監査委員を代表いたしまして、過去一年間における監査結果の概要について、ご報告申し上げます。
昨年の都政は、引き続く深刻な財政危機の中、財政再建推進プランに基づき、内部努力等の様々な取組を実施してきました。
また、都は、「東京構想二〇〇〇」をまとめ、今世紀の前半を視野に入れた将来のビジョンを明らかにし、情報ネットワーク社会への対応に向け、積極的に施策を展開していくこととしています。
私たち監査委員は、この様な都政を取り巻く状況を念頭に置き、都の事業が適切な規模、内容をもって、効率的、効果的に運営されているかどうかに留意しつつ、予算が適正かつ効率的に執行されているかについて、各種監査を実施してきました。
その結果、予算及び各種事務事業は、全体としては適正に執行されているものの、一部に是正・改善すべき事項が見受けられたので、合計一六二件の指摘をするとともに、三一件の改善・要望等の意見を表明した次第です。
以下、事例を挙げながら、監査種別ごとにご報告申し上げます。
財務監査
財務監査は、財務に関する事務の執行及び経営に関する事業の管理について、年一回定例的に実施するものです。平成十一年度執行分については、本庁の一五二部及び三〇四か所の事業所を対象とし、また、重点監査事項として、経費の節減とともに、環境マネジメントの視点をも踏まえて、「印刷物作成経費」を設定し実施しました。その結果、一九局に対し、合わせて七八件の指摘をするとともに、九件の改善・要望等の意見を付しています。
(重点監査事項)
部内の複写機でコピーをした方が経済的であるにもかかわらず、印刷を行っているものや、印刷原稿の誤りにより、再度印刷を行っているものなど、印刷物の作成が適切に行われていないもの、二九件を指摘しました。
(収入関係)
固定資産税・都市計画税を減免していた二件の家屋について、減免の適用対象とならなくなった後も減免し続け、その額が合計二八五万余円に達していたものなど、都税等の収入の確保に適切を欠くもの一六件を指摘しました。
(支出・契約関係)
所有施設の下水道料金に関し、集中冷房設備用としての冷却塔から蒸発する水の相当分を申告すれば、下水道料金が軽減されるにもかかわらず、申告を行わず過大に支払っているものなど、事務処理に適正を欠くものや、経済性・効率性の面で問題のある業務運営が行われているもの、合わせて二一件を指摘しました。
(財産の管理等)
雨水貯留槽に集水した雨水をトイレ洗浄水として活用することとしていたが、雨水を全く利用していないものや、取得した財産の価額が誤って台帳に記載されているものなど、十二件を指摘しています。
さらに、特定の相手方と二七件の特命随意契約を締結しているが、特命とする理由に乏しいことから、契約方法の見直しを検討するよう求めたものなど、合わせて九件の改善・要望等の意見を付しています。
随時監査
随時監査は、社会動向や都政の状況に即応した機動的な監査を行っていく必要性から、随時実施するもので、平成十一年度においては、「貸付金の管理」と「特別区へ移管される清掃事業」の二件について監査を実施しました。
(貸付金の管理)
育英資金貸付条例に基づく奨学金の貸付けについて、期限までに返済されていない金額が多額となっているにもかかわらず、連帯保証人に対し返済の請求を行った事例が見受けられないものなど、一六件を指摘したほか、意見・要望事項を一件付しています。
(特別区へ移管される清掃事業)
公有財産の管理や工事の施工方法の選定に係る問題点を七件指摘し、早急に解決を図り、事務移管が円滑に行われるよう求めました。
工事監査
工事監査は、都の施工している工事について、技術面を主眼にして定期的に実施しているものです。今回報告するのは、平成十一年度第三回工事監査分で、四六二件、一、九六〇億余円の工事を対象として監査しました。その結果、新海面処分場Cブロック南側護岸建設工事における一部の積算で、単価の適用を誤ったため、積算額が約四二四万円過大となっているものなど三件を指摘しています。
以上、財務監査、随時監査及び工事監査について述べてきましたが、これらの監査にて指摘した収入不足や不経済支出の金額を合計すると、三、五五二万円となっています。これらの指摘事項については、各局にて、早急に是正・改善するよう求めているところです。
行政監査
行政監査は、特定の事務事業がその目的を十分に達成しているか、効率的な事業運営が行われているかなどを主眼として、事務の執行について監査しているものです。
平成十二年度においては、二回目の試みとして、前年度に引き続き、全庁的に横断して実施されている事業をテーマとすることとし、「東京都監理団体への委託事業について」を対象に、委託の効果、委託に当たっての都の責任のあり方等の観点から監査しました。その結果、スポーツ体育施設における健康体力相談等の委託について、事業に要する直接経費が利用料金に比べ多大なものとなっていたものなど、二五件を指摘するとともに、事業を受託している団体が、その事業を再委託している事例において、局が委託している金額と団体が再委託している金額との差が高額となっていることから、委託契約のあり方について検討するよう求めたものなど四件の意見・要望事項を付し、現在の厳しい財政状況を踏まえ、適正かつ効果的・効率的な事業の推進に努めるよう求めています。
財政援助団体等監査
財政援助団体等監査は、都が補助金等の財政援助を行っている団体、資本金の四分の一以上を出資している団体などが、財政援助等の目的に沿って、事業を適正に執行しているかどうか、また、団体の所管局が団体への指導監督を適切に行っているかどうかを主眼として実施しているものです。今回は、平成十一年度の後半に実施した、一七五の団体及びその所管局に対する監査について報告します。
主な指摘事例では、私立学校経常費補助において、雇用契約書、出勤簿等の記録がない職員を、本務事務職員として申請しており、その結果、補助金額が過大となっているものなど、一部の団体及び所管局に一八件の指摘をするとともに、補助事業に係る事務処理の方法や出資団体の経営状況等に関して、三件の意見・要望事項を付しています。
平成十一年度決算審査
決算審査は、歳入歳出決算書等について、知事からの依頼を受け、決算計数に誤りはないか、予算執行が法令に従って効率的に行われているかなどに主眼をおいて審査を行うものです。
審査の結果、出納長所属各会計については、出資に関する権利二五六億余円が財産に関する調書に登載されていないなど、一五件の誤りを認めましたが、これを除いたほかの計数については誤りのないことを確認しました。
また、普通会計の執行状況全般について、実質収支では二年連続して赤字になるとともに、経常収支比率も一〇〇%を超えて、更に財政の硬直化が進行するなど、厳しいものとなっていることから、さらなる施策の見直しや内部努力の徹底などの財政構造改革をより積極的に推進する必要があるなどの意見を付しました。
さらに、個別の事業について、土地処分収入の収入率が低調な相原小山開発事業について、処分方法の見直しを図り、一層の土地処分促進に努めるよう求めるなど、八事業について意見を付しました。
公営企業各会計については、審査に付された決算諸表は、当該会計の経営成績及び財政状態を適正に表示していることを確認しましたが、臨海副都心開発事業会計について、累積赤字が多額で、経営が厳しいことから、経営の健全化に向け、一層効率的な事業運営に努めるよう求めるなど、五会計について、意見を付しました。
住民監査請求
住民監査請求は、住民が執行機関や職員による財務会計上の行為に、違法又は不当な行為があると認めるとき、監査委員に監査を求め、必要な措置を講ずることを請求するものですが、この一年間に二二件を処理しました。請求内容の内訳は、職員の給与や工事費などの公金支出に関するもの一九件、その他三件となっています。
その結果は、違法・不当とする請求人の主張には理由がないことから棄却したもの十三件、地方自治法に定められている住民監査請求の要件を欠いていることから、監査を実施せず却下したものは八件、請求人の主張に理由があると認めて、措置すべき事項を執行機関に勧告したものが一件です。
その一件は、国立市立小中学校の教職員が適正な手続をとらずに時間内組合活動を行っているとして、当該時間分の給与の返還などを求めた請求について、この事実を認め、損害補てんの措置を講ずるよう勧告したものです。
以上、監査結果について述べてきましたが、執行部局においては、これら監査結果に十分留意し、今後の事務の適正かつ効率的な執行に、一段の努力を望みます。
なお、平成一〇年度及び平成十一年度に実施した監査の結果に基づいて、知事等の執行機関に措置を求めていた二四五件のうち二三九件について、知事等から措置を講じた旨、通知がありました。
現在、都は、危機的な財政状況に対処しつつ、少子化、高齢化社会等の様々な課題の解決に向け努力を重ねるとともに、将来を見据えた質の高いサービスを提供できる体制をつくり上げるため、全庁的な改革に取り組んでいます。
私達監査委員としても、外部監査制度や行政評価の導入という監査委員監査を取り巻く環境の変化に対応するため、昨年七月にまとめられた、「都における監査委員監査のあり方について」とする報告に基づき、これを今後の監査のあり方についての方針としていくこととしました。この報告の内容も踏まえ、新年度から監査の方式を大きく見直していきたいと考えています。
都における行財政運営の適正性を確保するという監査委員監査の基本的な使命を果たすために、都民が都政に求める期待に対応して、監査も変わる必要があると考えます。
今後とも、都民の期待に応えるべく、監査業務の遂行に万全を期して参る所存です。
|