東京発世界文化

 このコーナーでは、東京から世界に向けて新しい文化や創造力を活かし活躍する「ヒト」、「モノ」、「コト」などを紹介してまいります。

 今月は、東京都小金井市にある、スタジオジブリの魅力に迫ります。

国民的アニメーション映画スタジオが武蔵野に!

 「千と千尋の神隠し」-この言葉(正式には映画の作品名ですが)を聞いたことはありますか?昨年の夏に公開されたアニメ映画「千と千尋の神隠し」は、興行成績日本新記録樹立、観客動員数2300万人突破という国民的映画です。この数字から言うと、日本人5人に1人が見た計算となります。また、ベルリン国際映画祭では、日本映画として39年ぶり、アニメーション作品としては初の“金熊賞”(グランプリ)を受賞し、国内のみならず世界でも高い評価を得ました。

猫の恩返し
『猫の恩返し』(同時上映『ギブリーズepisode2』)
(C)2002 猫乃手堂・TGNDHMT

千と千尋の神隠し
『千と千尋の神隠し』
(C)2001 二馬力・TGNDDTM

 この作品を世界に送りだしたアニメーションスタジオが東京の小金井市にあります。その名は「スタジオジブリ」。スタジオジブリは「千と千尋の神隠し」だけではなく、「となりのトトロ」をはじめ「天空の城ラピュタ」「火垂るの墓」「魔女の宅急便」など、次々と国民的映画を打ち出し話題を呼んでいます。

 なぜこれ程までにジブリ作品がヒットにつぐヒットを重ねるのかというと、実は、発足当初から要因はあったようです。スタジオジブリの前身トップクラフトというアニメ制作集団が「風の谷のナウシカ」(宮崎駿監督)を制作し、その成功を機に1985年スタジオジブリが吉祥寺に発足しました。

 「ジブリ」とはサハラ砂漠に吹く熱風のことで、「日本のアニメーション界に旋風を巻き起こそう」という意図で宮崎監督が名付けたようです。その後吉祥寺から東小金井に移転し新スタジオを構えました。そこで一作一作に常に全精力を注ぎ、すみずみまで目の行き届いた妥協の無い内容を目指して行く。そんなジブリの体制があるからこそ、子供から大人まで誰しも楽しむことができ、日本を元気にする映画が作り出されているのではないでしょうか。

 そして、2002年夏、スタジオジブリの新しい作品がまた武蔵野から生まれます。「千と千尋の神隠し」の宮崎駿監督が「次回作は、若い人に挑戦させよう!」と、3年前から企画をスタートさせた「猫の恩返し」。監督に抜擢されたのは「ホーホケキョとなりの山田くん」、三鷹の森ジブリ美術館上映作品「コロの大さんぽ」で原画を担当したジブリの新鋭・森田宏幸監督です。若くみずみずしい感性に満ちた温かい作品は、「昨日とは違う明日」を伝えてくれます。

 今年も見るものに「力」を与えてくれるスタジオジブリ。これからも小金井市から発信されるジブリ文化は、世界中が元気になるファンタジーをつくり出しています。

スタジオジブリ作品史

84年風の谷のナウシカ宮崎駿
86年天空の城ラピュタ 宮崎駿
88年となりのトトロ 宮崎駿
88年火垂るの墓 高畑勲
89年魔女の宅急便 宮崎駿
91年おもひでぽろぽろ 高畑勲
92年紅の豚 宮崎駿
93年海がきこえる 望月智充
94年平成狸合戦ぽんぽこ 高畑勲
95年耳をすませば 近藤喜文
97年もののけ姫 宮崎駿
99年ホーホケキョとなりの山田くん 高畑勲
01年千と千尋の神隠し 宮崎駿
02年猫の恩返し 森田宏幸
02年ギブリーズ episode2百瀬義行
(風の谷のナウシカの制作はトップクラフトです。)

宮崎駿監督プロフィール
宮崎駿監督
みやざきはやお 1941年東京生まれ。学習院大学政治経済学部卒業後、東映動画に入社。その後、Aプロに移籍し73年には高畑勲氏らとズイヨー映像へ。85年にはスタジオジブリの設立に参加。数々の劇場用アニメーションを発表し、アニメ界のみならず、映画界にもその影響は大きい。

森田宏幸監督 プロフィール
森田宏幸監督
もりたひろゆき 1964年福岡県生まれ。大学卒業後アニメーターを目指し上京。アニメーターとして活躍。その後フリーとなり、その後は数々の作品で原画を担当する。『ホーホケキョ となりの山田くん』でスタジオジブリに参加。ジブリ美術館で上映されている『コロの大さんぽ』の原画を経て『猫の恩返し』で劇場作品初監督をつとめる。

作品解説
千と千尋の神隠し
千と千尋の神隠しの画像

 物語の舞台は神様のためのお風呂屋さん「油屋」。現実世界から神様たちが骨休めに来る湯屋のある不思議の町へ迷い込んだ主人公・千尋は、それまで両親に守られ生きてきた生活の中では体験したことのない労働や、社会生活を体験、そうした厳しい環境の中で自分で考え、歩き出す。その姿は人の中に眠っている「生きる力」がどれほどのものであるか、その力は誰の中にもあるのだということを教えてくれる作品です。

作品解説
猫の恩返し
猫の恩返しの画像

 主人公は、どこにでもいる不器用な17際の女子高校生ハル。ある日、トラックにひかれそうな猫を助けたことから、その“恩返し”として猫の国に招待され、冒険の旅に出ることになります。はたして、ハルは無事人間の世界に戻ることができるのでしょうか?猫の国の冒険を通して、自分の時間を生きる術を学び、ほんの少し大人になったことに気付く少女のストーリー。

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