トップ > 提出議案と議決結果 > 令和5年第3回定例会 > 陳情5第29号

請願・陳情の要旨

審査結果 意見付採択
備  考 (意 見)趣旨にそうよう努力されたい。


件  名

医療機関における精神障害者に対する虐待の防止と適正な医療への
アクセスに関する陳情

番   号
付託委員会
 5第 29号   厚 生   委員会付託

(願  意)
 都において、次のことを実現していただきたい。
1 八王子市にある滝山病院に入院している患者の意向調査を実施し、退院や転院を希
 望する患者に対して支援すること。
2 滝山病院において日常的な虐待がなぜ起きたのか、直接的、間接的、構造的な原因
 や要因を究明すること。
3 全ての都立病院において精神障害者が身体合併症の適切な治療を受けることができ
 る体制を整備し、都内全域で精神障害者が医療にアクセスできるようにすること。
4 都立病院において、改めて障害者虐待防止に関する研修を実施すること。また、都
 内の精神障害者が利用する医療機関に対しても、オンライン研修などにより啓発を行
 うこと。
5 医療機関において精神障害者が虐待や虐待に当たる可能性がある行為を受けた場合
 に、障害者虐待防止について専門的な知見を持つ機関に相談し、支援を受けることが
 できる体制を整備すること。
6 身体合併症がある精神障害者の医療アクセスの改善策、虐待防止、相談体制及び内
 部告発の専用窓口の設置等について、次期東京都保健医療計画及び東京都障害者・障
 害児施策推進計画に盛り込むこと。また、滝山病院の虐待事件のような事態が二度と
 起きないよう、各種計画に再発を防止するための施策を盛り込むこと。
7 身体合併症の治療も行う精神科について、一般病床と同等の人員配置基準とするこ
 とや診療報酬の改定を含めて制度を改正するよう、国に対して要望すること。

(理  由)
 令和5年2月25日に放送されたNHK教育テレビの番組「ルポ 死亡退院~精神医
療・闇の実態~」は、精神科の滝山病院における患者に対するむごたらしい拘束や暴行
の実態を明らかにした。家族は必死の思いで患者を精神科医療につなぎ、回復を願うも
のである。しかし、その負担は重く、心身共に疲弊し、さらに家族自身の高齢化や患者
が身体合併症の治療が可能な医療機関を求めていることなどから、最終的に長期入院が
可能な医療機関を頼らざるを得ない状況に至ることもまれではない。このような中、全
国に放送された、見るに忍びない、聞くに堪えないおぞましい現実に、精神障害者の家
族は心を痛めるばかりであった。そして、この心情は時間の経過とともに憤りに変わり、
精神科病院ひいては精神科医療の改革を求める声として大きくなりつつある。
 今回の滝山病院の事件は、単なる一医療機関における患者への虐待や人権侵害だけで
はなく、日本の精神科病院と医療施策が抱える構造的な問題を示している。今回に限ら
ず、精神科病院内での暴行や虐待事案は、全国のあちらこちらで繰り返されている。な
ぜ無くすことができないのか。精神疾患は誰でもかかる可能性のある病気の一つである。
苦しく、つらい病気を治療するために入院した病院内で虐待が起こるということがあっ
てはならない。精神科病院における暴行や虐待事案が繰り返されることで、本当に必要
なときであっても、患者が精神科医療へのアクセスをちゅうちょし、助けを求めること
ができないという状況が作り出されてしまうことを強く危惧している。今後、二度と繰
り返されることがあってはならない。本来であれば頼るべき精神科病院で発生した今回
の滝山病院の事件は、社会の縮図のような人権侵害の現れであることに、患者とその家
族は心を大きく傷つけられた。
 この事件を契機として、東京都の全ての精神障害者が、人権侵害や虐待を受けること
なく、身近な地域で適切な精神保健医療にアクセスできるようにする必要がある。

※ 採択されたものについて、要旨を掲載しています。