私は、日本共産党東京都議会議員団を代表して、第二三四号議案、特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例ほか六議案に反対する立場から討論を行います。
二三四号議案、及び二三五号議案は、シルバーパス交付を区市町村事務から外す条例改定です。
そもそも無料が原則のシルバーパスを全面有料化し、住民税課税者から、税の年額が約四、〇〇〇円という、均等割のみの場合でも二〇、五一〇円の高額料金を徴収、もしくは段階的に五、〇〇〇円ずつ引き上げる制度変更は、シルバーパスの本来の趣旨の高齢者の社会参加促進の役割に逆行するものです。そのうえシルバーパスの事業主体を東京バス協会に変更したことで、今後、行政がパスの発行事務から手を引いてしまうことは許されません。事実、今年も区市町村は発行場所の確保など膨大な事務を引き受けて、ようやく九月の一斉交付を乗り切ることができたのです。
それでも発行窓口では、発行初日から列ができ、何時間も待たされるなどの事態が起こりました。
さらに保谷市では、対象者の一八%が希望調査段階で辞退しています。実際に取りに来た人はさらに減少したと考えられます。
この経過を見れば、シルバーパス交付への行政責任は明確です。
このようにシルバーパスだけでなく、石原都政が推進した、福祉手当などの切下げが実施時期を迎え、いよいよその痛みが高齢者や障害者、都民を苦しめはじめています。そのうえ介護保険の利用料・保険料の重い負担は、深刻な問題となっています。
重すぎる利用料負担などにより介護サービス利用が伸び悩み、このままでは事業者の撤退や施設の閉鎖などが広範囲に起きかねないなど、制度の根幹にかかわる深刻な問題がテレビ、新聞でも相次いで報じられているのが実状です。
その中で多くの自治体は、住民の福祉を守る立場で懸命の努力をしています。厚生省の四月の調査によると、全国で保険料の減免が一四一自治体、利用料軽減が二四七自治体で実施されています。こうした自治体は、保険料徴収の開始に当たり、その後、さらに増えているのです。
ところが都は、「必要なサービスを利用料負担が抑制しているとは考えていない」などと現実離れした認識で、利用料減免を国に要望することさえ拒否しました。
保険料の減免は、大阪市が実施に踏み切り、多摩市長会が都に実施を要望しているにもかかわらず、応えようとしないばかりか、「一定の所得階層を対象として一律に保険料を免除することは、法の趣旨に照らして適当でない」などと、自治体に圧力をかける厚生省と同じ立場を表明したのです。
また介護保険実施と石原知事が推進した都加算補助および公私格差是正事業の廃止により、都内の六割以上の特別養護老人ホームが、「利用者サービスが厳しくなった」との回答をよせている独自調査の結果を明らかにして、支援の拡充を求めましたが、石原知事は現状を直視しませんでした。
今定例会を通して浮き彫りになったのは、都民福祉を守るべき自治体としての責務に背を向けた、石原都政の冷たい姿であります。
わが党は改めて、介護保険の改善のため、都として全力を尽くすこと、さらに老人福祉手当の段階的廃止・削減をやめ、介護保険の欠陥をとらえるよう拡充すること、マル福と障害者の医療費助成、福祉手当などは、元の制度に戻すことを強く求めるものです。
今定例会に条例提案された精神障害者都営交通乗車証は、精神障害者と家族の皆さんの運動はもちろん、わが党も一貫して要求してきたことが実現したものです。
今回一〇〇〇円の手数料負担が条例に盛り込まれたことに対し、関係団体から、身体・知的障害者と同じ、手数料なしの無料乗車証制度としてほしいとの要望が出されたのは当然です。わが党はこの立場から、手数料を削除する旨の修正案を提出したものであります。
今定例会で問われた重要な問題のひとつが、石原知事が発表した「東京構想二〇〇〇」及び「都政改革ビジョン」の中間のまとめが示した、今後の都政運営の方向です。
「構想」と「ビジョン」の特徴は、東京の福祉を民間の市場原理にゆだね、サービスの有料化をいっそう推進していくなど、都が福祉から大きく手を引いていく一方、「東京圏メガロポリス構想」の名目で、都心再生や業務核都市、さらにはそれを支える三環状道路など、首都圏規模での大規模な開発を集中的に進めようとするものであることです。
また、わが党が、大きな流れとなろうとしている公共事業の見直しを求めたのに対しても、知事は根拠もなく「硬直化した考え」などと答えるのみで、「臨海開発」などの誰の目にも破たんが明らかな開発を見直すことについて、省みることすらしませんでした。
このような方向は、福祉、くらしを守る自治体の魂を投げ捨てるものだけでなく、都市の環境を悪化させ、都財政にも取り返しのつかない打撃をあたえるものであることを重ねて指摘しておくものです。
この点で、有明北地区の埋立ては、エドハゼなどが生息する貴重な自然を破壊するとともに、都財政に新たな負担を負わせるものであり、埋立工事を直ちに中止すべきであることを、この際申し述べておきます。
また、「構想」が、都民が希求している首都東京の平和の確立という視点を欠落させていることも重大です。米軍横田基地の返還は都民の共通の願いであり、都政の重要課題の一つとして位置付けられてきたにもかかわらず、棚上げされ、官民共用にすり替えられているのです。
わが党は、このような路線の具体化を許さず、都政に地方自治の立場を取り戻すために全力をつくすことを表明しておきます。
さて、西東京市の設置条例についてですが、わが党の基本的立場は、住民犠牲を押しつける合併は反対であり、あくまでも住民の参加と合意形成を基本にすべきであるというものです。
ところが、田無市と保谷市の今回の合併は、住民投票の結果をみても、まだまだ住民の合意が十分に形成されたとはいえないのが現状です。また、合併記念施設に一〇〇億円もかける問題や、合併の一年後には下水道料金や国民健康保険料の見直しも予定されているように、合併が必ずしも両市民のくらしや福祉の向上に結びつかないことも想定されます。
わが党は、今後も合併によって市民サービスが後退することのないように、市民のみなさんと力を合わせていくものです。
長期化する三宅島島民の避難生活の支援・復興は、都が何をおいても解決に当たらなければならない緊急課題です。
石原知事は、今定例会で三宅島避難者の対策について、「可能な限りの対策を講じている」といわれましたが、現実は、わが党が指摘したように、生活費の支給や融資の返済猶予に都が冷たい姿勢を取り続けたり、雇用など有効な対応がとられていないものなど、都の対応は立ち後れていると指摘せざるを得ません。
また、わが党の提案に対して、知事が「被災者生活債権法」によって確立していると答弁された個人補償についても、同法が適用されるのは、全壊家屋であり、しかも一定数の被害が前提とされているもので、三宅島には該当しないことをあらためて指摘します。
避難生活の長期化のもとで、これから寒い時期を迎えようとしています。都はこれまでの枠組みにとらわれず暖かい支援の手を差し伸べることを求めておきます。
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