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東京都議会では、政策形成機能を高める取組の一環として、時々の都政の重要課題等について専門家を招き政策研究会を開催しています。
通算で六回目となる今回は、「二十一世紀を担う人材育成と教育改革」をテーマとして昨年十二月一日(金)に開催しました。講師には清水司東京都教育委員会委員長、田村哲夫学校法人渋谷教育学園理事長(教育改革国民会議委員)、若月秀夫品川区教育委員会教育長の三氏を迎え、参加者は都議会議員、都職員など二〇〇名を超えました。
開会にあたり、渋谷守生東京都議会議長から次のような挨拶がありました。
(議長挨拶要旨)
近年、社会経済情勢は急激に変化しており、教育へのニーズも多様化している。二十一世紀を担う人材育成という点では、学校、家庭、地域と各々社会全体で取り組むべき課題が多い。そのうち、学校教育について、東京都では特色ある学校づくりなど、様々な改革を行っており、国でも教育改革国民会議であらためて様々な視点から検討されている。
都民ニーズを見極めながら教育改革を進めることは都政の重要課題であり、今回の政策研究会が今後の各会派の政策形成と都政運営の充実発展に深く結び付くことを期待する。
続いて清水講師の進行で各講師からの基調スピーチがありました。
まず清水講師が、社会経済情勢の変化や少子化の動きの中で、東京が望ましい方向性を探る中で、学校教育が極めて重要であるとの認識を述べた上で、都の教育改革を紹介しました。
(清水講師要旨)
東京都教育委員会は、多様な教育ニーズに応え、各々の個性を伸ばし、生きる力を身に付けてもらうため、都立高校改革として特色ある学校づくり、学区制等改革、教員資質の向上を目指す人事考課制度の導入などを行っている。また「心の東京革命教育推進プラン」では、地域社会でのコミュニケーションの場を用意することを目指し、また生涯学習時代にあって発達段階に応じ、良い学習習慣を身に付ける場が学校であるとの認識に立って、取組を進めている。
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◆東京都教育委員会委員長 清水 司氏 |
次に田村講師は戦後五〇年を振り返り、今なぜ改革か、との視点から、教育改革国民会議の議論内容を中心に紹介をしました。
(田村講師要旨)
教育の目的は従来は経済的豊かさの追求であったが、豊かさが実現した今日では一人ひとりの生涯学習への対応となった。このため教育内容も、集団での画一的内容から個々人で学ぶ少人数教育へ、また知識を伝達するものから自己の人生について考える力を養成するものに変わっていく。
また今日では、就職率低下の背景には、働く意味が見い出せない人が増えていると伺われ、その人たちに働く動機付けをどうするかも大きな課題である。さらに国際社会に貢献できる日本人を育てるため、改革に真剣に取り組む必要がある。
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◆学校法人渋谷教育学園理事長 田村 哲夫氏 |
最後に若月講師は、「品川の教育改革プラン二十一」を策定し、通学区域の弾力化などに取り組む品川区の取組を紹介しました。
(若月講師要旨)
特色ある学校づくりの必要性は、かなり以前から言われてきた。そして今、小中学校をめぐる現実を踏まえ、品川区として具体的に何ができるかを考えた。通学区域の弾力化で学校が選べるようになれば、家庭で教育の話題が増え、地域でも自分たちの学校を何とか良くしようという気運が出てくる。選ばれる学校、特色ある学校づくりを実現するために、形(制度)と内容がセットになったいくつかのメニューを教育委員会が示した上で、所定の枠内でも学校現場ができる限りの独自性を発揮して改革に取り組んだ。それが現在、実を結びつつある。
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◆品川区教育委員会教育長 若月 秀夫氏 |
以上の講演の後、会場との質疑がなされました。
はじめに、「大量生産と大量消費の日本経済を支えてきた従来の教育は、昨今のIT革命で構造変化を遂げた。今後は独創性、個性、知恵が問われる時代になると同時に、地域も鍵になるのではないか。」との問題提起があり、講師も、「関心を共有する集団となるコミュニティーと学校がどうかかわるかが今後の課題である。独創性という点では、改革が現場からなされることが重要で、生徒も教師もやらされているという感覚を持つようでは、改革の本当の意味がない。」と強調しました。
次に、「一人ひとりの輝く人生のために、どのような教育を提供できるか、学校が自らの目標を掲げて競争することが必要になる。学校をコミュニティーの核として、防災、福祉、まちづくりのためのNPO活動などに活用したり、経営方法も公設民営を含め検討してはどうか。」との質問には、「ご指摘のような活用は進んでおり、教員も積極的にかかわるようになってきた。こうしたことは年代を超えた交流や少子化対策に有意義である。公設民営方式の学校は他県で例があり、地域社会と密接に結び付く小中学校などでは成功しうる可能性があると思う。」など講師からの答えがありました。
続いて、「現実には、休みたいと言うのが子ども達の本音である。子どもは疲れているのに、まだ競争を迫られる。子どもと一緒に教育について考えてほしい。」との意見が出され、講師は、「それぞれが生きる価値を考え、親も子も楽しいと思える方法を考えていきたい。」と訴えました。
さらに、「いじめ、不登校、学級崩壊などの現実にどう対処するのか。」との質問が出され、「ゆとりの教育、生涯学習、教育内容・方法・制度の多様化が必要である。教育改革国民会議でもこの点を真剣に考え、取り得る対策を報告に盛り込んだ。」との答えがあるなど、有意義な質疑が行われ研究会を終了しました。
最後に、五十嵐正東京都議会副議長から、講師の方々へのお礼とともに、本日の論議を一人ひとりの議会活動や、都議会全体の政策論議を高めることに生かしてゆきたいとの挨拶があり、閉会しました。
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