四こまストーリー

街で見かけるごく日常的なイメージをもとに、東京の新たな物語をみなさんと一緒につくり上げていく企画。それが『東京四こまストーリー』です。

「東京の夏野菜」
夏はやっぱりビールに谷中生姜
東京の夏野菜で夏バテを吹き飛ばそう!

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東京の夏野菜1枚目
東京の夏野菜2枚目
東京の夏野菜3枚目
東京の夏野菜4枚目

「みず菜」、「壬生菜」(みぶな)、「九条ねぎ」、「賀茂なす」、「聖護院だいこん」、「くわい」―日本の伝統を感じさせる、独特の響きをもつ野菜の名。いったい何のことかご存じの方も多いのでは。そう、最近、東京でもよく見かける「京野菜」のこと。花の都“京都”の伝統野菜ということで、何やら宝塚ジェンヌ顔負けのスター扱いのようだが、ちょっと待って頂きたい。ここ東京にも京野菜に負けない、なかなかのスターがいることを忘れないでほしい。たとえば、練馬のだいこんこと「練馬すずしろ」、江戸の夏の風物詩「谷中生姜」(やなかしょうが)、あきる野市特産の「のらぼう菜」などなど。ん~どこか懐かしさ溢れる江戸“東京”ならではの粋な響きをもつ名の野菜ばかりだ。ということで、今回の東京四こまストーリーは「東京の夏野菜」がテーマ。東京に育つ色とりどりの野菜たちの姿を紹介してみたい。
 さて“東京の夏野菜”というと、どこか相容れない2つの言葉が並んでるような印象を受けるのも正直なところ。そもそも東京で野菜が採れるの?と素朴な疑問を感じる方もいらっしゃるのでは。いやいや、東京生まれの野菜たち、じつは意外にも結構、大活躍を見せている。都民が食べている野菜の1割ちかくは地元農業の生産によるもの。そんな自然の恵みを産み出す貴重な農地は、東京都の総面積の4.3%を占める。東京都中央卸売市場の入荷量では、その順位は18位と、上位20圏内をしっかりとマーク。しかも、都内には約4万7,000軒もの農家があるというから驚き!そんな意外な一面をのぞかせる東京の農業事情だが、地元生産の主な夏野菜といえば、トマト、きゅうり、かぼちゃ、なす、わけぎ、こまつ菜、きゃべつ、あさつき。今の季節、みなさんの食卓にのぼるポピュラーなものばかりだ。
 夏野菜の特徴は、鮮やかなその色にある。トマトの「赤」、きゅうり、かぼちゃ、わけぎ、こまつ菜の「緑」、なすの「青紫」と、自然の織り成す色の「三原色」そのものが、この時期一番鮮やかな光景をみせているはず。では、俳句による色鮮やかなイメージとともに、ビール片手に東京生まれの夏野菜を味わってみようか・・・。
「白昼のむら雲四方に蕃茄(ばんか)熟る」(飯田蛇笏)
「胡瓜(きゅうり)いでて市四五日のみどりかな」(大江丸)
「手にふれば瑠璃やくもりて初茄子(はつなす)」( 同上 )
 「蕃茄」(=トマトのこと)、「胡瓜」、「初茄子」はどれも「夏」を示す季語。凝縮した言葉による表現が、夏野菜独特の色鮮やかな光景を見事に伝えてくれる。そんな瑞々しさ溢れる、採れたて野菜をそのままいっきに“がぶり”!といきたいところ。ん~すっきりとした触感に大満足!そうそう、もう一つ忘れてならないのは、江戸の夏の風物詩「谷中生姜」。“夏は谷中生姜”というキャッチ・コピーが涼を求める粋な江戸っ子の姿を連想させる。しゃっき!とした歯ごたえ、ピリっとくる味わいに、思わず舌鼓を鳴らすことまちがいなし。味噌をちょいとつけて食べるのがうまい!夏は谷中生姜で“グイっ”とビールが流行りそう!夏バテ防止にもおすすめ。是非ともご堪能あれ。


写真:武居 英俊/文:麒 麟