平成14年第1回定例会一般質問
花輪ともふみ(民主党)
行政とは、一体何をするべきで、何をするべきではないのでしょうか。
この行政の経済とか社会における位置づけ、そして行政の役割の範囲、これが今、特殊法人改革を初めとした日本の改革に問われているのだと私は思います。
確かに、戦後の復興期から高度経済成長、バブル崩壊に至るまで、行政は、日本の政治、経済、社会の発展をリードし、大きな役割を果たしてきました。しかし、今や、企業やNPO、NGOなど、民間は十分に成熟し、行政がそれまで果たしてきた役割をも担いつつあるという、そんな現実をしっかりと受けとめて、時代の変化に柔軟に対応ができる行政のあり方、行政の役割の範囲を考えるときだと思いますが、いかがでしょうか。
行政というものは、一体何をするべきで、何をするべきではないのでしょうか。この行政と民間との役割分担について、知事の所見を伺います。
知事
これはかつてといいますか、明治の開化以来、今日まで依然として続いている、もう旧態依然たる、ゆえにその効用というものを失ってきた、中央集権の官僚統制国家としての日本の国家社会においてと、現今のそういったものの本質的な変化の必要にさらされた日本とでは、おのずと意味合いが、もう違ってきていると思います。その認識というものを、国においても、都においても、みんなが持ち合うことが、まず、本当の改革を推進するための絶対必要条件だと思うのです。
例えば、日本は今、低迷しておりますけれども、結果としてはアメリカに次ぐ第二の経済国家というものを、あの敗戦の国土の中からつくってきましたが、しからば、そういう日本を出現せしめた最大の功労者は何かというと、これは通産省でも大蔵省でもない。日本の戦後の経済というものを象徴する、例えばナショナルをつくった松下さんであるとか、ソニーをつくった盛田昭夫、井深大であるとか、京セラをつくった稲盛であるとか、あるいはホンダ自工をつくった本田宗一郎さんであるとか、こういう全く官僚の手をかりずに、自分の発想で新しい製品を開拓し、マーケットも開拓してきた人たちでありまして、それに行政がただついていっただけであります。
そういう意味で、私は、現代の日本、現代の東京において、行政と民間の役割分担というのは、おのずとかつてとは歴然と違う、そういう認識をみんなが持つべきだと思います。
総務局長 ご案内のとおり、東京都は、日常の都民の暮らしを守り、活動を支えるという基本的な役割に加え、これまで公共的な立場から、採算が合わずリスクが大きいなど、民間では負担できない分野にも取り組んできた経緯がございます。
しかし、民間活動が活発化、成熟してきた今日、これまで民間では対応できなかった分野や、期待できなかった分野が狭くなっていることも確かでございます。
こうしたことから、都庁改革アクションプランで明らかにしましたように、現在の経営形態を継続する必要があるかどうかなどの観点も踏まえ、都の事業を総合的に見直しておるところでございます。
私は、空港や港や道路など社会基盤、そして公的年金、医療保障などの仕組みの構築は、行政のやるべき仕事としてやっていくべきだと思います。
しかし、経済に対しては、自由で公正で開かれた市場経済が円滑に機能するよう、しっかりと制度やルールをつくり、その監視をきちんとやる、いわば経済とか社会の土俵づくり、これが行政の役割だと考えております。
平成十二年より進められている監理団体の改善計画は、十五年度の目標達成に向け、着実に進捗しているとのこと、そのご苦労には敬意を表したいと思います。
しかしながら、この改善計画は、現状の仕組みを前提とし、財務面の改善に軸が置かれ、監理団体は、赤字でなければ、東京都に財政的な迷惑をかけなければそれでいいという趣旨を色濃く感じます。果たしてそれでいいのでしょうか。
監理団体は、建設、不動産、テナント業はもとより、駐車場、金融、清掃から自動車整備業まで、さまざまな業務に手を出して、先ほど挙げた経済の土俵に上がり込み、民間の企業の間に税金を使って同業者として割って入り、その公正な競争を阻害しているのです。
今問われているのは、赤字か黒字か、採算がとれるかとれないかではなく、どんなに赤字でも、どんなに採算がとれなくても、行政の仕事としてやるべき仕事、そして、がばがばもうかったとしても民間に任せる仕事、その線引きだと私は思います。
乱暴ないい方をすれば、監理団体の中で、もしもうかっている、そんな仕事があるならば、それはよほど民業圧迫、民間から仕事を奪っているか、または行政から公正な競争の外で仕事を丸受けしているか、どちらかだと思います。
ここで提案させていただきますが、これまでの改善の次の段階として、行政として、監理団体にやらせるべき仕事と、そうではなくして、民間でも十分できる仕事、その線引きをしっかりとし、やるべきものは責任の所在を明確にしながら進め、そうでないものは原則廃止、解体、あるいは完全なる民営化を進めていく検討を進めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
総務局長 現行の監理団体改革実施計画の策定に当たり、団体そのものの必要性や活用のメリットについて、団体の設立趣旨までさかのぼって検証しております。その結果、社会経済状況の変化等によって必要性が薄れた団体につきましては、統廃合を進めることとしており、現在、実施計画の着実な実現に努めておるところでございます。
今後とも、監理団体改革を進めるに当たっては、ご提案の視点も踏まえ、団体がやるべき仕事と民間に任せる仕事のさらなる精査に取り組んでまいります。
〔1〕 東京都民が住宅に困窮し、民間事業者が多くの住宅を供給することがまだできなかったころに、公社がその先導的な役割を果たし、量の拡大、質の向上に非常に大きな役割を果たしたことは、私も十分承知をしています。しかしながら、今、民間の住宅供給会社は十分成長し、行政がこの公社を活用する必要性はほぼなくなっており、既に新規の分譲も、賃貸住宅の供給も停止をしています。
本来であれば、この停止をした時点で、公社の廃止とか解体が議論をされるべきなんでしょうが、それをしないで、都営住宅の管理はもとより、区市町村住宅の建設、民間企業の社宅の建設、また老人ホーム、最近では都営住宅の、今挙げていましたがスーパーリフォーム、そんなものにまで手を出して、乗り出して、組織の生き残りを図っています。
特に、都営住宅の管理については、公社が今まで培ってきたノウハウを生かしてなどといっているようですが、入居事務を一部人材派遣の会社にお願いしたら、評判がよくなったという意見が寄せられたと聞いています。
そうなんです。そんなもんなんです。民間の会社では、もし評判が悪くなったら次から仕事が来なくなる、派遣社員は、来月にも仕事がなくなるかもしれないのです。だから、一生懸命仕事をするのです。そういう切磋琢磨のある緊張感がよい仕事を生み、新しい技術とかサービスを生み出すのです。
また、都営住宅の管理はいろいろ難しいので民間にはなかなか、そんな声も聞こえてきます。でも二十六万戸、予算三百二十八億円のビッグマーケットです。大きな市場です。民間がほうっておくわけがありません。
さらに、都営住宅のスーパーリフォームを初め、さまざまな集合住宅の建設にも手をつけているということを伺い、私は、びっくりしました。どれもこれも民間の建設会社でできることですよ。民間企業から仕事を奪い、公社が進出をしていく理由は一切見当たりません。それどころか、このような仕事を直接民間企業に出せば、切磋琢磨の中で大きな経済効果が生まれてくるのです。公社が独占的に、競争のないところで仕事をしていたらば、この経済効果も半減です。
また、公社の本来目的でない、建設業まがいのことをするのであれば、建築士法に基づく一級建築士事務所の登録が必要なはずですが、公社は登録をしていないですよね。都市計画局長、登録は必要と考えますが、お答えください。
〔2〕 私も、こんな重箱の隅をつつくようなことはしたくないのです。でも、何でこういう行政のプロの皆さんが、いつもは水も漏らさない皆さんがこういうミスを犯すか。これは、もともと法律に予定をしていない、予想をしていない範囲まで手を出そうとするから、こんなミスが起きるのです。
いずれにしても、住宅の不足の著しい地域において、勤労者に住宅を提供するという公社本来の目的は、皆さんのご努力で十分果たし終えたと思いますので、今、人が住んでいる賃貸部分のところはなかなか難しいでしょうから、そこのほかの部分は、ぜひ廃止を含めた議論を開始をするべきだと思いますが、いかがでしょうか。
知事のご子息、伸晃さんも、国の特殊法人改革でご苦労されているようです。東京でも、しっかりやっていただきたいと思います。
都市計画局長 〔1〕 建築士法では、他人の求めに応じ、報酬を得て設計等を行うことを業とする者は、建築士事務所の登録を受けなければならないとされております。公社は、地方住宅供給公社法によって設立された特別法人であり、地方公共団体から設計などを受託することがありますが、これは附帯的業務で、恒常的なものではなく、建築士法に基づく登録は必要といたしません。
なお、公社が都営住宅スーパーリフォーム事業を今後も受託し、恒常的に設計業務などを行う場合には、建築士法に基づく登録を検討する必要があると考えております。
住宅局長 〔2〕 公社は、中堅所得層のファミリー世帯に対する住宅供給など、これまで民間では十分対応することが難しかった分野において役割を果たしてまいりました。
今日、住宅市場を通じた、民間による住宅サービスの供給促進が強く求められるようになっている中で、公社は、新規の分譲事業や賃貸住宅の新規建設を取りやめ、今後は、賃貸住宅の既存ストックの維持更新を中心に事業を展開してまいります。
一方、都営住宅の窓口業務の一元化を図ることに伴いまして、都営住宅の管理について、都の事業の代行機能を一層果たしてまいります。
この二つの事業を今後の公社事業の柱とし、効率的に推進していくことが、現在強く求められております。そのため、公社は、今年度中に新たな経営計画を策定し、自主自律的経営の確立を最大の目標に据え、改革を推進していくこととしておりまして、都といたしましても適切に指導してまいります。
私が入手をいたしました資料によりますと、平成十一年度の局長、部長、課長級、いわゆる管理職の退職者二百七十五人のうち二百二十人、約八〇%ですね、監理団体、公益団体、民間企業に天下りしています。十二年度に至っては、二百四十二人中約二百十人、八五%以上が天下りをしています。この事実にまず相違がないか、確認をお願いします。
私も、公務員の皆さんが定年退職後再就職をしてはいけない、そんなことをいう気はありません。また、職業選択の自由じゃないかという声があるということも、私も十分知っています。しかし、どうでしょう。許認可などの仕事の面で、東京都と深い関係にある法人に天下りした場合、本来あるべき行政と天下り先との緊張関係が、制度として担保できるでしょうか。また、天下りを受け入れる側にしても、職員時代のスキルとか専門的な能力、そういうものを欲しているばかりではなくして、都庁内でのいわゆる人的ネットワーク、口きき、そういう人脈づくりが目的の場合が多いのじゃないでしょうか。
いずれにしても、この天下りに今は全く規制がない、野放し状態ともいえる状態です。これがいいとは思えません。知事、今のこの状態が望ましい状態とお考えですか。私は、公務員の人事制度そのものの改革と並行して、しっかりと規制をしていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。
総務局長 平成十一年、十二年度の就職状況は、花輪議員のご指摘のとおりでございます。職員が退職後に民間企業等に再就職することは、在職中に培った知識や能力を民間企業等において活用し、社会的に貢献できるものであり、意味のあることと考えております。
都では、監理団体から推薦依頼を受けた場合、適材適所の観点から、意欲と能力のある者を推薦しており、民間企業等については、求めに応じて退職者の情報提供を行っております。
地方公務員の場合、国家公務員とは異なり、退職後の再就職は法律で規制されておりませんが、東京都では、これまで独自の取扱基準を設け、局長級職員については、退職後二年間は、退職前五年間に担当した職務に関連した民間企業への就職を原則として禁止する、同時に、その他の幹部職につきましても、民間企業での営業活動に一定の規制を設けてございます。
今後とも、幹部職員の再就職につきましては、都と民間企業等との関係を厳正に保ち、都民からの誤解を招かぬよう適切に対処してまいります。
昨年破綻した多摩ニュータウン開発センターの破綻処理に当たっては、知事は、破綻の原因をつくった当時にさかのぼって経営者の責任は問わないという判断をされました。その理由をお聞かせください。
また、責任をとって辞職したはずの役員が、そのままほかの外郭団体に、同じ役職で横すべりをしている、こういうことを私は聞きましたが、これを望ましい状態だとお考えですか、本当にそれで責任をとったことになるとお考えですか。
そういえば、狂牛病で引責辞任をした農林水産省の事務次官が、関連の団体に天下りをした際、あの武部農林水産大臣だって激怒して、その天下りをやめさせたそうです。とにかく、このような破綻処理に当たっては、まず責任の所在を明らかにする、これが再発防止に一番効く薬だと思います。いかがでしょうか。
知事、知事が三年前当選をされて、それ以来さまざまな改革に手をつけて、私たちの心のもやもや、閉塞感、政治に対するそんな思いに、しっかりと的を当ててくれて、今の改革を進めてくれていること、私はまことに感謝を申し上げます。
しかし、本日は、石原知事なのにどうして変わっていかないのかな、おかしいのじゃないかな、そんなようなところをお尋ねいたします。
知事 あなたの信頼ゆえに、新参をもって私は軽しめるつもりはありませんけれども、この多摩ニュータウン開発センターの経済的な破綻のプロセスというものを、歴史的に認識していらっしゃるとは思わないのです。
これは、責任をあなたが問うている幹部の直の責任というよりも、やはりかじ取りというものを大きく間違った国の経済政策の余波で、この多摩ニュータウンそのものも非常に大きな打撃を受けたわけでありまして、例えば、私の親友の一人でありますけれども、名前はあえて申しませんが、あのイランと日本が組んで大プロジェクトをやっていた、IJPCの現地での二番目の責任者として、三井の化学系の会社から出向してきた友人がおりました。
これはもう、一番男盛りの十年間をあそこで費やして、結局、ホメイニの改革によって挫折し、そしてIJPC、完成の寸前に閉鎖されて、今では廃墟に近くなっていまして、日本に帰ってきた。
こういう、本当に酷暑の中で十年間苦労してきた人間というものの遇し方を、私は、三井や三菱という大きな大きなコンツェルン全体が非常に冷たいなという感じで眺めておりましたが、本当に報いられることなく、その次にあてがわれた場所というのは、一種、左遷に近いものでした。
私は、それはやはり人間社会の中で人間が予知できない、抗し切れない大きな波というものが、どこからやってくるかもわからない、そういう中で経済というのはもてあそばれる可能性もあるわけでありまして、この多摩ニュータウンに関しましては、私はやはり非常に同情的であります。この経営が破綻した原因は、厳しい経済環境の変化の中で、会社の営業の必死の努力にもかかわらず、核のテナントが相次いで撤退したためでありまして、役員は、その時々の状況に応じた判断をしてきたと私は評価します。しかし、それは、とても抗し切れるものではないくらい大きな波をかぶったわけであります。
民事再生手続で、裁判所が選任した監督委員の意見書の中でも、会社の役員が法令または定款に違反したり、あるいは悪意または重大な過失によって同社に損害を与えた事実はないと記されているわけでして、したがって、特定の役員に具体的な経営責任があるとは考えていない。しいてあるとするなら、経済の動きのかじ取りを間違った国の責任でしょう。
しかし、これは、こういう事例があちこちにあるから、いってもむなしいことであります。そういう意味で、民事再生手続を開始した際の役員は、会社が法的整理に入ったことを契機に、みずから辞任したものでありまして、これは円満退社したそういう人材を、後、人事の上でフォローするのも東京都の責任だと私は思っております。