平成14年 予算特別委員会総括質疑

渡辺康信

日本共産党 渡辺康信

福祉、医療

 〔1〕 高齢者、障害者の福祉手当や医療費助成、シルバーパスを初めとする一連の福祉切り捨ては、来年度予算で三年目となります。
 幾つかの経過措置がとられておりますが、計画どおり着々と切り捨てが推進されておるわけで、シルバーパスの利用者は、全面有料化で七万五千人も減りました。今年度一万円の人は、来年度は一万五千円になります。老人医療費助成、マル福を受ける対象者は四分の三に減ります。十万七千人が対象から外され、六十五歳の高齢者一人当たりの負担額は年間八万円、総額八十七億円に及ぶ負担増となっております。重度障害者手当の所得制限導入による影響は、未成年の障害児を持つ家庭に集中し、年額七十二万円支給されていたものが、今年度四十八万円、来年度は二十四万円に削減されます。その他、老人福祉手当、障害者医療費助成、特別養護老人ホームへの補助を初め、いわゆる福祉十事業の切り捨ては、九九年度予算に比べ、財調算入分も入れると、既に六百四十億円に及んでいます。深刻な経済不況と社会保障の改悪が進む中、命にかかわる重大な事態が進行しております。
 知事は、これらの見直しは福祉改革の前提をなすものだというが、その前提そのものが間違っていると思います。特に私が強調したいのは、知事の福祉改革には、今とりわけ大事になっている都民への経済的支援や低所得者対策が欠落していることだと思います。これは、地方自治体としてのあり方、あるいは福祉の原点にかかわる重大問題だと思います。
 そこで、都民生活の実態と都政が取り組むべき福祉の課題について、幾つかの角度から質問をしたいと思います。
 まず、各種公共料金の滞納がふえ、深刻な事態を招いている問題です。
 我が党の調査では、九九年度、都内で電気代の滞納が百万件に及び、滞納による供給停止が五万件、ガス代の滞納が四十万六千件で、供給停止が二十四万件に及びます。料金を滞納した場合、最初は電気、次にガス、最後に水道という順でとめられていくわけであります。
 水道局長に伺います。水道料金の滞納と供給停止の九六年度と二〇〇〇年度の状況はどうなっているか、お伺いいたします。
 〔2〕 それでは、二十三区内の栄養失調による衰弱死の人数、この十年及び二〇〇〇年で何人いるのか、また、最近の死亡者に共通する特徴というのは何か、ちょっと教えてください。
 〔3〕 首都東京の二十三区で年間二十六人、十年間で百九十二人もの餓死という痛ましい事件が起きていますが、これについてどのように受けとめておられるでしょうか。
 〔4〕 監察医務院で解剖に付される年間一万件のうち、ほかにも、ひとり暮らしの高齢者の孤独死が千六百三十八件、ホームレスの路上死が四百四十三件、みんな悲惨な問題なんです、これは。その中で、栄養欠乏症の二十六人は、胃袋が空っぽの状態で、世間一般では餓死という状態で亡くなっているんです。現代社会であってはならないことじゃないでしょうか。このことについて聞いているんです。さまざまな事情があるのは当たり前です。その事情の上に立って必要な対策をとるのが行政の責任ではないでしょうか。その認識をちょっと知事にもお伺いいたします。
 〔5〕 いわゆる二十六人、十年間で百九十二名、この方が亡くなっているのは、監察医務院でさえも、胃袋の中に何も入っていない、そういうことで布団の中で死亡している、こういうことで報告されている。それを今の答弁のようないい方では、この人たちは浮かばれないじゃないですか。一体、こういう人たちがこういうような状況に置かれている、こういう事態をどういうふうに認識しているのか。これに対して、こういうようになる前に、行政の、やはり何といいますか、施すことが必要なんじゃないか。そういうことで私はお伺いしている。福祉局長の答弁は、私は納得できない。知事。
 〔6〕 電気、ガス事業者に対して、生活が困窮して料金が払えない人に対して、ライフラインの供給停止をするようなことはしないように、知事として、まず各機関に申し入れをするということについてはどうですか。
 〔7〕 期限内に払えない、いわゆる水道の滞納者ですね、この水道の滞納者に対して、いわゆる水道の給水停止、こういうものが現に行われておるわけですけれども、これに対しては何らかの救済対策というんでしょうか、いわゆる生活保護者に対しては、減免というか免除制度というか、そういうものがあるわけですけれども、低所得者に対するいわゆる救済制度というのはない。この問題に対して東京都は何らかの形で対応すべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
 〔8〕 一九八〇年代後半から、水際作戦といわれる締めつけ政策が始まり、受給者は減り続けていたが、締めつけ政策は続いているのに、それを超える勢いで急増しています。この十年間に生活保護の受給者はどれくらいふえているか、お答えください。
 〔9〕 医療的ケアの必要な高齢者が特別養護老人ホームや老人保健施設、介護療養型病床の介護保険施設に入れずに病院に長期入院する場合、入院費用は、東京では月に二十万から二十五万円ぐらいかかります。医療費のほかに、おむつ代などの保険外負担も含め、それぐらいかかる。急病じゃなくて高齢者のケアだから、それが何年も、しかも十年も続くということになったら大変な問題です。多くの都民が本当に苦労されているんです。
 そこで伺いますが、老人福祉手当受給者のうち、病院に長期入院している人はどれぐらいいるんですか。
 〔10〕 知事は、介護保険が始まるから大丈夫だと、こういうことでいいまして老人福祉手当を切り捨てたが、現実はかけ離れている。こうした深刻な事態があちこちに生まれているということを、知事はどのようにお考えになっているんでしょうか。
 〔11〕 特別養護老人ホーム、希望者がますますふえて、社会的入院の解消はほど遠い状況になっている。しかも、それだけではない。気管切開や人工呼吸、人工栄養など、重い医療的ケアが必要な場合、介護保険施設ではそもそも受け入れてもらえない。介護保険が始まってもサービスは使えず、何ら状況が改善されていない上、介護保険の保険料だってしっかりと取られている。介護保険が始まるから大丈夫などという老人福祉手当切り捨ての根拠は、今や全く、知事、陳腐だというふうに私はいわせていただきたいというふうに思いますよ。
 その上、今度の四月一日から、診療報酬改定で、長期入院患者は保険点数が大幅に切り下げとなり、患者負担が大幅にふえることになる。日経新聞は、六カ月を超す入院者は月四万から五万円の負担増と報道している。今後ますます負担増ということになる。老人福祉手当の来年廃止というのは、今ここで再検討しなければ大変なことになる。これについては、本当に廃止という方針を再検討するように、私は知事に申し上げたい。いかがですか、知事。

知事 〔5〕 日本の社会は、総体的には相当成熟していると思います。何十万の人が平気で餓死を強いられている北朝鮮とも違いますし、北京の力ずくの圧政のもとに、餓死を含めて二百万の人が死んだチベットとも違うと思います。
 そういう日本の社会の中で、そこまで逼迫された方々が、つまり救済される措置を私たちの社会が講じていないということは絶対にないと思います。やっぱり共助の世界といいましょうか、その地域で、その人たちが何で周りの人に語りかけ、救ってくれと手を伸ばさなかったのか不思議でありますが、いずれにしろ、社会的にはそういう方々を救済する措置というものは十分に講じられていると私は思います。
 〔10〕 人間がやることでございますから、いろいろそごを来すこともあるでしょう。その最終的な一つの対処として生活保護というものが講じられているわけでありまして、先ほどから低額所得者と生活保護の受益者との問題が出ておりましたが、最終的なバリアのフリーといいましょうか、阻止手段として生活保護が設けられているわけでありまして、渡辺委員のおっしゃることは、逆に共産党のそういう底辺といいましょうか、非常に逼迫されている方々に対する対処が足りない、むしろ共産党の怠慢を要するに証左しているんじゃないでしょうか。

水道局長 〔1〕 水道料金につきましては、請求書や催告状を送付してもお支払いがなく、給水停止を予告する納付書の指定期限を過ぎてもなお料金のお支払いがない場合は、未納整理の対象としております。
 その件数は、平成八年度は年間約百三万件であり、平成十二年度は年間約百二十万件でございます。
 また、負担の公平性を確保するため、徴収整理員による再三の催告にもかかわらず料金のお支払いがない方には、それぞれの事情を考慮した上で、納期の延長や分割納入などによりお支払いいただくほか、やむを得ない措置として給水停止を行っております。
 その件数は、平成八年度は年間約八万三千件、平成十二年度は年間約九万九千件でございます。

衛生局長 〔2〕 監察医務院での検案例のうち、いわゆる栄養欠乏症に該当すると思われるものは、平成三年から平成十二年までの間の十年間で百九十二人、平成十二年の一年間で二十六人であります。また、死亡例の約五割が年齢六十歳以上という特徴がございます。
 〔3〕 いわゆる餓死といわれるものの実態については、医学的には把握できておりませんけれども、年間約一万人に達する監察医務院での検案事例のうち、平均約二十人程度の栄養欠乏症の死亡例がございますが、それぞれの病歴や生活実態など、さまざまなご事情があると思われ、お気の毒であると思います。

福祉局長 〔4〕 今先生お話がありましたいわゆる餓死でありますが、それは監察医務院の報告にもありますように、栄養欠乏症と餓死とはイコールでないわけでありまして、実際にどういった形でそういった方が死亡されたか、我々は今ただ数字を聞かされただけで、現実の細かい状態は全く知らないわけであります。
 逆に私どもが掌握している事実では、日本の高齢者、たとえひとり暮らしであっても、その過半の方々は家族と暮らされるか、九五%の方は家族と暮らされるか、あるいは夫婦で暮らされるか、残りの五%の方であっても、それなりの年金を持ち、また預貯金を持ち、きちんとした生活をしていらっしゃる方が大部分である。万が一窮迫している場合であっても、そういう方については、生活保護制度が現場の実感として的確に機能していると私どもは確信をしております。
 〔6〕 事実関係が、全体が間違っていらっしゃるんじゃないかと私どもは考えております。というのは、私どもは、電気事業者、ガス事業者につきましては、これは実情を把握しておりますが、既にきめ細かな弾力的な対応をいたしております。また、福祉事務所の連絡体制につきましても、私どもが指導して、現在連絡体制を、システムをつくっている段階でございます。
 具体的に申しますと、例えば東京電力の場合ですが、これはかなり昔になりますが、電力の供給がストップをされて、ろうそくで暮らして、火事があったというような事件がございました。確かにそれは昔ありました。そういったことを教訓として、東京電力では、こういった場合については、生活困窮者の電力の供給については、仮に供給停止をする場合であっても、現場に職員が行って事情をよく把握をして、よく相談をして、機械的に日にちが来たからといって供給停止をすることは絶対しないと。具体的にはマニュアルもつくっておりますし、その指導に基づいて、弾力的な生活の確保を図っているのが実態でございます。
 また、電力の場合には、ワンアンペアブレーカーというのがあるそうですが、仮にストップする場合であっても、ワンアンペア、百ワットだけは絶対供給するということを責任を持ってやっております。ほかの、水道事業者はもちろんですが、ガス事業者についても同じ状況でございます。
 私どもは、こういった状況を踏まえて、さらに電気事業者、ガス事業者、さらには水道局と連携しながら、そういった人がもし見つかったら福祉事務所にすぐつなぐ、そういうシステムを今つくろうとしてやっているところでございます。既に水道局についてはスタートしておりますし、電気事業者、ガス事業者とも話がついている段階でございます。
 〔7〕 お尋ねの趣旨があれでありますが、私ども、別に東京電力と東京ガスの肩を持つ必要はないのでありますが、現場の実態で、絶対に機械的な供給停止はしないように、かなり前から力を尽くしてやっているわけであります。それはたまたま、ワンアンペアというのは最悪の場合の対応というだけのことであるということを、ぜひご理解いただきたいと思います。
 それからまた、そういった場合、低所得者についての対応でありますが、これは今先生みずからもお話しになりましたように、生活保護も含めて、あるいは必要な場合の生活福祉資金の貸し付けも含めて、さらには国全体での所得保障、そういったものも含めて、十分に対応できるシステムはできていると私どもは考えております。
 〔8〕 平成三年度の生活保護受給人員は九万八百八十九人でございましたが、平成十二年度の人員は十三万六千七百七十九人でございます。増加率は五〇・五%でございます。
 ただ、これは、若干二点ほどコメントをさせていただきたいんですが、この間、確かに失業率等が増大をしてきた。これと並行してといいますか、同じカーブを描くようにして生活保護の受給者はふえてきているわけでございます。このことは、逆に申しますと、いかに生活保護制度が生活困窮者に対する救済制度として的確に機能しているかということを証明しているものだと私どもは考えております。
 それから、もう一点でありますが、私が昨年申し上げたのは、こういった生活保護制度が的確に機能していると、また、現場の実態を見ても、例えば持ち家等の方であっても、機械的には決して適用を拒否しない、あるいは扶養義務調査、また資産調査につきましても、決して機械的な形での判断はしていない、こういったことで的確に運営されているという実感を持っております。
 それを前提として、私が申し上げたのは、生活保護に制度的な問題があるとか運用上の問題があるということではなくて、例えば資産を持っていて、それを取り消したくない、例えば車を持っておられて、それを売るくらいだったら保護を受けたくないとか、あるいは稼働能力がありながら働こうとはしない、あるいは生活保護をいろいろな事情があってみずからの意思で受けない、こうした理由で保護を受けてない方々が存在するという実態を申し上げただけでございます。
 〔9〕 老人福祉手当、今いろいろご説明がありましたので、私の方でもちょっとコメントさせていただきますが、老人福祉手当は、六カ月以上寝たきりの高齢者を対象として、ご本人の精神的負担などの軽減に加えて、介護に当たる家族の方への支援の一助とすることを目的として創設されたわけであります。
 介護保険制度が導入されまして、こうした寝たきり高齢者を含む介護を要する高齢者を広く対象とする在宅福祉サービスが拡充された、それによって、制度として包含されたために見直しを行ったわけであります。
 今、お話がありました入院している方、これは、現状は、老人保健施設がふえ、また、介護療養型病床群がふえた中で、現在の数字はちょっと正確にわかりませんが、平成十一年時点では、手当受給者の約四割が入院されておりました。
 ただ、お尋ねの趣旨は、こうした老人福祉手当を、入院中の方の医療的ケアに現実的に使っていたということの問題だろうと思いますが、介護保険で対応できない医療的ケアは、老人福祉手当の支給対象とする寝たきり高齢者だけの問題ではないのでありまして、本来、医療保険制度全体の中で検討すべき課題であろう、両者は別であろうと考えております。
 〔10〕 私どもは、先ほど来るるお話がありますように、経済低迷、不況によって国民所得が縮小し、雇用が悪化をする、それによって高齢者とか障害者等の方々が生活困窮に陥るリスクが拡大している、そのこと自体を否定しているわけでは毛頭ないわけであります。
 しかしながら、ほとんどの方は自立自助を基本としながら、そういう意味では自分の力で生きていらっしゃる。預貯金等を活用し、あるいは雇用保険等も活用しながら生きていらっしゃる。そういう方は、それはそれで私どもは立派であると思っております。
 ただ、問題は、確かに、真に困窮している方であります。こういった方々については、私どもは福祉事務所の対応状況等も詳しく調べておりますし、それから、現場のワーカーの皆さんにも来ていただいて、ヒアリング等もやっております。その実感として申し上げているとおり、先ほど来るる申し上げているとおり、そういった方々につきましては、生活保護制度を、東京は、ある意味では全国に率先して、きめ細かな柔軟な対応をやって、的確に制度が適用されているというふうに確信を持っている次第であります。
 〔11〕 老人福祉手当をそもそも創設した昭和四十年代というのは、国の年金手当等の所得保障政策あるいは医療保険制度等が極めて不十分であったわけであります。その後、国民年金制度も充実し、医療保険制度も改善され、さらに介護保険制度も導入された、こういったことを契機として老人福祉手当の見直しを行ったものでございます。
 また、実態としても、高齢者の方は、無職高齢者の方であっても、たしか平均で二千五百二十六万円に上る貯蓄を保有されているとか--貯蓄でありますが、そういった方々も含めて、基本的には自分の足で立っていらっしゃる。また、現実に生活に逼迫されている方は、るる申し上げているとおり、生活保護できちんと救済をしている。そういう意味で、老人福祉手当の見直しを撤回する気は、毛頭考えておりません。

ウイルス肝炎

 〔1〕 来年度予算案では、都立病院の改革マスタープランの具体化の第一歩である都立母子保健院の十二月廃止や、心身障害者ヘルパー派遣の有料化の拡大など、新たな切り捨てが盛り込まれている。慢性肝炎、肝硬変、肝がんのヘパトームに対する通院医療費助成を十月以降廃止しようとしていることも、その一つであります。
 知事は施政方針表明で、来年度予算案について、ウイルス肝炎総合対策を推進するなど、できる限りの配慮を行ったと述べたが、その片側で重大な切り捨てをしようとしていることは、都民に何ら説明していない。ウイルス肝炎総合対策というのは、具体的にはどういう内容なのか、お答えをいただきたいと思います。
 〔2〕 ウイルス肝炎の検診ですけれども、今回、国が新しく始めるものであり、これに加えて、都としても精密検診を行うことは重要な前進です。
 問題は、医療費の助成なんです。今まで慢性肝炎と肝硬変、ヘパトームは、都独自に難病医療費助成の対象とし、入院、通院とも、患者負担が軽減されてきました。それが新たなウイルス肝炎対策に取り組むという大事なときに、なぜか通院の助成は打ち切り、入院助成だけにするという。全く納得できるものではありません。患者の皆さんもびっくりして、命にかかわる問題だといって訴えています。
 共通している声は、肝炎の治療に入院の必要性は余りない、大事なのは通院治療で、それが非常に高額の医療費がかかり、しかも長期にわたる。日々の通院助成こそ生命線だということです。
 ところが、我が党が代表質問で、なぜ肝心の通院助成をなくすのかと聞いたら、答弁は、予防から早期発見、早期治療に至る一貫した推進体制をつくるというものでした。しかし、そのために通院助成を廃止するというのは、早期治療ができず、慢性化したり、肝硬変になった人は切り捨てるということになるんじゃありませんか。
 先日、私どもの控え室に肝硬変の患者さんが訪ねてこられました。週に三回通院して、強ミノファーゲンという注射を打ち、二週間に一回薬をもらい、一カ月に一回採血検査、二カ月に一回、肝腫瘍のエコー検査、こうした通院治療で肝がんに進行するのを抑えているのが、今回の見直しですべて有料になるんです。中小企業の常務取締役を務めてきた方ですけれども、昨年の秋、病気療養を理由に解雇通知を受けた人です。そこへもってきて、最近初めて通院助成の廃止を知ってびっくりした、悔しい、残念という繰り返しの後には、言葉になりませんでした。
 通院助成が廃止されたら、慢性肝炎や肝硬変の進行した方は、毎月確実に二万円から三万円の負担増が予想される。ウイルスそのものを除去する治療法であるインターフェロンの投与を受けると、三割負担で毎月三十万から五十万、八十万円という負担になる。こうした治療を続けなければ、慢性肝炎から肝硬変、肝がんへと進行していくのがこの病気の特性なんです。
 通院助成の廃止は、お金がある人は治療を継続できるが、ない人は治療を中断し、座して肝がんへの進行を待つ、そういう結果になるんじゃないでしょうか。お答えください。
 〔3〕 私は、C型肝炎治療の我が国最高の権威である飯野四郎先生、聖マリアンナ医科大の教授にお会いして、意見をお聞きいたしました。
 先生が初めにいわれた言葉が、長年かかって国がやっと動き始めたこのときに、国に先駆けて都が行ってきた医療費助成を打ち切るという、医学の流れに逆行するようなことを何でやるんですかという言葉でした。
 そして、病気の特性として入院が必要な状態はごく限られているのに、入院の助成はするが、通院助成は全部だめというのは全く理解できない、肝炎の治療には永続的に大変なお金がかかる、治療の継続のために、入院、通院の区別なく、必要な人に必要な治療ができる医療費助成がどうしても必要だと力説されました。都の見直し内容は、最高の臨床医から見て全然説得力がありません。
 そもそもウイルス肝炎は、旧厚生省がWHO勧告に従わず、注射針あるいは注射器の使い回しを長年にわたり放置してきたことや、手術の際の輸血や血液製剤によって大規模に感染が広がったものであります。つまり、あの薬害エイズと同様、患者に責任は全くないのであります。
 知事に伺いますけれども、ずさんな衛生行政の犠牲者である患者に対して重い医療費負担を強いるのは、間違いじゃないでしょうか。飯野四郎先生も指摘したように、国が全く動こうとしないときに、都が先駆けて肝炎の患者の支援に取り組んできた医療費助成を打ち切る道理は全くありません。これはどう思うんでしょうか。

衛生局長 〔1〕 来年度から実施を予定しておりますウイルス肝炎総合対策についてでありますが、四十歳から七十歳までを対象に、五歳刻みで老人保健法に基づく検診を行い、ウイルス陽性者に対しては、専門医療機関で肝臓の炎症及び病変の進行の程度を判断する精密検査を実施いたします。
 また、検診後の早期治療を促すため、新たにウイルス肝炎に対する入院医療費の助成を行うとともに、専門医と地域のかかりつけ医との連携のもと、一貫した治療ができる医療体制の整備を図ってまいります。
 〔2〕 昨年十月の外部の有識者による新たな感染症対策委員会の報告では、ウイルス肝炎についても保険診療を原則とするが、検診に続く医療を円滑に行うためには医療費の助成が望ましく、その際、入院、外来すべてではなく、治療上特に必要な内容や時期に限るべきとする趣旨の提言を受けております。
 都といたしましては、この提言を踏まえまして、医療助成のない他の疾患との均衡も考慮の上、病態の診断やこれに伴う治療方針の決定、また、病状が悪化したときなど、治療上極めて重要な入院時の医療費について新たに助成するよう再構築したものであります。
 〔3〕 ただいまお話にありましたB型及びC型肝炎ウイルスは、主に血液を介して感染いたしまして、医療行為のほか、ピアスや入れ墨、性行為などで感染するケースもございます。
 肝炎ウイルスの存在やその感染経路など、医学的知見が十分に得られていなかった時期における医療行為による感染の問題は、まず、国が抜本的な対策を講ずるべきものと考えております。
 都といたしましては、肝炎ウイルスによる感染拡大の防止を図るために、ウイルス肝炎総合対策を着実に実施していく所存でございます。

都市再生

 〔1〕 センター・コアの中で、現在、開発が進められ、あるいは計画のある主な開発、再開発の地域、面積、それから計画床面積、これはどうなっているんでしょうか。
 〔2〕 六本木六丁目再開発電波障害についてですが、大規模ビル開発は、まさにさまざまな形で都民生活に影響を与え始めています。最近、港区六本木六丁目で進められている再開発ビルの影響で、広範囲の電波障害が起き、問題となっています。環境局は、障害がどこまで及んでいるか、掌握しておりますか。
 〔3〕 我が党の調査でも、このビルによる電波障害の範囲、これが、ちょっと小さいですけれども、ここが六本木六丁目のビル、そして、東京タワーがその向こうにあります。ここからずうっと電波障害が来ています。しかし、アセスで定めた電波障害の障害の位置というのはここまでということになっているんです。わかりますね。事前の環境アセスでは、電波障害はどの範囲まで想定されていたんですか。
 〔4〕 環境アセスに当たって、障害範囲を大きく超える調査報告が出されていたが、なぜ採用されなかったんですか。なぜその時点で指導しなかったんですか。

都市計画局長 〔1〕 センター・コアは、おおむね首都高中央環状線の内側の区域をいい、その総面積は一万七千三百ヘクタールでございます。
 この区域内の事業中もしくは計画の内容が明らかになっている主な開発事業は、地区数で六十三、地区面積で二百八十二ヘクタールとなっております。
 また、開発事業、とりわけ市街地開発事業は、用地の取得あるいは権利の変換ということに権利者との調整が含まれますので、計画決定から事業の完了まで相当の期間を要するものでございます。そうしたことを考えた上での開発事業の業務だとか商業、住宅などの計画上の床面積は、八百九十二ヘクタールでございます。

環境局長 〔2〕 電波障害に対する問い合わせがございましたため、事業者に報告を求めたところ、昭島市の一部にも及んでいるということでございました。
 〔3〕 事業者から提出されました環境影響評価書によりますと、電波障害の生じる地域は、計画建築物から西へ九キロメートルまでと予測しております。
 また、予測範囲を超えて障害が発生した場合には、予測範囲と同様の適切な対策を講じることが明記されております。
 〔4〕 本年二月に、当該建築物によります電波障害に対する問い合わせがございましたため、事業者に報告を求めたところ、調査会社によります予測は、二十六キロ付近までまだら状に障害が出る可能性があるとされましたが、確実に障害が発生する地域は八キロでございましたため、事業者の判断で、評価書では予測範囲を九キロとしたとのことでございます。ただし、予測範囲を超えて障害が発生した場合には、予測範囲と同様の適切な対策を講じることにより対応することにしたとの報告でございます。
 私ども、電波障害の実態が広範囲に及ぶことを知ったのは、事業者から報告の聴取を行った本年二月でございますので、都では、報告に基づきまして、直ちに適切な対応をとるよう指示いたしました。

秋葉原のITセンター

 〔1〕 都市再生の目玉の新拠点の一つが秋葉原駅周辺です。都は、ここにITセンターをつくる目的で、都有地の売却を行おうとしているわけですが、東京の産業振興を考えるときに、IT産業の振興は欠かせない。どのようなIT拠点が求められているのか、都民の関心も非常に高いんです。秋葉原駅周辺は、かつての国鉄の跡地を含めて地区計画が立てられております。知事のいうITの拠点とは、旧国鉄用地や民間所有地も含めた構想なんでしょうか。
 〔2〕 二月の十三日に土地の買い受け者が決定されましたが、鹿島グループ企業の一社だけだった。その際の募集の条件というのは、IT関連事業の実績のある企業もしくはグループ、二つ目が、過去十年間に十万平方メートル以上のオフィス系の開発実績があること、三つ目、過去十年間に十万平方メートル以上のオフィス系の賃貸事業を三年以上継続した実績等があることが条件です。これは非常に厳しい条件なんですね。十万平方メートル以上の開発実績、賃貸実績といえば、スーパーゼネコンや大手管理会社しか対象にならない、それにITの巨大企業を加え、三位一体でそろわなければならない。しかも二カ月間という短い期間に準備をしなければならない。一般的にはとても参加できるようなものではない、みんなこういっているわけです。私たちもいろいろ話を伺いましたけれども、共通して、非常に高いハードルだというふうにいわれました。
 伺いますけれども、三街区の一は、現行の地区計画では、用途が商業・業務にあわせて住宅の建設が定められております。しかも、千代田区は住宅附置義務を定めておりますが、今回の鹿島建設グループの提案では住宅部分がないけれども、これはなぜなんでしょうか。
 〔3〕 外された住宅部分はどうなっているのか。外された住宅部分はどうなっているのか、聞かせてください。外された住宅部分はどうなっているのか。
 〔4〕 本体ITセンターに附置されるべき住宅は、昨年、二〇〇一年三月の秋葉原まちづくりガイドラインで外されたんです。ITセンターの北側に集約化されたというわけです、今の答弁ですね。ここが問題なんです。
 北側の土地、三-二街区というのは、このときは既に、もとの所有者である鉄建公団から鹿島建設に売却されている。鹿島建設は、ガイドラインが策定される四カ月も前の平成十二年、二〇〇〇年の十二月に用地を取得しているんです。当然、この地区の住宅は、土地を買った鹿島建設が建てることになっていて、既に昨年十月にはマンション計画の地元説明まで行われているんです。その土地がこれです。鹿島建設が既に買っていたもの、これです。わかりますね。千代田区の地区計画の変更も、公募買い受け者の決定の二日前だから、事態に合わせて地区計画を合わせたといっても仕方ありません。
 もともとこの秋葉原の土地には、第二東京タワーといわれる電波塔のプランがあり、幾つものゼネコンがプランを持って動いていた。この計画が立ち消えとなったのが二〇〇〇年の秋口から二〇〇一年頭にかけてといわれている。そして、ちょうどその切りかわりの時期である二〇〇〇年十二月に、鹿島建設がこの三-二街区を買っているわけです。こうした大規模開発の場合、先に土地を持っているところが勝ちだとよくいわれますが、この場合も当てはまるような感じもいたします。
 一街区及び三-一街区のビルの延べ床面積と高さというのは、ユーディーエックス特定目的会社グループの計画では、一街区のビルの床面積は四万六千六百五十平方メートル、高さは百四十二メートル、一街区。三-一街区ですね、こちらね。そして、三-一街区のビルの床面積は十三万九千百十四平方メートル、高さは九十九・九メートル、それがここですね。わかりますよね。時間がないから。一街区は、高さは該当するけれども、面積が下回る。一街区は、今申し上げたように、高さはアセスに該当するけれども、面積が下回る。三-一街区は、面積が該当するが、ビルの高さがわずか十センチ低いだけで、アセスをやらなくてもよいことになっている。ITセンターを落札したのが鹿島建設で、その部分は住宅は免除され、その横の土地は鹿島建設が取得していて--先ほどいいました--つまり、三-一街区の住宅附置分を三-二街区に移してやったということになるわけであります。千代田区の附置義務どおりにこの三-一街区に住宅を附置した場合には、百メートルを超えることは明らかです。アセス逃れではないかという批判もありますけれども、これについてはどういう指導をされたんでしょうか。
 〔5〕 公募の審査を行う事業計画審査委員会では、この問題は論議されましたか。
 〔6〕 品川駅の東口B-1地区再開発では、基準ではアセスの対象とならないビルも対象として、事業全体を対象にしてアセスをやったんですよ。秋葉原では、街区ごとに建設計画が出されていて、ITセンター一部だけではなく、ヨドバシカメラのビル計画も高さは九十九メートル、そして、こちらにある富士ソフトABC、このビルも計画の高さは九十九メートル、アセスの対象にならない。一つ一つの建物がアセスの必要条件を満たさないために、全体で巨大な建物が建ち並ぶことになるのではありませんか。アセスをしないで済まされること自体が、本来おかしな話だというふうにいわざるを得ません。
 そこで聞きますけれども、地区計画の区域を対象にした総合的アセス、これを実施すべきだと思いますけれども、どうでしょうか。
 〔7〕 九十九メーター、十センチ低くすればそれがアセスの対象にならない。しかも、そういうのが何本も建つ。林立する。しかも、何というか、一つの地区の中に集中して建つ。そういうものがまかり通るような状況だから、アセスに対してはアワセメントと、こういうふうにいわれるんじゃないですか。
 先ほどいいましたけれども、三の一街区のITセンターは、三の二街区の住宅棟を、この赤、前提にしているわけです。一体不可分のものだといわざるを得ません。鹿島建設にとって、三の二街区の住宅だけでは建ててもうまみはない。とすると、二〇〇〇年十二月に鹿島建設が三の一街区を取得した時点で、このITセンターの契約をどこが押さえるかは、既にこのとき決まっていたようなものといわざるを得ません。
 知事、鹿島建設に対して、私は特別扱いしているというふうにも思うわけですけれども、どうでしょうか。

知事 〔7〕 これは、要するに公式の周知というのは、限られた最低の時間で、しかし、許容の範囲でやりましたが、今、皆さんご存じのように、こういう経済不況の中で、ゼネコンというのは生き残るために熾烈な競争をしているんですよ、情報の収集も含めてね。その限りでは、私たちは十分にノミネートされ得るだろう企業に情報を提供しておりましたし、それなりの研究をしてきたんです、彼らも。
 しかし、この間も本会議で申しましたが、この一月に新しい技術開発がありまして、いわゆるパソコン、PCが電波でもコントロールできるような技術の開発があった。これによりますと、新しくできるビルが、電磁波に対しても防壁をつくらなかったら、中に置いてあるものが狂ったりするので、非常に大きな条件が付加されたんです。それに対応できない企業が多かったために、結局は、最後は鹿島系の一社ということになったんですけれども、これも、しかし、相対的に評価するのは易しいんですけれども、一社だけが残って、それを専門家の集合のコミッティーとはいえ、その一社が是か非かという議論をすることは非常に難しいんです、逆に。それを合議を尽くして、これを妥当として入れたわけでありますが、そういう自由競争社会の技術進展の新時代の中の経済競争というのを、共産党も少し勉強して理解されませんと、ますます、あなた、時代おくれで物笑いになりますよ、本当に。
 それから、電波塔云々の話がありました。これも各放送会社が非常にけしからぬ魂胆で、要するに、あそこにだれかに建たせよう、できたら東京にビルを、電波を建たせようということだったんですが、これは日本の特別な技術の状況、アメリカと比べて、これは必要ないということで、唐津先生が裁断されて、私たちはそれをプロジェクトから外したんです。そういう前後の事情をよくわきまえて、周知した上でひとつ物を考えて、質問もしていただきたい。

産業労働局長 〔1〕 IT関連産業の世界的拠点というのは、秋葉原駅周辺地域に限らず、秋葉原全体にIT関連産業の集積を図り、世界的拠点を形成していこうという構想でございます。秋葉原ITセンターは、このIT関連産業を集積していく上での中核施設となるものでございます。
 〔2〕 平成十四年二月十三日に千代田区の都市計画審議会から答申された地区計画においては、都有地のエリアは、商業・業務機能と文化・情報・交流機能の複合地区とされ、建設される建物に住宅を設ける必要はないこととされております。
 また、千代田区は、千代田区住宅付置制度要綱上の住宅の附置は求めないこととしており、この旨、公募時に、公募に当たっての留意点として、既に周知したところでございます。
 なお、先ほどのお話の中で、一社だけの理由とかというふうなことをおっしゃっておりましたけれども、それから、申し込みが短過ぎるというふうな話がございました。この機会に私どもの考え方を明らかにさせていただきたいと思います。
 公募期間が短過ぎるという話でございますが、私ども、公募期間の設定方法については一定の基準はなく、事業案件ごとに適切な期間を設定することになっております。ただ、公共事業の入札・契約手続の改善に関する閣議了解によりましては、四十日を超えておく必要がございます。それから、募集要綱では、締め切り期間は五十一日でございます。公募期間は約二カ月ございました。
 それから、私どもが公募期間を二カ月としたのは、民間事業者が英知を集めてプランを完成する期間として、短過ぎる期間ではないと考えてございます。なぜかといいますと、公募時に参考資料としてITセンターの機能の概要、きちっとご説明したのであります。機能別専有面積、建築物の断面イメージ図、あるいは平面図を民間事業者に対しまして示してございます。また、ITセンター機能化構想は、平成十二年十二月の秋葉原駅前の都有地を売却する旨の知事発言を受けまして設置された懇談会で検討され、平成十三年三月二十八日に発表された導入機能調査報告書で詳細に提案されていることなどの理由によりまして、私どもは十分期間があるというふうに考えてございます。
 〔5〕 アセスの基準に該当しませんので、議論はございません。

都市計画局長 〔3〕 秋葉原地区につきましては、平成十三年三月に公表いたしました秋葉原地区まちづくりのガイドラインにおきまして、改めて土地利用の方針をお示しし、その中でIT拠点の形成を盛り込むとともに、居住機能については、地区の北側ゾーンに集約することにいたしております。これを踏まえまして、千代田区は地区計画の変更を都市計画審議会に付議し、既に答申を受けておりまして、三月末に告示の予定と聞いております。

環境局長 〔4〕 高層建築物の要件でございますが、これは、高さ百メートル以上、かつ延べ面積十万平方メートル以上となっております。
 〔6〕 先ほどの品川駅の東口のB-1地区開発事業というものは、高層建築物の要件に概要する建築物が現実にあったこと、それから、駐車場台数が自動車駐車場の要件に該当すること、及び全体が地下でつながっていることなどから、一体性が強く、事業全体を対象に環境影響評価を実施したものでございます。
 今回のお話の点でございますけれども、先生もご承知だと思いますが、それぞれの建築物の間には幅二十メートルの都市計画道路がございます。構造物の一体性もなく、ご指摘の二階部分も歩行者通路でございまして、一体の建築物とはみなせません。
 したがいまして、計画変更がない限りは、条例上のアセスの対象とはなりません。

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