平成14年 予算特別委員会

次代を担う子どもたちの教育へ
心の東京革命の本格的事業展開を

三宅茂樹

自民党 三宅茂樹

 私は、東京都議会自由民主党を代表して、本特別委員会に付託された議案中、第一号議案、平成十四年度東京都一般会計予算外知事提案にかかわる全議案に対し、賛成する立場から討論を行います。
 討論に入る前に一言申し上げます。
 本日、東京地裁で外形標準課税についての判決がありました。判決によりますと、都の外形標準課税条例は、地方税法に反し、違法とのことであります。この判決はまことに遺憾であります。都の外形標準課税は、銀行が不良債権処理で法人事業税をほとんど負担をしておらず、税の負担の公正性と安定的な財源の確保のために導入したものであります。今後、都はこの不当な判決に対して控訴するものと聞いておりますが、我が党はこれを全面的に支援するとともに、都議会を挙げて積極的に行動してまいる所存であります。
 それでは、討論に入ります。
 平成十四年度予算案は、財政規模を見ますと一般会計は五兆九千七十八億円で、前年度当初予算に比べ二千九百八十二億円、四・八%の減となっております。これに特別会計、公営企業会計を合計した都全体の予算総額は十一兆九千七百三十七億円で、対前年度比〇・八%の微増となっています。
 知事は今回の予算を、東京が直面する危機に積極的に対応する予算と位置づけ、財政再建への取り組みをより一層進めると同時に、首都圏の再生と都民生活の不安を解消するための優先課題に財源を重点的に振り向け、積極的に取り組むことを基本に編成されました。
 我が党も今回の予算を、都税収入の大幅な減少という厳しい状況にあって、内部努力や施策の見直しにより財源を捻出しつつ、首都東京の再生に向けた都市基盤の整備や雇用・中小企業対策、福祉改革の推進など都政の重要課題には手厚い対応が図られており、都民の切実な要望に正面からこたえている予算であると評価しております。
 それでは、本定例会の中で行われた議論等を踏まえながら、こうした十四年度予算案の各分野の重要事項について申し上げます。
 歳入について述べます。
 まず、都税収入についてであります。
 平成十四年度予算案における都税収入は、四兆三百四十二億円と、前年度に比べて三千五百六十二億円、八・一%の大幅な減となっております。その主な要因は、国内外の景気の大幅な悪化による影響などによる、法人二税の大幅な落ち込みであります。政府の景気対策やデフレ阻止に向けた強い姿勢などにもより、このところ株価の上昇など少し明るい兆しも見られておりますが、景気や企業収益の回復に楽観視が依然として許されない状況であることに変わりはありません。引き続き、総力を挙げて徴税努力に取り組み、予算計上額の確保に万全を期していただきたい。
 次に、都債についてであります。
 都債については、十四年度予算案において三千七百十五億円と、前年度に比べ百三十八億円の増を見込んでおります。起債依存度は六・三%にとどまるなど、都債の抑制基調に変わりはないものと考えますが、将来の都税収入に期待を寄せることが難しい中で、今後、都債の大量償還時期を迎えることから、引き続き都債発行の抑制に努めるとともに、今後とも都債の適切な活用に向けて一層の努力を求めます。
 次に、基金についてであります。
 十四年度予算案においては、十二年、十三年度に都税の増収の一部を積み立てた財政調整基金及び社会資本等整備基金から、合わせて千三百五十四億円の取り崩しを行い、都税収入の大幅な落ち込みによる財源不足を手当てしております。この結果、両基金の残高は合わせて二千億円となり、都財政の規模からすれば心もとない水準となっております。一方、果実活用型の基金については、全体として約千四百億円もの規模がありながら、低金利時代を反映して、その特性が十分に発揮できなくなっております。資金の有効活用という観点や社会経済状況の変化を踏まえ、基金のあり方について十分に検討されるよう要望します。
 歳入の最後に、税財政制度の改善について申し上げます。
 予算特別委員会における質疑の中で、財政再建推進プランに基づく歳出削減が着実に成果を上げる一方で、税源移譲などの地方税財政制度の改善が一向に進まず、プランの目標である巨額の財源不足の解消には高いハードルの存在することが明らかになりました。地方自治体が、みずからの権限と財源により、地域の実情に合った施策を柔軟に展開するとの地方分権の理念が名実ともに実現するよう、今後とも、税源移譲など地方税財政制度の抜本的な改善に向けて、国に対して強く働きかけることを要望します。
 歳出について申し上げます。
 初めに、首都圏再生への取り組みについて申し上げます。
 東京は今、国内外の激しい都市間競争にさらされております。経済のグローバル化など時代の流れを的確にとらえ、国の都市再生関連施策と歩調を合わせて都市基盤整備を充実するなど、国際競争力の向上に向けて都市としての機能向上を進めていく必要があります。そのため、環状第八号線や調布保谷線などの区部環状、多摩南北方向を重視した幹線道路網を重点的に整備するとともに、羽田空港の国際化に向けて着実に取り組むことを要望します。
 また、通勤混雑の緩和に加え、都心部へ集中する業務機能を分散し、機能的な都市構造へと再編するため、りんかい線の大崎延伸や、常磐新線などの公共交通網の整備にしっかり取り組む必要があります。さらに、交通渋滞の解消策として、効果満点道路事業など投資効果の高い道路整備事業を着実に進めるとともに、鉄道の連続立体交差の整備を一層推進されることを要望します。
 次に、雇用・中小企業対策であります。
 長引く不況の中で、失業率がこれまでにない高さで推移するとともに、東京の経済や雇用を支え、地域社会を支える中小零細企業の経営は一段と厳しい状況となっております。経営基盤の脆弱な中小企業等に対する緊急、特別な支援として、知事の英断により、十四年度については小規模な非住宅用地を対象に固定資産税、都市計画税の減免が図られることとなりましたが、さらに東京経済が将来にわたり発展していくためには、雇用の創出や中小企業の支援育成などを通じて、人材や技術など東京の潜在力を有効に生かしていく方策が求められております。
 雇用対策として、緊急地域雇用創出特別基金事業を推進し、雇用の創出に取り組むとともに、中高年リストラ対策や高齢者の就業機会の創出に向けた取り組みを一層図られることを要望します。
 また、中小企業対策として、制度融資の充実や商店街の活性化対策を一層推進するとともに、アニメ産業や観光産業など新たな産業の育成を強力に進める必要があります。
 次に、臨海副都心開発についてでありますが、臨海副都心は、お台場や国際展示場など商業・観光スポットとして、また生活の場としてにぎわっており、東京の魅力と活力を創造していくためにも重要な地域となっております。都は、先般、臨海副都心を初めとする東京臨海地域の開発を着実に進めていくため、臨海地域開発財政基盤強化プランを発表しました。首都東京の活力と創造力を生み出すためにも、プランの達成を図りつつ、臨海副都心の着実な整備に今後ともしっかり取り組む必要があります。
 なお、ある会派は、臨海副都心開発を破綻していると決めつけ、浪費、むだ遣いの象徴として扱っておりますが、首都東京の再生に向けての起爆剤ともなる臨海副都心開発の意義や都の取り組みを全く理解していない無責任な批判であり、到底許せるものでないことを申し上げておきます。
 次に、環境対策について申し上げます。
 東京が都市として持続的に発展していくためには、自動車排気ガスを中心とした大気汚染や有害化学物質による健康への悪影響を食いとめるとともに、温暖化防止など環境対策は喫緊の課題であります。これら環境対策として、事業者の負担軽減にも十分配慮しつつ、低公害車の導入やディーゼル車規制などを実施することとしており、こうした取り組みを我が党としても評価しております。
 さらに、水資源の涵養や大気保全といった森林が持つ多面的機能を守るために、新たに環境の視点から森林再生事業に取り組み、荒廃している多摩地域の森林の再生を図られることを要望します。
 次に、都市の安全について申し上げます。
 東京は、急速な都市化の過程で生じた木造住宅密集市街地の存在など、いまだ防災上の弱点を抱えております。また、凶悪化し増加する犯罪や雑居ビル火災対策などへの対応が求められております。今回の予算案には、こうした状況を打開するため、新たな防火地域制度の創設など、災害に強いまちづくりに向けての施策が盛り込まれております。また、警察官の増員や、新宿歌舞伎町の雑居ビル火災を教訓に、火災予防査察業務の強化にも取り組むこととされております。なお、日本社会事業大学跡地の利用計画策定に当たっては、地元区等と十分な協議を行うことを要望します。
 都市の安全に向けて、今後とも万全な取り組みをお願いします。
 次に、福祉対策について申し上げます。
 本格的な少子高齢社会を迎え、都民ニーズの多様化、高度化にきめ細かく対応し、利用者本位が徹底された、地域での自立を支える新しい福祉の実現はますます重要になっております。今回の予算では、十五年度に障害者施設が措置制度から支援費制度に移行することを踏まえ、受け皿となるデイサービスセンターや知的障害者生活寮などの施設の整備促進が図られております。また、障害者や高齢者が地価の高い東京において地域での生活が続けられるよう、暮らしの福祉インフラ緊急整備が新規に盛り込まれております。さらに、認証保育所を一層拡充していくこととしております。
 こうした取り組みは、我が党が従来から強く主張している福祉改革と軌を一にしております。都民が住みなれた地域で安心して自立した生活を送ることができるように、引き続き福祉改革の取り組みを強力に推進することを要望します。
 なお、ある会派は、時代状況の変化をとらえられず、従前の福祉施策の継続に頑迷に固執し、私ども都議会の議決を得、市区町村も含め着実に実施している案件について、もとに戻せなどと主張しておりますが、全く時代認識を欠き、無責任な議論であることを改めて強く指摘しておきます。
 次に、医療対策について申し上げます。
 二十四時間安心できる保健医療体制の実現は都民の切実な要望であります。医療対策として、精神科救急医療体制や東京ERの整備などの施策が盛り込まれておりますが、さらに東京全体の医療サービスの向上や患者中心の医療を一層推進するため、都立病院改革マスタープランの早期実現に努めていただきたい。
 最後に、教育問題について申し上げます。
 次代を担う子どもたちに教育をきちんと施すことは、我々大人の責任であります。子どもたちに正義感や倫理観、思いやりの心をはぐくむよう、家庭、学校、地域が連携した心の東京革命の本格的な事業展開を図るとともに、青少年健全育成対策を積極的に推進されることを要望します。
 また、都立高校改革や都立四大学の改革など、東京の教育の立て直しにしっかり取り組む必要があります。
 以上、十四年度予算案に関連して申し上げてきましたが、我が東京都議会自由民主党は、危機的な財政状況にあっても、首都東京の再生により都民一人一人が夢と希望を持ち続けられるよう輝かしい社会を築き上げていくことを目指し、今後も引き続き、首都圏の再生や都民生活の不安解消など、都政の緊急課題に全力を挙げて取り組んでまいります。
 そして、十四年度が二十一世紀に明るい日本を展望する第一歩となるよう、我が党は全力を挙げて挑戦していく覚悟であることを申し上げ、討論を終わります。

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