四こまストーリー

街で見かけるごく日常的なイメージをもとに、東京の新たな物語をみなさんと一緒につくり上げていく企画。それが『東京四こまストーリー』です。

東京“スタンドバイミー”編
都市と自然の織りなす冒険物語を満喫!

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城南島海浜公園1枚目
城南島海浜公園2枚目
城南島海浜公園3枚目
城南島海浜公園4枚目

 れに際して文学少年ゴーディの「さよなら」のひとことに、友人クリスが「またな!っていえよ」と答える名場面。映画好きの方ならすぐにおわかりだろう。そう、今は亡き俳優・リバーフェニックスがクリス役を演じた名作「スタンドバイミー」のワンシーンだ。クリスがゴーディに向けた言葉――「おれがおまえのそばにいて守ってやるよ」は今でも忘れられない台詞のひとつだが、そんな少年たちの心の通い合いと大人への成長を見事に描いたこの映画、夏休みがくると必ず思い返す人も多いのでは。少年たちの奇想天外な冒険が織りなす夏物語は、男女問わず永遠のロマンなのかもしれない。
 というわけで、今回の四コマストーリーは、題して“東京スタンドバイミー”。待ちに待った夏休み、都会でキャンプを楽しみながら、つかのまの少年の日の冒険にチャレンジ!さっそくリュックを背負って出発だ。えっ都会でキャンプ!?いやいや心配はご無用。都市のモダニズムと自然の躍動感溢れるビートが交差する不思議な空間がみなさんの冒険心をそそることまちがいなし!
 たとえば、こんなキャンプ場はいかがだろうか。大空を見上げればジャンボジェット機が飛び立ち、海上を眺めれば、異国の地へと向かう大型船が白波を横切る……そんなキャンプ場見たことがない。ところがどっこい、さすがは東京!そんなキャンプ場が大田区の城南島海浜公園にあるのだ。ここ城南島海浜公園は、都心で一番身近なキャンプ場としてこの夏お薦めのスポット。城南島といえば、近隣には羽田空港、目前には東京湾羽田沖と、海あり空ありの絶好のロケーション。そういえば、「海底2万マイル」や「八十日間世界一週旅行」の冒険物語で有名な作家ジュール・ヴェルヌは、1863年に百年後を想定した空想未来小説「二十世紀のパリ」を書き、高架鉄道、白熱電球、エレベーター、電信、ファクシミリ、リニアモーターカーの登場をすでに予言していた。そんな彼とバーベキューでもしながら冒険物語りを語り合いたいところ。彼だったらこの光景を見てなんというだろうか。きっと、さらなる百年後の「二十二世紀の東京」を予言してくれるかもしれない。
 もちろん、ジャンボ機や大型船もいいけれど、忘れてならないのは、都市のモダニズムと共存する自然の素顔だ。思い出してみてほしい、まだ少年少女だったあの頃を。夏草の匂い、水晶の粒のように見えた水しぶき、耳もとをかすめる風のささやき。目の前に広がる自然はどこまでも果てしなく続く無限の海原のように思えたもの。薪のほのかな薫りをかみしめながら、火をつけてみよう。ぱちぱちと音をたてる薪、もくもくと巻き上がる煙り、入道雲、海上では白波と潮風のハミングがかすかに響き渡る……そうした自然の織りなす小さな出来事一つひとつが新鮮かつ懐かしくもあり、ライフスタイルの原点ともいうべき場所へ戻ってきた気分でいっぱい!。実はこれがキャンプの醍醐味なのかもしれない。耳を澄ましてみよう「おまえのそばにいて守ってやる」――そうささやく自然たちの声が聞こえてくるはずだ。


写真:武居 英俊/文:麒 麟