多くの人たちは「芸能人」という言葉に、どの様なイメージを描くのだろうか。
テレビや映画に出演する。舞台公演やライブ活動などをする。ワイドショーなどに様々な話題を提供する。雑誌のグラビアページを飾る。週刊誌・写真週刊誌などにスキャンダルやシークレットな行動がスッパ抜かれるetc…。
だいたいこの様なイメージを思い浮べるのが普通かも知れない。
更に言えば、その存在と言動がいつも注目され、「華やかに時代を彩る人たち」を「芸能人」というカテゴリーの中に置いているのではないだろうか。しかし、一般的イメージの中では、芸能人と有名人はほぼ同じような世界の住人と考えられている。
この様にあいまいともいえる「芸能人」という「職業」を、東京芸能人フリー会では、会の趣旨上きちんとした線引をしている。この会の設立意図は、フリーの立場で活動している「芸能に従事するもの=芸能人」が「東京芸能人国民健康保険組合」に団体加入することによって、安心して日常の芸能活動に専念できるようにとの趣旨で設立された。
団体加入なので保険料は少なくなる。このため“自称芸能人”として加入を希望するケースも考えられるということから「芸能人」という名称を職業として使用するにあたっては、組合規約において明確にジャンル、職種分けをした上で認定している。
「東京芸能人国民健康保険組合」の規約によると「芸能人=芸能に従事するもの」となっており、そのジャンルは3部門だが内容はかなり多彩である。まず、「実演家」と認定されるのは、俳優、歌手、タレント、演奏家、舞踏家、アナウンサー、モデル、邦楽家、能楽師、演芸家、司会者、リポーター、人形劇人をはじめとした14職種。
次に、「映画、演劇、放送、イベント、コンサート、レコードおよびテープ等の制作スタッフ」として認定されるのは、プロデューサー、ディレクター、舞台監督、ステージマネージャー、演出家、タイムキーパー、衣裳デザイナーなど27職種。
また、「映画、演劇、放送、イベント、コンサート、レコードおよびテープ等の制作においてそれぞれの専門技術を提供するもの」として認定されるのは、音響技術者としては、ミキサー、音響オペレーター、音響プランナーなど7職種。映像技術者としては、カメラマン、CG製作者、字幕製作者など7職種。照明技術者としては、照明プランナー、照明オペレーターなど5職種。美術技術者としては、大道具、小道具、衣裳、かつら、メイク、スタイリストなど10職種。演出に係わる技術者としては、殺陣師、スタントマン、方言指導など6職種となっている。
3つのジャンルに、なんと76もの職種という多彩ぶりだが76職種の中には、一般人の感覚ではちょっと意外?と思える職業も含まれているのが興味深い。
かつて芸能人は、映画会社やレコード会社の専属として活動することが多かった。
それらの産業は専属契約というかたちで芸能人たちと様々な雇用契約を結んでいた。しかし、時代の推移もあり、彼らとそうした雇用契約を結ぶことは少なくなってきた。このため、フリーという立場で芸能活動を送るようになった芸能人は、その身分が非常に不安定なものとなった。芸能人は仕事の性質上収入の格差は大きく、健康を害することは即失業ということにもなりかねない。フリーの立場でいる芸能人にとって、健康を害したときに安心して医療を受けられる健康保険の存在は欠かすことはできない。
「東京芸能人フリー会」の前身は「東芸国保フリー会」といい、昭和50年に発足。当初は芸能人が国保に団体加入することを主目的として活動していたが、平成12年、新たに「特定非営利活動法人(NPO)」として正式にスタートした。
NPOとして新たな活動を展開していこうと考えたのは、「現代社会の中で芸能という仕事の原点が薄れてしまったのではないかと考えたからです。社会のニーズに対して、どちらかというと『受け身』で対応しがちな芸能人ですが、みんながそれぞれの分野で自らの意志をもって社会に貢献していくことによって、芸能の振興に役立つはずと思い至ったんです。それと、人間を大切にする社会は、芸能を大切にする社会でもあると!そういう意味でも会がNPOとなることは時代の流れに沿っているといえるでしょう。当会ではNPO活動に興味や意欲のある方は、誰でも運営委員として入会できますのでぜひホームページを見ていただきたい」と運営会員で自らも作曲家でもある石川さんは訴える。
東京芸能人フリー会は、平成11年から森繁久彌氏が初代理事長を担当。
NPOとして活動を展開するにあたって、12年4月からは2代目理事長として淡島千景氏が就任。初代理事長は相談役として会の運営を支えていくこととなった。淡島氏は昭和30年、森繁久彌氏との共演による「夫婦善哉」での第6回ブルーリボン賞の受賞をはじめ、様々な賞を受賞するとともに叙勲も受けている。淡島氏は理事長就任以前から、会のミーティングに積極的に出席するなど熱心に会の運営をバックアップしてきた。
NPOとなった平成12年からは、自治体や公共団体、福祉法人、あるいは他のNPOからの依頼によるイベントに加え、自主的にチャリティコンサート、施設訪問、シャンソン教室などの趣味の教室開催、パフォーマンスの提供、公演活動、映画上映会、芸能の提供・指導育成など積極的な活動を実現してきた。
チャリティコンサート『地球人として』では、当日の成果が大きかったということにより、制作を担当した会と出演者で理事でもあるシャンソン歌手の律彩子氏にコンサート主催者のハンガリー・フリーワールドから感謝状が贈られた。
平成13年になってからも「琵琶演奏会」「アコーディオン演奏会」「安達典生コンサート」「クァルテットの楽しみ」「邦楽に親しもう-清元の楽しみ」などのコンサートをはじめ「語り劇・朗読芝居-童門冬二の世界」「世界腹話術の祭典」「チャリティウォーキング」など、様々なチャリティイベントの企画・後援・主催を実現するなど、その活動の範囲はますます多岐にわたってきた。
会では、社会および自分自身に向けて、社会的に意義のある活動を、行政指導ではなく、自分たちの発想と自主性によって行っていくこと。芸能人にしかできない能力を生かして社会貢献し、積極的に自己活性化を図ることを大きな目標として掲げている。
また、NPO法人になることによって、ボランティア活動に意欲のある人が参加しやすくなったので、今後は災害地に対するチャリティイベントや健康問題に関するセミナーなど、芸能人ならではのボランティア活動も新たなメニューに取り入れていきたいとも。
東京芸能人フリー会では、芸能・芸術の真の楽しさ、面白さが多くの人々に理解されることによって、人生や世の中がもっと明るく楽しいものになることを祈念しているという。