平成14年 予算特別委員会

経済給付的事業を復活し
経済的支援策を抜本的拡充を

東ひろたか

日本共産党 東ひろたか

 私は、日本共産党都議団を代表して、第一号議案、平成十四年度東京都一般会計予算外十一議案に反対、予算組み替え動議に賛成の立場から討論を行います。
 未曾有の不況とリストラに加え、小泉政権の不良債権早期処理や医療費改悪などの痛みの押しつけが都民の暮らしと営業を直撃しているもとで、来年度予算に求められたのは、たとえ厳しい財政状況にあっても、福祉、医療、教育などの切実な都民要望にこたえる予算を編成することでした。
 しかし、提案された予算案は、環境や少子化などの分野で改善が見られるものの、財政再建推進プランに基づく老人医療費助成やシルバーパス、老人福祉手当などの福祉切り捨てを計画どおりに進めるとともに、都立病院の統廃合や慢性肝炎などの通院医療費助成の廃止など、新たな切り捨てが進められるものとなっています。
 さらに、重要施策に選定された事業以外には一律一〇%のマイナスシーリングが課せられ、都民施策のあらゆる分野で施策の後退が押しつけられるものとなっています。
 最悪の不況から都民の暮らしと営業を守る上で最重要となっている雇用対策費や、制度融資や臨海開発関係を除いた中小企業予算は一般会計の一%にも満たない水準にとどめられ、施策の拡充は先送りされています。
 失業者や三宅島避難島民のための生活支援金の創設、都独自の緊急雇用対策基金事業、第二期工業地域集積活性化事業、商店街支援などの、都民が切実に求めている課題にこたえる姿勢も見られませんでした。全国で大きな流れとなっている三十人学級の願いについても、拒み続けています。
 多摩地域での施策の後退も重大です。保健所統廃合を初め、経済事務所、労政事務所、社会教育施設の縮小、統廃合などが一方的に進められ、多摩地域の自治体で、都の施策後退を厳しく批判する意見書が採択されました。
 来年度予算案は、都民に痛みを押しつける一方で、石原知事が打ち出した首都圏メガロポリス構想に基づく都市再生を聖域化し、大型開発や幹線道路などの大型公共事業に重点的に予算を配分するものとなっています。
 借金依存型の都政運営からどう脱却するかも厳しく問われました。この点では、都は投資的経費を抑制したといいますが、実際には、来年度執行となる今年度最終補正予算と合わせると今年度を上回る規模となり、借金を積み増しするものとなっています。この結果、都債残高は七兆円を超え、質疑を通じて、三十年たっても、六兆七千億円の規模の借金に苦しむことになることが明らかとなりました。これらの借金の利払いだけで年二千億円を超える負担が恒常化し、そのツケが都民施策にしわ寄せされてくることは重大です。
 我が党が、生活保護を受ける人や、電気、ガス、水道料金など公共料金の滞納が急増している事実を指摘したことに対し、福祉局は、経済低迷によって国民所得が縮小し、高齢者や障害者の方々が生活困窮に陥るリスクが拡大していることを認めました。
 こうしたもとで、いわゆる経済給付的事業の切り捨ては計画どおり進められており、都民生活は一層深刻なものとなっています。もうこれ以上の痛みを押しつけてはなりません。我が党は、東京都が住民の暮らし、福祉を守るという自治体本来の姿勢に立ち返り、高齢者、障害者の福祉手当や医療費助成など経済給付的事業を復活するとともに、都民への経済的支援策を抜本的に拡充することを強く求めるものです。
 質疑の中で知事は、低所得者の困窮が深刻になっている問題に対し、むしろ共産党の怠慢を証左しているのではないか、などと答弁をしました。しかし、今日の事態を生み出したのは、国や東京都の責任であることは明白です。知事の発言は全く筋違いな暴言であり、断じて許されないものです。
 血液製剤フィブリノゲンによる薬害肝炎といわれている問題について、知事は、国の責任を認める重要な答弁をされました。また、質疑を通して、慢性肝炎のこれまでの医療費助成の実績から、通院が件数で九七%、助成額で八〇%にも及ぶとの事実も明らかになり、都の提案の根拠が成り立たないことが証明されました。ずさんな衛生行政の被害者である肝炎の患者の方々にとって、慢性肝炎から肝硬変、肝がんへの進行を抑えるために、通院医療費の助成はまさに命綱であります。再検討し、通院、入院とも医療費助成を継続すべきであります。
 また、都立病院改革マスタープランに基づく統廃合計画も議論の焦点となりました。中でも母子保健院は、ことし十二月末で廃止という計画であり、地元住民や自治体の声を東京都がどのように尊重するのかが問われましたが、地元区との合意もないまま、あくまで廃止との姿勢をとり続けています。併設されている都立乳児院は、小児科医が二十四時間対応している貴重なものであることも明らかになりました。国立成育医療センターについて、我が党は、地域医療にも積極的に取り組むべきであるとの立場ですが、地域住民のためにきめ細かい医療を提供してきた母子保健院のかわりになるものではありません。この問題については、昨日、本予算特別委員会終了後、直ちに知事に、厚生労働省との面談の相手、日時を伝えました。事実を確認し、知事の責任で母子保健院の廃止を再検討されることを強く求めておきます。
 都心部での同時多発的な開発を促進する都市再生の是非も問われています。秋葉原ITセンター問題の質疑を通して、貴重な都有地が低い価格で売却されようとしていること、アセス逃れを容認するなど、東京都の不明朗なかかわりが明らかにされました。また、六本木六丁目の再開発ビルの電波障害が多摩地域にまで及んでいることが判明したことも重大です。このような大企業やゼネコン中心の同時多発的な大規模開発が東京一極集中化を激化し、ヒートアイランドなど深刻な環境破壊や都財政難をもたらすことは明らかです。
 また、臨海副都心開発の見直しについて、年度ごとの収支、土地の処分計画など、見直しの根幹にかかわる情報を開示することを求めましたが、都はこれを拒みました。今回の見直しは小手先の収支の手直しにすぎず、九七年の青島都知事のもとで行われたオフィス開発を継続する見直しの延長にとどまるものであり、知事がいうところの全面見直しにはほど遠いものであります。改めて、すべての情報を公開し、都民参加で抜本的な見直しを行うことを求めておくものです。
 公共料金の値上げのうち、大企業に適正な負担を求める道路占有料の改定は当然ですが、都立大学や都立高校の授業料を初めとする、都民に新たな負担を強いる値上げは認められません。
 また、料金改定にあわせて利用料金制が提案されていますが、これは各団体への支出金を定額制にすることと一体のもので、定額制を導入することで、団体にとって不足となる収入を利用者に求めようとするものです。既に導入されている施設の多くでは、利用料金の上限額いっぱいに値上げされていることからも、実質的な値上げというべきものです。
 六十五歳以上の高齢者の無料制の廃止も、定額制による収入不足を高齢者の負担で賄おうとするものであり、都民施設の利用を抑制することにもなりかねず、反対するものです。
 我が党が提案している来年度予算組み替え動議は、以上の立場を踏まえて、切り捨てられた福祉をもとに戻すとともに、母子保健院などの新たな切り捨てをやめ、福祉や医療の充実を図ること、知事を本部長とする緊急景気対策本部を設置し、若年者就労支援事業の創設、全国の流れともなっている学校の三十人学級実現の準備、学校週五日制対策、引きこもり対策などを盛り込んだものです。同時に、臨海副都心開発など都市再生関連事業など不要不急の大型公共事業や浪費にメスを入れ、全体として一般会計予算のわずか三・一%を組み替えることで、都民生活を守る方向に踏み出せることを示したものです。各会派のご賛同を求めるものです。
 職員給与カットについては、改めて八月から一年間給与カットを行う労使合意が行われ、この内容の条例改正案が提案されることとなりました。そもそも、地方自治体の職員の給与は、争議権など労働基本権が制約されているもとで、民間の給与水準を反映する仕組みである第三者機関としての人事委員会の勧告に基づき、労使間での合意によって決定されるというルールが確立しているものです。自民党の提案による、一般会計予算案などに付された「適切な対応を講じること」を求める付帯決議は、労使間で改めて合意されたにもかかわらず、都にさらなる対応を強制しようとするもので、認められるものではありません。付帯決議については反対するものです。
 最後に、原宿警察署建てかえに伴う大規模留置場建設問題について申し述べておきます。
 都は、犯罪者の増加を大規模留置場建設の根拠としていますが、この問題は、法に基づく冷静な検討が求められる問題です。警察署の附属施設である留置場に昨年一年間に留置された九三%の人は、本来、国の拘置所に措置されるべきものです。国は現在、東京拘置所の建てかえを進めており、東京都が国にかわって代用監獄としての大規模留置場を建設しなければならない理由はどこにもありません。にもかかわらず、石原知事はあくまで大規模留置場の建設をごり押しすることは、自白の強要など冤罪の温床となってきた代用監獄を永久化することを意味し、民主主義に反する時代錯誤といわなければなりません。大規模留置場は要らないという地元住民や地元自治体の声に率直に耳を傾け、計画はきっぱり撤回することを求めて、討論を終わります。

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