トップ > 提出議案と議決結果 > 令和4年第1回定例会 > 陳情3第117号

請願・陳情の要旨

審査結果 意見付採択
備  考 (意 見)趣旨にそうよう努力されたい。


件  名

児童・生徒が安心して受けられる学校健診の実現に関する陳情

番   号
付託委員会
 3第117号   文 教   委員会付託

(願  意)
 都において、児童・生徒が安心して受けられる学校健診を公立学校において実施する
ため、次のことを実現していただきたい。
1 児童・生徒に着衣での内科検診を求める権利があることを周知すること。
2 児童・生徒に胸を見せる内科検診の拒否ができることを周知すること。
3 学校健診における児童・生徒の所感調査及び対応状況の情報共有を行うこと。
4 女性医師の学校健診への参画を推進すること。

(理  由)
 我が国の学校健診における内科検診では、児童・生徒を一律に上半身裸にして行う形
態が採られてきた。内科・小児科の学校医の9割は男性医師であるが、一部の学校では
女子に対しても胸部を露出して検診を受けることが求められてきた。
 当会には、上半身裸での内科検診を経験した人々から「(検診の光景を)夢で見て冷
や汗をかいて目覚める。今でも男性の内科の先生のところには行けない。」、「50歳
を過ぎてもあの苦痛は忘れない。」、「思春期でコンプレックスと戦っている子どもに
トラウマを植え付ける行いがどうして許されるのか。あの屈辱を大人になった今も忘れ
られない。」など、悲痛な声が寄せられている。
 また、当会のアンケート調査では、内科検診で医師に胸を見せる経験をした人の63%
が現在もトラウマを抱えている。回答者のうち97%は20代以上の成人であり、長き
にわたり心の傷を与えていることが浮き彫りになった。
 内科検診での脱衣をめぐる問題は、令和2年末から令和3年に掛けて複数のメディア
で取り上げられ、広く国民の注目を集めている。また、本人の同意を大事にした学校健
診を請願する当会の署名も、現在2万4,885名の賛同を集めている。
 医師が患者を視診すること自体は通常の医療行為であるが、それは患者が医師を信頼
し、自らの意思で行うから医療行為として成立するのであり、逃れられない学校健診に
おける脱衣の強制は、一瞬の羞恥心だけではなく、一生残る心の傷を与え得るものであ
る。こうした検診の在り方は、児童・生徒に対する人権侵害であり、女子ばかりに負担
を強いる点において男女差別でもある。
 児童・生徒が「嫌だ」、「不快だ」と感じればそれはセクシャル・ハラスメントに当
たり、上半身裸を強要するのであれば、東京都こども基本条例第3条の基本理念及び第
10条のこどもの意見表明と施策への反映に反している。
 「診察や検査等に支障のない範囲で、発達段階に合わせた児童生徒等のプライバシー
の保護に十分な配慮を行うこと」とした文部科学省の通知や、東京都こども基本条例の
遵守の下、学校健診における児童・生徒のプライバシーへの配慮を徹底する必要がある。
 四つの願意について、それぞれ対応すべき内容は次のとおりである。
 第一に、内科検診において、どの程度の脱衣が必要かについて統一的な見解はない。
平成25年に日本学校保健会が実施した全国調査では、小学校の6割、中学校の7割が
着衣での検診を実施している。また、兵庫県宝塚市では下着を着たまま検診を実施して
いるなど、着衣での検診は「診察や検査等に支障のない範囲」であるとみなされている。
そのため、検診においては、Tシャツやブラジャーなどの着用を認め、十分に診察でき
ないと医師が考える場合は、その旨を児童・生徒や保護者に説明し、問診や保健調査票
で可能な限り個別に状態を把握するなど、児童・生徒が個別対応を求める権利があるこ
とを周知すべきである。
 第二に、学校保健安全法には、児童・生徒が学校健診を受ける義務は定められていな
い。無料で学校健診を受けることは児童・生徒に与えられた権利であり、義務ではない。
 しかし、当会の調査では、このことを認識している児童・生徒及び保護者は少ない。
学校側に着衣での内科検診を求めても「診察方法は医師の方針に従っている」などと断
られるケースも多い。学校健診は逃れられない学校行事であるため、学校や医師の指示
するままに脱衣しなければならないといった認識が広く持たれているが、学校健診自体
を拒否する権利もあることを周知すべきである。
 第三に、学校健診において児童・生徒が傷付けられる要因は、医師の前での脱衣の強
制のみならず、医師や教師の言動・態度や同級生の目など、多岐にわたることが当会の
調査で明らかになっている。特に、LGBTへの配慮の歴史が浅い我が国では、個別の
対応事例を学校間で共有するとともに、翌年以降の対応状況の改善につなげることが急
務である。
 診察や検査の正確性及び発達段階に合わせた児童・生徒のプライバシーの保護の両立
を図るため、学校管理者等が学校健診における児童・生徒の所感調査を実施し、各学校
で対応事例を集約し、情報共有することで、状況を改善すべきである。
 第四に、中長期的な目標として、学校所在地の医師会からの推薦や学校が直接地元の
医師へ依頼を行うなどの従来的手法にとどまらず、勤務医等にも間口を広げ、女性の協
力医を派遣する体制を検討すべきである。

※ 採択されたものについて、要旨を掲載しています。