平成14年第1回定例会各会派討論
ネット 山口文江
私は都議会生活者ネットワークを代表して、本定例会に付託された第24号議案東京都臨海地域開発事業会計予算、第68号議案東京都近代文学博物館条例を廃止する条例並びに第157条議案費用弁償に関係条例の整備に関する条例に反対、第1号議案平成14年度東京都一般会計予算他、その他の知事提案には全て賛成する立場から討論を行います。
まず、臨海副都心開発についてです。
私たち生活者ネットワークが、この開発について問題を感じたのは、「この域内の、ごみ管路収集システムがリサイクルに矛盾するのでは」と疑問をもったのがきっかけでした。調査するうちに、このごみの管が収まる1メーター当たり数千万円もかかる共同溝の莫大さが分かり、開発全体の問題点に突き当たりました。この開発の1番の問題点は、初期の地価上昇を当て込み一挙に投資し、大規模な計画の実施が、財政的にもまちづくりという点でも、柔軟性を欠いた元々無理な計画であり、バブルの崩壊はその契機にしか過ぎないということです。この開発の危機が露呈する中で、平成9年に見直しが行われましたが、開発目標や内容の見直しという点でも、不十分なものでありました。
今回の財政基盤強化プランは、昨年の3会計統合により、バランスシートがら概ね1兆円を棒引きしたものが前提です。内容は土地処分方式は売却を原則とすること、事業費を節減すること、都の公共施設の減額問題などが柱です。しかし、今回のプランの策定では、正直な過去の問題を指摘してはいますが、都民の参加もなく開かれた形で行われなかったために、開発目標や開発内容、収支といった点においても不十分なプランにとどまりました。23区内のオフィス供給が最大となるいわゆる2003年問題、その後の年1000億オーダーの転貸債の大量還期を本当にクリアできるかどうかは立場を超えた不安要因です。機会を据えての、情報公開と計画と事業の見直しを求めたいと考えます。
次に職員の給与問題についてです。
今回、本定例会における争点として職員の給与問題がありました。さきの議員提案の背景には深刻な不況かあることは承知しています。私たち生活者ネットワークは、都の財政危機が今後深刻な状況を向かえるにあたり、都政における税金のムダを無くし、事業を見直していくことが、これまで以上に問われていると考えております。したがって、議員提案者の皆様とは基本的な姿勢が異なるといわざるを得ませんでした。
また、新たな労使合意に基づく職員給与の特例に関する条例については、自民党・公明党が共同で付帯決議を付けましたが、これについては労使合意を尊重するとしながらも、傷口に塩を塗るような行為であり、反対です。
しかし、原案に賛成の立場ですので、付帯決議付きに賛成せざるを得ません。今まで、少数者の意見は無視される傾向にありましたが、本体の案分に賛成ならば、それを明らかにする裁決方法が取り入れられるような見直しが必要です。
生活者ネットワークは、都財政や都の事業の見直しは行政評価とバランスシートを更に展開していくことが極めて重要であり、都民参加を進め、細かく事業毎に施策原価を出していくことが必要と考えます。
さらに第三者機関のチエックを担保して、事業の代替案と比較するなどして事業の徹底した見直しが基本でなくてはなりません。こうした新しい仕組みには、庁内分権を進め、行政評価制度に職員の参加を進めていくことがポイントであると考えます。このためにこそ、労使関係の安定化は不可欠であり、労働条件に関わる間題については、法的に労使協議が保証されているのであり、これを尊重すべきことは言うまでもありません。
次に、東京都近代文学博物館についてです。
都の事業の政策評価については、都民参加の視点がなく内部評価にとどまっていること等の問題点はかねて指摘してきたとおりですが、特に文化事業については、効率性や単年度の実績率などだけでは評価することが困難です。都の文化行政全般にわたる経営効率偏重型の整理・縮小の方向は、このたびの都立図書館再編計画にも明らかなように、都民の意見やニーズを反映しておらず、また都民の文化・教養を高めるための環境を整えていくという役割を、今後都はどのように果たしていくのかという点で甚だ疑間です。
東京都近代文学博物館については、都指定文化財である旧前田侯爵邸の浦洒な仔まいの中にあって、東京の近代文学者の貴重な資料を保存しつつ、同館が開催してきた文学講座・文学散歩には毎回多数の参加希望があり、小規模施設ながら入館客数はほぼ目標を達成しています。今後、運営方法の改善と活用を行うことで、その存在価値はますます高められる文化的資源であるにもかかわらず、この4月より拙速に廃止するというのは理解に苦しみます。都は、「世界に誇れる魅力ある文化都市づくり」のために、都民の文化教養の醸成と世代を超えた知的財産の継承に責任を持って取り組むよう猛省を求めます。
次に費用弁償に関わる条例改正についてです。
今回の条例改正は、旅費における宿泊などについて増額を可能とする根拠を整備するもので、生活者ネットワークは、この規定整備の必要性そのものを否定するものではありません。問題は、この改正が都議会議員の応召旅費などの見直しと併せて議論されてきたにも関わらず、見直し議論か進まない中で、いわば先食い的に実施されることです。そして、こうした内容のため、議員に関わる内容は手続として議員提案という形式で議論されてきたのにいつのまにか知事提案となりました。財政危機の中で、職員の給与のカットをお願いしている中、何故そんなに急ぐ必要があるのでしょうか。極めて疑問です。
最後に、一昨日判決が出された銀行税について述べます。
この新税は、十分な収益を挙げながら税負担をほとんど免れていた銀行業の状況に着目した税です。この提案は、地方分権一括法が成立しても、なかなか国から自治体への税財源の移譲がなされない中で、地方分権に向けた税制改革への問題提起として、都が提起、議会が同意したもので、都民の大方の支持によって制度化されたものです。
判決の詳細を検討し研究しなくてはなりませんが、都が主張する主旨が理解されなかったことは、残念であり、都が切り開いた自治体の課税自主権や創意・工夫の流れに水を差さないためにも、直ちに訴訟して、都の制度の正当性を主張していくべきと考えます。
以上を持ちまして、都議会生活者ネットワークの討論とさせていただきます。