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知事施政方針(要旨)


    一 新世紀の展望と東京の役割
    二 都政運営の機軸
    三 平成十三年度予算案と財政再建
    四 首都東京の再生を目指す政策の展開
    五 おわりに

 平成十三年第一回都議会定例会の開会に当たり、今年一年の施政方針を申し述べ、皆様のご理解とご協力を得たいと思います。
 はじめに、JR新大久保駅での勇気ある行為について申し上げます。一月二六日、関根史郎さんと李秀賢さんは、ホームから転落した男性を救うため線路内に降り、命を落とされました。人の危難を救おうとした勇気ある行為が、無念の結果となったことは誠に痛ましく、哀悼の意を表します。


一 新世紀の展望と東京の役割

(三つの危機との対峙)

 我々は、現在、三つの重大な危機に直面しています。
 第一の危機は、東京の危機です。
 住民の安全は、最優先で守るべき行政の基本課題です。しかし、大気汚染や凶悪犯罪の増加などにより、安全神話は過去のものとなりつつあります。経済活動や産業活動ではバブルの後遺症から抜け出せないままによる大型倒産や雇用不安が続いています。また、自己中心的な考えが社会に蔓延し、誰もが守っていたルールが崩壊しかけています。通勤ラッシュや交通渋滞は改善が進んでいません。
 第二の危機は、日本の危機です。
 昨年十二月、アメリカ国家情報会議(NIC)は、二〇一五年の時点で、日本は、アメリカ、EUと並んで世界の三極を構成することが困難になるとの予測をしました。これが、現在の日本の姿です。このような状況を招いたのは、政治、経済の指導者に責任感がなくなったためです。
 第三の危機は、地球の危機です。
 人類は、三万年に及ぶ歴史を通じ進歩してきました。特に、この二〇〇年間では高度な文明社会を形成し、便利な生活となりました。しかしそれは、四億年をかけて地球が作り出した資源を猛烈なスピードで消費することにより成り立っているのです。今や、オゾン層の破壊など、地球環境は我々の行く末に暗い影を投げかけています。
 自己制御できないほど高度に発達した文明を持ったが故に、自ら滅亡に向かって転げ落ちていることを直視する必要があります。

(存亡をかけた取組)

 一昔前、二十一世紀は、希望に満ちた輝かしい世紀になると夢見ていました。しかし、現実は、危うい状況での船出となりました。
 このまま事態を放置すれば、今世紀の終わりには、地球上の人類も存在しなくなる懸念すらあります。二十一世紀は、人類の存亡をかけた世紀であります。
 このような状況を打開するには、変革を阻む旧弊を打ち破ることが必要です。二十一世紀の最大の弊害は、大量消費型の社会、高度成長のみを至上する社会です。この社会システムを清算するには、大きなエネルギーを必要とします。
 しかし、自らが生き残るためには、避けられない過程であり、その苦難を乗り越えていきます。

(新しい文明社会の創造)

 人類が目指すべき新しい社会は、自律型文明社会です。
 基本となるのは、従来の価値観の転換と環境の視点に立った技術革新です。その中で、わが国が果たすべき役割は、足るを知る心と節度をわきまえた行動を、世界共通の認識として広めることです。
 また、これからの日本は、アジア諸国と連携を深めることで、アメリカ、EUと対等な関係を築くことが可能となります。

(これからの東京の責務)


 このような社会をつくる上で、東京が直接実行できることは限られます。しかし東京自らが変わることで、そのことが、日本を変え、世界にも影響を及ぼしていくと確信しています。


二 都政運営の機軸

 就任以来、私は、危機意識の徹底とスピードの重視を都政運営の基本としてきました。今後は、この二点を根底に置きながら、さらに三つの具体的な課題を機軸に、都政運営に当たっていきます。

(新しいフォーマットの造形)

 第一は、国にも地方にも通用する新しい行政のフォーマットを東京で造形することです。
 古来、人、物の交流は、新しい文明のアクセスとして、重要な役割を果たしてきました。国際化が進む今日、空港は、その国の玄関口として国を表象する施設となっています。東京は、アジアにおける国際金融センターとしての地位をシンガポールや香港に脅かされていますが、東京近郊にもう一つ国際空港が存在していれば、この事態は生じなかったはずです。航空政策の遅れが、経済に影響を及ぼしています。しかし、首都圏第三空港建設への国の動きは遅れています。昨年末に、都が羽田空港の再拡張を提案したことで、国はようやく動きを見せ、来年春までに複数の候補地を選定するようです。一日も早く羽田空港の再拡張を決定し、工事に着手すべきです。
 先月、焼津市上空で起きた航空機のニアミス事件では、東京の西の空にある横田空域の存在を見過ごせません。横田空域は、ごく一部のルートを除き、民間機が通過することは許されていません。このため、東京から西へ向かう航空機は、不自然な飛行を余儀なくされています。空の安全を守るため、横田空域を含む横田飛行場の返還を引き続き強く求めていきます。
 災害時の危機管理も、国の対応が遅れている分野です。万一の場合の備えとして防災訓練は欠かせないものですが、関係機関が緊密に連携した大規模な訓練は、これまでほとんど行われませんでした。
 都は、昨年九月、国にも参加を呼びかけ、史上最大規模の防災訓練を実施しました。今年は、九月一日に、昨年の訓練から更に改良を加えた総合防災訓練を多摩地区で実施します。この二年間の防災訓練を通じて、危機管理の処方箋が確立できると考えています。

(負の遺産の清算)

 第二は、前世紀から持ち越した負の遺産を清算することです。
 とりわけ東京に深く関連する負の遺産は、首都移転問題です。
 衆議院の特別委員会は、昨年五月、二年後を目途に移転先候補地を絞り込むことを決議しています。 
 我々は、この国の暴走を阻止する必要があります。
 国は、情報技術(IT)に関しては、五年以内に世界の最先端国家とすることを目標にしています。この目標実現への最善策は、東京を最先端の電子都市に変身させ、IT立国の拠点とすることです。
 今後は、首都・東京圏を構成し、七都県市が共同し、首都移転の代案を示したい考えです。その上で、皆様とも団結しながら、首都移転の撤回を求めていきます。
 都には、採算の悪化した事業が多くあります。将来にわたって、責任ある都政運営を行うためには、この問題を隠さず都民に明らかにすることが重要です。その上で、最も効果的な解決策を提示し、実行することが使命と考えています。
 多摩ニュータウン事業などの市街地再開発事業については、巨額の欠損の発生が避けられないと判断し、事業の見直しに着手します。
 地価の低迷が続く中で、臨海副都心開発事業会計は、財政基盤の強化が課題であるため、埋立事業会計、羽田沖埋立事業会計と統合します。

(行政体制の改新)

 第三は、ただ今の二つの方針を進めていくための基盤の構築です。
 昨年末に策定した都政改革ビジョンⅠでは、一五年度までの改革策を示しました。この四月からは、トップマネジメント補佐機能の強化など、現下の行政課題に対応する新体制をスタートさせます。
 IT化の促進は、時代の必然です。基盤整備などを進め、三年後に電子都庁を実現します。
 都庁の改革と並び、監理団体の改革も重要な柱です。進行管理を専門に担当する組織や外部の専門家を活用しながら、監理団体の改革に取り組みます。
 交通機関などが整備され、地域間のつながりが緊密化しているにもかかわらず、都道府県の枠組みは、戦後、変わっていません。しかし、市街地が都県境を超えて広がる中で、ディーゼル車対策など、広域化しなければ効果的な解決ができない問題があります。
 現行の国家体制と地方自治制度がもはや機能していないことは、わが国の現状が示しています。
 近く策定に着手する都政改革ビジョンⅡでは、東京圏における自治体のあり方について検討を行います。国から地方への真の権限移譲についても提言します。
 一方、区市町村も、現行の行政区域の見直しは避けられないと考えます。過日策定した「市町村合併に関する検討指針」は、合併に関する考え方と情報を都民、市町村に示したものです。
 合併はあくまでも、区市町村が住民の意向を踏まえて自主的に行うものですが、地方主権の充実のため、積極的に行動されることを要望します。


三 平成十三年度予算案と財政再建

(今後の経済情勢と予算編成の基本的考え方)

 東京が先駆的な政策を打ち出していくためには、財政を早期に立て直す必要があります。一昨年の夏に「財政再建推進プラン」を策定して以降、都は、全国で最も厳しい職員給与の削減など、懸命の取組を続けていますが、依然、厳しい状況です。
 都政にとって、十二年度、十三年度の税収に増加が見込まれる点は、明るい材料ですが、私には、構造改革に赤信号が灯ることのないよう、最悪の事態をも想定しながらシナリオを描く責任があります。今後も、財政構造改革を確実に進めていきます。
 同時に、都民生活に影響を及ぼす問題については、いかに財政が逼迫していても、集中的に財源を投入する必要があります。
 そこで、十三年度は、第一に、「財政再建推進プラン」に基づき、引き続き、自ら厳しい内部努力を実施するとともに、すべての施策について聖域なく見直しを行うこと。第二に、財政構造改革を進める中、首都東京の再生を目指すための施策を厳選し、確実な実行を図ること。この二点を基本として予算編成に臨みました。

(健全化を志向した予算の編成と構造改革の継続)

 この基本方針に基づき、職員定数については、一、二七九人を削減し、監理団体においても、四七〇人の職員を削減します。こうした内部努力や外形標準課税の導入などにより、十三年度では、二、一〇〇億円の新たな財源を確保することができました。しかしなお、一、四〇〇億円を超える財源が不足し、減債基金積立ての一部先送りなど臨時的な財源対策に頼らざるを得ませんでした。
 十三年度予算の規模は、三年ぶりに増加に転じましたが、その多くは公債費の伸びなどによるものです。国のように予算をばらまくのでなく、濃淡をつけ、都市整備、環境、福祉を重点化することで、実質的な歳出を前年並みに抑制した堅実な予算としました。
 また、十二年度最終補正予算では、都税収入の増加を財源として、隠れ借金の一部を削減しました。
 しかし、財政再建は、まだ道半ばでしかありません。構造的な赤字体質を転換するまでには至っておらず、借金をどの様に解消していくかも目途が立っていません。
 行く手には多くの難問がありますが、今後も決して手を休めることなく構造改革に取り組みます。


四 首都東京の再生を目指す政策の展開

 昨年末に策定した「東京構想二〇〇〇」では、五〇年先を展望した東京の望ましい姿を描くとともに、今後三年間で重点的に取り組む事業を示しました。十三年度は、この三か年の推進プランの実行を図りながら、急を要する事案についても緻密に対応していきます。

(地球全体を視野に入れた環境の保全)

 近代社会発展の過程で、環境問題は複雑化、深刻化してきました。以前から続く水質汚濁、大気汚染などの公害に加え、今日では、温暖化の進展など、地球全体に影響の及ぶ問題が発生しています。今や、地球への負荷をどこまで抑制できるかが問われています。都も、温暖化対策などの事業を積極的に推進しています。また、都会のヒートアイランド現象を緩和するため、屋上緑化の推進や道路の透水舗装などに取り組んでいます。
 これから先、環境問題に対処するには、都庁全体で取り組む体制の構築が不可欠です。年内に策定する「環境基本計画」では、地球環境対策にも目を向けながら、総合的な対策を明らかにします。
 ディーゼル車の排気ガスは、都民の生命と健康を直接脅かしており、許されない課題です。都は、発生源対策、交通量の抑制など、多面的に施策を展開しています。
 不正軽油撲滅作戦は、単に税収確保のためだけでなく、環境問題にも対処するために開始しました。大規模な作戦であり、全庁を挙げて横断的に取り組んでいます。
 ディーゼル車などからの抜き取り検査では、一割を超える不正を発見しました。脱税の疑いがある業者に対しては調査を続けていますが、特に悪質な業者については、強制調査を実施し、過日、東京地方検察庁へ告発しました。ここまで徹底した措置は、全国初です。
 今後も、悪質なケースには厳しく対処しながら、問題意識を一層喚起し、大気汚染を抑制します。
 昨年末に制定した「環境確保条例」に基づき、都内では、一五年一〇月から、基準を満たさないディーゼル車の走行を禁止します。規制に先立ち、今後二年間で、微粒子を除去する装置の装着に対する助成など、排気ガスの削減に向けた誘導策を集中的に実施します。

(福祉と医療の改革)

 これまでの福祉は、行政中心の閉ざされた世界で展開されてきたため、行き詰まりを見せています。今後は、多様な民間事業者の競争を通じてサービスを提供することが求められます。
 行政は、施設の整備などのほか、企業やNPOの参入を促し、高い水準のサービスを確保する必要があります。私は、開かれた福祉を築いていくため、「福祉改革推進プラン」に基づき、十三年度予算で重点的な財源配分をしました。
 子どもの送り迎えに便利な駅前保育所は、住民の要望が強いため、企業経営を可能にする東京独自の認証保育所制度を創設し、駅前保育所の設置を促していきます。
 高齢者の福祉・医療の複合施設として、来年の開設を目指している「高齢者専門病院」については、独立採算の導入も視野に入れ、公募により運営事業者を選定します。
 一方、心身障害者に対しては、一五年度に予定されている、措置から契約への制度の移行に備えて、今後三年間で、生活寮、グループホームなど、地域での生活や活動の場を重点的に拡大します。さらに、精神障害者の自立と社会参加を促進するため、社会復帰施設の整備を推進していきます。
 このほか、重症心身障害児施設が存在しない区部の東部地域に、一七年度の開設を目指し「東部療育センター」を新設します。
 総合救急診療を行う東京ERは、この秋第一弾として、墨東病院で開始します。
 小児救急については、小児科医が三六五日・二十四時間対応する体制を確保していきます。

(新世紀を支える人材の育成)

 戦後の日本は、「結果の平等」を偏重する考え方に引きずられた教育しか行われませんでした。
 今や、わが国の歴史も正確に知らないまま義務教育を終了する生徒が増えるなど、基礎学力の低下が懸念されています。
 教育は、人間が人間らしく存在するための全人格を形成する重要な場です。また、人間の感性と情念を育てる場でもあります。これからは、社会全体での人材育成が必要であり、都は、教育体制の再構築を積極的に進めています。
 教科書を見ればその国の教育が分かります。国際社会の中で日本の未来を担う人材を育成する上で、教科書は、重要な役割を果たしています。複数の教科書の中から、適切な教科書を採択することは、教育委員会が果たすべき責任の中でも、最も大切なことの一つです。
 しかし、教育委員会は、実質的な採択行為を下部機関に任せてしまうなど、重責を果たしているとは思えない実態もあります。
 今まで放置されていたこの状況を改善するため、都の教育委員会は、区市町村の教育委員会に対し、教科書の採択に当たって改善すべき事項を指摘し、通知しました。
 今年は、新学習指導要領に基づく最初の教科書採択の年です。区市町村の教育委員会は、教科書の持つ重みを十分に認識すべきです。東京都教育委員会の指導の下で適切に教科書を採択し、採択後はその経緯等を住民に公表して、採択事務の透明性を高めるべきです。
 先般発表した「大学改革基本方針」は、都立の大学が人材育成と学術研究の両面で大きな存在感を持つとともに、東京の発展に貢献し、都民に開かれた知的共有財産となるべきことを明らかにしました。再編・統合など大学経営のあり方も含め、今後議論を重ね、この夏取りまとめる「大学改革大綱」の中で具体策を明確にします。
 昨年の一〇月に発足した「心の東京革命推進協議会」には、六〇余りの各種団体、企業が加入しており、幅広い都民運動が進みつつあります。来月から、「家族ふれあいの日」を開始し、併せて、子どもとともに、まちをきれいにする行動を展開します。これが、社会貢献の喜びを体験する機会になることを期待しています。

(東京の治安の強化)

 世界から見た東京の優れた長所の一つは、良好な治安にあります。
 しかし最近では、凶悪犯罪などが増加しています。その様な中、いかに都民を守るのかが、課題となっています。このため都は、ピッキング対策などの新たな犯罪に対し、取締まりをしていきます。
 今後、警察との連携を深めながら、治安の強化に取り組みます。

(一〇〇年の大計に立った都市づくり)

 これからの東京は、政策の誘導により、魅力と刺激に満ちた都市づくりを進めることが必要です。この秋に策定する「東京の新しい都市づくりビジョン」では、今後の都市づくりの戦略を示し、都市再生への道筋を明らかにします。
 近年の副都心の整備に伴い、業務機能は分散化が進んでいますが、一方で都心部は、老朽化した施設が目立っています。都心の重要性をもう一度認識し、国際ビジネス街として、再生したいと考えています。首都東京の顔である東京駅丸の内広場や行幸通りの再整備は、都心再生の一つの取組です。
 秋葉原は、現在、区画整理を進めています。私は、わが国のIT拠点として、先鋭的な街に造り上げていきたいと思っています。今後、世界の情報が集まる先端産業の集積地にしたいと考えています。
 築地市場は、都民の生鮮食料品の安定供給に大きく貢献しています。しかし、老朽化が著しく、移転による抜本的な整備が必要だと考えます。そのため、豊洲地区を候補地とし、今後、関係者と本格的な協議を進めていきます。
 都市基盤の整備は着実に推進する必要があります。慢性的な道路の渋滞は、多大な経済損失などを引き起こしており、広域幹線道路の整備促進などが、有効な改善策となると考えます。
 外かん道は、先月の国土交通大臣の現地視察をきっかけに、整備促進の機運が熟してきました。今後も国に対し、計画の凍結解除を強く要請します。首都高速中央環状線についても品川線の計画を早期に具体化し、圏央道とあわせ、三環状道路の完成に向けて積極的に取り組んでいきます。
 また、ボトルネックの原因となっている踏切を早期に解消するため、従来の連続立体交差事業に加え、工法上の工夫により緊急的に立体交差を実現する「踏切すいすい事業」を開始します。京浜急行線では、羽田空港へ間近につながる環状八号線をはじめ二八か所の踏切について、工期を短縮して解消したいと考えています。
 さらに、来年度から三年間で、渋滞が激しい幹線道路を対象に、違法駐車の取締まりの強化、荷さばきスペースの確保など路上駐車対策を集中的に講じていきます。

(特色ある産業都市の創造)

 アジアは、今世紀、世界で最も発展を遂げる可能性を持っていますが、そのためには、日本が中心となり、社会的、経済的に連帯を深めることが不可欠です。
 現在進めている「アジア大都市ネットワーク21」は、アジアの各都市が信頼関係を高める有力な機会となります。今秋に東京で開催する第一回会議で、具体的な共同事業を決定します。
 わが国のアニメ産業は、世界市場の六割を占め、その多くが東京に集積していますが、近年は、海外の企業が力をつけており、一層の市場拡大が必要です。このため、「新世紀東京国際アニメフェア21」を十三年度に開催し、文化産業として振興を図ります。
 また、映画やテレビなどを通して東京の魅力を広く伝えるため、撮影の許可や相談に関する総合窓口「東京ロケーションボックス」を設置し、東京を舞台とした映像の制作を積極的に支援します。
 第二回となるローン担保証券は、二、五〇〇社を超える参加申込みを受け、来月、三三〇億円の債券を発行します。今回は、公募方式での販売を実施し、一般投資家からも資金調達をすることで、直接金融に近づけたいと考えています。
 先日、空き庁舎を利用した創業支援施設「ベンチャー・SUMIDA」を視察しました。斬新なアイディアを持つ起業家に接し、産業再生の曙光を見る思いがしました。十三年度は、同様の施設を八王子市と千代田区に設置します。

(多摩・島しょの個性ある発展)

 これからの多摩・島しょの発展には、区部と相互に競い合いながら特性を磨くことが重要です。今後は、核となる都市を中心に交流
・連携しながら自立した地域を形成していくことが必要です。
 先月策定した「多摩の将来像素案」は、こうした認識の下、活力と魅力にあふれた多摩を創造するため、環状方向の道路整備などの重点的な取組を明らかにしました。
 独立採算運営の東京スタジアムは、来月開業します。Jリーグ二チームの本拠地として、スポーツ振興の舞台として期待しています。
 島しょについては、観光客が減少している伊豆諸島を中心に、PRなどの振興策を講じます。また、被災した三宅島、新島、神津島においては、道路や産業の復旧・復興に向けた取組を推進します。
 特に、退避生活が長期化している三宅島の方々に対しては、都営住宅を継続して提供するほか、教育、就労などの生活支援に力を尽くしていきます。国に対しても、補助制度の新設をはじめとする復旧対策の強化を求めていきます。


五 おわりに

 今年は、都民から負託を受けた任期の折り返しの年となります。
 これまで私は、東京やわが国が直面している危機的状況を繰り返し訴え続けてきました。
 都の働きかけにより、国も少しずつ動き出しています。
 国に多くを期待できない以上、二十一世紀における新たな道筋を示すことは、東京の役割であり、また責任でもあります。地球と共生する世界を創り上げるため、全力を尽くしたいと考えています。一層のご協力をお願いします。

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