東京発世界文化

 このコーナーでは、東京から世界に向けて新しい文化や創造力を活かし活躍する「ヒト」、「モノ」、「コト」などを紹介してまいります。

 今月は、東京都葛飾区にある、野田鶴声社をご紹介いたします。

野田鶴声社のホイッスル
上の写真にカーソルをのせるとホイッスルの音がなります。

 みなさん、ホイッスルはどれも皆同じと思っていませんか?なかなかホイッスルについて考え研究している時間は日常生活にはないかもしれません。しかし、ホイッスルは様々な音を奏でます。

 例えば、豪華客船が氷山にぶつかり沈没してゆく映画が数年前に話題になりましたが、ラストシーンで主人公が助けを求める為にホイッスルを力なく吹くシーンがあります。救助隊に気づかれるまでにホイッスルを吹いた数は14回。これを見て分かるように、力を抜いてホイッスルを吹くとなかなか音が鳴らないようです。しかし、今回ご協力いただいた野田鶴声社のホイッスルは違うようです。

野田鶴声社野田社長

 同社社長によると、「このホイッスルは力を入れなくても軽く吹くだけで音が通る」とおっしゃっていました。実際、取材陣も軽く吹いてみると驚くような音が鳴り、顔を見合わせてしまいました。その他、他国のホイッスルと比べても音の通りはもちろん、細部にわたり丁寧に作り込まれていました。

 それに驚いたのは私達だけではありません。1960年代前半、世界各国で主に使用されていたホイッスルは、ほとんどイギリス製でした。そこで円安の風もあり、1968年アメリカのホイッスル販売会社は、東京の同社に製造を依頼しました。わずか3年余りで同社ホイッスルは全米を制覇したのです。MADE IN ENGLANDの刻印からMEDE IN JAPANに。それが世界への出発点でした。

 その後、1973年ヨーロッパのスポーツ国際見本市で驚いたフランスの販売会社により、もっと高い音が鳴るようにして欲しいと言う要望に応え広まったものが、今のサッカー用ホイッスルです。

ホイッスルを受け取りに来たお客様と

 Mexico'82やFrance'98などのワールドカップに同社ホイッスルが公式採用され、ますます世界で活躍する場が広がりました。また、国際A級審判員の岡田さんが愛用することにより、当時あまり認知されていなかった日本でも品質、音色とも良さがわかる人が増え、今では、国内外ともに野田ホイッスルの音色が響き渡っています。サッカーだけではなく、他のスポーツや護身用などに使う人も増えてきているようです。

 同社社長は「他の会社にはまねできません。50年の基礎を積んで音を研究しつづけているから、プレス屋さんにはそう簡単に真似できる事ではないでしょう。型を機械で抜いて張り合わせるだけではとうていこの音は無理ですね。」と語ってくれました。

2002年FIFAワールドカップオフィシャルグッズ

 日本と韓国が開催地となった2002年FIFAワールドカップも5月31日に開幕となりました。野田ホイッスルもオフィシャルグッズとして、日本と世界にその音色を届けています。

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