平成14年第2回定例会代表質問

都市づくりに明確な環境配慮を
小笠原諸島の自立と自然保護を

林知二

民主党 林知二

有事関連三法案

 〔1〕 民主党は、シビリアンコントロールや基本的人権を侵害しないことを原則としながら、有事危機に際して政府が超法規的措置をとることのないよう、関連法制の整備を進めるとの立場でありますが、政府案は、表現の自由など基本的人権の尊重、民主的統制のあり方、地方自治体との関係など、検討すべき課題が山積しております。また、これらの法案には自治体の対処措置や責務などを盛り込んでいますが、自治体との間で事前に協議があったとは聞いておりません。国と地方自治体は対等、平等の関係にあるとしながら、緊急事態において重要な役割を担うこととなる地方自治体に何の相談もなく起案された法案が、仮に可決されたとしても、真に機能し得るといえるでしょうか。しかも、民間避難や地方自治体の役割を定める国民保護法制は、二年以内ということで先送りされております。知事はこれらの法案に賛成ということですが、起案に際しての地方自治体との協議についてはどのようにお考えか、所見を伺います。
 また、都議会は去る五月二十二日、三田議長を団長とする視察団をニューヨーク市等に派遣いたしました。昨年九月に起きた同時多発テロの際の危機対応の実際についてつぶさに見聞し、今後の東京における危機管理体制の構築を考える上で大いに参考となる調査結果を持ち帰りました。中でも、ニューヨーク市では、非常事態時にはすべての指揮命令権が市長に集約される制度が確立されており、同時多発テロの発生直後から直ちにその体制がとられ、三日間にわたり、市長命令で戒厳令並みの厳戒態勢で事態収拾に当たったことが、その後の混乱を最小限に抑えることができたとのことであります。
 住民にとっては、地方自治体は最も身近な政府であります。現在、国会における有事法制の議論を見ていましても、国と地方自治体の役割分担、自治体の長の責任、権限の範囲については不明確のまま推移しようとしております。石原知事はこの点についてどのような所見をお持ちか、忌憚のないところをお聞かせください。
 〔2〕 この有事法制の議論が続けられている中で、福田官房長官が、何か起きたり、国際情勢の変化があれば、国民の中に核兵器を持つべきだという意見が出てくるかもしれないと述べたことに関連して、きょうの新聞にも、アメリカ、アジア諸国での反響が報道されておりますが、核兵器の保有と非核三原則の問題が改めて論議されております。そうした中で、知事が電話で核は持てると激励したとの報道が行われ、知事は七日の記者会見でこれを否定されました。非核三原則は我が国の国是とされ、小泉首相も、非核三原則は核を廃絶したいという国民の願いと、日本として核兵器をつくる能力があるにもかかわらず、持たないという決意を表明した大事な原則だ、堅持していくことに変わりはないと言明しております。この間の報道に関する知事の真意と、非核三原則についての知事のお考えを伺います。

知事 〔1〕 先ほどの質問の中に、国と地方自治体は対等の立場であるといわれましたけれども、ある意味ではそうでありますが、ある場合には、私は違うと思います。それは、おのずと国家の主権というものの中に地方自治体の主権も含まれるわけでありまして、先ほどの古賀議員の質問にも申しました。私は、国家の安危にかかわる、ひいては、地方自治体はそれに巻き込まれるわけでありますけれども、そういう事態の中で、それに対処するために、国家の行動に地方自治体が条件をつけるということはあり得ないと思いますし、私は、そういう際には無条件で国に協力するということを、かねてから申してまいりました。
 ただ、警察予備隊から出発して、今では自衛というものをあくまでも目的とするということに限られておりますが、しかし、かなりな兵力というものを抱えているわけでありますけれども、それが自衛に限っても、ともかく行動を起こすときに、それを有効に行動せしめる法律というものが整備されていないということは、これは不思議な話でありまして、今回の有事法制というものは、もう遅きに失したと私は思っておりますが、そういう意味でも、私は、この段階でもなお、これが国会で論議の対象になり出したということは結構なことだと思っております。
 ただ、先般も全国の知事が集まりましての意見交換会がありましたが、有事が到来する、つまりこの国の主権が侵される可能性があるという、その事態についての予測と、それから、おそれがあるという二つのカテゴリーがいわれておりまして、予測の方は、周囲の条件というものを分析して、これはどうも間違いなく厄介な問題が起こる、国家が安危を問われる事態にさらされ得るというのが予測だそうで、おそれがあるというのは、その一歩手前云々ということでありましたが、そのカテゴリーが非常にはっきりしませんで、政府の答弁もあいまいなものでありましたが、いずれにしろ、その二つのカテゴリー、つまり予測と、そのおそれがあるという段階に応じて政府の行動もあるでありましょう。その段階では、少なくともおそれがある段階では、いろんな形で地方自治体と政府が話し合うという時間的な余裕もあると思いますが、いずれにしろ、先ほど申しましたように、単に外国が軍隊を構えて正面からこの国を侵犯してくるということだけではなくて、時間的、空間的に世界が狭くなり、いろんな技術が発展したために、既にこの国は、かなり深い部分で侵犯を受けているという事実も、私たちは忘れてはならないと思います。
 〔2〕 ここで長いお説教をするつもりはありませんが、かつては、これは非核二原則だったんです。岸内閣のときまでは非核二原則だったんです。岸さんは体を張って、日本の安保条約というものを改定いたしました。日本の日米安保におけるステータスというものを、あれによって事前よりは幾分向上されたわけでありますけれども、そのときも、この問題が国会で論議されました。私はまだ国会におりませんでしたが、しかし、観察者として詳しく覚えておりますけれども、あのとき、論議の中には、日本は核は保有しないと。しかし、つくらない、持たないがゆえに、場合によっては、安保というものを通じてこの国に核を持ち込まさせ、それを顕在化させることによって抑止力を発揮させるという論がありましたが、佐藤内閣の時代になって沖縄返還が大問題になりまして、そのときに、あそこには膨大なアメリカの核兵器がありますが、これを抜いてとにかく返還してもらいたいということで、核抜き沖縄返還ということの中で、つくらぬ、持たぬ、持ち込まぬという三原則がいつの間にかでき上がりまして、これがまあ、国会の議決があったんでしょうか、私、鮮明に覚えていませんが、いつの間にか国是ということになったわけであります。
 ただ、そのさなかに、私が昔書いた論文にも書いてありますが、日米繊維交渉がもつれまして、アメリカが非常に不当な要求を日本に突きつけ、日本を抑圧しようとしたときに非常に反米感情が高まりまして、そのときに、それを踏まえて、日本国民の核保有論がにわかに高まったことがあります。ですから、先ほど、福田官房長官が、場合によっては国民の核保有論が高まる、国民が核の保有等も欲することもあり得るといったのはまさにそのとおりでありまして、あのときの、毎日新聞だったと思いますけれども、そういう繊維交渉がもつれた中での世論調査で、日本は核を持つべきであるという論が三五%、持つべきでないという論が三六%まで拮抗したことがあります。
 それを踏まえて私は、ある論文を書きました。例によって雑誌社が勝手に題を変えまして、私は、非核の神話は崩れたのかという題にしましたら、非核の神話は崩れたという断定的なキャプションがつきましたので、いつの間にか核保有論者にされましたが、読んでいただくとわかりますけど、私はいろんな問題を提起しただけでありまして、そこで日本は核を持つべきだといったことは一回もございません。
 繰り返して申しますけれども、私、福田内閣のとき、閣僚をしました。そのときに、ある野党の議員がその論文を持ち出して、あなたは核保有論者じゃないか、いつの間にか意見が変わったというから、あなた、読みもしないで人のこといわない方がいいと。結局、その人は恥をかいて黙りましたけれども、もしこの問題に疑義をお持ちなら、どうかいつでも差し上げますから、私の論文を読んでいただきたい。
 ただ、福田さんも非常に今回迷惑したと思うし、私も迷惑でありますが、官邸に詰めている新聞記者というのはかなりレベルが低いですな。これは東京都庁詰めの記者よりも、比べるとはるかにレベルが低くて、その例は枚挙にいとまがないけど、私、ある会合で、森君が総理大臣のときに、森総理がそこから退席して一時間ほどして外へ出てきましたら、森番の記者がおりました。それで、私、つかまって、石原さん、森総理と話しましたかと。ああ、話したよ。ちょっと話したといったら、どんな話ですか。大した話じゃない、面倒くさいから密談といったら、どんな内容の密談ですか。これ、まともに新聞社が聞くんですよ。
 そのたぐいがいまして、核という問題について、持つとか持たない以前に、核の存在そのものをポジティブに前提として話をすると、これは原子力発電にしてもなお、何かタブーにさわった人間としてその足を引っ張る。今度の福田発言も、恐らくつまみ食いでしょうが、しかも私のあれに対する電話、激励したわけじゃない。参考の資料を送りますといっただけでありまして、それを、ああいうベタ記事でありますけれども、流した通信社、恐らく共同か時事かどっちかでしょう、二つしか入ってないんだから。これはやっぱり自分の名前を名乗って、責任を持って、自分はこういう記事を書いたというべきですな。
 でありまして、私は核を保有すべきであるとはいったこともありませんし、今も考えておりません。ただ、小沢一郎君がいったように、日本は一朝にして持とうと思ったら核兵器が持てるんだぞというポテンシャリティー、つまり原子力の開発をすることによって、要するにそういう潜在度というものを持っていくことはちっともおかしくないと思うし、それは国際関係の中でこれから大きな大きな日本のカードになると思います。これを否定できる人はだれもいないと思います。

住民基本台帳ネットワーク

 情報公開を請求した個人に関して、防衛庁が各種リストを作成し、あまつさえ受験生の母や反戦自衛官など、個人のプライバシーを明記するなどの違法行為を行っていたことが明らかにされました。防衛庁の個人情報保護に対する意識の低さをまざまざと見せつけました。加えて、調査結果の公表に際して、政治主導の隠ぺい工作がなされたとあっては、何をかいわんやであります。
 一方で、住民基本台帳法改正案が審議された当時、小渕首相が住民基本台帳ネットワーク稼働の前提としていた、民間を対象とした個人情報保護法の制定は先送りされ、かつ、これまで十一省庁九十三事務に限定されるとしていた国の機関や事務を、十五省庁二百六十四事務に拡大する改正案が今国会に提出されております。さらには、八月五日よりこのネットワークが稼働することになるということです。都民の個人情報が保護されていないことが明らかになった今、唯々諾々とこのネットワークに協力してしまっては、都民に説明がつかないのではないでしょうか。また、自治体としての責任も問われてしまいます。個人情報保護法案が施行されるまで、このネットワークの稼働を凍結するよう国に求めるべきと考えますが、所見を伺います。

総務局長 お話の個人情報保護法の必要性につきましては認識しておりますけれども、住民基本台帳ネットワーク自体には、法令面、システム面及び運用面におきまして、十分な個人情報保護措置が講じられておりまして、改正住民基本台帳法が施行される八月五日に向けて準備を進めてまいりたいと考えております。
 しかし、東京都といたしましては、万が一、都民の個人情報が漏れるおそれがある場合には、システムの停止も含めた緊急対応措置を行う考えでございます。

都市再生

 〔1〕 この三月に可決、成立した都市再生特別措置法は、近年における急速な情報化、国際化、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に、我が国の都市が十分対応できていないとの認識を示し、都市再生のための手法として、容積率制限などを一たんすべて白紙に戻した上で、自由度の高い計画を定めることや、都市計画手続の簡素化などを盛り込んでおります。しかし、私は、都市再生というのは、超高層ビルを林立させるといった都市計画的なものだけではなく、さまざまな分野で取り組まなければ果たせない課題であると考えています。
 いうまでもなく、東京の抱える都市問題は、職住の隔絶や交通渋滞、自動車公害やヒートアイランド現象などの環境問題、緑やオープンスペースの不足などであり、こうした問題の解決なくしては都市再生はあり得ません。また、東京が二十一世紀も引き続き国際都市としての地位を保ち続けるためには、文化や産業、環境、福祉などといった分野においても世界をリードできる都市像を示していく必要があります。私は、東京の都市再生を図っていくためには、都市計画だけではなく、文化や産業、環境、福祉などが総合的に連携しながら、東京都が引き続き魅力のある都市となるよう取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 〔2〕 都市計画といった面から見ても、都市再生特別措置法に基づく都市再生は、短期的には景気浮揚効果があると思われるものの、長期的に見た場合、本当に東京が魅力ある都市として再生し得るかは疑問であります。都市計画百年といわれるように、個別プロジェクトだけを先行させるのではなく、長期的なビジョンに基づいたまちづくりこそが真の都市再生の姿であるといえます。東京都が発表している東京の新しい都市づくりビジョンでも、業務機能の分散に重点を置いた従来の考え方は限界であると指摘しています。その上で、居住や産業、物流、文化、交流、防災など、多様な機能のあり方を示すとともに、情報化や環境意識の高まりにも対応できる都市構造のあり方を提案しております。
 現在、東京都では都市計画マスタープランの策定と、これに基づく用途地域等の見直し作業に取り組んでいるところですが、私はこれらの中で新しい視点に基づいた都市構造の実現に向けて政策的なねらいを明確にした戦略的な都市づくりを展開していくべきと考えますが、見解を伺います。
 〔3〕 東京都は、都市計画マスタープランの策定とともに、街区再編プログラムといった新しい制度や、NPOの登録制度などを含む都市づくり基本条例について、準備が整った段階で速やかに条例化すると答弁してきました。条例化に当たっては、あらかじめ都民の意見を広く聞くために、早期にその内容を示すべきと考えますが、現時点での取り組みについて伺います。
 〔4〕 都市再生は個別の民間プロジェクトだけが注目を集めがちですが、地域のまちづくりを進めるという視点からは、地域に住む人たちやNPOなどによるまちづくり活動を支援していくことも重要な要素であります。都市計画法の改正により、まちづくり組織による都市計画の提案制度の導入といった草の根まちづくり活動に対する支援が創設されました。また、国においては、まちづくり活動に対する統合補助金による支援などの制度もあります。私は、東京都としても、都民やNPOなどのまちづくり活動に対して積極的に支援していくべきと考えますが、いかがでしょうか。

知事 〔1〕 確かに今後とも、単に地域の開発、再開発だけではなくて、産業や、観光もまた産業の一部でありまして、文化、環境、福祉など、さまざまな分野で東京は先駆的な施策を実施して、首都として再生を遂げていくべきだと思います。
 ただ、今回の都市再生特別措置法は、政府の意向で、とにかく東京を含めて大都市で、価値がありながら手つかずで遊んでいる土地というものを流動化したいということが主眼でありまして、それにこたえて東京は、先ほど申しましたように七つの候補地を挙げ、大阪が四つ、名古屋が二つという形で、この三大都市の中で、この土地の流動化というものをねらった再生の開発が行えるわけでありますが、おっしゃるとおり、決してこれだけで都市が再生するわけではありません。
 一方では、大気汚染に見られるように、生活環境というのは非常に悪化しておりますし、福祉の問題も、いろいろ問題がありますが、いずれにしろ、東京都は、国は反対しましたけれども、認証保育所を設置し、共産党は反対でありましたが、最初二カ所設けました認証保育所は、今では八十八カ所展開して、大変都民の評価を得ております。そういうものを総合的、複合的に展開することで、都市の再生は図られていくものだと思っております。

都市計画局長  〔2〕 都市計画マスタープランの策定に当たりましては、都市づくりビジョンで示した、例えば三環状道路の整備、センター・コアにおける国際ビジネスセンター機能の強化や都心居住の推進など、環状メガロポリス構造の構築に向けた方針を明らかにしてまいります。
 また、用途地域等の見直しに当たりましても、ビジョンの方向性に沿った地域の将来像の実現に向けて、土地利用の誘導が可能となるよう、時代状況の変化に応じて、現行の指定方針、指定基準を見直し、政策誘導型の都市づくりを推進してまいります。
 〔3〕 東京の市街地を質の高い都市空間へと再編整備するためには、土地所有者や民間事業者などの意欲や発想を生かすことが重要でございます。
 このため、街区再編プログラムや民間まちづくり団体の登録制度など、都市づくりの新たな仕組みについて、現在、関係区などとも調整を図っているところであり、今後、具体化に当たりましては、都民等の意見も聞く予定でございます。
 〔4〕 都市再生を進める上には、民間事業者による優良なプロジェクトの推進を図ることが必要であり、それとあわせて、地権者やNPOなど多様な主体の参加と連携による地域のまちづくりが必要でございます。
 このため、民間事業者など民間団体のノウハウを生かした地区や街区単位のまちづくりの推進を図る仕組みについて、現在検討を進めております。
 

環境影響評価条例の改正

 〔1〕 東京は依然として深刻な大気汚染に直面するだけでなく、地球温暖化やヒートアイランドなど、新たな環境の危機に直面しています。これらの環境の危機を克服するためには、都市づくりの中でも一層の環境配慮を貫くことが必要です。今回、石原知事提案の環境影響評価条例の改正は、計画段階アセスメント制度の創設と、事業段階アセスメントの緩和が主な柱となっております。計画アセスについては我が国初めての意欲的な制度として評価するものですが、一方、事業アセスについては、対象事業規模の緩和によって地域への環境に大きな影響を与えることが懸念されます。今回の条例改正の目的は、計画アセス、事業アセスを一連一体の制度として再構築することとしていますが、そこでまず、今回の提案が東京都の環境に配慮した都市づくりを進める上でどのような効果があると考えるのか、その基本的な考え方を伺います。
 〔2〕 計画アセスの創設については、これまで私たちが求めてきた制度でありますが、なお幾つかの点について確認したいと思います。
 日本の環境アセスメントの制度とよく比較されるものに、アメリカの国家環境政策法、いわゆるNEPAに基づくアセスがあります。この制度は、連邦政府の関与するあらゆる政策、計画、事業、法案までをアセスの対象とするとともに、代替案の取り扱いについても、何もしないという、いわゆるゼロオプションを含む複数の代替案を比較検討することが義務づけられております。こうした制度に比べれば、東京都の計画アセスもまだまだ検討すべき課題があると思います。今回条例化する計画アセスの運用実績を重ねることとあわせ、次の研究課題として、政策アセスメントの導入やゼロオプションの導入など、さらに進んだアセスメント制度の導入についても検討していくべきと考えますが、見解を伺います。
 〔3〕 また、私たちは、これからの環境アセスメントのあり方は、より計画の早い段階で複数案を示し、都民とのコンセンサスを図りながら進めていくことが、東京都あるいは民間の事業を問わず、一般化されるべきだと考えております。しかし、今回の条例改正案は、経過措置の中で、計画アセスの規定は事業者が民間などの場合は適用しないと、東京都の計画だけに限定しております。少なくとも東京都が実施する計画アセスによって一定の実績が蓄積された後は、できるだけ早期に民間の事業に対しても計画アセスの対象とすべきと考えますが、見解を伺います。
 〔4〕 今回の条例改正案には現行アセス手続の合理化として、期間の短縮を目的とした手続の変更などが提案されております。行政手続の簡素合理化は時代の要請でもあり、環境アセスの制度発足以来二十年の蓄積を活用することや、ITの進展による効率化などによって手続期間を短縮することは確かに必要です。しかし、手続期間の短縮を求める余り、住民への周知や意見の反映がおろそかにされてはなりません。改正案では、特に環境評価書案の提出後のプロセスに関し、説明会の開催や都民意見提出の手続が簡略化されているように思われますが、東京都はインターネットの活用など、運用上の工夫も含め、住民への周知、住民意見反映について、より充実を図っていくべきと考えますが、見解を伺います。
 〔5〕 さて、東京都は、今回の条例改正に合わせ、施行規則を改正し、都心、副都心、都市再生緊急整備地域などの特定地域において、高層建築物におけるアセスの対象規模を、高さ百メートル以上かつ十万平方メートル以上から、百八十メートルを超え、かつ十五万平方メートルを超えるに緩和すると説明しています。しかし、来月中にも指定がされる都市再生緊急整備地域について、東京都の申し出どおり、七地域二千四百ヘクタールがそのまま指定されるとすれば、例えば月島などの下町地域で、京王プラザホテル百六十九メートルということですが、そうした超高層ビルが何本も林立しようと、アセスの対象にならないわけであります。
 これまでにも予測以上の複合的な現象が生じ、環境悪化につながってしまった事例は数多くあります。そもそもそのような都民生活に大変大きな影響を与える制度の緩和が、議会の議決ではなく、知事の裁量にゆだねられてしまうということにも疑問を感じます。私が例に挙げたような事例が本当に環境アセスの手続を経ずに実行されてもよいものかどうか、知事の率直な感想を伺います。
 〔6〕 私は、三月の予算特別委員会でも取り上げましたように、例えば秋葉原のITセンタービルのように、高さ九十九・九メートルで、十センチ低いから対象外だというようなアセス逃れについては疑義を申し上げました。条例を改正するのであれば、むしろ規模に満たない事業であっても、スクリーニング手続などによりアセスの対象にするような見直しがなされるべきであったと考えます。対象とならない建築物については、この六月からスタートした環境確保条例の建築物環境配慮計画書制度を活用して、環境に優しい建物づくりを促すことになると思います。私は、建築物に求められる環境性能を事前に明らかにし、その採用を義務化していくことなど、都市づくりにおける環境配慮を一層明確にルール化すべきと考えますが、ご所見を伺います。

知事 〔1〕 先ほど申しましたが、ともかく日本のプロジェクトの展開は遅い。外国に比べると非常に遅い。いろんな原因がありますけれども、その一因は、やはり環境アセスメントに余計な時間がかかり過ぎる。これ、もっと合理的に有効に効果的に行えないかということで、今回の改正を図ったわけであります。国際競争力の強化や魅力の向上などをスピード感を持って大きく展開していくためにも、それによって新しい時代にふさわしい良好な都市環境を形成していくためにも、こういった措置が必要だと思っております。
 計画段階の環境影響評価制度の導入によりまして、都の大規模な公共事業について、それが着手される以前の早い段階から計画が公表され、また、その複数の事業計画が示されることによりまして、環境により配慮された実質の事業展開が行えるようになると思っております。さらに、都の広域複合開発計画をアセスメントの対象にすることで、複数の事業についての環境影響を事前に把握することが可能となり、計画が地域環境により配慮されたものとなると思っております。
 〔2〕 いずれの制度であれ、時代の変化に合わせた不断の見直しを行いませんと、非常に硬直した陳腐なものになっていきます。そういうことで、今回、都は全国に先駆けて、新たに計画段階環境影響評価制度の条例化を提案いたしました。
 今後、都の大規模な公共事業に対して、この計画段階環境影響評価制度の着実な運用を図り、制度運用により知見を重ねていくつもりでございます。
 〔5〕 ビルに関しては、これは環境にいろんな影響を与えるということは自明のことでありまして、これに重ねて、環境確保条例や中高層建築物の紛争予防条例などがありまして、これによって適切に対応を図っていけると思いますし、例えばその大きなビルが建つことで環境に与える変化というものは、日照権とか電波障害ありますが、日照権というのは、これはまた一つの考え方でありまして、外国などは日の当たらない北側の部屋の方が家具が狂わずに評価が高いという事例もありますし、電波障害は、これはもうどうしようもないことでありまして、現に六本木の森ビルがあそこへ建ったことで、八王子の方まで電波障害の影響が出ている。これは、しかし、防げようとしたら防げることでありますから、そういったものは技術的な問題でありますから、いかなる立場の人間がこの保障というものをどういう形で行うかということをきちんと規制していけば、私は対象から外せ得る一つの環境案件であるとは思います。
 いずれにしろ、繰り返して申しますけれども、既存の環境確保条例や中高層建築物の紛争予防条例などによって適切に対応を図るつもりでございます。

環境局長  〔3〕 計画段階環境影響評価制度は、計画の早い段階から複数の案に環境の観点から比較検討を加えるもので、我が国においては初めての制度でございます。
 まず、東京都の事業計画において制度運用の実績を積み重ね、どのような事業や計画に、どのようなアセスメント制度がふさわしいか、研究してまいります。
 〔4〕 ご提案のように、インターネット等の電子媒体を、評価書案の閲覧、あるいは都民意見募集に効果的に活用し、一層の充実を図っていきたいと考えております。
 また、新たに環境影響評価審議会委員の参加いたします都民の意見を聞く会の制度化を提案しておりまして、都民意見の反映についても可能な限りの充実を図っております。
 〔6〕 都は環境確保条例に基づきます建築物環境計画書制度につきまして、緑化や省エネルギーなど具体的な配慮事項を三月に定め、今月から施行いたしましたが、今後、この制度の着実な運用に努めてまいります。
 また、本年一月に策定いたしました東京都環境基本計画では、都市づくりにかかわる配慮の指針を定めまして、事業の実施に際しまして、環境面から配慮すべき基本的事項を明らかにいたしました。今後、この指針を活用するなどして、環境に配慮した都市づくりを推進してまいります。

文化振興

 東京を千客万来の魅力ある都市に再生するには、ハード面での都市機能整備の促進もさることながら、芸術、文化といったソフト面の活性化を図ることも欠かせない要件であることは、改めて指摘するまでもない共通の認識であると思います。二十世紀初頭のパリに多くの芸術家を志望する若者が集まり、その中から後に世紀を代表するアーチストが輩出したことにより、芸術の都パリのイメージが形成されました。また、現代絵画やミュージカルを初めとする舞台芸術のメッカとして、それぞれの分野での成功を目指す世界じゅうの若者の関心を引きつけてやまないニューヨークも、そこには単に学べる環境があるだけではなく、自立へのチャンスをつかむことのできる環境があったからだと思います。その意味からすると、若手アーチストの発掘に期待の持てる先進的な取り組みといえるワンダーウオールでの入選作家などについても、それだけで終わらせるのではなく、自立への機会の拡大につながるよう、個展開催の機会を得られやすくするような仕組みづくりを考えるべきではないでしょうか。こうしたことが長い目で見れば、必ず東京の文化振興につながってくると思うのであります。知事の所見を伺います。

知事 いわれるまでもなく、とっくにやっておりまして、一度ぜひ林さんにもおいでいただきたいんですが、順天堂病院の裏に何かわけのわからない建物が遊んでいましたんで、それを改良しまして、ワンダーサイトというささやかなミュージアムをつくりました。就任してくれました今村君という若い建築家でありますけど、非常に鋭意な運営をしてくれておりまして、どうかここに、ファインアートの芸術家だけでなくて、ジャンルをまたいで意欲のある芸術家が集まるような、かつてのモンパルナスのように、出世する前のピカソであるとか、あるいはモジリアーニ、パスキン、フジタといった人が集まり、写真家のマン・レイや詩人のポレリアールがいたと。そういう東京の鋭意な若い芸術家のたまりにしてほしいということで、着々進んでおります。そこで、ワンダーウオールに当選した若い作家の個展も随時やっておりますし、また、多くの画商をそこのメンバーとして迎えることで、都の手を離れた、もっと広い範囲での市場でそういった若い芸術家が育っていくように、いろいろ力添えを依頼もしております。
 先般、これは画期的なミーティングでありましたが、作曲家の細川俊夫さんのアレンジメントで、細川君とかラッヘンマンといった現代音楽の有名な作曲家の演奏を主にしている、アルディッティというんですか、有名な弦楽四重奏団が無料で、意気に感じて、東京に来たついでに演奏してもらいました。非常に幅の広い芸術マニアが集まりまして、活況を呈しましたが、そういった形で、着々進行しつつありますので、どうかひとつ、民主党もいろんな方を紹介していただいて、民主党の控室にでも、一点、二点、若い絵かきの絵を買っていただきたいと思っております。お安くいたしますから。 


迷惑防止条例の改正

 〔1〕 今回の条例改正案に盛られた、つきまとい行為等の規制に関しては、原案のままですと、その運用によっては憲法の保障する基本的人権を侵害する危険を含んでいると指摘せざるを得ません。
 一昨年制定されたストーカー行為規制法でさえ、恋愛感情が満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的と、その対象範囲を限定しているだけでなく、人権尊重のための乱用禁止規定が定められております。
 ところが、このたび提案された改正案では、職場や学校、地域社会での関係に起因する悪意の感情を充足する目的となっており、あらゆる社会活動に及ぶものといえるほど、その対象範囲を拡大しているばかりか、身の危険を感じなくても、不安、迷惑を覚えさえすれば規制できるようになっております。それも、警告、禁止の措置もなく、直罰型で、警察裁量での規制ができる中身であります。
 したがって、仮にこのままこの改正案を定めるならば、現在、日常的に行われている正当なる労働運動、抗議行動、マスコミ等の報道、取材活動などを恣意的に規制することも可能となってしまう危険性があります。この点についてはどのようにとらえているのかお伺いをいたします。
 〔2〕 現下の社会情勢を真摯に分析した上で、迷惑防止条例の改定が避けられないならば、規制する対象から正当なる場合を除くとの文言を加え、構成要件を明確かつ限定的に定めること、そして、直罰型の警察規制構造で最も起こりやすい冤罪を発生させないためにも、乱用禁止規定を設けることが欠かせない要件と考えますが、所見を伺います。
 〔3〕 ピンクビラの規制についてですが、警視庁では、従来から繁華街等におけるピンクチラシ等の掲出に対し、地域住民やボランティアの人たちと連携して環境浄化運動を展開していますが、私はむしろ、表現されたものの内容の是非について警察が判断するのではなく、このような地域住民やボランティアの人たちとの連携をさらに深めることで、環境浄化を進めていくことが望ましいものと考えます。見解を伺いたいと思います。
 〔4〕 被害者への援助について伺います。
 今回の改正案では、被害者への援助を盛り込んでおりますが、ストーカー行為規制法が、ストーカー行為の被害をみずから防止するための援助を受けたいとの申し出があったときは援助を行うものとすると定めているのに対して、条例案では、被害を受けた者からの申し出があったときは援助を行うことができるとの、できる規定であり、援助の対象となる人の範囲も、援助に対する警察当局の姿勢も消極的な規定となっております。
 私は、援助の対象者を、被害を受けた者だけに限定するのではなく、みずから防止をするための援助を受けたいとの申し出があった場合にあっても、未然防止の観点から積極的に援助をすべきと考えますが、見解を伺います。

知事 〔1〕 社会の進展に伴って、以前には予測されなかったいろんな迷惑行為が出現しております。このような迷惑行為を防止し、都民の安寧な生活を確保することは極めて重要なことと考えております。
 他方、正当な権利に基づく活動は、改めて申すまでもなく、不当に阻害されることがあってはならないものでありまして、正当な労働運動、抗議行動、マスコミ等の報道、取材活動等を恣意的に規制するようなことは全くないものと考えております。
 〔2〕 つきまとい行為等については、明確に、専らねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で行われるものに限って規制することとしておりまして、正当なる場合は既に除かれているので、そのような規定は必要ないものと考えております。
 この条例の運用に当たり、乱用しないことは当然のことでありまして、また、警察官職務執行法などにおいて、その旨、既に規定されているところでもございます。そういうことでありまして、乱用禁止規定を設ける必要はないと考えております。

警視総監 〔3〕 ピンクビラについては、地域住民やボランティアの方々の多大なご努力にもかかわらず、依然として公衆電話ボックス内に張りつけたり、住居等に投函したりするなどの迷惑行為が後を絶たない現状にあります。
 このため、本定例会で迷惑防止条例の改正をお願いし、多くの都民が迷惑に感じているいわゆるピンクビラを、性的好奇心をそそる、衣服を脱いだ人の姿態の写真もしくは絵または人の性的好奇心に応じて人に接する役務をあらわす卑わいな文言を掲載し、かつ、電話番号等の連絡先を記載したビラと規定し、これについて必要な規制を行おうとするものであります。
 環境浄化活動につきましては、今後も地域住民やボランティアの方々との連携をさらに深めて、積極的に推進してまいりたいと考えております。
 〔4〕 ストーカー規制法第七条の警察本部長等の援助等の規定は、相手方から被害をみずから防止するための援助を受けたい旨の申し出があり、その申し出を相当と認めるときに限り必要な援助を行うものとするとされております。
 一方、本条例第九条に規定する援助の措置については、警察を利用して自己の立場を有利に導こうとする意図のもとにされる不適切なケースを排除するため、再発の防止または被害の回復を図るため援助を受けたい旨の申し出があったときは、必要な援助を行うことができるとし、その申し出をできる者を、被害者またはその保護者としております。
 なお、被害者として必ずしも断定できない場合でも、その事案の態様、重大性、危険性などを総合的に判断した上で、必要があれば、警察として適正に対応することは当然のことと考えております。
 したがいまして、ストーカー規制法の援助の措置と比較しても、援助の対象となる人の範囲も援助に対する姿勢も、決して消極的な規定となっているものではないと考えております。

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