平成14年 予算特別委員会
公明党 曽雌久義
私は、都議会公明党を代表して、本委員会に付託されました第一号議案、平成十四年度東京都一般会計予算外三十議案に賛成し、共産党提案の一般会計予算編成替え動議については反対の立場から討論を行います。
平成十四年度東京都予算は、長引く経済不況のもと、都税収入が三千六百億円減と大幅に落ち込み、その結果、一般歳出は四兆三千七百六十三億円で、対前年度比二・四%減、さらに投資的経費は一四・八%の大幅減となり、一般会計全体では対前年度比四・八%減という緊縮型予算となっております。歳入面では法人二税の落ち込みが大きく、都税は四兆三百四十二億円と前年度比八・一%の大幅な減となり、財源不足は一段と深刻になっております。さらに、一兆円もの隠れ借金が現実に存在するという事実など、将来の財政運営には不安を残す側面も存在しているのであります。また、過去に大量発行した都債の償還経費や職員の大量退職に伴う退職手当の増大、既存の社会資本の維持更新等に要する経費の増嵩等を考えれば、都財政の先行きはなお予断を許さない状況にあります。
我が党は、この新年度予算編成に当たり、危機の時代、転換の時代に突入した今こそ、大胆な発想と行動が不可欠であり、徹底した行財政改革により、都の財政構造を変革するとともに、限られた財源を有効に使いながら、景気、雇用、少子高齢社会への対応、環境、教育、東京の再生等の都政の諸課題解決と都民生活の明るい将来展望を開くことができる予算とするよう主張してまいりました。
その意味で、財政再建プランの目標を実質的に達成する職員定数及び給与関係費の削減を初め、管理事務費等の削減、監理団体の統廃合や財政支出の見直しなどの行政改革により五千七十五億円の財源を捻出し、社会経済情勢の変化に対応した都民福祉向上の予算確保に充てていることなどを評価するものであります。
今日の最大課題である雇用、中小企業、観光振興、都市再生などの重要施策には、新たな編成手法を導入し、財源を優先的に配分する一方、都民生活を守る観点から、生活環境分野で四・七%増、保健・福祉分野では前年度比〇・三%減ながら、構成比において過去最高の一二・〇%となるなど、我が党の主張に沿う形で編成されており、その努力を多とするものであります。
なお、中長期の財政再建戦略として、現在の手法によって作成されたバランスシートには限界があり、複式簿記と発生主義会計を適用した真に機能するバランスシートを作成すべきであります。
また、福祉・医療対策について、我が党は、厳しい財政状況下にあっても、一律に削減すべきではなく、時代の変化に的確に対応できる新しい福祉改革を、財源対策も含めて具体的な提案のもとに主張してまいりました。これに対し、都は、我が党の提言を積極的に受け入れ、昨年、福祉改革推進プランを策定し、このプランを具体化、発展させるために、今回、TOKYO福祉改革STEP2を新たに示しました。中でも、認証保育所A型の推進による待機児童解消、養育家庭制度の充実及びグループホームの充実、児童虐待防止、区市町村ネットワーク事業、家族再統合のための治療援助事業、障害者の親亡き後対策としての体験型生活寮モデル事業、痴呆性高齢者グループホーム、生きがい支援型サービスの充実など、我が党の主張を大幅に取り入れております。
さらに、都立病院改革マスタープランが発表されましたが、これは、病院改革の具体的道筋を示したものであり、これが改革の出発点となるものであるとの認識はするものの、地元自治体や地域住民のニーズに配慮したきめ細かな今後の対応が極めて重要な課題であり、都の誠意ある対応を見守るものであります。
なお、小児病院の統合に当たっては、地元自治体や地域医療機関と十分に協議を尽くし、地域に必要な小児医療の確保に万全を期すよう要望いたします。
東京ERについては、医療スタッフの充実と周辺の地域医療機関との連携で、ER本来の救急医療に対応できるよう望むものであります。
中小企業対策については、長引く不況下にあって、中小企業は懸命に生き残りの道を模索しておりますが、その多くは解決の方途を見出すことができず、苦しんでいる状況にあります。こうした中小企業の再生対策の一つとして、我が党は、東京産業再生プロジェクトの立ち上げ、産業の空洞化を埋める産・学・公連携による新産業の育成、臨海地域における経済特区構想、敗者復活が可能ないわゆる再チャレンジ支援システムの構築などを提案してまいりました。
中でも、敗者復活システムについて、弁護士、ベンチャー企業の経営者、NPO代表、税理士など実務に携わっている人や学識経験者、合わせて約十人で構成する敗者復活システム研究会の発足や事業破綻者への都営住宅活用制度への検討が明らかになるなど、施策の実現に大きな前進を見ていることを評価いたします。
また、商店街振興対策については、元気を出せ商店街事業の継続や商店街活性化事業も大幅に拡充されました。観光産業の振興については、観光資源の開発、そして我が党の提案で実施されるウエルカムカードに、ワールドカップ等で来訪する観光客に文化施設などの割引を可能とするなどの整備が実現の運びとなったのであります。
また、住宅政策では、真に住宅に困窮している方々への施策の展開を初め、建てかえ、スーパーリフォームの推進に取り組むとされておりますが、今後、ソーシャルミックスの中での公営住宅のあり方を明確にして住宅施策を展開すべきであります。
教育については、かねてより我が党は、小中学校における児童生徒の基礎的、基本的学力向上に向けて、少人数授業の重要性と教員養成系大学等の学生スタッフによる教育を主張してきたところであります。今回、都独自の少人数授業指導法の開発と学力向上のため、ティーチングアシスタントの活用など施策の充実が図られ、さらに、中退者を抑止し、新たな学習意欲を育てるスーパーチャレンジスクールについては、我が党の提案を反映して十四年度中に二校の創設を皮切りに新たな制度がスタートすることになり、このことを評価いたします。
また、我が党は、従前から教育における私学の果たす役割の重要性を強調してまいりましたが、十四年度においては、我が党の主張を反映して、私立幼稚園経常費補助の標準的運営費に準じた補助率を五〇%とするとともに、私立幼稚園の父母負担軽減措置については経過措置を設け、また、同時に就園の第二子、第三子については、従来の補助単価の継続を行うことを初め、預かり保育の充実を評価するものであります。
環境問題については、十五年十月から、国に先駆けてディーゼル車の粒子状物質、PMの規制が始まりますが、DPF・酸化触媒装置の装着費補助及びDPFの価格の低廉化や供給の安定に万全を期すとともに、都に流入してくる車両への具体的対応も必要であり、早急に関係自治体との協力関係を築き、共通の条例施行に全力で取り組むよう要望するものであります。
首都圏の再生と世界都市東京の実現に向けて、効果満点道路の集中的整備、鉄道の連続立体交差化の推進、区部環状、多摩南北方向の道路整備、公共交通網の整備、首都圏の航空機能の充実、アジア大都市ネットワーク21の推進など多くのプログラムが盛り込まれており、事業の積極的推進を強く要望するものであります。
なお、日本共産党提案の一般会計予算編成替え動議について一言申し上げます。
日本共産党提案の編成替え案は、都財政の現実を無視したものであり、到底容認することはできません。すなわち、詳細な財源の裏づけもなく、過去の政策を羅列しただけで、しかも毎度おなじみのパターンでありますが、予算審議の段階では組み替え案を提出せず、すべての予算審議が終了した段階で突如として提出してきており、単なるつじつま合わせとしかいえず、共産党の組み替え案には反対であります。
この際、職員給与削減措置について申し上げます。
我が党は、不況に苦しむ納税者である都民の心情を思うとともに、都政運営に当たり、十八万職員の協力が不可欠であることを考えたとき、一日も早い労使合意がなされるよう望んでいたところであります。厳しい社会経済情勢や都財政の状況を考えるとき、今回の労使合意を是とするものであります。予算の成立後は、今議会における我が党の主張、意見を真摯に受けとめられ、知事を先頭に全局一丸となって予算の円滑で効率的な執行に努め、都民福祉の向上を図られますよう最後に要望し、私の討論を終わります。