21世紀への都民仲間
身近な「最先端」で活躍する人

ピアニストからピアニスターへ。音楽の世界をボーダレスに遊ぶHIROSHIマジックは無限大。

ピアニスタ-HIROSHIさん1枚目

5歳で出会ったピアノに夢中

 スポットライトの中央で、タカラジェンヌのようなゴージャス衣裳に身を包んだピアニストがピアノの前に座る。そして、優雅にショパンの名曲のフレーズが始まる。すると、いつの間にか、都はるみの”あのメロディー“がジョイントしている。あまりにも唐突でしかも自然にピアニストの両手から奏でられる音楽には違和感を感じている間もない。気が付くと観客は、その「摩訶不思議ワールド」に引き込まれてしまっている。

 ピアニストの名は「HIROSHI」。

 最近話題のピアニスト、いやピアニスターである。クラシック界初まって以来のエンターティナーといわれ、女性を中心に人気急上昇中のHIROSHIさん。演奏中のドラマチックな異才ぶりに加え、演奏の合間の洒落たトークは、ナイーブでデリカシーにあふれ、あたたかな人柄を感じさせる。

 最近の女性は、男性でありながら同性のような親しみと安心感を持てて、仕事のことやファッションのこと、プライベートなことなどを、気軽に話し合える知的男性を友人に欲しいと願うそうだが、HIROSHIさんのキャラクターは、まさに、そんな女性たちのわがままな感性にフィットする柔軟なセンスを感じさせる。音楽の才能プラスアルファもHIROSHIさんならではの魅力であるのは確かなようだ。

 HIROSHIさんがピアノに出会ったのは5歳の時だった。ピアノは5歳の少年の心を瞬く間にとらえ夢中にさせた。ピアノに向かってさえいればご機嫌で、「男の子らしく野球でもやっていてほしい」と願う両親をやきもきさせたという。そんな両親の心配をよそに、HIROSHI少年はピアノの腕をめきめきと上げ”天才少年“の名を欲しいままにした。が、ピアノ教室の仲間からは”シカト“された。

 なにしろ聴いた曲はすぐに弾くことができたし、みんなが苦労した宿題や課題でもいともカンタンにやってのけていたのだ。少年にとって音楽は楽しい遊びそのものだった。

「小さい頃から、いわゆる流行歌などをアレンジして弾いたりしていましたから、変わった子どもだったようですね。クラシックをお勉強している子はあまりそんなことしないですから。でも、大好きなものに早く出会えるのは素敵なことですよ。自分が楽しいと思うことを中心に人生を考えていくことができるし、子供時代を幸福な思い出で彩ることができます」。


子供の可能性は無限
親の思い込み早期判断はダメ

ひとつの才能を絶対視しない

 「子供の頃、両親に連れられて、はじめてSKDの舞台を見てから、ショーの華麗な世界に魅せられてしまって。それからはミュージカル、バレエ、オペラ、演劇と舞台の上で繰り広げられる夢のような美しい世界のとりこになってしまったんですね。子供の頃の感動体験って、その後の人生に大きな影響を与えますからね。人間が美しいものに感動している時というのは、脳からアルファ波が出ていて、精神的にも身体的にもとてもよい状態だそうです。人間って、自分が幸福だとみんなも幸福になってほしいと当たり前のように考えるものでしょ。つまり、美しいものに感動するということは、世界中の人たちが幸福であったらいいと素直に願える心を、引き出してくれる効果もあるのではないですか」。

 美しいものに素直に感動できる心が、子供の心の中に自然に育ってくれたら嬉しい。「平和を望む気持ちと美しいものを愛する心は一緒!」とHIROSHIさんは言う。そうした点で音楽は、子供の中に美しいものに感動する心を育ててくれる、もっとも身近で手軽な存在であるとも。

 「最近、絶対音感という才能が注目されていますが、お母さんたちに誤解されているのでは?と思うことがあります。絶対音感というのは音楽のひとつの才能ではありますが、これで天才演奏家になるかというとちょっと違うんです。たとえば天才といわれる演奏家でも、この絶対音感が100%あるとは限らない。絵の世界でいえば色彩感覚が非常に優れているというのと同じことです。色彩感覚が天才的だから画家としても天才的かというとこれが違うんです。わが子に絶対音感の才能が発見されたから、これは天才ピアニストかバイオリニストになるに違いない!と子供のオシリをたたいて何が何でもレッスン、レッスン、と躍起になるケースが増えてきていると聞くと考えさせられてしまいますね。あまりにもひとつの才能を過大視し過ぎた結果、かえってその子供の持っている他のいいところを見逃してしまうことにならないかと心配になります」。

ピアニスタ-HIROSHIさん2枚目 ピアニスタ-HIROSHIさん3枚目

自分らしさの表現には
徹底してこだわっていきたい

華麗なショーが大好き

 ピアニスターHIROSHIといえば、クラシックと演歌の同時演奏とともに「あのゴージャス・コスチューム」が注目の的だ。
 「もともとお洒落は大好きで、子供の頃から学校に行くとき、毎朝鏡を見ながら何を着ていくかにとてもこだわっていました。それと、華やかなショーを見て育ったこともあり、舞台衣装のきらびやかさには心ひかれていました。でも、自分を表現することのひとつとしてどんなスタイルがもっとも自分らしく、また、観客の皆様にも楽しんでいただけるかはずっと考えていました」。

 あれこれ悩みながらも、自分が好きなブランドやデザイナーの作品を選んで着ていたHIROSHIさんだが、それだけではインパクトに欠けるので、その服にラインストーンやチュールのブーケをアレンジしてもらっていたそうだ。

 「当初から、舞台で映えるいろいろなアイデアを考え、工夫してくれて、『ファッションにおける自分らしさの表現』みたいなことをいつも相談していた、友人でビオラ奏者の徳澤姫代さんが、今では専属デザイナーになってしまいました。彼女も音楽家ですから、どんなにデコレーションしても、基本的にはピアノを演奏しやすいスタイルを考えてくれます。舞台で白いフレームの眼鏡をかけるようになったのも、彼女のアドバイスがヒントになりました。このスタイルが定着したのは7、8年前だったでしょうか…。志茂田景樹さんご用達だったブティックもマイブランドにしていました。ゴージャス・ファッションのパイオニアでもある三輪明宏さんのセンスも参考になります」。

ピアニスタ-HIROSHIさん4枚目

時代の評価に流されないで

 「ずっと同じことをやっていただけなのに、マスメディアの目に触れるというか、時代のニーズや照準にピタリとはまったものと、そうでないものとはとんでもなくスゴイ違いがあるということを、最近、実感しています。才能や能力は時代によって評価が変わるものですけれど、昔から知っている芸術家や周囲の音楽家で『類い希なる才能』を持った人はたくさんいます。でも、そういう人が世間的には不遇だったりすると、今の自分はたまたま恵まれているけれどこれでいいのかしら?と考えてしまうこともあります。音楽が大好きで同じことを続けてきただけなのに、何らかのきっかけで偶然スポットが当たった。きっと可能性やチャンスは誰にでもあるんだと思います。プラス、幸運の女神のバックアップがあるかどうかで、人生って大きく違ってくるのではないでしょうか」。

 以前は、いわばマニアックな人たちの間での特権的「お楽しみイベント」のニュアンスが濃かったライブやコンサートに、今では「いろいろな人たちが楽しみにして来てくださるようになりました」。チケットの売れ行きも比べものにならないくらい違うという。

 「嬉しさと、少しの戸惑いを感じますが、これからも時代の評価や流行に流されないように、冷静に自分を見つめて、音楽の楽しさをジャンルにとらわれず追求していきたいですね」。

 その穏やかな表情のなかに、クラシックのジャンルをはるかに超え、大衆のエンターテイメント界のスターとして注目されている存在感ときらめきを感じさせながら、ピアニスターHIROSHIさんはリズミカルに語った。

ピアニスタ-HIROSHIさん5枚目
21世紀への都民仲間
HIROSHI DATAFILE
ピアニスタ-HIROSHIさん(練馬区在住)
1961年 東京に生まれる。
1983年 東京芸術大学理科卒業。
在学時よりリチャード・クレーダーマン曲集や月刊キーボードマガジンやショパン等の音楽雑誌に執筆。同時に編曲活動を開始。クラシックからロック・ポップス・歌謡曲までジャンルを問わない幅広いスタイルをこなせるピアニスト、キーボディストとしても活躍。学生時代から文章を書くことや話題づくりは得意。卒業後はピアノ研究家・大村典子氏とのコンビによる公開セミナーや共同執筆も。94年頃からエンターテイメントとしての現在のスタイルをスタート。
東京でいちばん好きな建造物
上野公園の奏楽堂
東京でいちばん好きなアウトドアスペース
上野公園
外国に自慢したい東京の魅力
治安のよさと街の清潔感
東京を代表すると思う食べ物を3つ
本郷-藤村の白ようかん 
浅草-舟和のいもようかん 
神田-まつやのそば
東京に暮らして心配に思うこと
  1. 不燃ゴミの問題。要らなくなったものを捨てようと思っても、その後、環境的にどうなるかと考えると捨てることできずウチのなかは狭くなるばかり。
  2. やはり生ゴミの問題。ゴミの日のカラスはスゴ過ぎる。カラスにも命があるので、そのあたりにも多少配慮してカラス対策を何とかしてほしい。基本的には、なるべくゴミを増やさない方法を考えなくてはならない。(食べ物を無駄にしないこととか)
  3. 介護保険の問題。介護保険の話でいい話を聞いたことがない。また、認定の点も問題がある。知り合いのお年寄りで普段は車椅子生活なのに、認定の日にだけエラく元気になって「歩けます」とか「あれも、これも自分でできます」などと答えてしまい、家族たちはとても困ったという。お年寄りのことを本当に理解できる人に認定してほしい。介護保険の問題は高齢な親を抱えたわが家にとっても切実な問題です。

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