
そこで、汚泥焼却灰の資源化事業を安定的に進める観点から、アスファルト舗装材料への資源化について伺います。
まず、今回、都が新たにアスファルト舗装材料への資源化に取り組むことになった背景とその効果について伺います。
答弁〔7〕
▼下水道局長
これまで流域下水道の汚泥は、焼却灰のセメント原料化を中心に全量資源化を図ってまいりました。しかし、資源化製品は、受け入れ先の状況によって価格や受け入れ量が左右されやすいため、より一層幅広い用途への資源化を模索してまいりました。
研究を進めた結果、アスファルト舗装材料として従来から用いられている石灰石の粉末にかえて、汚泥焼却灰を活用することが可能になり、今回、事業化したものでございます。
その効果でございますが、資源化事業を安定的に進められることに加えまして、多摩地域内でのリサイクルが可能となり、年間一千万円のコスト縮減のほか、石灰石の採掘抑制など環境面の効果も期待できるものでございます。
質問〔8〕
多摩地域から発生した汚泥を地域内でリサイクルするためには、市町村や地元産業と一体となって資源化製品の需要や販路を拡大させることが不可欠であると考えます。例えば八王子市は、市単独で運営する下水処理場を持っていますし、多くの道路も管理しています。八王子市と連携し、資源化を進めれば、市内の道路舗装にも積極的に使ってもらえるなど、都にとってもメリットがあるのではないでしょうか。そこで、市町村や地元産業との連携について、都の考えと取り組みを伺います。
答弁〔8〕
▼下水道局長
地域内でリサイクルを進めるためには、市町村や地元産業との連携が不可欠でございます。今回の資源化事業の特色は、地元にある工場で製品化し、地元市町村の道路工事に活用するものでございます。
お話の八王子市につきましても、市と共同してこの事業を進めることにより、市の道路工事への積極的な活用が図れ、需要の拡大にもつながるものと考えております。
今後一層、市町村や地元産業と連携し、焼却灰入り舗装材料の需要の拡大を図ってまいります。
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