ごみ処分場建設を目的とした全国初の強制収用が、今月一〇日に迫っている。しかも、その対象は処分場の安全性の確認を訴えてきた、市民運動のトラスト共有地だ。強行すれば、市民運動を敵視した強制収用として、初の事例となる。
日の出町の問題は、土地収用が問題でなく、「処分場の安全性確保」が問題である。基準値かどうかではなく、安全性である。知事から聞きたいこの問いかけに、知事は議長の指名を疎んじて席を立とうとしなかった。基準値内だと局長に繰り返させただけで本会議が終わったことに落胆した。その二日後の記者会見でも「地域の人間の言うことを全部聞いていたらどうにもならなくなる」「代案がない」などと言っている。
「代案がない」と言うが、そもそも知事は立候補した時に、「ゴミ問題の基本はゴミを出さないこと。リサイクルの充実や、デポジット制の導入、分別の徹底などすぐにもできることは沢山ある」とトラスト運動のアンケートに答えているのである。
「存在しない」といったデータを後に公開した処分組合の対応に多くの市民が不信感を募らせ、その後トラスト運動は全国的な広がりを見せた。いくつかの裁判を経て、ようやく公開しはじめた排水の水質データも、安全性の確認には程遠い内容だった。
記者会見で知事は「就任前のこと」であると、この問題に逃げ腰であることを恥じる様子もない。日の出町の問題は、本当に就任前の問題なのだろうか。谷戸沢処分場(第一処分場)周辺の水質は年々悪化しており、二ツ塚処分場(第二処分場)の周辺でも水質の悪化が指摘されている。深刻な事態を招きかねないことに気づくべきだ。
ディーゼル・エンジンの排気ガス規制、都心部のロード・プライシングなど、就任直後から大胆な施策を発表してきた石原都政の環境問題に関する取組は、バック・ギアにシフトしたのだろうか。会期直前の九月十三日、有明貯木場跡の埋立工事をはじめた。多摩川上水の環境も、理不尽な放射五号線の計画変更によって損なわれようとしている。これからも、かけがえのない都民の自然を守る運動を続けていく。
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