21世紀への都民仲間
身近な「最先端」で活躍する人
作家・「アート占星学」代表 上田享矢さん(中野区在住)
上田さんは小学生の頃、クラスメートの給食の食べ方をじっと見ていると、そのクラスメートの家族構成を言い当てることができるという不思議な特技があったという。上田さんによると、それはいわゆる「霊感」などというのもではなく、細かく対象を観察し、分析しようとする好奇心がそうさせたのだという。
一般的にこうしたことがあると、特別に「勘」がよかったり「霊感」的な能力があって「当てた!」と判断されがちだが、そうではなく、あくまでも対象を冷静に観察することで得られた情報から、子どもなりに感じたことを表現しただけのことだった。
子どもの頃のこうした様々な体験は、後になって大学で芸術学を研究していた上田さんに「人間の創造した芸術作品には、何か一定の基準のようなものがあって、それは細かく対象を観察し、研究すれば体系化できるはずだ」という確信を与えた。
上田さんはあるとき、クラシックの作曲家がオペラ型(モーツァルト)と交響曲型(ベートーベン)に明らかに分かれていることを発見した。この違いについて研究を続けていた時、当時から興味を持ちはじめた西洋占星学の定理に当てはめてみると、それぞれの傾向と作風は見事に分類・体系化することができたのだった。
上田さんによれば、西洋占星学はこれまで、大きく曲解されてきたという。
いわゆる「当たる!」という人気の点でも、非科学的であると非難されている点においても同じことが言える。まず、西洋占星学は運命論でも占いでもなく、非常に緻密な人間の美意識の分析体系なのである。とはいえ、西洋占星学が「占い」の機能ももっていることは事実であり、巷にある玉石混交の占いと入り乱れていることも事実である。
そこで上田さんは、それらの”占星術“と区別する意味で、主に芸術作品の分析を中心に、人間の美意識の研究を独自の研究理論とジョイントさせて「アート占星学」とネーミングし、画期的な西洋占星学理論を展開している。
この「アート占星学」は、人間の美意識の普遍的結晶である芸術作品をこれまでにない方法で分析していてたいへん興味深い。言うまでもなく芸術作品は芸術家個人の主観の産物である。それがなぜ客観的な価値を持つのかということについて、明確な回答を用意できた研究例はこれまでに存在しなかった。上田さんは、音楽、美術、文学、さらには、日本独特の文化である「マンガ」の作家と作品の分析も「アート占星学」で行なっている。歴史的に評価されてきた芸術作品というものには、一定の客観的価値基準というものがあってもおかしくはないはずである。西洋占星学は様々な芸術家の気質と作品的傾向の一面をうかがわせてくれるには十分な存在であった。
上田さんは一般的にいう「占い」という存在には特に強い関心をもっていなかった。しかし、芸術作品を西洋占星学に照らし合わせてみたとき、疑いようもない明白な一致点が浮かび上がって来るという事実に気付いた。西洋占星学は単に「占い」というにはあまりにも論理的明確さをもっており、それはまさに「科学」そのものと言えた。
西洋占星学では人間の個性は、12の星座と4区分の分類であるエレメント(火、風、地、水)の他に、3区分の分類であるクォリティ(活動、定着、変移)に分けることができる。これらの分類に照らし合わせると、芸術家の個性と作品の構造的な傾向が分析・分類できる。これまでに何となく触れていた芸術家の作品的特性を「アート占星学」的視点でとらえると新たな発見があって、作家と作品にさらに興味がわいてくる。
人間は無意識に、周囲からつくられた良いイメージに自分を近付けようとするように、自分の個性・才能、可能性を知ったときに最大のパワーを発揮できるものである。そうした意味においても、自分自身の特性をよりよく知り、その時々の問題にベターな選択をする手段として、西洋占星学をもっと日常生活に生かしてほしいと上田さんは望む。
身近な人との付き合いも相手の星座が分かっていると、その人の個性や性格的な傾向や行動パターンがある程度理解できると同時に、どう対処すればその人とのコミュニケーションがスムーズにいくかなどの対策も立てられるので、人間関係やビジネス戦略といった人脈づくりのデータとしても大いに参考にしてほしいとも。
上田さんは西洋占星学研究のかたわら、留学体験を生かして講師として大学や予備校で英語を教えている。その他にも、文芸・マンガ評論、栄養学講師、教育評論家、翻訳業、さらにラジオのDJとしても活躍。また、1995年、96年と連続で、第4回、5回ビートルズコンクール研究部門第一位受賞。ユニークなキャラクターと多彩な才能で活動はマルチ的な広がりをみせている。
また、上田さんは最新の著書「占星学vs科学」の中で「20世紀は科学が様々な領域で目覚ましい業績を生み、私たちがその恩恵に浴するとともに、その問題点についてもはっきりと認識した世紀だった。自分は科学・心理学といった分野に何ら過剰な批判的意識をもってはいない。むしろ科学大好き人間ではあるが、科学者たちも多くの問題点に気付いて『原爆を落とさないような科学』を開発してくれることを願って止まない。また、21世紀には20世紀までに完全に分裂した人間の『論理と感性』の統合が可能になってほしい。そのために西洋占星学が多少のヒントになれば」と夢を結んでいる。
アメリカでは昨年すでに西洋占星学専門の大学が誕生している。シアトルのケプラー大学がそれだ。日本ではまだ西洋占星学は「学問」としては認知されていず、人材も不足しているのが現状だ。上田さんは、こうした分野に「芸術作品批評と人間の美意識の研究」という新しい視点をもって挑戦し、西洋占星学の「理性的」市民権獲得を願う。
様々な価値観が崩壊して新しい価値観が生み出されつつある新世紀「日本の大学でも西洋占星学を学べるように!」という上田さんの夢は意外と早く叶うかもしれない。これからの上田さんに興味はつきない。
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作家・「アート占星学」代表
上田享矢さん(中野区在住)