平成14年 予算特別委員会総括質疑

かち佳代子

かち佳代子(日本共産党)

海老取川の環境改善

 〔1〕 海老取川というのは、これが羽田空港ですけれども、かつては大変きれいな川でした。子どもたちも、この川で泳ぐことも、今にしてあるんですね。大森青べかカヌークラブというところがインターネットを出しておりますけれども、写真を見ても、子どもたちが泳いでいたりするんです。そういう川なんですけれども、そして、ハゼもここでよくとれるということで、釣り人もにぎわっていたんですが、ここ二、三年、ハゼがとれなくなってしまった。なぜかといいますと、ここにヘドロがわいて、酸欠になって稚魚のときから死んでしまう、そういうふうに変わってきています。そして、ヘドロが汚水によって攪拌されてしまうという状況なんです。
 こういう異変が起きた川なんですけれども、この川は、川岸の方には武蔵野の小道という散歩道も計画されています。
 このように、貴重な水面は都民の財産ともいえると思うんですけれども、昨年八月と九月に、二回にわたって一〇〇ミリを超える大雨が降りました。この川岸に係留をしている漁船があるんですけれども、この漁船が(「不法係留じゃないんだろうな」と呼ぶ者あり)不法では--ちゃんと許可を取っているんです。
 それで、引き潮のときには、ヘドロがたまって、陸に押し上げられてしまうというような状況になって、船を出すことができない、こういう状況になっているわけです。これは、漁業を営む人にとっては死活問題にもなっているわけですね。
 この問題を、どうしてこういうことが起きたのか、まず、その原因についてお聞きいたします。
 〔2〕 この近隣の水域環境なんですけれども、この海老取川には、羽田ポンプ場と東糀谷ポンプ場といって、下水処理ポンプがあります。そのもう少し上流に行きますと、森ヶ崎処理場という日本最大級の下水処理センターがあるんです。そのほかにもあと二つ、計四つもこの狭い水域に固まっている。このことが、今日的な雨天時の合流の溢水の大変大きな問題になっているわけです。
 それで、この羽田ポンプ場と東糀谷ポンプ場というような、二つありましたけれども、これらのポンプ場は、いつから稼働しているんでしょうか。
 〔3〕 二つあって、一つは四十四年、東糀谷の方は一昨年から稼働したということなんですけれども、なぜ、こういうふうに二つ、後からつくったかといえば、合流式の改善、羽田ポンプ場の負荷軽減するためにということで二つつくったわけですよね。
 ところが、その稼働状況をお聞きしますと、東糀谷の方の、一昨年から開設されたポンプ場の水は、羽田の方の半分を分けたのではなく、もっと上流の方から引っ張ってきていると。それで、本来だったら、汚水をためるポンプを稼働しなければならないんですけど、まだ稼働できていない。それは来年以降になるだろうと。
 そういう状況のもとで、十二年、一昨年には、二つのポンプ場から二百七万トンの水が押し出されているというんですが、この二百七万トンというのは一体どのぐらいのものかといいますと、城南地域のこういう排水ポンプ場から出てくる水の約三分の一を占めるんですね。大量な汚水が、この狭い閉鎖をされた、閉鎖的なこの水域に流される。そういうことになりますと、おのずとここに汚泥がたまるということは、必然的に明らかになってくるのではないでしょうか。
 それで、一昨年の夏に大雨が降って、その翌日に大変な臭気が発生をして、ちょっと汚い話になりますけれども、未処理の汚物がそのまま流れてきた。水面に浮いている。もちろん、いわゆるオイルボール、白いオイルボールも浮かんでいましたし、それからハゼが、やっぱり巻きあがったヘドロによって、酸欠になって浮いてしまう。大変な状況になっているわけです。
 こういうことが繰り返されていると、衛生的にも大変問題が生じるのではないかと思うんですが、この川の水質や川底の調査などを本当にきちんと行って、海老取川の環境改善に系統的に取り組むべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
 〔4〕 越流水の実態を調査して、周辺住民に必要な情報を提供すべきだと思います。
 もう一つは、合流式下水道の改善とともに、海老取川に流れ込む汚水を流さないように改善すべきだと思いますけれども、その二つについてお答えください。
 〔5〕 台風シーズンが来る前に、ここに汚泥、ヘドロがたまっている、漁船が出られない、こういう状況になっているわけですけれども、これを改善するために、ぜひしゅんせつをすべきではないかと思いますけれども、これは、ここに関係するのは下水道局、そして建設局、港湾局だと思いますが、まず下水道局さん、いかがでしょうか。
 〔6〕 しゅんせつをどうするかということに対しては、全くお答えがないんですよね。だけど、この問題については、もう地元の漁協の皆さんから再三、建設局や港湾局や、そして下水道局に申し入れをなさって、それで話し合いもされているわけですよ。
 当初は、下水道局さんは、ヘドロの原因が下水道に起因する、大きな影響を持っているということもそれを認識をされて、しゅんせつについてはその範囲を決めなければいけないので、港湾局とも相談の上お答えする、そういうふうにいっていながら、今まで何の解決もされていない、しゅんせつされていないというのが現状だと思うんですね。
 それでは、建設局、港湾局はどうですか。
 〔7〕 河川許可を受けた占用者がその場所のしゅんせつをすることになっているというお答えがありましたけれども、それは何に基づいておっしゃられるんですか。
 〔8〕 通達に、しゅんせつをすべきと書いてあるんですか。
 〔9〕 でも、この同じ法の中には、こういうふうに書いてあるんですよ。河川敷地は、基本的にはその周辺の住民により利用されるものであることから、地域の意向を踏まえて行う必要がある、そして、許可を受けた者に不当な義務を課する課することになるものはあってはならない、こういうふうにも書いてあるんですよ。ですから、はっきりとしゅんせつを占有者が行うべきということは、どこいも書いていないんですよ。だから皆さんは、いわれても受けることができないから、三局がそろって相談しても、結論を出さずに今まできたんじゃないですか。
 だからこそ、私は、ここで知事の決断をお示しいただきたいと思うんで。今、本当に新しい都市再生に向かって、また東京の水域をきれいにしようというときに、昨日は、環境負荷を取り除くためには、局の壁を超えて全力で取り組むというふうにもおっしゃっていただきました。ぜひその立場で、このしゅんせつ問題解決に向けてご判断をいただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

知事 〔9〕 私は、自分の選挙区でして、あそこの事情をよく知っていますが、零細の漁民があそこに何隻か船をつないでいますけれども、その人たちが占用者であることを、もっと違う原因で--私、森ヶ崎の汚水処理場もよく知っています。はんらんしますと、非常に惨たんたる状況になって海が汚れるんですが、今後、新しい施設をつくって、それが稼働するときに少し救われるかもしれませんけど--こんなものはすぐやらせますよ。ただ、あそこにいる自民党の衆議員はだれかな。何をしているのかな。

下水道局長 〔1〕 平成十二年度に都が実施いたしました底質調査の結果では、今、図に示されました近傍の海老取運河における有機性の成分については、他の運河と比較してほとんど差がなかったことなどから、堆積などの原因については不明でございます。
 〔2〕 羽田ポンプ所は昭和四十四年、東糀谷ポンプ所は平成十二年に稼働しております。
 〔4〕 雨天時における越流水の実態調査を安全かつ確実に行うためには、採水技術の確立など多くの課題がございます。
 今後、これらの技術的な課題とあわせて、関係者などへの情報提供についても検討してまいりたいと考えております。
 次に、東京の道路事情などを勘案いたしますと、汚水管と雨水管の両方を埋設しなければならない分流方式への変更というのは、非常に困難な面がございまして、直ちに合流式下水道を改善するというのは非常に難しい問題がございます。
 海老取川につきましても、幹線管渠や東糀谷ポンプ所の整備によりまして、雨天時の放流を軽減するとともに、雨水を一時的に貯留する施設を整備したところでございまして、十四年度からは大幅な効果が期待できると考えております。
 今後とも、これらの事業を計画的に推進してまいります。
 〔5〕 下水道局では、合流式下水道からの雨天時の放流を軽減するため、幹線管渠の能力増強や雨水の貯留施設の整備を進めております。
 これに加えまして、油の固まりなどの流出を抑制するため、合流改善クイックプランを速やかに実施することが局の役割と考えておりまして、今後とも、これらの対策を計画的に推進してまいります。

環境局長 〔3〕 海老取川の水質及び川床の泥の調査につきましては、地元の大田区が調査を行っております。
 東京都は、海老取川の近傍の運河において調査を行っております。
 今後とも、大田区と連携しながら、水質の監視に努めてまいります。

建設局長 〔6〕 昨年の台風によりまして、船舶の航行に支障が生じるおそれが出た部分につきましては、港湾局とともに、順次、しゅんせつ工事を実施しているところでございます。
 また、海老取川では、五十六隻の船舶の係留について、河川法に基づきまして占用許可しているところでございますが、許可を受けた者が、その占用にかかわる範囲のしゅんせつ等の維持管理を行うこととなっております。
 〔7〕 河川敷地の占用許可にかかわります建設省からの通達に基づき、私どもは指導しているところでございます。
 〔8〕 平成十一年の建設省河川局長通達、河川敷地の占用許可についてというのによりますと、占用を許可したときには、占用の目的を達成するために必要な維持管理を十分に実施させることといたしております。
 したがいまして、係留場所の許可を受けている場合は、土砂などの堆積により係留場所としての機能が阻害されることになりますと、これは占用者の方でしゅんせつを行い、回復させることになっております。
 〔9〕 占用目的達成のために、維持管理にどれだけのものが、費用をかけるかは、占用者が判断するものというふうに考えておりまして、限られた公共水域を排他独占的に使用していることから、維持管理に要する費用を負担することは妥当であるというふうに考えております。

都立病院改革

 〔1〕 都立病院改革マスタープランに対しては、都内各地で、住民と自治体を挙げた厳しい都民的な批判が広がっています。その中でも母子保健院は、ことし十二月末廃止が打ち出され、地元世田谷区でも大変心配をして、今議会を見守っていると思います。母子保健院の存続を願う住民と地元自治体に対し、東京都がどう対応するか、都立病院改革の最初の具体化ですので、ぜひそのことを踏まえてご答弁いただきたいと思います。
 都立病院の改革マスタープランは、この四月から早速、乳児院の入所停止、漸次停止をしていって、十二月に廃止となっておりますけれども、このマスタープランは、来年度予算にどのように反映されているのでしょうか。
 〔2〕 世田谷区から、母子保健院について要望が出されていると思いますけれども、どういう内容ですか。
 〔3〕 衛生局長は、先日の我が党の本会議代表質問で、マスタープランの策定に当たっては、地元世田谷区を初め関係機関の要望も踏まえた上で、地域医療の確保について考え方を盛り込むというふうに答弁していますが、それは具体的にはどういうことですか。
 〔4〕 国立医療センターで地域医療を行ってほしいということ、それから母子保健院の代替機能を果たしてほしいということについて、具体的に国にどういう要望をされて、そして、国はどういうふうにお答えになっているんですか。
 〔5〕 母子保健院のホームページを開いてみますと、その中には、お子様が生まれる前から、生まれるとき、生まれた後まで、いつでもお役に立てる病院ですと。これを見て、私はすばらしいと思いました。それで、当院は、心温まる医療・養育サービスの提供に努力し、皆様に信頼される病院となるよう努めてまいりますと、このように書いてあります。
 実際にそういうことをやってきたのが、母子保健院ではありませんか。だからこそ、本当にもう各界、各層、立場を越えて、世田谷区民ばかりではありません。本当にここを利用している幅広い人から、ここを存続させてほしい、こういう声が今大きく広がっているんです。
 知事に伺います。十二月放映の日本テレビ、ビデオを見ていただいたかと思いますが、規模は小さくても、こういう住民と密着し、信頼され、頼りにされている母子保健院などは残すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 〔6〕 母子保健院は私は非常に都立の中でもユニークなというか、非常に個性的な病院だと思うんですね。妊娠から出産、周産期、小児医療、救急、そして子育てセンターの役割を果たしている乳児院、そして東京都も働く両親を支援するモデルケースとして行ってきた病後児保育、こういうことをトータルとして、本当に子どもの生まれるから、一定の育つまでのその大事な期間を、本当にそこの部分をトータルに総合的に展開しているのが母子保健院です。この病院は都の中でも貴重な存在です。
 この病院を改革するといいますと、すぐ、面でとか総合的にとかおっしゃいますけれども、今小児医療の実態が壊れているわけでしょう。もう医師が高齢化している、小児が少なくなっている、こういう中で開業医も続けられない。だからこそ本当に皆さんは小児の一次、二次の救急を何とかしてほしい、これが区民、都民の皆さんの切実な願いになっているんです。こんなに高い都民ニーズはないじゃないですか。これこそ行政医療ではありませんか。これをやはり責任を持つ、それが都の役割だと思うんです。病院改革というのは何でもすぐ統合して大きくすればいいというんじゃなくて、こういう個性的な、非常に大きな役割を持っている母子保健院をぜひ残すべきだと思います。私は、改革に当たって、改めて検討し直すことを強く要望いたします。
 もう一つは、それに付随する乳児院の問題です。乳児院は全都に十一カ所ありますけれども、医療と併設をしている乳児院というのは本当に少なくて三つ、その中で公立はたった一つ、この母子保健院併立なんですね。昨日からの質疑にもありましたけれども、今子育ての養育能力が落ちているとか、また、虐待、被虐待の問題がふえている。ですから、そういう影響は必ずここにも出ているんです。都立の母子保健院の一、二歳児の半分は被虐待児だといわれています。脳挫傷、脳陥没、大腿骨骨折、小児でこんなことが実際にあるんですよね。こういうとき、また、親の介護力がない、ここにも総合的にいろいろな専門職がかかわって、保育する能力を回復していく、そういう役割を果たしているんです。この母子保健院は残すべきだと思いますけれども、同業の東京都社会福祉協議会の乳児部会から東京都衛生局に要望書が出されていると思うんですけれども、どんな内容ですか。

知事 〔5〕 あのテレビはいただいたので、ビデオを拝見いたしました。先ほど来申しておりますように、この都立病院の問題もいわゆる面と点、森と木といいましょうか、つまりベクトルとすれば鳥瞰と虫瞰といいましょうか、都が担当すべき仕事としては、やはり面というものを考えて都立病院も改革していかなきゃならないと思っております。
 いずれにしろ、都立病院は都民すべての財産でございまして、これが提供する医療サービスは、決してその都立病院があるその地域に限ったものではないんです。この番組を拝見しましたけれども、小児医療の問題は一定の地域に限定したもので、都と区市町村の役割分担を十分に取り上げていないと私は理解いたしました。

衛生局長 〔1〕 母子保健院は、マスタープランの計画に基づきまして、平成十四年十二月末をもって廃止することを予定しております。このため、平成十四年度の予算案におきましては、それまでの間に要する管理運営経費として、十五億九千八百万余円を予算計上しているところでございます。
 また、平成十四年度中の廃止を予定していることから、定数措置はなされておりません。ただし、廃止に至るまでの間、事業の継続に必要な人員については、引き続き配置してまいります。
 〔2〕 世田谷区長からは、都立病院改革会議マスタープランの検討段階でいただいた要望書では、都立病院改革会議報告の計画化に向けては、世田谷区や区民、地元医療関係者の意見を取り入れることを要望するとともに、世田谷区民の医療環境保持の立場から、母子保健院存続を強く要請するとなっております。
 また、都立病院改革マスタープランの策定に当たっては、世田谷区や地元医師会等とさまざまな機会をとらえて意見交換を重ねるとともに、その要望を踏まえた上で、地域医療の確保についてその考え方を盛り込んだところであり、おおむねご理解を賜っているものと認識しております。
 〔3〕 母子保健院が担っております一般の産科機能や小児医療等につきましては、国立成育医療センターを初めとする周辺の医療機関の協力を求めていくとともに、広尾病院を初めとする他の都立病院での受け入れ体制を十分に整えるなど、地域医療等の確保について、その考え方を盛り込んだところであります。
 〔4〕 国立成育医療センターの、都の休日・全夜間診療事業や周産期医療対策事業への参画につきましては、現在、同センターで検討をしていただいているところであります。都としては、今後も引き続き、協力依頼をしていきたいと思っております。
 なお、成育医療センターからは、成育医療に関するモデルとして、小児救急や周産期医療、正常分娩にも取り組んでいくと明確に伺っておりまして、同病院のパンフレットにも、その旨が明記されております。
 これらのことから、成育医療センターは、地域医療に協力していただけるものと確信しております。
 〔6〕 東京都社会福祉協議会乳児部会長から、昨年の七月三十日付でいただいた要望書では、都立乳児院としての役割、機能が継承できる新たな施設の整備についても、都としてぜひともその実現に向けての努力をお願いしたい、と述べられているものであり、私たちは、母子保健院の乳児院の存続を必ずしも求めているものではないのではないかと考えております。

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