平成14年第1回定例会各会派討論

借金依存型の財政運営は
今すぐ改めるよう要望する

大山 とも子

日本共産党  大山とも子

 日本共産党を代表して、第1号議案、「平成14年度東京都一般会計予算」ほか53議案に反対する立場から討論を行います。
 かつてない不況とリストラ、小泉政権の「不良債権早期処理」と医療改悪で、多くの都民が苦しんでいるもとで、都政に求められていることは、たとえ厳しい財政状況にあっても、自治体本来の立場に立って、都民のくらしと営業を守るために全力を尽くすことです。
 ところが、来年度予算案は「財政再建推進プラン」にもとづく、福祉の切り捨てを計画通りに進めるだけでなく、都立病院の統廃合、慢性肝炎、肝硬変、肺がんの通院医療費助成の打ち切りなど新たな施策の見直しがすすめられ、加えて、「重要施策」以外の施策には一律10%のマイナスシーリングがかけられたものとなっています。
 とりわけ、重大なことは、シルバーパスの全面有料化や老人医療費助成、老人福祉手当の段階的廃止などの福祉切捨てが、高齢者や障害者に大きな痛みをもたらしていることです。
 都は、経済給付的事業の見直しは現代の変化に対応したものなどとくり返していますが、わが党が、高齢者をはじめ都民に生活の困窮が広がっていることを具体的に指摘するなかで、経済低迷によって、「高齢者や障害者の方々が生活困窮に陥るリスクが拡大している」ことを認めました。そうしたもとで、医療費補助や福祉手当などを復活し、さらに、経済的支援を拡充する必要がいっそう高まったのは明らかです。
 きびしい財政の元でも、これらの経済給付的事業を守り抜いている全国の大都市の状況と比べても、東京都の福祉に対する冷たい姿勢は際立っています。
 これらの福祉を元に戻すのに必要な予算は、459億円で、一般会計予算のわずか0.8%にすぎません。老人医療費助成の87億円は、知事の不当性を認めた直轄事業負担金の一般財源分を充てればすぐにでも復活することは可能です。
 慢性肝炎などの通院医療費助成を打ち切ろうとしていることも、石原都政の冷たさを示しました。この問題では、議会開会中に薬剤エイズと同様に、血液製剤によってウィルス肝炎の感染が拡大したことが、マスコミで報道され、知事も責任を認めました。
 また、ウィルス肝炎の患者が、国のずさんな衛生行政の犠牲者であることが判明しました。このようなときに、都が通院医療費助成を打ち切ることなどあってはなりません。
 また、わが党の質問で、慢性肝炎に対する医療費助成件数の97%は通院がしめており、助成の打ち切りは患者の生命に関わるものであることが明らかになりました。入院助成に限るという提案の根拠は失われており、再検討すべきであります。
 「都立病院改革会議マスタープラン」の最初の具体化である母子保健院の12月末廃止という計画についても、地域医療確保の裏付けもなく、地元自治体と住民の合意もないものであり、強引におしすすめることは許されません。
 このような、自治体の福祉の根幹に関わる施策が、つぎつぎと後退させられようとしていることに対して、都庁内からも「東京の福祉はどうなってしまうのか」という危惧の念が寄せられています。
 開会日に、7000人を超える都民が、都庁を人間の鎖で包囲しましたが、福祉切捨てに対する都民の怒りは、一層広がりを見せています。
 清瀬、八王子の小児病院の廃止、村山大和保健所建設の中止、経済事務所の廃止と労政事務所の統廃合、多摩社会教育会館市民サービスコーナーの廃止など、切り捨ての多くが多摩地域に集中していることについて、多摩市長会から「異議あり」との声があげられ、東大和市議会では、都のやり方を厳しく批判する意見書も採択されました。
 あらためて、知事がこうした声に謙虚に耳を傾けることを強く要望しておくものです。
 都立大学や都立学校などの授業料などの値上げに加え、利用料金制の導入、さらには65歳以上の高齢者の利用料の有料化などの公共料金の値上げは、都民に新たな負担を強いるもので認められません。
 今議会には、都営住宅の会計を特別会計として独立させる条例が提案されています。都はすでに、都営住宅の新規建設を打ち切るなど施策を後退させてきましたが、来年度からは募集事務を含めた管理事務すべてを住宅供給公社に委託し、大規模団地での専任管理人事務所の廃止などを進めようとしており、くわえて、会計を独立させることは、公営住宅に市場原理を持ち込み、採算性を優先することになりかねないものであり、反対するものです。
 来年度予算案で、採算性や効率性をものさしに、都の施策や施設の多くが廃止や縮小に追い込まれようとしていることも、見過ごすことの出来ない問題です。
 今年度本格実施に移された「行政評価」は、すでに3回まとめられていますが、多くの事例で、事業局の一次評価では、事業の意義と役割を評価し、事業を継続するとなっていても、知事本部の二次評価では効率性や採算性が問題とされ、その多くが廃止や縮小の評価が下されています。
 多くの都民が利用し、地元からも存続の声が強く寄せられている高尾自然博物館も、昨年の行政評価で、一次評価では存続とされながら、二次評価で廃止とされた結果、今日の事態となっているものです。
 今議会の開会日に、包括外部監査を受託した代表により、採算性を優先することを都に求める発言が行われましたが、本来、自治体の仕事は、憲法と法にもとづいて、住民に奉仕することが基本であり、利潤をあげることを目的としている企業を見本に採算性、効率性のみを求めることはあやまりであることを、この際申し上げておきます。
 今年度予算案が、福祉を切り捨てる一方で、「都市再生」に大きく偏った都政運営を推し進めるものとなっていることも、あらためて浮き彫りになりました。
 知事は、投資的経費を抑制したと言いましたが、実際は、今年度の最終補正予算をあわせると、投資的経費は今年度を上回り、都債の残高も7兆円を超える規模となっています。さらに、このままの水準で都債発行をつづければ、30年後にも7兆円規模の借金が残されるというわが党の試算の正しさも証明されました。
 このような借金依存型の財政運営は、いますぐあらためるようつよく要望しておくものです。
 石原知事が推し進めている「都市再生」の問題は、国においても、「都市再生特別措置法」を制定や都市再開発の改定、来年度予算での重点化など、急速に動きを強めているものです。
 その内容は、従来型の公共事業がゆきづまり、公共事業の見直しが大きな流れとなるなかで、内需拡大のための景気対策として「都市再生」を位置づけ、都市計画上の様々な規制緩和や誘導策、さらには、民間都市開発機構をつかった無利子貸付など、いたれり尽くせりの支援を行おうというものです。形を変えた公共事業をいってもおかしくないものです。
 都政においても、「首都圏メガロポリス構想」にもとづく、都市づくりビジョンや土地利用計画の見直しなどが具体化され、来年度予算案においても、「重要施策」のうち、約6割が「都市再生」に充てられるなど、都政運営をゆがめるものとなることが質疑を通じて明らかにされました。
 また、こうした「都市再生」にもとづく大規模開発は、今議会に提案されている秋葉原ITセンター用地の低価格の売却やアセスのがれ、さらに電波障害などの問題があることをわが党は指摘したところです。
 破綻が明らかな臨海副都心開発の長期収支の見直しについて、知事は施政方針で、「全面見直し」を行ったと表明しましたが、実際は、小手先の収支の見直しに過ぎないことも明らかになりました。
 見直しの内容は、青島都政時代の97年の見直しを踏襲し、ビル開発中心の開発計画を継続するものです。しかし、現実は、土地の売却は4年かかっても、2次公募の1区画しかすすまず、東京都が「この数年間に土地は全く売れない」可能性を認めたように、土地が売れる見通しはきわめて暗く、いつ、資金ショートが起きても不思議ではない事態です。
 臨海開発をはじめ「都市再生」にもとづく、同時多発的な大規模開発が進められることになれば、更なる東京一極集中の弊害や地球環境破壊がもたらされるだけでなく、都財政を一層逼迫させるものとなることは明らかです。
 都民がもとめているのは、このようなインフラ中心の「都市再生」ではなく、都民のくらしの再生であり、地球環境の再生です。大型都市開発中心の「都市再生」は、たちどまって再検討することを強く求めておくものです。
 わが党が、予算特別委員会で提案した予算の組み替え動議は、大型開発に偏った不要不急の公共事業にメスをいれ、一般会計予算の3.1%を組み替えることで、都債の発行を抑え、切り捨てられた福祉を元に戻すことをはじめ、介護保険の減免、30人学級、雇用と営業の支援などに踏み出すものです。組み換えで示した方向に踏み出すことこそが、都民の願いに応えるものであると確信するものです。
 石原知事は、犯罪者の増大を理由に、原宿警察署建て替えにともなう大規模留置場建設を強行しようとしていますが、この問題は法に基づく冷静な検討が求められる問題だということを指摘しなくてはなりません。
 昨年1年間に、警察署の付属施設である留置場に留置された93%の人は、本来、国の留置所に設置させるべきものです。国は現在、東京拘置所の建て替えをすすめており、東京都が国に代わって「代用監獄」としての大規模留置場を建設しなければならない理由はどこにもありません。
 にもかかわらず、石原知事があくまで大規模留置場の建設をごり押しすることは、司法行政の到達点をわきまえず自白の強要など冤罪の温床となってきた「代用監獄」を永久化することを意味し、民主主義に反する時代錯誤と言わなければなりません。
 「大規模留置場はいらない」という、地元住民や地元自治体の声に率直に耳を傾け、計画はきっぱり撤回することを求めているものです。
 都職員の給与カットについて、あらためて、今年8月から1年間カットをおこなう条例案が提出されました。わが党がかねてから指摘しているように、自治体職員の給与は人事委員会の勧告に基づき、労使間の合意に基づいて決定されるというルールが確立しているものです。あらたに労使間で合意された決定については、尊重すべきであり、わが党は賛成するものです。
 しかるに、自民党と公明党が提案した付帯決議案は、労使合意を不満として、さらなる対応を強制するものであり、認められるものではなく、反対するものです。
 最後に、一昨日、東京地方裁判所が、大銀行に対する外形標準課税は認められないとして、税金の還付を命ずる判断を示しました。しかし、大銀行への外形標準課税は巨額の利益を上げながら、不良債権処理によって、欠損を計上することで、税金の負担を逃れている大銀行に課税するものであり、「担税力を適切に反映する」ものとして妥当なものであります。
 わが党は、控訴に賛成するものであり、都民が期待する当然の判決が得られるよう東京都の努力を求めて討論を終わります。

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