平成14年第1回定例会一般質問

障害者福祉の有料化や
多摩の支援削減はやめるべき

小松恭子

小松恭子(日本共産党)

障害者福祉施策

 〔1〕 深刻な不況の中、障害者は真っ先にリストラの対象にされ、二けたもの障害者が一般就労からリターンしてきた福祉作業所もあります。都の就職面接会でも、求人のほとんどは非常勤やパート。このような状況のもとで、都が行った障害者医療費助成や福祉手当などの切り下げは、とりわけ切実な痛みとなっています。
 それに加えて、都は、来年度予算案で、障害者ヘルパー派遣の有料化の拡大を打ち出しました。既に二年前、一連の福祉切り下げと同時に、週二回六時間までの無料制度が一部廃止されており、何とか在宅でと頑張ってきたが、もうこれ以上の負担はできない、施設に入れることも考え始めていますなど、悲痛な声が広がっています。
 その上さらに、住民税非課税を除くすべての世帯に全面有料化を広げようというのは、余りにもひどいのではありませんか。今回の対象は約六百人といわれますが、その影響額は、年収五百八万円の人で年に二十四万円、毎月二万円もの負担増になります。不況で夫の収入も減り、生活するだけで精いっぱい、自己負担が導入されたら利用を減らさざるを得ません、怒りと悲しみでいっぱいです、こんな声が上がっています。
 知事は、地域の中で選択できる福祉とか、新しい福祉をつくるとおっしゃりながら、次々有料化を広げていますが、その行き着く先は、収入に応じたサービスを選択するということは、お金のある人は選択できるけれど、ない人は我慢せざるを得ないという結果になるのではありませんか。
 〔2〕 障害の重い人ほど、週二回六時間の無料枠だけでは足りず、無理をしてでも自費負担をしてヘルパー派遣を利用しているのです。せめて週二回六時間の最低保障ぐらいは、当然ではありませんか。ヘルパー派遣制度は在宅福祉のかなめ中のかなめであり、障害者が地域で生活していくためになくてはならないものです。充実こそすれ、削減は許されません。障害者ヘルパー派遣の有料化拡大は、在宅サービスの充実や地域での自立を支える福祉という理念と逆行するものであり、再検討を求めます。所見を伺います。
 〔3〕 知事は、知的障害者の生活寮など、地域での居住の場を大幅に増設するとしており、これは歓迎するものです。整備促進のため家賃助成の拡充を提案します。
 人口三百三十五万人の横浜市は、生活寮を毎年ほぼ二十カ所ずつ整備しており、人口比率でいえば、都の計画の三倍以上です。都の制度との一番の違いが家賃助成です。都の家賃助成制度は、厳しい所得制限で、利用できるのは寮生のごく一部程度。都は、家賃は自己負担が原則といいますが、知的障害者の年金と福祉手当、作業所の労賃による収入では、家賃と食費、光熱水費を払うと、ほとんどマイナスになってしまい、これでは、家賃の負担ができる人しか生活寮に入れません。関係者からも、障害者が地域で自立した生活をというなら、家賃補助がしっかりしないと暮らせない、今の制度は実態と合っていないと声が上がっています。
 これに対し横浜市は、すべての生活寮を対象に、一カ所当たり月十七万七千円まで家賃助成を、運営費助成の一部として行っています。これにより、寮生の家賃は三万円ほどで、だれでも入れる生活寮になっており、それが増設への意気込みを高めているのです。
 都の家賃助成制度の所得制限を大幅に緩和するか、または、横浜市のように生活寮の運営費の一部として家賃助成を行う必要があると考えます。お答えください。
 〔4〕 生活寮に提供できる住宅やアパートがなかなか見つからないという共通の悩みへの支援です。
 生活寮など福祉のために提供してよいという土地、住宅、アパート、マンションなどを登録する公的な窓口、福祉資源登録バンクの創設を提案します。見解を伺います。
 〔5〕 生活寮に入る前段階としての通勤寮の拡充です。
 通勤寮は、養護学校卒後、知的障害者が通勤しながら就労や日常生活の必要な支援を受け、三年間で生活寮など地域での自立した生活に移行するもので、障害者本人はもちろん、家族や職場からも大きな評価を得ています。現在、都内六カ所で定員百八十五人は余りにも少な過ぎます。西武沿線を初め、空白地域が多く残されています。
 都の障害者施設緊急整備事業に通勤寮がないのはなぜか、通勤寮の役割をどう評価しているのか、今後の計画を含め、答弁を求めます。

知事 〔1〕 都が取り組んでおります新しい福祉は、障害を持つ方々を含めて、だれもが地域の中で自立した生活を送ることのできる社会の実現を目指すものであります。
 これまでの、行政から与えられる福祉ではなくて、利用者が能力に応じた適切な負担を行いながら、必要なサービスをみずから選択、利用してこそ、真の意味での自立に相ふさわしいと思います。
 新しい原則、お尋ねの心身障害者ホームヘルプサービスの見直しも、こうした観点に立って、介護保険制度の導入を契機として行ったものであります。しかし、従前の利用者の八割以上については、引き続き全額無料でサービスを受けられるものでありまして、ご指摘は当たらないと思います。

福祉局長 〔2〕 都が進めている福祉改革は、障害を持つ方も、地域の中で、必要なサービスを選択し、自立した生活ができる福祉の実現を目指しております。そのため、福祉改革推進プランにおきましては、今後、ホームヘルプサービスの大幅な拡充を行うことといたしております。
 今回の見直しは、介護保険の導入を契機として、一定限度まで無料であったホームヘルプサービスについて、能力に応じた見直しを十二年度に引き続きお願いするものであります。
 今回の見直しによっても、全利用者の八割は無料でのサービス利用が可能であり、新たに影響を受ける一割の世帯についても、収入との比較では十分負担の可能な額と考えております。
 〔3〕 生活寮は知的障害者の地域生活の場であり、利用者は、ここで共同生活を送りながら、日中は就労し、あるいは授産施設等に通所いたしております。したがって、お尋ねの家賃助成につきましては、地域生活に伴って本来、必要な経費として自己負担を原則としているわけでございます。
 都は、生活寮の運営費の助成を行うとともに、本人に経済的な事情がある場合には家賃助成を実施しており、制度として十分合理的なものだと考えております。
 〔4〕 生活寮は、ただいまお話をいたしましたとおり、知的障害者の地域における生活の場であり、設置、運営に当たっては、区市町村が密接に関与をいたしております。
 その整備に必要な土地建物の情報につきましては、不動産情報誌から地域の不動産業者まで、さまざまな媒体から十分に提供されており、具体的な設置に当たっては、身近な区市町村が地域の実情を踏まえて対応することが望ましいと考えております。
 〔5〕 通勤寮は、一カ所当たり約三十人の知的障害者が集団生活を送りながら、自立に向けた援護、指導を受けて、生活寮など地域生活への移行を目指す施設でございます。
 通勤寮は、これまで、知的障害者の自立を促進する上で重要な役割を果たしてまいりましたが、今後は、障害者がより地域に根差した形で自立生活を送れるよう支援することが課題となっております。
 このため、都は、平成十三年度に体験型生活寮モデル事業を創設いたしました。今後、モデル事業の実績を検証しながら、区市町村と連携して、知的障害者の地域生活を支援する仕組みづくりに努めてまいります。

精神障害者施策

 〔1〕 身体障害者や知的障害者に比べて、精神障害者が地域で暮らしていくための条件整備は大きく立ちおくれています。その結果、本来は地域で生活できる精神障害者の多くが、長期にわたる社会的入院を余儀なくされており、この問題の解決は重要な課題です。
 そこで、まず、精神障害者のケアは、入院医療中心の体制から地域におけるケアを中心とする体制へという国際的な理念に対する知事の基本認識を伺います。
 〔2〕 都の精神障害者社会復帰施設のあり方検討会の報告では、精神障害者のグループホームなど生活の場は、必要数に対し充足率がわずか一一%であり、緊急の課題であるとし、今後十五年間にグループホームは三百カ所を新設することを提言しました。単純計算で年間二十カ所ですが、相当数の整備を早期に推進していくべきであると指摘しております。
 ところが、来年度予算案を見ても、わずか十二カ所増設の予算しかついていません。精神障害者の社会的入院を解消するための具体的な戦略をつくると同時に、とりわけおくれている生活の場を初めとした社会復帰施設の緊急整備事業に取り組むことを求めるものです。
 〔3〕 知的障害者と重度の生活寮、重度身体障害者及び痴呆性高齢者のグループホームに対する用地費支援制度である暮らしの福祉インフラ整備事業を、精神障害者のグループホームにも適用する必要があると考えますが、見解を伺います。

知事 〔1〕 我が国の精神障害者施策においては、自立と社会参加の促進という理念のもとに、入院医療中心から地域ケア中心の施策へという流れが既に定着しております。この流れを踏まえ、引き続き社会復帰施設の整備など、必要な施策を推進していくつもりでございます。
 それから、村山大和保健所についてでありますが、今まであったものがなくなるということになりますと、地元の方々はやはり不満、不安を抱くのは人情の常でありますが、しかし、行政としては、地元の方々も含めて、より多くの都民というもののメリットというものを考えて行政の合理化をしなくてはならないと思います。

衛生局長 〔2〕 長期入院の是正を図り、社会復帰を進めるためには、地域における受け入れ体制の整備がまず必要であります。このため、都は、精神障害者社会復帰施設の重点的な整備を図ることとし、東京構想二〇〇〇の三カ年推進プランにおいて、具体的な整備目標を定めております。現在、このプランに基づき、社会復帰施設の整備を着実に進めているところであります。
 〔3〕 グループホームの多くは、家族会などの任意団体が施設を借り上げて運営していることから、都は、国基準とは別に、平成四年度の制度開始より、運営費補助の中で、居室や集会室など施設の借り上げに要する経費についても補助の対象としているところでございます。

多摩地域における都政の役割

 〔1〕 多摩地域の市町村は、これまでの格差是正の課題に加え、本格的な少子高齢化、地方分権の流れ、多様化する住民サービスなど、新たな行政課題の増大に直面しており、東京都の温かい支援を求めています。
 ところが、都が進めている多摩の対策は、支援というよりは、多摩にあるさまざまな施設の廃止や縮小、補助の削減などで、多摩地域からの撤退といわれても仕方のない状況です。
 石原知事が発表した都庁改革アクションプランや多摩の将来像は、民間や区市町村との役割分担、コーディネーターの役割への特化などの方針に基づいて作成されていますが、多摩地域でも、これらの構想に沿った施策の見直しがあらゆる分野で進められています。
 都民の反対運動が起きている都立病院や保健所の統廃合、さらには、労働者をサポートする三鷹と立川の労政事務所を初め、勤労福祉会館、経済事務所などの移管、統廃合も推し進められようとしています。
 社会教育分野でも、青年の家や多摩社会教育会館の市民サービスコーナー、都立としての高尾自然科学博物館の廃止など、メジロ押しです。多摩図書館の分館化と十万八千冊の図書の処分は、関係者の怒りを呼んでいます。
 これら統廃合、縮小の対象となっている都立施設は、ざっと数えただけで三十を超えています。市町村国民健康保険への補助の削減も、市町村財政に深刻な影響を与えています。
 本来、広域自治体としての都道府県の仕事の一つとして、基礎自治体が賄えない住民サービスを直接提供する責務があります。実際に全国の自治体では、この立場で、保健所などさまざまな仕事を提供しています。
 先日、一方の当事者である多摩市長会の青木会長にお会いしましたが、そこで出されたのは、都の施設をみんな引き揚げてしまうなんて、石原知事は多摩を東京都と思っているのか、多摩の実情を知らないのではないかという厳しい指摘がされていました。この声に率直に耳を傾けることが必要ではありませんか。
 都道府県行政としての都と基礎自治体としての市町村の役割が違うのは当然ですが、同時に、機械的に、ここまでが都、ここからは市町村と区分けすることは、現実的には無理があるのではないでしょうか。都、市町村が重層的に役割を果たす仕組みが欠かせません。東京都には、市町村が自力では賄うことが困難な住民サービスについて、補完的に、もしくは代行して実施する責務があると考えますが、知事の見解を伺います。
 〔2〕 都のやり方についても厳しい声が上げられています。今中止に追い込まれようとしている村山大和保健所も、その一つです。
 この保健所の建設に当たっては、東京都と地元市、住民との間で話し合いが積み重ねられてきた経過があります。しかも、九七年には、都が東大和市に保健所の用地を探してほしいと依頼。これを受けた市長が先頭に立って半年かけてやっと候補地を見つけ、実施設計が市議会、住民に報告までされた経過もあります。衛生局長も、昨年五月末までは早期建設を約束していたのです。
 知事、市長が承服できないといい、住民が抗議の声を上げるのは当たり前ではありませんか。違いますか。
 〔3〕 村山大和保健所の建設計画の中止の経過は、都民と地元市の東京都への信頼を根本的に裏切るものです。予定どおり建設すべきと考えますが、あわせて知事の見解を求めます。
 〔4〕 清瀬、八王子の都立小児病院の統廃合にも大きな怒りが広がっています。石原知事になってから目立つようになってきた、問答無用とばかりのトップダウン式の押しつけについて、青木市長は、市長会は都の出先機関でもないし、単なる連絡機関ではないと反論されました。
 このような多摩地域の市町村との信頼関係を壊しかねない乱暴なやり方は、都政にとっても失うことが多いとは思いませんか。知事の所見を伺います。
 〔5〕 介護保険など新たな行政需要に対応する都の財政支援も欠かせません。市町村交付金に加え、全都的な財政の水平調整など積極的な支援を行うことも考えられますが、いかがですか、答弁を求めます。

知事 〔2〕 地元自治体や関係者からさまざまな意見や要望が出されております。都としては、都保健所を二十一世紀にふさわしい総合的な保健医療戦略の地域拠点として再構築していくつもりでございます。
 今後、都と市町村との適切な役割分担を踏まえ、地域の実情に応じた施策を支援し、多摩地域の保健サービスの一層の充実を図りたいと思います。

総務局長 〔1〕 東京都が補完的に、もしくは代行して実施する責務があるのではないかというお尋ねがございました。
 改めて申すまでもなく、住民に身近なサービスの提供は、第一義的には、基礎的自治体である市町村が責任を負うのが原則でございまして、単独で実施することが困難な場合は、協議会などを用いて共同で実施していくこととなっております。その上で、都は、広域自治体としての立場から、各市町村の自立性、自主性が向上できるよう支援してまいります。
 〔4〕 その実施に当たりましては、関係局と調整するとともに、関係する市町村に対しましても、事前に説明をするなどして、理解、協力が得られるよう努めてまいります。
 〔5〕 全都的な財政の水平調整などを行うべきというお尋ねがございました。基本的には、地域間の財政力格差の水平調整機能は、国の地方交付税制度が担うものでございます。しかしながら、都といたしましては、こうした国の制度とは別に、市町村の行政水準の向上や均衡ある発展を図るため、その時々の都や市町村の状況などを十分に踏まえながら、市町村調整交付金や振興交付金を通じて財政支援に努めております。

衛生局長 〔3〕 多摩地域の保健サービスの再構築を検討する中で、保健所の建設の中止を判断したものでございます。
 今後は、地元自治体とのこれまでの経緯を十分踏まえまして理解が得られますよう、誠意を尽くして対応してまいります。

第1回定例会目次へ戻る